著者
松林 弘智
出版者
社団法人 物理探査学会
雑誌
物理探査 (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.283-295, 2007 (Released:2010-06-25)
参考文献数
21
被引用文献数
1

時系列解析に用いられる一般的なウェーブレット変換は,変換結果を定量的に解釈するには不適当な性質を含んでいる。例えば連続ウェーブレットでは,ごく短い時間幅の波形データがその前後の変換結果に繰り返し反映される。また離散ウェーブレットでは,同じ時系列データであっても変換の開始サンプルが異なるだけで,変換結果が大きく変化する。 マッチング追跡法(Mallat, 1993)やその拡張である高速マッチング追跡法(戸田, 2001)はこれらの欠点を解決した変換方法であった。しかしこの手法にも欠点がある。マッチング追跡法では,計算資源への負荷と周波数領域での変換結果の偏りの問題が,また高速マッチング追跡法では,変換する波群の処理順の決定方法や,使用するウェーブレットとデータの波形形状との相違による変換結果への影響という問題が存在する。 本研究ではメイエ(Meyer)ウェーブレットの定義より複素メイエウェーブレットを開発した。このウェーブレットにより周波数領域での偏りと,使用するウェーブレットとデータの波形形状との相違の問題に対処した。さらにこのウェーブレット関数と新たに考案したアルゴリズムより,複素メイエマッチング追跡法を開発した。処理順や計算資源の問題に対処したのみならず,波形形状を数値化するパラメータである位相を出力することが可能となった。例えば時期をずらして同じ観測点で同種の地震波について位相を比較した場合,震源の時間変化を反映する情報となる。 本研究では,阿蘇火山南方の防災科学技術研究所広帯域地震観測網の砥用観測点での波形データへ複素メイエマッチング追跡法を適用することで,阿蘇火山の地下活動に伴う超長周期地震波(Kaneshima et al., 1996)が記録されていることを明らかにした。また,期間ごとの波形形状情報である位相の比較を行い,期間によって地震波の震源の状態の変化していることを示唆する結果をえた。
著者
小林 弘祐
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.6, pp.1590-1598, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
16

ALI/ARDSの予後は改善してきており,その主因は肺保護的換気モードの周知による.現在,死因は呼吸不全ではなく,多臓器不全がほとんどである.ICU重症患者の予後予測法で普及しているのは,米国ではAPACHE IVであるが,本邦ではSOFAとAPACHE IIである.現在,ヨーロッパを中心にSAPS 3を用いた研究が進行中である.生物学的マーカーは複合した方が予後予測精度はよく,単独ではIL-8とSP-Dが比較的有用である.重症度スコアリングはベンチマークを通して医療の質向上に役立つ.
著者
横山 卓志 楠田 哲士 曽根 啓子 森部 絢嗣 高橋 秀明 橋川 央 小林 弘志 織田 銑一
出版者
The Mammal Society of Japan
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.207-214, 2012-12-30
参考文献数
12

飼育下キンシコウ(<i>Rhinopithecus roxellana</i>)の新生仔における行動発達を明らかにすることを目的とし,名古屋市東山動物園で2009年4月に生まれた雌の新生仔において,8ヶ月齢までの成長に伴って観察された行動の経日変化を記録した.また,それらの結果を,中国の国立陝西周至自然保護区の半野生集団および他の飼育下個体における報告と比較した.東山動物園の新生仔は,出生後約1ヶ月間は母親に依存していたが,1ヶ月齢から周辺環境や姉に興味を示し,積極的に接近や探索の行動を開始した.2~3ヶ月齢では姉と2頭で過ごしたりグルーミングに似た行動をしたりするなど社会行動が観察された.生後60日目以降,積極的に姉に近づくようになり,姉の存在がその後の新生仔の行動発達に影響を与えたと考えられた.自然保護区と比べ,木の登り降りや餌に興味を示す行動の発現が著しく早く,また5ヶ月齢以降,腹部接着や支持,近接,接近,離反およびグルーミング受容の行動スコアがほぼ一定となったことから,5ヶ月齢が行動発達の1つの区切りであったと考えられた.東山動物園におけるキンシコウ新生仔の行動発達過程は,群れの数や環境が大きく異なる中国の自然保護区の結果と一致していた.しかし,一部の行動の開始時期には大きな差が認められ,木の登り降りや餌への興味といった行動の発達は,成育環境に影響を受けているとも考えられた.<br>
著者
本多 ゆみえ 李 慶湖 小林 弘幸
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.10, pp.847-856, 2013

