著者
荒木 理沙 藤江 敬子 中田 由夫 鈴木 浩明 松井 幸一 植松 勝太郎 柴﨑 博行 安藤 貴彦 植山 ゆかり 礒田 博子 橋本 幸一
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.121-131, 2018 (Released:2018-06-15)
参考文献数
28
被引用文献数
3 4

オリーブは, 果実だけでなく, 葉にもオレウロペイン等のポリフェノールを豊富に含んでいる。この点に着目し, オリーブ葉茶が生産されているが, ヒトにおけるオリーブ葉茶の機能性は明らかになっていない。そこで, 血清LDL-コレステロール (LDL-C) 濃度が境界域または軽度高値の40‐70歳非糖尿病男女を対象とし, 試験飲料としてオリーブ葉茶と緑茶を用いたランダム化2群並行群間比較試験を実施した。12週間の介入によって, オリーブ葉茶群でのみ, 体重 (p<0.05) と腹囲 (p<0.01) が有意に減少した。このことから, オリーブ葉茶が緑茶に比べて体重や腹囲の減少に有効となる可能性が示唆され, オリーブ葉に特有のポリフェノール等の機能性成分の関与が考えられた。なお, オリーブ葉茶群ではLDL-C濃度の低下傾向 (p=0.054) がみられたが, 明確な糖・脂質代謝改善効果を認めるには至らなかった。オリーブ葉茶がヒトの健康に及ぼす影響について, 今後さらに検討すべきと考えられた。
著者
宮城島 慶 松井 敏史 小原 聡将 三ツ間 小百合 田中 政道 輪千 督高 小林 義雄 長谷川 浩 神﨑 恒一
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.260-268, 2015-07-25 (Released:2015-08-13)
参考文献数
24
被引用文献数
4 1

目的:2011年に提唱された医療・介護関連肺炎(NHCAP)ガイドラインに従い高齢者肺炎の治療を行い,入院前後の介護度悪化にかかる予後規定因子を検討した.方法:2012年4月から2013年3月にかけて杏林大学付属病院高齢診療科で肺炎の治療を行った112名(平均年齢:86.8±5.5歳,男/女:72/40名)を対象に,退院後にNHCAPガイドラインに従い,市中肺炎(CAP)(29名)とNHCAP(83名)に,NHCAPは更に耐B群(耐性菌リスク無)とC群(有)に分類した.介護度は入院前後にJABCスコアで判定し,肺炎治療後2段階以上のADL低下または死亡を転帰悪化とし,各肺炎群の臨床的特徴と,転帰について評価を行った.結果:NHCAP患者の入院日数はCAP患者に比べて長く(CAP vs. NHCAP:21日vs. 33日,p=0.02 by Mann-Whitney U test),肺炎重症度であるADROPスコアが高値で(CAP vs. NHCAP群:2.45±0.87 vs. 2.88±0.80点,p=0.02),誤嚥を有する頻度が高かった(42.9% vs. 89.2%,p<0.0001).一方,B,C群間ではこれらの項目の程度は同等であった.また各肺炎群における死亡例の頻度に差はなかった.いずれの肺炎群でも入院前後で全体のJABCスケールは悪化し(CAP群,p=0.002;NHCAP-B群,p<0.0001;NHCAP-C群,p=0.01,Wilcoxon順位検定),特にNHCAP-B群では,全体で1ランク低下していた.死亡例を含む2ランク以上の介護度悪化者はCAP群37.9%に対し,NHCAP群は43.8%であった.年齢,性別,入院時JABCスコアで補正したロジスティック回帰分析を行ったところ,NHCAP(CAPに対し相対危険度6.2,95%CI 1.2~32.2,p=0.03),血清アルブミン2.5 g/dl未満(7.8,95%CI 1.7~35.7,p<0.01)が介護度悪化に関与した.一方ADROPスコアや誤嚥の有無は入院による介護度悪化に関与しなかった.結論:NHCAP自体が,栄養状態を反映する血清アルブミン低値とともに,入院による介護度悪化の危険因子であった.NHCAP症例は入院治療で肺炎が軽快しても介護度が悪化する可能性が高く,そのような予後予測を念頭に置いて診療を行う必要がある.
著者
松井 徹
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.171-174, 2022-09-01 (Released:2022-09-01)
参考文献数
14
被引用文献数
1

