著者
清池 恵美子 西口 光一 松本 隆
出版者
日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.127-145, 1986-02

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著者
松本 剛 中村 衛 新城 竜一
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

台湾はフィリピン海プレートの運動に伴い、ルソン弧が東方より衝突することによって、現在の造山運動が引き起こされている。このような、台湾の造山運動・衝突テクトニクスを考察する上で、南西琉球弧がこれに果たす役割を検証することは重要である。そのため、台湾の衝突テクトニクスを解明するための米・台共同研究TAIGER Project(2004-2009)に参加し、2009年に実施されたR/V Marcus G. Langsethで実施された地下構造探査に加えて、EM-122測深機による精密測深データを取得した。また、これまでJAMSTEC船等で1990年以降に実施されて来た精密海底地形調査の結果を集大成し、沖縄トラフから琉球島弧・前弧域・海溝域・西フィリピン海盆北部に至る最新の海底地形図を作成し、それをもとに、当該域のテクトニクスを考察した。南西琉球弧から琉球海溝に至る海域は、次に示す東西方向の4領域に分類することが可能である。最北端の領域は、南岸沖の南落ち斜面に沿って南北方向に発達した海底谷の分布によって特徴付けられる。その南側では、スランプ性地辷り痕が発達し、平坦な前弧海盆へと続いている。更にその南側では、複雑な起伏、急斜面、東西向きのhalf grabenなどの、不規則な地形によって特徴付けられる。海溝域は、幅約40kmにも達する6500-6600mの深さの平坦面である。海溝軸の位置を特定することは難しい。海溝域の平坦面上には4個の海山が見られる。しかし、このような海溝の地形的特徴は、Gagua海嶺の衝突の起こっている123°Eの西側では不明瞭となっている。宮古~八重山域に掛けては、「島弧胴切り」型の正断層が多く発達しており、これらは活断層と認定されている。そのうち、石垣島東方沖の断層については、沖縄トラフの伸張に伴って北方に伝播している(すなわち、活断層の長さが長くなっている)ことが明らかとなった。これらの地形的特徴は、沖縄トラフ西部の伸張と呼応して、123°Eの東側で、海溝が南方のフィリピン海プレート側へ後退していることを示唆している。Gagua海嶺のある123°Eの西側の花東海盆は、その東側の西フィリピン海盆の特徴とは大きく異なる。後者が、拡大痕に相当する地塁・地溝地形とそれを直角に横切る断裂帯が多く発達するのに対して、前者は地形の起伏に乏しい。また、花東海盆の沈み込みが起こっているか否かは明瞭ではない。花東海盆の西端に当たるルソン弧と併せて、同海盆が前弧・背弧域と一体化し、これらの3海域全体が台湾ブロックに衝突している可能性が示唆される。花東海盆の北側前弧域では、明瞭な深発地震面が観察される。しかし、これはユーラシアプレートに対して北西方向に西フィリピン海盆が斜め沈み込みを起こしていることによる深発地震面であると見られる。
著者
松本 義明
出版者
早稲田大学人間科学学術院
雑誌
人間科学研究 (ISSN:18800270)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.92-92, 2012-03-26
著者
加藤 内蔵進 松本 淳 岩崎 博之
出版者
社団法人日本気象学会
雑誌
Journal of the Meteorological Society of Japan. Ser. II (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.73, no.6, pp.1219-1234, 1995-12-25
参考文献数
34
被引用文献数
7

