著者
木村 克己
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.105, no.3, pp.208-226, 1999-03-15 (Released:2008-04-11)
参考文献数
60
被引用文献数
6 7

犬山地域に分布する美濃-丹波帯のコヒーレントなチャート・砕屑岩ユニット(犬山シーケンス)には, 付加に伴って形成されたさまざまなタイプのスラストが発達している.これらの剪断帯の特徴とスリップ方向を南北3kmの木曽川沿いのルートで検討した.観察したスラストは20本であり, うち19本は断層条線, 残り1つはデュープレックスのファブリックからスリップ軌跡を求め, 非対称変形構造に基づいてスリップセンスを決定した.スラスト以外の縦走系断層として, 左横ずれ断層が認められるが, 断層条線の方位や剪断帯の特徴の相違からスラストと区別できる.スラストのスリップ方向の平均値は, 褶曲・傾動の補正後, N60°E-S60°Wの地層の一般走向に直行するS30°Eを示す.西南日本のアジア大陸からの回転変位と大規模屈曲構造を復元した際に, このスリップ方向は, ジュラ紀最後期~白亜紀最初期にかけてアジア大陸下に直交方向に沈み込んだイザナギプレートの相対運動方向にほぼ平行である.
著者
小野寺 政行 須田 達也 荒木 英晴 木村 篤 草野 裕子 下田 星児 小南 靖弘 広田 知良 中辻 敏朗
出版者
北海道農事試驗場北農會
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.122-130, 2019 (Released:2019-11-14)

雪踏みは雪割りと同じく,土壌凍結を促進でき,野良イモ防除に有効である。雪踏みは雪割りに比べ使用機が安価で共同利用しやすいが,積雪が深い場合や傾斜地などでの実施にやや難があるため,立地条件や作付体系等を考慮して凍結深制御手法を選択する。雪踏み,雪割りに関わらず,土壌凍結深30cmを目標に制御すると,土壌物理性の改善や窒素溶脱抑制を介して圃場の生産性は向上する。土壌凍結深推定計算システムは汎用性を高め,広域で活用できるように改良した。
著者
七山 太 山口 龍彦 中西 利典 辻 智大 池田 倫治 近藤 康生 三輪 美智子 杉山 真二 木村 一成
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.126, no.9, pp.493-517, 2020-09-15 (Released:2020-12-15)
参考文献数
93
被引用文献数
3

南海トラフ巨大地震によって沈降が予測されている宿毛臨海低地において沖積コアを採取し,LGMの開析谷を埋積する沖積層の特徴と堆積シークエンスの検討をした.松田川開析谷はLGMに形成され,その後の後氷期海進により,9.8kaに標高-30mに海水が到達し,エスチュアリー環境へと変化した.その後も海水準は上昇し続けて内湾泥底環境となり,7.5kaに最高水深時となった.7.3kaに起こった南九州の鬼界カルデラ噴火により,給源に近い宿毛湾周辺においてもK-Ah火山灰が厚く降灰し,その直後に大規模なラハールが発生した.その結果,水中二次堆積物が急激に堆積した.7.0ka以降にデルタの成長が他の地域に先行して活発化したが,これは大規模なK-Ah火山灰の影響と考えられる.SKMコアから得られた過去1万年間の海面変動情報に基づくならば,宿毛湾地域は南海トラフ巨大地震によって一時的に沈降するものの,長期的に見るとそれらの沈降量は相殺されると理解される.
著者
島田 玲子 加藤 和子 河村 美穂 名倉 秀子 木村 靖子 徳山 裕美 松田 康子 駒場 千佳子 土屋 京子 成田 亮子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】日本調理科学会特別研究平成24~25年度『次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理』の調査を通して,昭和30~40年代に定着した埼玉県の家庭料理について検証し,主菜の特徴を明らかにすることを目的とした。<br>【方法】埼玉県の東部低地:加須市,北足立台地:さいたま市,比企:東松山市,大里・児玉:熊谷市,入間台地:日高市,入間山間部:飯能市,秩父山地:秩父市,川越商家:川越市の8地域9か所における対象者は,家庭の食事作りに携わってきた19名で,居住年数は平均72.3年である。当時の地域環境と共に,食料の入手法,調理・加工・保存方法,日常食や行事食,食に関連する思い出や,次世代に伝え継ぎたいと考える料理について,聞き書き法で調査を行った。<br>【結果】埼玉県は内陸県(海なし県)である一方,荒川や利根川などの一級河川が流れ,川魚を入手するには恵まれた環境であった。そのため,動物性の食材にはコイやフナ,カジカ,ハヤなどの川魚のほか,ウナギ,タニシなど,川で獲れる魚介類を利用している地域が多かった。ウナギは現在でも名物であるが,昭和30~40年頃には,家庭で調理するよりも,中食・外食としての利用が多かった。その他の魚は,家庭で甘露煮や焼き魚,天ぷらなどにしていた。一方,海産魚は缶詰や干物,塩蔵品が利用され,昭和40年頃から家庭で作られるようになったカレーライスには,畜肉ではなく,サバの水煮缶やちくわが用いられていた。日常的な畜肉の利用は少なく,卵を得るために鶏やアヒルを飼育し,特別なときにつぶして食べることが行われていた。昭和40年代になると流通網の発達や冷蔵庫の普及などによりとんかつやハンバーグなどの洋食として畜肉も食べるようになった。
著者
茂木 肇 仲村 翔太郎 荻原 政彦 齋藤 耕一 木村 光利
出版者
一般社団法人 日本薬局学会
雑誌
薬局薬学 (ISSN:18843077)
巻号頁・発行日
pp.nt.2018-1820, (Released:2019-08-21)
参考文献数
12

