著者
飯室 正樹 中村 志郎 樋田 信幸 福永 健 松本 譽之
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.1021-1025, 2008 (Released:2008-11-05)
参考文献数
15
被引用文献数
5 1

大腸憩室症は食生活の欧米化,人口の高齢化にともない近年本邦でも増加傾向にある.また,重篤な合併症もしばしば経験されるようになってきている.以前は,急性虫垂炎との鑑別が困難な場合があったが,近年では,解像度の高いCT検査や超音波検査が普及し,多くの不要な緊急手術が回避可能となった.急性憩室炎に対する内科的治療は外来,入院とも抗生剤を中心としたものとなる.炎症所見はないが腹部症状を有する症例に対しても定期的な経口難吸収性抗生剤投与や食物繊維が有効である事が示されている.さらに,これまで炎症性腸疾患に用いられてきたメサラジンの他,LactobacillusやE. coliといったプロバイオティクス製剤に急性憩室炎の再発予防効果があることが報告され,注目されている.
著者
松本,眞
雑誌
日本統計学会誌. シリーズJ
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, 2006-03

漸化式を用いて乱数のように「見える」数列を発生し,乱数として利用することを擬似乱数発生という.真乱数発生に比べて高速・低コストであるほか,初期シードと漸化式を記録すれば誰でも再現可能であるため追試を行いやすいなどのメリットがある.しかし,現在科学技術計算ライブラリなどで通常利用されている擬似乱数の多くに無視できない欠陥があり,擬似乱数ユーザを混乱させている.一方で,これらの欠陥を考慮して筆者と西村拓士が97年に開発し普及が進んでいるMersenne Twister法では,周期が2^<19937>-1で623次元空間に均等に分布しているなどの数学的な保障があり,大規模な統計的検定にも合格している上,実際に数兆個単位でシミュレーションに利用されている.本稿は,ユーザに届きにくい擬似乱数開発者側の情報,すなわち漸化式・既知の欠陥・評価方法などを解説することにより両者の距離を縮め,研究成果を共有し刺激しあうことを目的とする.
著者
松本 主之 新井 正美 岩間 達 樫田 博史 工藤 孝広 小泉 浩一 佐藤 康史 関根 茂樹 田中 信治 田中屋 宏爾 田村 和朗 平田 敬治 深堀 優 江﨑 幹宏 石川 秀樹 岩間 毅夫 岡﨑 康司 斎藤 豊 松浦 成昭 武藤 倫弘 冨田 尚裕 秋山 卓士 山本 敏樹 石田 秀行 中山 佳子
出版者
一般社団法人 日本遺伝性腫瘍学会
雑誌
遺伝性腫瘍 (ISSN:24356808)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.79-92, 2020 (Released:2020-09-25)
参考文献数
52

若年性ポリポーシス症候群は全消化管に過誤腫性ポリープである若年性ポリープが多発する,希少疾患である.SMAD4あるいはBMPR1A遺伝子の生殖細胞系列バリアントが原因として報告されている.約75%は常染色体優性遺伝形式を示すが,約25%は家族歴のない孤発例である.また,がん遺伝子パネル検査によって診断される可能性がある. ポリープの発生部位により全消化管型,大腸限局型,胃限局型に分けられ,胃限局型ではSMAD4の病的バリアントを原因とすることが多く,胃癌のリスクが高い.また,SMAD4の病的バリアントを有する症例では,遺伝性出血性毛細血管拡張症を高率に合併し,心大血管病変の定期検査も考慮する. 本診療ガイドラインでは,小児から成人にかけてシームレスに,正確な診断と適切な治療・サーベイランスが行われるよう, 基本的事項を解説し,3個のクリニカルクエスチョンと推奨を作成した.
著者
綱島 愛 山岡 利佳 小川 久惠 松本 仲子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.128, 2003 (Released:2004-05-25)

