著者
松岡 真里 丸 光惠 武田 淳子 中村 伸枝 兼松 百合子 松本 暁子 内田 雅代 竹内 幸江 佐藤 奈保 栗林 浩子 篠原 玲子 西牟田 敏之
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学看護学部紀要 (ISSN:03877272)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.59-68, 1998-03
被引用文献数
2

気管支喘息患児をもつ母親の,1)ライフスタイルの実態を明らかにする,2)ライフスタイルの要素間の関連を明らかにする,3)母親の特性,喘息児の特性とライフスタイル間の関連を明らかにする,ことを目的に研究を行った.対象は,喘息児をもつ75名の母親であった.質問紙による調査の結果,以下のことが明らかとなった.気管支喘息患児をもつ母親は,家族の健康に関心が高く,楽観的な考えの母親ほど,日常の中でストレスを管理している様子が明らかとなった.また,こどもの自立を望み,子育てへの関心も高かった.しかし,発作に関するストレスや薬の不安などを抱く母親も多く,発作が母親のストレスとなり,発作をコントロールするためにこどもへの統制的な関わりが増していた.以上より,疾患管理についてのみでなく,子育てについてをともに考え,母親自身の生活が充実したものになるように援助することが,喘息児の発作のコントロール,ひいては児の自立にもつながると考えられた.
著者
王 暁瑞
出版者
総合研究大学院大学文化科学研究科
雑誌
総研大文化科学研究 (ISSN:1883096X)
巻号頁・発行日
no.8, pp.57-70, 2012-03

近世後末期の越前国福井(現福井県)出身の歌人橘曙覧が詠んだ五二首からなる連作詠「独楽吟」は、すべて初句が「楽しみは」、末句が「時」で揃うという形になっている。これは従来の和歌に見られない独特な表現形式とされ、その形成について、先行研究では、「くつかむり」の方式などが作者の発想と構成を促した、あるいは俳諧歌や狂歌から影響を受けたとするものなど、日本の韻文に関連した指摘が多くあるが、十分に納得のいく具体的な説明はいまだ提出されていない。 一方、中国文学との関わりについては、前川幸雄氏が、論文「橘曙覧作「日本建国之吟」考」(『福井大学教育地域科学部紀要』第五二号、二〇〇一年十二月)において、曙覧の「独楽吟」を北宋の邵雍の詩作に関連付け、さらに、論文「橘曙覧と邵雍と―「独楽吟」と「首尾吟」の関係について―」(『国語国文学』第五〇号、福井大学言語文化学会編、二〇一一年三月)において、「独楽吟」と邵雍の連作詩「首尾吟」との関係、即ち作者の人生、処世観、作品の構成(形式上の)、作品の思想上の類似性、共通性について考察した。これは、曙覧の「独楽吟」を考える上で非常に示唆的なものであった。 「首尾吟」とは、邵雍の詩集『伊川撃壤集』巻二十に収められる連作詩であり、各詩の首句と尾句が「堯夫非是愛吟詩」という同じ句で統一されており、従来、見られない特殊な漢詩の体裁となっている。また、この連作の各詩の首聯は、例えば「堯夫非是愛吟詩、詩是閑観蔬圃時」(「首尾吟」第六五首のもの)のように、首句が「堯夫非是愛吟詩」という同じ句で統一されているだけではなく、第二句「詩是閑観蔬圃時」の句尾も「…時」という詞で統一されている。『伊川撃壤集』では、このような形式の詩が一三五首連続して並んでおり、連作の全体に音律的リズムを与えている。本稿では、こうした首聯での表現形式と、曙覧の「独楽吟」の表現形式との相似性に焦点をあてて、両者の影響関係について考察する。そしてまた、「首尾吟」は、その表現内容においても、自然や田園、生活や家庭の楽など身近な楽しみを詠み上げているが、曙覧の「独楽吟」にも「首尾吟」の発想や趣向をとりなしたとみられる例が散見されることについて検討を加えた。In the late Edo period, Tachibana no Akemi wrote a linked poem called Dokurakugin, which had a unique form of expression by starting the upper phrase with "tanoshimi wa" ("the moment I'm feeling happy is") and concluding the lower phrase with "toki" ("when") The form of this poem has long been thought to be a unique artistic form of waka. Up to now, no research has been able to explain how the form of this poem came to be.However, the Northern Song Dynasty poet Shao Yong left a famous group of 135 poems called Shao wei yin (Jp. Shubigin), all of which were included in his collection Ichuan Jirang ji (Jp. Isen Gekijō shō). A special characteristic of these poems is that each upper and lower phrase reads "Gyofu kore shi ginzuru o aisuru ni arazu" (I wrote a poem because I want to enjoy life, not because I like to write a poem). Moreover, each of these poems uses "toki" to end the second sentence. That is to say, for every poem, the first sentence is "Gyofu kore shi ginzuru o aisuru ni arazu," and the end of the second sentence is "toki." Thus we can see that this form has a kind of rhythm between the first sentence and the end of the second sentence, and that it appears to be similar to the form that Tachibana no Akemi uses in Dokurakugin. In addition, the ideas and artistic conceptions of Shao wei yin and Dokurakugin in their expressions regarding landscape gardens and happy family life are also quite similar. I believe this is sufficient evidence to conclude that the expressive form of Shao wei yin had an influence on the form of Dokurakugin in its development process.
著者
馬場 暁 山崎 亮輔 大平 泰生 新保 一成 加藤 景三 金子 双男 サマンタ サチャ ロックリン ジェイソン
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. OME, 有機エレクトロニクス (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.469, pp.7-11, 2009-02-27
参考文献数
8