芳香族有機硫黄化合物であるチアンスレン(TA)はジベンゾチオフェン(DBT)脱硫細菌Gordonia sp. TM414株とRhodococcus erythropolis KA2-5-1株により分解されたが,ベンゾチオフェン脱硫細菌Rhodcoccus jostii T09株には分解されなかった。当該培養液の酸性酢酸エチル抽出液を分析したところ,TA-スルホキシド,TA-スルホン,2-phenylsulfanylphenolが検出され,DBT分解に関して報告されている4S経路と類似の分解経路であることが示唆された。チアンスレンの脱硫は,Gordonia属細菌に類縁のRhodococcus 属細菌を用いても可能であることが知られた。
著者
若島 孔文 松井 博史
出版者
立正大学心理学研究所
雑誌
立正大学心理学研究所紀要 (ISSN:13482777)
巻号頁・発行日
no.1, pp.43-67, 2003-03-20

本研究では、若島・佐藤・長谷川(2000) による情報回帰速度モデルのシミュレーションを行った。具体的には集団の中のある個人と、その他の集団成員全体との間の行動パターン得点の増減を計算している。ここではある個人が他の集団成員全体の異なった行動パターンを取ることにより、その個人の行動パターン得点は集団成員全体の行動パターン得点に行動パターン変容係数λを乗じた値が減じられると仮定した。同様に集団も行動パターン得点を減らすが、情報回帰速度モデルの提案に従い、減少は遅延される。この計算は社会心理学における少数派/集団影響の研究に類似した状況を扱っているが、よりマクロなダイナミクスを明らかにしようとするものである。最後に心理療法家、特に家族療法家がある個人に課題を課す際に、そこからシステム全体の変容を見込むことができる条件についての提案が示された。
著者
松井 実 小野 健太 渡邉 誠
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.3_1-3_10, 2016-09-30 (Released:2016-12-21)
参考文献数
42

進化理論の適用範囲は生物にとどまらない.本稿は文化進化の議論を基盤に,設計の進化について論じる.設計は2つに大別される.一方は理念で,機能に関するアイディアや情報である.他方は設計理念に基づいて開発された製品などである.本稿は,前者の設計理念は進化するが,後者の人工物は進化の主体ではないことを示す.設計理念とその発露としての人工物の関係は,生物学における遺伝子型と表現型の関係に似ている.表現型とは,腕や目,行動などをさし,遺伝子型はその原因となる遺伝子の構成をさす.表現型は,生物の製作するものをさすことがある.たとえば鳥の巣やビーバーが製作するダムなどで,「延長された表現型」とよばれる.人工物は設計の表現型ではあるが,人間の延長された表現型ではない.人工物は文化的遺伝子の発露であって,人間の遺伝子の発露ではない.もしそうであれば,人工物の良し悪しによってその製作者の遺伝子が繁栄するか否かが影響されなければならないからだ.進化理論は,とらえがたい複雑な現象である設計を理解するには非常に有用である.
著者
人見 泰正 鈴木 尚紀 辻 義弘 松井 博志 小西 昂博 高田 博弥 延命寺 俊哉 佐藤 暢
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.393-399, 2020 (Released:2020-08-01)
参考文献数
22
被引用文献数
2

【目的】上腕動脈から狭窄病変へ至るまでの血管ルートに逃げ道となる分枝血管がある場合とない場合で, FV, RIの病変検出能力にどの程度の数値的差異があるのかを調べた. 【対象・方法】対象は, 399名の維持血液透析患者とした. 対象をNormal群, 狭窄病変を有するStenosis群, 狭窄病変を有し病変手前に分枝血管を有するStenosis+分枝群に分類し, 各群間の背景因子とFV, RIの平均値を比較するとともに, 病変検出をアウトカムにROC曲線を描いた. 【結果・考察】Stenosis+分枝群の割合は, 病変を有する症例の39.0%を占めた. Stenosis群は狭窄病変検出に対するFVの信頼度がhigh accuracyであったが, Stenosis+分枝群ではlow accuracyであった. RIはともにmoderate accuracyであった. 本検討結果はエコーを用いた内シャント評価時に加味すべきである.
著者
李 素妍 松井 敏也 奥山 誠義 吉川 英樹 伊勢 孝太郎 稲田 健一
出版者
一般社団法人 粉体粉末冶金協会
雑誌
粉体および粉末冶金 (ISSN:05328799)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.725-730, 2016-07-15 (Released:2016-07-29)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