【目的】調理学の教科書には、煮物をする際に使用調味料は分子量の大きさの違いから、サ行の順に入れると良いと書かれていることが多い。しかし家庭調理での実態や、一般に販売されている料理本においては、必ずしも順を追って加えず、一度に加える場合がみられ、この方が初心者には失敗が少なく、楽に調理できると思われる。そこで、調味料を加える順序が、煮物の仕上がりのおいしさにどのような影響を与えるか、検討した。【方法】調味料を加える方法として(1)だしとすべての調味料をはじめに合わせ、沸騰させたところに材料を加える。(2)だしと材料を5分加熱したところに調味料を一度に加える。(3)だしと材料を5分加熱した後調味料を砂糖、塩、醤油、みりんの順に加える、の三方法を、でんぷん質の多い里芋、じゃがいも、かぼちゃ、根菜類の大根、人参、ごぼう、蓮根の7種の野菜を用いて煮物をし、調味料の加え方が仕上がりに及ぼす影響を検討した。実験に際して、調味料の濃度(煮あがりの煮汁の量)、加熱時間、材料の平均化には特に配慮した。検討方法は、官能評価による受容度を中心に、試料への塩分の浸透状態およびテクスチャ-(クリープメーターによる)を測定し比較した。【結果】でんぷん質の多い野菜、根菜類のいずれにおいても(1)、(2)、(3)の調味料を加える順序の違いにおいて、官能評価結果は、総合評価では差がみられなかったが、蓮根、じゃがいもを除く他の試料の味のバランスで、(3)の評価が低かった。塩分の浸透状態については、(3)の方法で試料の内外に差がみられた。
著者
太田 瑶子 進藤 裕之 松本 裕治
雑誌
研究報告自然言語処理(NL) (ISSN:21888779)
巻号頁・発行日
vol.2018-NL-235, no.1, pp.1-8, 2018-05-06

文学の一つとして詩がある.詩は言葉の表面的な意味だけでなく,言葉が持つ美学的 ・ 喚起的な性質を用いて表現される.詩は短い文字列であっても,詩として表現する事で,言葉の持つ奥深さによってその場の雰囲気を封じ込めることが出来る.しかし,実際にいざ詩を作ろうとすると,どのように始めれば良いのか難しい.そのような場合であっても,手軽に詩を作れるようにしたいと考えた.本研究では,詩の中でも有季定型俳句を選び,言葉を入力することにより俳句の自動生成を行った.本研究ではより柔軟な表現が生成できるように,深層学習を使った.また,韻律や季語のような有季定型俳句の規定を素性や制限として用いた.俳句としての体をなすような生成結果が得られた.
著者
田久保 早紀 川﨑 康平 長渡 努 松本 正信 景山 貴洋
出版者
公益社団法人 日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術学会雑誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.177-184, 2020 (Released:2020-02-20)
参考文献数
15
被引用文献数
1 7

The aims of this study were to elucidate signal pattern of cerebral aneurysm clip in brain magnetic resonance angiography (MRA) using non-contrast enhanced ultra-short echo time (UTE) sequence and to explore effective utilization of this novel technique for patients, who underwent cerebral aneurysm clipping. The clip was embedded in homemade phantom and scanned using UTE sequence. We investigated characteristic features of the artifacts derived from the clip. Besides, we compared the volume of signal loss between conventional time-of-flight (TOF) and UTE-MRA in 50 patients with the cerebral aneurysm clip. In phantom study, the clip was delineated as signal void area fully surrounded by high signal on original images. On reconstructed short-axial views for the clip, four-leaf clover pattern of artifact was observed when clip was arranged orthogonal to the static magnetic field. On the other hand, this artifact disappeared when the clip was arranged in parallel with the static magnetic field. The volume of signal loss in clinical cases was significantly reduced in UTE-MRA (P < 0.05): 1.30, 0.52–2.77 cm3 for TOF; 0.84, 0.28–1.74 cm3 for UTE (median, range). The scan time for UTE-MRA was 2 minutes and 52 seconds. To understand the characteristic feature of the artifacts from the clip could contribute to define vascular structure in image interpretation. Adding UTE-MRA to routine protocol is useful approach for follow-up imaging after cerebral aneurysm clipping with clinically acceptable prolongation of the scan time.
著者
松本 大理
出版者
日本哲学会
雑誌
哲学 (ISSN:03873358)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.55, pp.256-267,33, 2004-04-01 (Released:2009-07-23)