グレーティングカップリング表面プラズモン共鳴法は、金属で覆われたグレーティング基板上に入射した光の波数にグレーティングベクトルが足し合わさることによりプラズモンの波数と一致してSPを共鳴励起する方法であり、プリズムを必要としないことなどから、実用的なセンサーへの応用が検討されてきている。本研究では、金属グレーティング上での白色光照射多重励起型表面プラズモン共鳴現象を利用したセンサーへの応用を行ったので報告する。また、可視域で大きなエレクトロクロミズムを持つPEDOT-PSS/テルピリジン鉄錯体ポリマーを用いて、センシング感度の向上を試みた。
著者
田中 啓一 野上 暁一 園田 義人
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌E(センサ・マイクロマシン部門誌) (ISSN:13418939)
巻号頁・発行日
vol.122, no.7, pp.362-368, 2002 (Released:2003-03-28)
参考文献数
10
被引用文献数
2

The experiment to detect the acoustic wave of an audible frequency region in air by a visible laser beam was carried out, showing that the audible waves with relatively long wavelength from 34 mm to 1700 mm could be directly detected by using a diode laser light of 670 nm and 6 mW. The frequency property was measured for each sound pressure from 75 dB to 100 dB and it is shown that the amplitude of output signal is linearly proportional to the sound frequency, which is consistent with the theoretical prediction. Furthermore, property of directivities in the planes vertical and parallel to the optical axis of laser beam propagation and the spatial profiles of the laser diffraction pattern for each incident angle of a sound wave were measured. The directivity property in the vertical plane for each frequency (200Hz to 10kHz) is very similar to each other and the full angle of half-maximum of directivity is about 120°. On the other hand, the directivity in the parallel plane for each frequency is different from each other. The directivity for low frequency is relatively broad. The full angle of half-maximum of directivity for 10 kHz is smallest and about 90°.
著者
佐藤 徳雄 渋谷 暁一 三枝 正彦 阿部 篤郎
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.408-413, 1993-09-05
被引用文献数
5

速効性の硫安を基肥および追肥に用いる慣行栽培を対照区として, 肥効調節型被覆尿素を用いた水稲 (品種チヨホナミ) の全量基肥不耕起栽培 (LP区) を試み, 次の結果を得た. 1) LP区の水稲は生育のごく初期に対照区よりやや劣るものの, 6月初旬以降は草丈, 葉色, 茎数および乾物重のいずれにおいても対照区より優った. 2) 対照区では, 湛水直後に急激な土壌無機態窒素の消失が起こり, 稲体は窒素欠乏状態 (クロロシス) を追肥時期まで示した. これに対してLP区の水稲は, 栽培期間中正常な生育を示した. 3) LP区の玄米収量は, 登熟期が高温・多照で経過した1990年が57.1kg/a, 低温・寡照で経過した1991年が51.2kg/aで, 対照区よりもそれぞれ55%および33%優った. 対照区の低収量の原因は, 施肥窒素が湛水とともに消失し, 主としてm^2当たり穂数が少なくなり, 籾数の確保が不充分であったためと考えられる. 4) LP区の窒素吸収量は, 対照区に比べて分げつ盛期以降は著しく優り, 成熟期には対照区の1.57倍に達した. 施肥窒素の利用率は, 全量基肥区のLPが63.2%, 対照区の基肥硫安が8.5%, 幼穂形成期の追肥硫安が52.8%, 穂揃期の追肥硫安が41.5%であった. 5) 以上の結果から, 水稲の不耕起直播栽培に対する肥効調節型被覆尿素の全量基肥施用効果が大きいことが明らかになった.
著者
小林 暁雄 増山 繁
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J95-D, no.6, pp.1356-1368, 2012-06-01