The purpose of this study was to identify the morphological characteristics and chemical properties of pipe-shaped iron oxide particles depending on the manufacturing method and provide information on possible manufacturing methods and locality survey of the excavated iron oxides. We collected samples around the Toratsuka Tomb and performed firing, followed by optical microscopy, scanning electron microscopy, X-ray fluorescence analyses, and X-ray diffraction analyses. Based on the results, it was demonstrated that the annealing temperature has no effect on the shape of the iron oxide samples while the particle size as well as the color and intensity ratio of iron oxide differed with the annealing temperature. We also obtained information on minor constituents of the iron oxide samples through elemental analyses and gained knowledge on determining the locality by identifying the contained elements.
著者
有賀 誠 松元 雅和 伊藤 恭彦 上原 賢司 施 光恒 田上 孝一 松井 暁
出版者
防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工学群)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2021-04-01

現代世界は、不可避的にグローバル化が進む世界である。そうした流れの中で、国民国家という枠組みでは解くことのできない環境問題等の課題が数多く出現している。このとき注目されるのは、「コスモポリタニズム」という歴史ある思想である。本研究は、「コスモポリタニズム」を、現代的な課題に応答可能なものとしてアップデートすることを目指している。
著者
松井 絵美
出版者
東京海洋大学
巻号頁・発行日
2021

東京海洋大学博士学位論文 2021年度(2021年9月) 応用環境システム学 論文博士 乙第42号
著者
伊達 修一 寺林 敏 松井 浩平 並木 隆和 藤目 幸擴
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.485-489, 2002-07-15 (Released:2008-01-31)
参考文献数
11
被引用文献数
5 6

水道水を用いて作成した培養液による水耕栽培で, しばしば発生する根部褐変の原因について調査した.サラダナの根部褐変は次亜塩素酸の形態で存在する水道水中の残留塩素とアンモニウムイオンが存在する培養液でのみ発生し, どちらか一方しか存在しない培養液では発生しなかった.また, 次亜塩素酸あるいはアンモニウムイオンどちらかを含む培養液に交互に移植しても根部褐変は発生しなかった.従って, 根部褐変は次亜塩素酸とアンモニウムイオンにより生成するクロラミンにより発生するものと考えられた.さらに培養液中の残留塩素濃度の低下は, 光条件下で鉄イオンの存在により促進された.
著者
櫻木 志津 三谷 紀之 田中 芳紀 松井 久末子 松田 万幸 篠原 健次 平田 郁雄
出版者
山口大学医学会
雑誌
山口医学 (ISSN:05131731)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2+3, pp.57-61, 2005 (Released:2006-03-29)
参考文献数
13

68歳,女性.2ヵ月前より両大腿筋肉痛,筋力低下,両肩・両膝関節痛が出現し,立ち上がり,歩行が困難になった.同時期より眼瞼下垂,上下肢の易疲労性を認めた.抗核抗体は陽性,抗アセチルコリンレセプター抗体は著明に高値,抗Jo-1抗体は陰性であった.エドロフォニウムテストにより眼瞼下垂は改善したが,上下肢の筋力は改善しなかった.一方CKは上昇し大腿筋生検では筋線維の不揃いの変性,著明なリンパ球や好中球などの炎症細胞浸潤が認められ,筋電図は低電位であり反復刺激ではwaningがみられた.これらの所見から重症筋無力症と,多発筋炎の同時期の合併と考えられた.プレドニゾロンの投与により徐々に大腿の筋力は回復し歩行可能になったが四肢の易疲労性,眼瞼下垂は残り,後に塩化アンベノニウムを併用することで,これらの症状は改善した.
著者
張 瑞軍 鹿島 勇治 松井 三明 岡部 とし子 土井 陸雄
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.492-499, 2001-07-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
26

Total mercury in the muscles of three fish species was analyzed in fish caught in Tokyo Bay and the surrounding sea areas, Sagami Bay and Choshi. Tokyo Bay is a semi-closed sea area surrounded by Tokyo, Kanagawa and Chiba prefectures. Sagami Bay and Choshi are open to the Pacific Ocean. A total of 412 fish consisting of northern whiting (Sillago japonica), flatfish (Limanda yokohamae) and sardine (Sardinops melanosticta) were caught in these areas over a 6 months period from November 1998 to April 1999.Total mercury concentration ranged from 0.008-0.092μg/g (wet wt.) in northern whiting, 0.006-0.065μg/g in flatfish and 0.001-0.045μg/g in sardine. All concentrations were below the restriction limit of fish mercury in Japan, 0.4μg/g of total mercury concentration. A significant correlation was found between mercury concentrations and body length or body weight in northern whiting and flatfish, irrespective of the sea area. A correlation was also found between mercury concentration in fish and their feeding habits: among the 3 species caught in the same area, crustacean feeding northern whiting had the highest, polychaete feeding flatfish moderate, and plankton feeding sardine had the lowest mercury concentration.In a comparison of mercury concentration in the same species caught in different sea areas, a higher concentration was noted in fish caught in the semi-closed sea area of Tokyo Bay, than in fish caught in the open sea areas of Sagami Bay and Choshi. This difference was most marked in fish caught at the bottom of Tokyo Bay and we considered that the mercury concentration of seawater and sediment in these areas was the cause of mercury accumulation in fish. These findings suggest that improved water quality control and environmental monitoring is necessary in semi-closed sea areas such as Tokyo Bay.
著者
岩井 優祈 松井 圭介
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO (ISSN:18808107)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.68-81, 2022 (Released:2022-04-26)
参考文献数
41
被引用文献数
5