"Der Mensch und überhaupt jedes vernünftige Wesen existiert als Zweck an sich selbst" (GMS. 428). Mit dieser berühmten Formulierung gibt uns Immanuel Kant einen Begriff seiner Vorstellung von der würdevollen Existenz sowohl des Men-schen wie jedes vernünftigen Wesens überhaupt.Die Existenz des Menschen wie jedes vernünftigen Wesens ist gekennzeichnet durch das Verhältnis zwischen den vernünftigen Wesen, von denen eines der Mensch ist, und der Bestimmung derselben, Zweck an sich selbst zu sein. Aber Kants Erklärung, wie und warum beide Begriffe miteinander verbunden werden können, reicht nicht aus. So wurde in Folge der Kantschen Bestimmung immer wieder versucht, den Begriff des Zwecks an sich selbst aus dem Begriff der Person, (deren Begriff auf ein Wesen mit einem absoluten Wert, wie es vernünftige Wesen und Menschen sind, hinweist) abzuleiten, oder umgekehrt. Aber alle diese Versuche sind unzureichend. Denn, während der Begriff der Person die Idee des guten Willens meint, impliziert Zweck an sich selbst den Begriff des durch blo(βe Vernunft bestimmten Willens. Da also diese beiden Begriffe von Willen sich von einander unterscheiden, ist es unmöglich, beide Begriffe miteinander unmittelbar zu verbinden. DarÜuberhinaus ist die Verbindung der Person mit dem Zweck nicht analytisch, sondern "synthetisch". Beide Begriffe kÖnnen meines Erachtens erst durch die Verknüpfung mit einem dritten, d. h. dem positiven Begriff der Freiheit, miteinander verbunden werden.
著者
松本 博
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 平成21年 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
pp.1359-1362, 2009-08-18 (Released:2017-08-31)

Many researches on the effect of foliage plants on indoor air quality have been developed. The objective of this paper is to carry out quantitative investigations on the ability of foliage plants to remove chemical contaminants by experiments for the different initial concentrations of toluene and carbon dioxide. Thirteen different foliage plants, Golden Pothos, Benjamin, Rosemary and so on, cultivated in hydroponics were investigated. The experiments were carried out for each plant put in a desiccator without ventilation. As a result of the experiments, each plant showed the different performance of controlling indoor air quality.
著者
松本 知子 Tomoko MATSUMOTO
出版者
長崎国際大学
雑誌
長崎国際大学論叢 = Nagasaki International University Review (ISSN:13464094)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.63-73, 2017-03

英語のコミュニケーション能力向上のための指導法についてはこれまで多く議論されてきたが、文法指導とコミュニカティブな学習とを統合する指導法についてはあまり議論されていない。これはコミュニケーション能力が文法の基礎力なしで向上することを暗示していると捉えられるかもしれない。また、このような見方で学習をする学習者は、文法学習を機械的な暗記による活動として捉えかねない。本研究は、「情報や考えを理解し、適切に伝えるコミュニケーション能力」の向上を目的とし、効果的なコミュニカティブ文法指導法について考察する。さらに、学習者にとって文脈の理解が助けとなる映画を利用した指導法について述べる。具体的には、過去形の「コア」である距離感に焦点をあて、助動詞 will と would や wonder を使った構文と wondered や was wondering を使った構文の丁寧さの度合いを理解できる方法について言及する。最後に、過去形のコアを活用して仮定法過去の指導法についても述べる。
著者
松本 亨
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会誌 (ISSN:18835864)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.438-447, 2017-11-30 (Released:2019-06-27)
参考文献数
25