要 旨:本研究では,高血圧治療薬であるジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬(dCCB)による逆流性食道炎(RE)の発症リスクに関する明確なエビデンスを構築するため,dCCB のタイプ別(L 型,N 型,T 型),用量別および服用期間別におけるRE の発症率の違いをアンギオテンシンII 受容体遮断薬(ARB)と比較することにより評価した.その結果,アムロジピンやニフェジピンのようなL 型dCCB は,低用量からRE 発症率が有意に高く,投与期間に依存してRE 発症率の有意な上昇が認められた.これに対し,交感神経終末膜のN 型カルシウムチャネルの遮断作用を有するシルニジピン,ベニジピンや反射性交感神経増強作用が弱いアゼルニジピンは,用量別,投与期間別におけるRE 発症率の有意な上昇を示さなかった.これらの薬物は,RE の発症に深く関係する下部食道括約筋の弛緩を抑制するため,L 型に特異性が高いアムロジピンやニフェジピンよりもRE 発症率が低かったものと考えられる.
著者
川端 悠士 木村 光浩
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.11859, (Released:2020-10-06)
参考文献数
29

【目的】人工股関節全置換術例の術後3 週における靴下着脱動作獲得に影響を与える要因を明らかにすること。【方法】対象は後方アプローチによる人工股関節全置換術を施行した115 例とした。調査項目は性別,年齢,関節可動域(股関節屈曲・伸展・内転・外転・外旋,膝関節屈曲,胸椎屈曲,腰椎屈曲),股関節屈曲・開排位における靴下着脱動作の可否とした。従属変数を靴下着脱動作の可否,独立変数を関節可動域として,決定木分析を行った。【結果】決定木分析の結果,靴下着脱動作獲得に影響を与える要因として,股関節屈曲・外旋可動域,胸椎屈曲可動域が抽出された。また股関節屈曲可動域が不良であっても,股関節外旋可動域および胸椎屈曲可動域が良好であれば,高い確率で靴下着脱動作が可能となることが明らかとなった。【結論】人工股関節全置換術後早期の靴下着脱動作獲得には,股関節屈曲・外旋可動域,胸椎屈曲可動域の改善が重要である。
著者
木村 英亮
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済体制学会会報 (ISSN:18839797)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.10-17, 1998-02-01 (Released:2009-07-31)

「システム転換と国際関係」という共通論題で考えられる問題のうち,中央アジアに住むロシァ人について取り上げ,この地域の民族構成が経済改革にもつ意味について考えてみたい。ロシア人は,1989年には中央アジア5共和国の総人口4914万7616人のうち951万9958人,19.4%を占め,ウズベク人33.7%に次ぐ第2の民族であった。旧ソ連全体のロシア人の6.6%がこの中央アジアに居住していたことになるが,このようなロシア人の増加という現象は,19世紀後半にこの地域がロシアの植民地になって以後,とくにソヴェト政権の70年間に形成されたものである。
著者
東郷 俊宏 木村 友昭 形井 秀一 松本 毅 中野 亮一 金安 義文
出版者
社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.90-103, 2014 (Released:2014-12-24)
参考文献数
10
被引用文献数
1

2009年に国際標準化機構(ISO)で設置が承認されたTC249では、 2010年の第1回全体会議 (北京) 以降、 2013年までに4回の全体会議を開催した。 この間、 鍼灸領域では、 鍼灸鍼の国際規格作成をscopeとするWG3と鍼灸鍼以外の医療機器の規格作成に特化したWG4の2つが設置され、 伝統医学領域の医療機器の国際規格策定が進められている。 日本としては、 現在国内に存在する関連規格 (JIS規格;厚生労働省の定める認証基準など) と齟齬を来す国際規格が策定されぬよう、全体の流れを注視しつつ議論に参画しているが、TC249に出席しているメンバーのほとんどは、臨床家や医学研究者であり、必ずしも医療機器の専門家ではないことから、議論はしばしば平行線をたどり、ハーモナイゼイションは困難な場合が多い。 本稿では、TC249における規格策定に関わってきた日本のエキスパートのうち、アカデミア2名、メーカー2名に2013年の5月に南アフリカ共和国のダーバンに於いて開催されたTC249 4th Plenary MeetingにおけるWG3, 4における議論についてそれぞれの立場から論じて頂いた。
著者
土坂 享成 木村 哲哉 今井 邦雄 妹尾 啓史 田中 晶善 小畑 仁
出版者
社団法人 環境科学会
雑誌
環境科学会誌 = Environmental science (ISSN:09150048)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.393-398, 1999-11-30
参考文献数
14
被引用文献数
1