日本語WordNetは,独立行政法人情報通信研究機構により開発された,Princeton WordNetの日本語版であり,誰でも利用可能な大規模なシソーラスである.しかしながら,収録された語彙の多くは一般語であり,一部の著名人や国名などといった有名な固有名詞以外の固有名詞や新語はほとんど収録されていない.このため,自然言語処理の応用研究に利用する上で,これらの名詞の不足が問題になる可能性がある.一方,ウィキペディアは,誰でも参加・閲覧できるオンラインの百科事典構築プロジェクトであり,多くの名詞を記事として収録しているとともに,日々記事の追加・更新が行われている.このため,固有名詞や新語の解析を必要とする研究において,知識源として頻繁に利用されている.しかしながら,ウィキペディアには,日本語WordNetのような整理された語彙の分類体系が存在しないため,日本語WordNetのようにシソーラスとして用いるのは困難である.そこで,我々は,ウィキペディアのもつ,記事をまとめ上げるための機能の一つであるカテゴリーに着目し,これを新たな概念とし,その階層を用いることによって,日本語WordNetを拡張する手法を提案する.
著者
星 正治 遠藤 暁 川野 徳幸 山本 政儀 片山 博昭 大瀧 慈
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

平成15-16年度の成果の内、特筆されることは、平成16年3月9-11日の3日間広島大学にて国際ワークショップを開催したことである(学振の国際研究集会経費の支援による)。これは平成14年9月にセミパラチンスクで放射線量評価の国際会議を受けて広島で開催した。63演題が発表され、このうち26演題が外国人による発表であった。主題は被曝の大きかったドロン村である。2年間の研究の積み重ねの結果が発表された。その主な分野は、1.煉瓦のTLDによる国際相互比較を中心とした測定、2.歯のESR法を中心とした測定、3.放射能の雲の計算による方法、4.土壌汚染の測定とそれに基づく評価、5.染色体異常などの結果であった。結論として、煉瓦が、空中線量で0.5グレイくらい(国際相互比較で本研究グループからは茨城県立医療大学の佐藤が参加)、歯が0.1から0.5グレイ(本研究グループによる)、土壌汚染からの計算が0.5グレイくらい(金沢大との共同研究)、計算は被曝を引き起こした雲の通過した経路が、中心から外れている事を加味し0.5グレイ位とされ矛盾はない、本研究グループなどによる染色体異常の研究では明確ではなかったが、0.3グレイ位の評価もあり矛盾はない。以上の結論が出て、今まで0から2グレイまで評価法によって異なっていたことが、空中線量で0.5グレイと収束することができた。これが最も大きい結論である。これで方法論は確立したので、村ごとの個人被曝線量評価を行うことが次の課題である。現地調査は、金沢大学の山本らのグループとの土壌などのサンプリングを共同で行ったこと、武市医師のグループにより、サルジャル、カラウル、コクペクティなどの村で検診を行った。さらに血液の染色体異常、小核試験なども行った。放影研の片山らはコンピュータによるデータベースの構築を進めた。
著者
西村 顕正 森田 隆幸 村田 暁彦 馬場 俊明 池永 照史郎一期 木村 憲央 佐々木 睦男
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.56, no.7, pp.346-350, 2003-07-01
被引用文献数
1

抗リン脂質抗体症候群(APS)に全身性エリテマトーデス(SLE)を合併し上腸間膜静脈血栓症を発症した1例を経験した.症例は63歳女性.平成7年APS,平成9年SLEと診断され当院内科で加療中であった.平成13年5月21日より腹部不快感を自覚した.5月26日より腹痛が増強したため救急外来を受診した.腹部造影CTで上腸間膜静脈血栓症を疑い,同日緊急手術を施行した.トライツ靱帯から約190cm肛門側の小腸に約50cmにわたり虚血性病変を認め,これを切除した.術後は抗凝固療法を行い,17日目に退院となった.上腸間膜静脈血栓症は稀な疾患であり,早期診断が困難なことが多い.凝固能亢進状態にある患者では同疾患も念頭に入れ,早期診断と治療にあたることが必要と考えられた.
著者
竹内 聡史 河野 正司 小林 博 桜井 直樹 細貝 暁子 金城 篤史 甲斐 朝子
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.473-481, 2008-10-10 (Released:2009-02-20)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