まず,国や自治体の循環型社会形成推進基本計画,さらに国から公開されているガイドラインや手引きにおいて,地域循環圏の評価がどのように扱われているか検証した。次に,地域循環圏の評価手法開発を行った研究のレビューを行い,物質の収支バランス,低炭素化,事業採算性,生態系サービスによる評価事例を紹介した。また,地域循環圏の一形態とされるエコタウンを対象とした研究では,CO2 削減効果や立地自治体の域内循環率,調達と供給の物質移動距離が採用されていること,さらに指標の経時変化の要因分析が実施されていることを示した上で,地域循環圏にかかわる個別事業の効果を中長期に評価するためには必要な視点であると指摘した。環境面以外の副次的効果に着目した評価もあり,分別への住民の参加意識,施設の住民受容性,地域福祉力等が採用されている例を示した。最後に,今後の地域循環圏の評価指標・手法のあり方として,要件とともに実行可能性の面から考察した。
著者
松本 有記雄 伯耆 匠二 中坪 あゆみ 西洞 孝広 野呂 忠勝 貴志 太樹 高見 秀輝 河村 知彦
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.233-240, 2018 (Released:2018-03-20)
参考文献数
14

アワビ類の好適な初期餌料である針型珪藻Cylindrotheca closteriumが,水温20℃,照度1500-2000 Lxで良好に増殖することを明らかにした。加えて,針型珪藻を事業規模での飼育に用いるために,大量培養法と採苗板への付着方法を検討した。本種は付着力が弱く,攪拌培養すれば大量の珪藻細胞を懸濁液として得られる。この懸濁液を採苗板を収容した水槽に添加して,懸濁液中の珪藻の一部を採苗板に付着させた後,付着した一部の珪藻細胞を増殖させることで,板上で本種を優占させることができた。
著者
下村 奈々子 黒田 圭子 松本 鉄也
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要. 第3部門, 自然科学・応用科学 (ISSN:13457209)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.57-64, 2014-02

大阪教育大学の学生32名を対象とし,心拍変動に対する精油の効果について検討を行った。精油はイランイラン,ローズマリー,ペパーミントを使用した。心拍変動は精油吸入前の前後で比較した。心拍変動の高周波(High Frequency: HF)成分,低周波(Low Frequency : LF)成分を測定し,副交感神経の指標にはHF成分,交感神経活性の指標にはLF/HFを用いた。精油の嗜好調査も行い,心拍変動に対する精油の効果におよぼす嗜好の影響も検討した。 選択した精油を好きな場合には副交感神経機能が活性化し,そうで無い場合には交感神経機能が活性化する傾向を認めた。特に,ローズマリーを好きな群ではLF/HFは有意に減少した。 ローズマリーは交感神経機能を活性化する報告が多いが,その匂いが好みの場合には精油が持つ本来の効果を越えて副交感神経機能を活性化することを示唆している。すなわち,精油自体の特徴,効能も重要であるが,さらなる副交感神経機能の活性化を得るためには各々の精油の嗜好を考慮する必要がある。
著者
斎藤 嘉 落合 勝義 松本 五十生
出版者
Japanese Society of Tea Science and Technology
雑誌
茶業研究報告 (ISSN:03666190)
巻号頁・発行日
vol.1978, no.47, pp.56-61, 1978-03-30 (Released:2009-07-31)
参考文献数
2

狭山茶の火入れによる香味の改善策として,和紙利用による火入れ機を開発したので,その使用方法について検討を加た。1) 試作した火入れ機では,毎分胴1回転×扇風機70回転(茶温97℃)と,胴3回転×扇風機70回転(茶温95℃)の火入れ処理が最も火入れ香が良好であり,茶温の推移から良い火入れ香味の発揚を促すためには,茶温で95℃前後が最も適切で,90℃以下では火入れ不足の傾向を認めた。品質の総合的な見知から,攪拌型(胴あぶり式)火入れに比べ試作機による火入れ香味が優れており,焙炉火入れに似た特徴のある香気が得られ,火入れ香の強い中にも柔らかい深みのある香気で,味は甘味を増すことが認められた。2) 試作火入れ機による火入れの目的は,上級茶に応用するため開発したもので,従来の胴あぶり式と比べ,締り度の強い茶ほど外観で色沢をそこなわずに火入れを行い,香味の発揚も容易である。また,茶が大型になるほど白ずれし,色沢を損なう傾向が認められた。おわりに,本試験遂行にあたり,火入れ機の試作については伊達機販株式会社,ならびに同社元埼玉出張所長成岡武司氏に深く感謝の意を表します。また,本試験中の火入れ香など分析および助言をいただいた農林省茶業試験場原利男室長ならびに久保田悦郎技官に深じんなる謝意を表します。