中国東部の大陸上のCb群(直径100m以上の積乱雲群)の出現状況、及びその日変化に関連した地表面温度や総観場の特徴について、1979年6〜8月のデータに基づく解析を行った。大陸上の梅雨前線帯の位置や特徴の季節遷移に準拠して、"Pre-Meiyu"(6月1〜17日、梅雨前線の華中への北上前)、"Meiyu"(6月20日〜7月22日、華中の梅雨最盛期)、"Mid-summer"(7月23日〜8月17日、華中の盛夏期)の3つの期間について調べた。主な結果は次の通りである。(1)"Meiyu"期の華中では昼夜を問わずCb群が多数出現したが、"Meiyu"期に梅雨前線帯北方に位置する華北・中国東北区(Area N1)や盛夏期の華中(Area C2)でも、12 UTC(北京標準時で20時)頃ピークとなる顕著な日変化を伴って、Cb群が多数出現した。(2)梅雨前線帯と寒帯前線帯にはさまれる"Meiyu"期の Area N1では、動きの遅い上層トラフに対応する大規模システムの雲域に組み込まれる形で、日変化するCb群が出現しやすかった。この時期にはまだ梅雨前線帯の北側にある本地域でも、梅雨前線帯が華南から華中へと北上した6月20日頃を境に、下層の比湿が増加した。この比湿の増大は湿潤対流に対する安定度の悪化をもたらし、上層トラフ接近、日中の地面加熱と組合わさって、日変化するCb群の頻出に好都合な気候学的条件を作ったものと考えられる。(3)盛夏期("Mid-summer")の華中(Area C2)では、亜熱帯高気圧に覆われ、かつマクロスケールでの領域平均の下層発散が夕方に強い傾向にも関わらず、Cb群出現頻度が夕方にピークをもつ日変化を示した。本地域で特に高い日中の地表面温度による加熱は、強い対流不安定を顕在化させるトリガーとしてのメソスケールでの上昇流を与える可能性があり、今後の検証が必要である。
著者
柳原 一広 西村 貴文 松本 繁巳 北野 俊行 福島 雅典 石黒 洋 金井 雅史 三沢 あき子 安田 浩康 平出 敦
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

医学部学生が、各がん腫の標準療法の確認と最新治療の情報を信頼おけるがん情報・医療情報サイトより検索・取得し、有害事象の程度判定基準であるCTC-AE、効果判定基準であるRECIST等のがん診療の基本となる知識を体得し、TAPSによる文献的考察能力が研鑽できるように、臨床腫瘍学の教本化を進めることで、医学部教育における、従来の縦割りの診療科別、臓器別ではない、新たな教育システムの礎となった
著者
藤林 真美 梅田 陽子 松本 珠希 森谷 敏夫
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.336-344, 2011-04-01
参考文献数
32

多様化した現代社会の中で,ストレスを抱える人口が激増している.ストレスも長期にわたると精神障害の発症を招く可能性が指摘されており,心の健康の維持・増進は重要課題である.本研究では,一般社会人20名を対象として予防的観点から運動トレーニングを4週間介入,介入前後に安静時心電図を測定し心拍変動パワースペクトル法を用いて自律神経活動を分離・定量化し,さらに質問紙法(Center for Epidemiologic Studies Depression:CES-D)を用いて抑うつ傾向を評価した.運動トレーニングの介入により,Δ心拍数とΔCES-D,および副交感神経活動を反映するΔHFとΔCES-Dに有意な強い相関を認めた.これまで運動トレーニングが身体および心理的な改善作用を有することは数多く報告されているが,本研究より,身体と心の改善は独立した変動ではなく心身相互作用である可能性が示唆された.
著者
松本 珠希 後山 尚久 木村 哲也 林 達也 森谷 敏夫
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.1011-1024, 2008-12-01
参考文献数
50
被引用文献数
3