目的 : 下顎タッピング運動に随伴する体幹動揺が, 座位において観察できるのか, また立位と座位でどのような差を示すか追求することを目的とした.方法 : 被験者は顎口腔系に異常を認めない男性6名 (25-29歳, 平均年齢27.0歳) で, 姿勢は立位, 座位の2種類として, 10秒間の咬頭嵌合位保持, 3Hzの20秒間タッピング, その後10秒間咬頭嵌合位保持を1測定単位として測定を行った. 下顎運動はTRIMETII (東京歯材社製) により上顎座標系にて下顎切歯点を, 頭部は大地座標系で上顎切歯点, 下顎頭点, 頭頂点, 後頭点を, また体幹動揺はProreflex (Qualisys社製) により大地座標系で胸骨点の矢状面内運動を分析した.結果 : 座位において, 下顎タッピング運動に随伴する体幹動揺が認められた. 開口量に対する体幹動揺量を立位と座位でWilcoxonの符号付検定をしたところ, 有意に立位の方が大きくなった. また体幹動揺の周波数分析におけるパワーの平均値を立位と座位でWilcoxonの符号付検定をしたところ, 有意に立位の方が大きくなった. しかし, 原波形解析による検出率をWilcoxonの符号付検定をしたところ, 立位と座位で有意差は認められなかった.結論 : 体幹動揺量は立位の方が大きいが, 原波形による検出率では差がなく, 咀嚼動作として自然な座位での分析も可能であることが明らかとなった.
著者
ヤマンラール水野 美奈子 黄 暁芬 杉村 棟 小柴 はるみ 桝屋 友子 阿部 克彦
出版者
東亜大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1)海外調査を通じて得た主な研究業績(1)研究対象である2冊の詩画帳(通称サライ・アルバム)(トプカプ宮殿美術館所蔵登録番号H.2153,H.2160)の合計289フォリオ、2152作品のデーターの入力を完了した。2冊の詩画帳の画像とデーターの総合的入力は本研究グループが初めて成し遂げた成果である。(2)2冊の詩画帳の書の索引の作成が完了した。これも本研究グループがはじめて成し遂げた成果である。絵画作品に関しては、索引を作成中である。(3)平成16年にはベルリンの国立図書館が所蔵するディーツ・アルバムを調査し、トプカプ宮殿美術館の上記2冊の詩画帳との関連性を考証した。この件に関しては更に詳細な研究調査が必要である。2)研究発表における主な業績:11.研究発表の中でも以下の論文発表は新説であり、本研究グループが成し遂げた成果である;(1)ヤマンラール水野美奈子「サライ・アルバムH.2153における半円形のデザイン文様に関する考察」:従来半円形デザイン文様は根拠なしに襟の型紙とされていたが、住吉神社、手向山神社や中国の例証などからそれらが馬具の障泥のパターンであることを証明した。(2)関喜房「サライ・アルバム(H.2153,H.2160)の装丁の考察(原文ペルシア語)」:研究対象の詩画帳は数回装丁を改められているが、そのオリジナルな装丁の考察に示唆を与える画期的研究である。3)海外における講演・発表(1)上記2)(1)は平成14年の国際トルコ美術史学会で発表された。(ヤマンラール水野美奈子)(2)平成16年10月に中国、煙台大学でサライ・アルバムに見られる中国美術の影響を発表し、中国で始めてサライ・アルバムを紹介した。(ヤマンラール水野美奈子、黄暁芬)(3)平成17年3月には、イラン国立アカデミーでサライ・アルバムを紹介。(ヤマンラール水野美奈子・杉村棟)
著者
中村 和靖 杉本 義幸 町野 悠介 夏目 暁人 佐藤 光男
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.611-621, 2011-11-30 (Released:2012-02-29)
参考文献数
58

抗体医薬の臨床効果を高めるため,抗体が持つエフェクター機能を増強する試みがなされている.数多くの試行錯誤の結果,Fc領域の特定のアミノ酸の改変,あるいは糖鎖の修飾により抗体のFc受容体や補体への結合活性が向上し,ADCC活性やCDC活性といったエフェクター機能が増強することが示された.また,高いADCC活性と高いCDC活性を併せ持つ抗体を作製することができ,このような多機能化抗体は,複雑なメカニズムにより高い治療抵抗性を獲得している難治性癌の治療に有効であることが期待される.
著者
剣持 久木 西山 暁義 川喜田 敦子 中本 真生子
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