本稿は茨城県鹿嶋市における中心商業地を事例に,店主の経営をめぐる意識を明らかにしたものである.鹿島神宮に隣接する中心商業地では,地元客に加えて観光客の来訪がみられる.そのため本研究では,店主が重視する客層に着目しながら,彼らの経営をめぐる意識を分析した.その結果,店主の大半は依然として地元客を重視しており,その主たる背景には店主の高齢化および人手不足が関係していたことが判明した.一方で観光客対応に積極的な店主は,年齢が比較的若く,大型店の郊外進出に伴う中心商業地の衰退への危機感を抱いていた.観光客の往来が多い通りに店舗が立地することも,観光客対応を促進させる一因であった.一方,創業当時から地元の常連客を重視する店舗では,観光客の来訪は必ずしも望まれていなかった.商店会長らの経営をめぐる意識も踏まえると,鹿嶋市中心商業地では観光客よりも地元客に向けた経営が今後より一層優勢になると予想される.
著者
松井 豊 菅原 明彦 石井 健介
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.252-253, 2022 (Released:2022-03-01)
参考文献数
7

2021年3月、ケトチフェンフマル酸塩を含有したソフトコンタクトレンズが世界で初めて承認された。海外におけるプラセボレンズを対照とした無作為化二重盲検試験において、対照群に対する眼そう痒感スコアの差は-1.05(p<0.001)であり、一定の有効性が認められたこと等から承認は可と判断した。本品は、医師の指示に基づき、アレルギー性結膜炎を有するソフトコンタクトレンズ装用者のみが適応対象であり、適正使用のための留意事項等がある。
著者
寺川 眞理 松井 淳 濱田 知宏 野間 直彦 湯本 貴和
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.161-167, 2008-11-30 (Released:2018-02-09)
参考文献数
27
被引用文献数
3

大型果実食動物が絶滅した「空洞化した森林」では種子散布者が喪失し、植物の種子散布機能の低下が生じていると危惧されている。本研究では、ニホンザルが絶滅した種子島に着目し、サルの主要餌資源のヤマモモを対象に、種子の散布量が減少しているかを調べた。種子島と近隣のニホンザルが生息する屋久島にて、ヤマモモの結実木を直接観察し、散布動物の種構成と訪問頻度、採食果実数を求めた。屋久島で73時間46分、種子島で63時間44分の観察を行い、調査地の周辺では果実食動物がどちらの島でも10種ずつ確認されたが、ヤマモモに訪れたのは、主にニホンザル(屋久島のみ)とヒヨドリ(屋久島と種子島)に限られていた。ニホンザルは、ヒヨドリに比べて滞在時間が長く、採食速度も速いため、1訪問あたりの採食果実数は20倍以上の差があった。この結果は、ニホンザル1個体が採食したヤマモモの果実量をヒヨドリが採食するには20羽以上の個体が必要であることを意味する。しかしながら、本研究では、屋久島と種子島のヒヨドリのヤマモモへの訪問個体数は同程度であった。ヤマモモ1個体あたりの1日の平均果実消失量は、屋久島ではニホンザルにより893.0個、ヒヨドリにより25.1個の合計918.1個、種子島ではヒヨドリのみで24.0個であり、サルが絶滅した種子島では、ヤマモモの果実が母樹から持ち去られる量が極めて少ないことが示された。本研究の結果は、ニホンザルが絶滅した場合にヒヨドリがその効果を補うことはできない可能性を示しており、温帯においても空洞化した森林での種子散布者喪失の影響を評価していくことは森林生態系保全を考える上で今後の重要な課題であると考えられる。