月経前症候群(premenstrual syndrome; PMS)は,身体・精神症状から社会・行動上の変化に至るまで広範囲にわたる症状が,黄体期後半に繰り返し出現し,月経開始後数日以内に軽快するという特徴をもつ.種類や程度,継続する期間を問わなければ,性成熟期女性の大半が何らかのPMS症状を自覚しているといわれているが,その成因はいまだ明らかにされていない.本研究では,PMS症状のレベルが異なる女性を対象に,"体内環境の恒常性維持に寄与し,心の状態にも影響を及ぼす"とされる自律神経活動の観点から月経前の心身不調の発症機序について探求することを試みた.正常月経周期を有する20〜40代の女性62名を対象とした.実験は卵胞期と黄体後期に各1回行った.月経周期は,月経開始日,基礎体温および早朝第一尿中の卵巣ホルモン・クレアチニン補正値を基準に決定した.自律神経活動は,心拍変動パワースペクトル解析により評価した.月経周期に伴う身体的・精神的不定愁訴および行動変化は,Menstrual Distress Questionnaire (MDQ)により判定した.MDQスコアの増加率に応じて,被験者をControl群,PMS群,premenstrual dysphoric disorder (PMDD)群の3群に分け,卵胞期から黄体後期への不快症状増加率と自律神経活動動態との関連を詳細に検討した.PMS症状がないあるいは軽度のControl群では,自律神経活動が月経周期に応じて変化しないことが認められた.一方,PMS群では,卵胞期と比較し,黄体後期の総自律神経活動指標(Total power)と副交感神経活動指標(High-frequency成分)が有意に低下していた.PMDD群では,黄体後期の不快症状がPMS群よりもいっそう強く,自律神経活動に関しては,他の2群と比較すると卵胞期・黄体後期の両期において心拍変動が減衰,併せて,すべての周波数領域のパワー値が顕著に低下していた.PMSは,生物学的要因と・心理社会的要因が混在する多因子性症状群であり,その病態像を説明するさまざまな仮説が提唱されてはいるが,統一した見解が得られていないのが現状である.本研究からPMSの全貌を明らかにすることはできないが,得られた知見を考慮すると,黄体後期特有の複雑多岐な心身不快症状の発現に自律神経活動動態が関与することが明らかとなった.また,PMDDのようなPMSの重症例では,月経周期に関係なく総自律神経活動が著しく低下しており,黄体後期にいっそう強い心身不調を経験するとともに,月経発来後も症状が持続するのではないかと推察された.
著者
松本 克彦
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.196-203, 1968
被引用文献数
1

前報に続き, コナダニ類のヒポプスの成因を検討した.すでに繁殖しているコウノホシカダニLardoglyphus konoiの集団を種々の湿度環境におき, ダニ数および年齢構造の変動を観察した.コウノホシカダニを煮干し6 : 乾燥酵母剤4の割合で混じた飼料で, 温度25℃, 湿度76% R. H. (NaCl飽和溶液にて調整)において, あらかじめ4週間飼育した.繁殖ダニ数は飼料0.5g当り平均256匹であつた.この飼料を10gずつ小コツプに取り, これを, K_2SO_4 (98% R. H.), KNO_3 (94% R. H.), KCl (87% R. H.), Na_2SO_4 (82% R. H.), NaCl (76% R. H.), NaNO_2 (66% R. H.), NaHSO_4・H_2O (52% R. H.)の各飽和溶液を入れたデシケーターにそれぞれ置いた.温度は25℃と一定にした.1)飼料内ダニ数への各湿度の影響は, 実験開始2日目から現われた.低湿度66%, 52% R. H.ではダニ数は減少した.最高ダニ数を示した湿度は82% R. H.であり, 7日目で912匹となつた.87% R. H.以上の高湿度では最高ダニ数に達する時期が, 他の湿度に比べて遅くなつたが, 増殖率は相当良好であつた.2)飼料内から外部へ移動する這い出し現象は低湿度においては実験開始時から盛んに行なわれた.94% R. H.以上の湿度における這い出し現象は, 他の湿度に比べ1日遅れて2日目から始まつた.各湿度における這い出し現象の最盛期は, 飼料内のダニ数が減少期に入つてからであつた.飼料内のダニ数に対する這い出しダニ数の比, すなわち這い出し比は最適繁殖湿度82% R. H.および94%, 98% R. H.では小さく, 低湿度では大きな値を示した.這い出し数の最高は87% R. H.の湿度で示された.3)湿度76% R. H.以上の飼料内ダニの年齢構造に対する湿度差の影響は14日以内には見られず, 17日以後になると, 高湿度では成虫の比率が高くなつた. 66% R. H.以下の低湿度では2日目以後から成虫が少なく, 前若虫の占める率が大きくなつた.ヒポプスは各湿度ともほぼ10日前後に現われた.ヒポプスの出現比率は最適繁殖湿度82% R. H.をはさんだ87, 76% R. H.に極大値を示した.4)這い出しダニの年齢構成は各湿度とも初期ではほとんど成虫で占められていたが, 這い出しダニ数の増加とともに, 若い時期のダニ数が多くなつた.ヒポプスの出現時期は湿度98% R. H.ではやや遅れるが, その他の湿度ではほぼ同じ8日前後であつた.ヒポプス出現率が10%以上の大きい値を示す時期は湿度が高くなるにつれて遅くなつた.出現率の大きさは飼料内のヒポプスと同じく, 76%および87% R. H.の所で極大を示した.
著者
松本義亮 著
出版者
天祥館
巻号頁・発行日
vol.巻4, 1906
著者
松本義亮 著
出版者
天祥館
巻号頁・発行日
vol.巻3, 1906
著者
西田 利貞 中村 美知夫 松阪 崇久 松本 晶子 座馬 耕一郎 松本 晶子 座馬 耕一郎 島田 将喜 稲葉 あぐみ 井上 英治 松本 卓也
出版者
財団法人日本モンキーセンター
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