前報において,カドミウム解毒に重要な役割を果たすと考えられている(γ-EC)<SUB>n</SUB>G合成酵素の性質について,水稲根を用いて検討したことを報告し,水稲根中で(γ-EC)<SUB>n</SUB>Gを合成している酵素の少なくとも一部がカルボキシペプチダーゼである可能性を示唆した。これを踏まえ,本研究では各種のカルボキシペプチダーゼに(γ-EC)<SUB>n</SUB>Gの合成能力があるかを検討した。更に,イネ由来のカルボキシペプチダーゼ遺伝子を発現ベクターに組み込み,これを大腸菌に導入してカルボキシペプチダーゼ遺伝子を発現させ,それにより(γ-EC)<SUB>n</SUB>G合成能力が増大するかを検討した。 その結果,全てのカルボキシペプチダーゼ標品において(γ-EC)<SUB>n</SUB>Gの合成が認められ,その至適pHはカルボキシペプチダーゼの分解活性のそれとほぼ同じであった。また,その合成活性はカルボキシペプチダーゼの特異的阻害剤により抑制されることが認められた。比較のために行ったアミノペプチダーゼ標品では(γ-EC)<SUB>n</SUB>Gの合成は認められなかった。一方,カルボキシペプチダーゼ遺伝子を導入した大腸菌の抽出液における(γ-EC)<SUB>n</SUB>G合成活性が,導入していない方よりも増大したことが認められた。これらのことから,カルボキシペプチダーゼが(γ-EC)nGを合成している酵素の一つである可能性が更に強く示唆された。
著者
木村 順平 月瀬 東 岡野 真臣
出版者
公益社団法人 日本獣医学会
雑誌
The Journal of Veterinary Medical Science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.1035-1037, 1992
被引用文献数
3

卵巣性ステロイドホルモンがネコの大前庭腺(バルトリン腺)の分泌の機能にどう関わるかを調べる目的で, 卵巣・子宮を摘出し, エストロジェンまたはプロジェステロン, あるいは両者を投与したネコの大前庭腺の組織切片について, アルシアンブルー, PAS染色ならびに, PNAおよびWGAによるレクチン染色を施し, 組織化学的に検索した. 本実験の結果, ネコ大前庭腺の分泌機能はエストロジェンに依存していることが判明した.
著者
木村 吉彦
出版者
教育哲学会
雑誌
教育哲学研究 (ISSN:03873153)
巻号頁・発行日
vol.1982, no.45, pp.34-46, 1982-05-15 (Released:2010-01-22)
参考文献数
66

In this paper the role of “Need” (Not) in the formation of man in its material and spiritual meaning shall be examined as it is found in the early stages of Pestalozzi's. thought.Material need produces the necessary stamina needed by man to become self-reliant through the fulfilment of one's vocational obligations.Thus, “need” by giving. “the opportunity to overcome much”, is a valuable educational means to implant the power of self-restraint which is the basis- for man to develop an autonomous personality.At the basis of Pestalozzi's thinking, was an exclusive reliance on external factors for man in his living; in regard to morality this meant the stress-was on “heterogenous” factors. But the investigation on “need” in this paper makes it clear that also in the early period of the development of Pestalozzi's thinking, he maintained already a, view of man as moral being based on “autonomy.”
著者
木村 景一 中鉢 欣秀
出版者
一般社団法人 プロジェクトマネジメント学会
雑誌
プロジェクトマネジメント学会誌 (ISSN:1345031X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.15-20, 2004

企業における研究開発はプロジェクト体制で進められることが多く,さまざまなプロジェクトマネジメント手法が試みられている.しかし,研究開発自体が持つ不確実性のため多くの問題点が現出し,その解決のため体系的なプロジェクトマネジメントが求められている.企業の研究開発の特徴として,開発した技術を製品に反映させることが義務付けられているため,多くの場合,研究開発部門において基盤要素技術の開発を進め,その成果を製品開発に移転するという2段階のプロセスを通る.この基盤要素技術の開発において最も重要なプロセスはプロジェクトスタート段階における研究開発テーマの決定である.本稿では,小型電子機器において問題となっている放熱技術開発を例に取り,研究開発テーマの決定プロセスについて述べる.