2006年秋からフランスとドイツの教育現場に導入された、共通歴史教科書を、教科書成立に至る過程、歴史的背景から教科書の内容の分析、仏独両国での教科書の評価、現場での使用状況、さらには東アジアなど他地域への応用可能性を研究した。その結果、実際の使用状況は、二言語学級での使用など限定的であるという実情が明らかになったものの、ドイツ・ポーランド間でも同様の計画が具体化するなど、仏独の事例は限界をもちつつも国際歴史教科書対話のなかで一つのひな形の役割を果たしていることが確認された。
著者
宋 暁晶 池田 孝之 安里 直美
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.75, no.648, pp.411-418, 2010-02-28 (Released:2010-06-07)
参考文献数
13
被引用文献数
3

Taking the formulation of “Urasoe Landscape Plan” and “Nakama Landscape Criteria” as research subjects, it was found out that investigation into the reasons of modification of the draft landscape criteria and issues on the coordination process, method between citizen and administration is necessary.Thus, this paper is aiming at the following purposes: 1. To clarify the process for Nakama landscape district designation and the formulation of landscape criteria, Urasoe and the connections between the criteria and citizens'opinions. 2. To clarify the grounds for setting and modification of landscape criteria, and discuss the issues on the coordination between citizen and administration.
著者
坪井 良子 石川 ふみよ 平尾 真智子 奥宮 暁子 佐藤 公美子 村松 仁
出版者
山梨医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

研究期間を通して,国立国会図書館所蔵のGHQ/SCAP Recordsから公衆衛生福祉局(PHW),民間情報教育局(CIE),民間史料局(CHS)及び経済科学局(ESS)のSheetsから,看護改革に関連する英文書を検索・収集し,分析を行ってきた。平成13年度に翻訳したNursing Education Council(看護教育審議会)の第1回から第6回分(1946.3〜1946.6)の会議録,議事録を統合して,看護教育改革の経緯を明らかにした。さらには,Council on Medical Education(医学教育審議会)の翻訳も進め,両方の会議のあり方,審議内容,その経緯など,関連性を追究してきた。これら会議での決定方針を具現化した,看護のモデルスクールであるTokyo Demonstration school of Nursingにおける設立時の教育内容(カリキュラムを含む)を見出し,占領初期の看護教育改革の実施過程を明らかにした。また,占領当時GHQ/SCAPに関与した看護職や占領期研究者へのインタビューを行った。研究活動の主な成果は,医学・看護系学会の学術集会で発表してきた。そして,従来の日本側の看護改革研究にGHQ/SCAP文書からの視点を加えて,新たな知見を提言した。特に,看護教育の改革構想に影響を与えた参加者名及び発言内容を明らかにしたことで,GHQ/SCAP, PHWが遂行した看護改革の意図,目標及び目的,経緯が明らかになり,今後の研究発展のための基礎資料となった。
著者
深澤 克己 櫻井 万里子 河原 温 北村 暁夫 西川 杉子 篠原 琢 千葉 敏之
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、ヨーロッパ史上に出現した諸団体の多くに通底してみられる宗教的・密儀的な性格の比較分析をとおして、長期的時間の視野のもとに、古代から現代にいたる団体・結社の組織原理および思想潮流の展開過程と系譜関係を解明することを目的として組織された。18世紀に急発展をとげるフリーメイソン団を比較分析の十字路としつつ、古代ギリシア、中世ドイツ・ネーデルラント、近世フランス・イギリス、近代チェコ・アイルランド、現代イタリア史の専門家を結集し、合計6回の研究会を組織して、研究報告と討論を積みかさねた。本研究の独自性は、まず第一に、従来の歴史研究では各々の団体の性格に応じて、宗教史・経済史・政治史などの分野で別個に研究したのに対して、機能を異にする諸団体間の連関・重複・継承関係を重視したこと、第二に、伝統的歴史学の重視する団体の制度的・機能的側面よりも、団体内部の友愛・連帯を支える儀礼的・象徴的側面を強調したこと、第三に、これらの儀礼や象徴に素材を与えた密儀・秘教思想を、従来のように哲学的・思想史的観点のみならず、歴史的・社会的視点からも研究しようとしたことにある。もちろん研究成果には対象により粗密の差があり、全体の整合的連関にも課題を残しており、すべての問題に解答できたわけではないが、今回の成果をもとにさらに共同研究を深めれば、ヨーロッパ文明の根底にある非合理的・神秘的世界観、およびその容器となった兄弟団・友愛結社の役割の解明をつうじて、現代世界の批判的理解と実践的な未来構想の一助となる歴史理解を構築することができると信じている。