採食、道具使用、毛づくろい、遊び、求愛誇示、威嚇誇示のいずれの分野でも文化的行動パターンが見られ、その発達過程の概要を明らかにすることができた。社会的学習のプロセスとして検討した「対角毛づくろい」は形式自体は母親によって「モールディング」で伝達される可能性が高いが、細かいパターンは試行錯誤で決まるようである。記録された40以上の新奇行動のうち、いくつかは「流行」と呼べる程度まで頻繁に観察されるにいたったが、文化として固定される確率は低いことがわかった。
著者
高橋 知史 四方 順司 松本 勉
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SST, スペクトル拡散 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.746, pp.87-92, 2003-03-20

物理的攻撃に対して耐性のある署名方式として, Forward-Secure署名方式やKey-Insulated署名方式などが提案されている.Forward-Secure署名方式は,署名対象期間を複数の期間に分割し,署名生成鍵を期間毎に使い分けることにより,署名生成鍵を盗まれた期間以前の鍵で作られた署名の安全性を守る署名方式である.またKey-Insulated署名方式は,安全なICカード等のデバイスの中に"マスターキー"と呼ばれる鍵更新のための鍵を格納し,署名生成鍵を更新していく署名方式であり,署名生成鍵が盗まれた期間だけで被害が収まるといった利点がある.本稿において提案する署名方式は,Forward-Secure署名方式を基にして構成されており,必ずしも安全なデバイスを仮定することがなくとも"過去の期間に作成した署名"を用いて鍵更新を行うことでKey-Insulated署名方式と同等の性質を実現している.また,過去に作成した署名は偽造署名発見時の証拠としても利用できるといった利点も挙げられる.
著者
松本 茂
出版者
関西大学
雑誌
關西大學經済論集 (ISSN:04497554)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.27-43, 2003-06-15

本論文の目的は、家電リサイクル法の不法投棄データを用いてコミュニティーの自主施行力を評価することである。この目的のために、論文では、以下の3つの分析を行った。第1に、不法投棄水準の地域差を産み出す要因をCount Data Model によって検証した。第2に、再びCount Data Model を利用し、社会資本が不法投棄水準に及ぼす影響について考察した。以上2つの分析の結果、失業率が低く、外国人の居住割合が低く、持ち家比率が高く、帰属意識が高い自治体ほど、不法投棄の水準が低いことが示された。第3の分析として、家電リサイクル法の施行前後の不法投棄水準をProbit Model によって比較し、家電リサイクル法の効果について検証した。分析の結果、持ち家比率が低く、選挙の投票率が低い自治体では家電リサイクル法施行前から不法投棄の水準が高かったが、法施行後その状況が更に悪化しでいることが示された。
著者
原田 誠也 古川 真斗 徳岡 英亮 松本 一俊 八尋 俊輔 宮坂 次郎 斉藤 守弘 鎌田 洋一 渡辺 麻衣子 入倉 大祐 松本 博 小西 良子
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.198-203, 2013-06-25 (Released:2013-07-18)
参考文献数
9
被引用文献数
3 16

熊本県では,馬刺しを共通食とする原因不明の一過性嘔吐下痢症事例が最近3年間で毎年27件以上発生していた.同事例の原因はSarcocystis fayeri住肉胞子虫で,本研究では一定時間の冷凍処理で住肉胞子虫のシストがペプシンにより消化されその毒性を失うことを見いだした.同胞子虫シストを含んだ馬肉を-20℃で48時間以上冷凍したところ,シスト由来の毒性タンパク質の消失も確認された.本研究で確立した冷凍条件を用いての冷凍処理の普及により,平成23年10月以降,馬刺しが原因と考えられる食中毒の発生報告はなく,この冷凍処理基準が,馬刺しによる食中毒防止対策として有効であることが示唆された.
著者
西秋 良宏 門脇 誠二 加藤 博文 佐野 勝宏 小野 昭 大沼 克彦 松本 直子
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-04-01

主として二つの成果があった。一つは、最新の考古学的知見を収集・整理して新人がアフリカを出てユーラシアに拡散した年代や経緯、そしてネアンデルタール人と置き換わっていった過程をできるかぎり詳細に跡づけたことである。もう一つの成果は、脳機能の違いに基づく学習能力差が両者の交替劇につながったのではないかという「学習仮説」を考古学的観点から検証したことである。従来、強調されてきた生得的な能力差だけでなく、歴史的に形成された社会環境の違いが、学習行動ひいては適応能力に大きく作用していた可能性を指摘した。
著者
米持 真一 梅沢 夏実 松本 利恵
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.129-142, 2007-03-10
被引用文献数
5

首都圏郊外に位置する,埼玉県北部の騎西町において,2000年から5年以上にわたり,PM2.5の質量濃度および主要成分濃度の連続観測を行った。PM_<2.5>の捕集にはPM_<2.5>、サンプラー(R&P社,PartisolPlus2025)を用い,一週間単位の質量濃度および主要化学組成の分析を行った。 PM_<2.5>濃度には明瞭な減少傾向は見られなかった。微小粒子の主成分である,水溶性無機イオンと炭素成分について分析を行い,その推移を評価した。水溶性無機イオンの90%は,塩化物イオン(Cl^-),硝酸イオン(NO_3^-)および硫酸イオン(SO_4^<2->)と,これらを中和するアンモニウムイオン(NH_4^+)で構成されていた。陰イオン3成分濃度は特徴的な季節変動が見られた。Cl^-と炭素成分(TC),特に,元素状炭素(Cel)には明瞭な減少傾向が見られた。また,NO_3^-にも緩やかな減少傾向が見られた。一方,SO_4^<2->には減少傾向は見られず,2004,2005年は,冬期を除く季節で増加していた。並行して稼働させたTEOMの観測値とPM_<2.5>サンプラーによるフィルター捕集との比較では,年平均値では概ね同程度の値であったが,TEOM内部での半揮発性成分の揮散量と,外気温に依存するPM_<2.5>サンプラーのフィルター上からの揮散量の大小関係により,両測定値の差には特徴的な季節変動が見られた。