【はじめに】近年,医療界全体にわたり,医事紛争件数が増加している。これは救急領域においても同様であり,この領域での医師不足の誘因になっている可能性がある。しかし,救急領域の医療訴訟を詳しくみると,ある特定の疾患やその処置内容などいくつかの特徴があることがわかってきた。そこで今回,その点を検証するために救急領域の裁判例の実態を検討し分析した。【方法と症例】救急領域に関する裁判例を抽出するためTKC法律情報データベース,第一法規株式会社の法律情報総合データベース「D1-Law.com」を利用し,キーワード検索条件として「医療訴訟」または「医療過誤」を充足し,かつ,「救急外来」あるいは「救急センター」をも充足する裁判例を1965年から2011年まで検索した。そのなかで純粋に医師が当事者となり急性期の医療行為が対象となっている裁判例は50例であった。以下,疾患・年齢・性別・争点・転帰・認容率・認容額,原告側の過失主張と裁判所の判断につき検討した。【結果】全50例の内訳は,男性40例(80%),女性10例(20%),平均年齢46歳(4歳から84歳)で15歳以下の小児は6例(12%)であった。疾患は,外傷が11例で最も多く全例死亡。続いて,イレウス7例(死亡6例と後遺症1例),急性喉頭蓋炎6例(死亡3例と重度脳機能障害3例),くも膜下出血4例(死亡3例と重度脳機能障害1例),急性心筋梗塞3例(全例死亡),急性大動脈解離3例(全例死亡)であった。また賠償が命じられるパーセンテージ(認容率)は76%であり,その額(認容額)は,棄却12例を除くと平均3911万円で,1億円以上も4件あった。【結語】救急領域で訴訟になりやすい疾患は,外傷,くも膜下出血,急性大動脈解離,急性喉頭蓋炎,イレウスで,いずれも誤診が最大の問題である。
著者
李澤 康雄 會田 秀子 雪下 岳彦 湯本 優 李 慶湖 杉田 塩 小林 弘幸
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.243-250, 2011-06-30 (Released:2014-11-11)
参考文献数
18

目的: 点滴注射の際に溶解液として高頻度に用いられる生理食塩液のうち, 両頭針付き生理食塩液の有用性について, 2ポート型ハーフキット生理食塩液と1ポート型ハーフキット生理食塩液の2種類の生理食塩液を対象に, 利便性アンケート調査および無菌操作試験を用いて比較検討した. 方法: 利便性アンケート調査では, 日常業務として点滴注射の調製作業を行っている看護師50名 (経験年数1-20年, 平均経験年数4年9ヵ月) を対象として質問用紙調査を実施した. 解析にはWilcoxonの符号付順位和検定を行った. 無菌性試験では看護師20名 (経験年数1-12, 平均経験年数3年6ヵ月) 実際に点滴調製作業を実施し, その際に作成された点滴溶解液や作業環境の培養検査を実施した. 結果: 利便性アンケート調査では14の調査項目のうち, 「溶解作業時の薬剤の確認のしやすさ」, 「無菌操作に対する注意度」, 「細菌汚染の可能性」, 「緊急使用時の迅速な対応」, 「業務時間短縮の実感」, 「バイアル (抗菌薬) と溶解液の組み合わせによる誤投薬発生の危険度」, 「投薬時の薬剤の確認容易度」, 「廃棄時の手指等のケガ発生の可能性」, 「分別廃棄の手間」, 「総合評価」の10項目において, 2ポート型ハーフキット生理食塩液が1ポート型ハーフキット生理食塩液より有意 (p<0.01) に高い評価を得た. 無菌操作試験の結果では, 作業者の手指からは培養検査により細菌が検出されたが, 溶解作業で作成した溶解液を培養検査した結果では, 細菌は検出されなかった. 考察: 両頭針付き生理食塩液は総じて有用と判断され, なかでも2ポート型ハーフキット生理食塩液は1ポート型ハーフキット生理食塩液よりも利便性の面で総合評価が高く, より有用であると考えられた.
著者
多田 稔 高木 馨 川久保 和道 白田 龍之介 石垣 和祥 武田 剛志 藤原 弘明 梅舟 仰胤 齋藤 圭 斎藤 友隆 渡邉 健雄 秋山 大 内野 里枝 岸川 孝弘 高原 楠昊 高橋 良太 山本 恵介 濱田 毅 水野 卓 宮林 弘至 毛利 大 松原 三郎 木暮 宏史 中井 陽介 山本 夏代 佐々木 隆 笹平 直樹 平野 賢二 伊地知 秀明 立石 敬介 伊佐山 浩通 小池 和彦
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.8, pp.1474-1478, 2015-08-05 (Released:2015-08-05)
参考文献数
15

IPMN,膵嚢胞は,膵癌高危険群の中で最も効率のよい指標である.IPMNは進行が緩徐で比較的予後のよいIPMN由来浸潤癌がよく知られているが,予後不良の通常型膵癌の発生もともなう.最適な経過観察方法は定まっていないが,EUSがいずれの発癌形態にも最も感度のよい検査方法である.ただし,スクリーニングのための最適な検査方法については検討事項である.
著者
林 弘正
出版者
中央大学
雑誌
法学新報 (ISSN:00096296)
巻号頁・発行日
vol.121, no.11, pp.599-644, 2015-03

児童虐待は、個々に生起する保護者等による自子に対する侵害行為に「児童虐待」との呼称を付与し社会現象として共有される。児童虐待の公的データは、児童相談所での児童虐待相談対応件数の一九九〇年一、一〇一件から二〇一三年七三、七六五件の推移及び警察庁の児童虐待の罪種別・態様別検挙状況の一九九九年一二〇件から二〇一三年四六七件の推移である。両データは、相談対応件数及び検挙件数であり社会に生起している実相とは程遠いものでありナショナルデータの集積が喫緊の課題である。 本稿は、二〇一二年から二〇一四年までの三年間に裁判実務に顕在化した児童虐待事案から行為態様類型別に身体的虐待二事案、ネグレクト及び児童期性的虐待各一事案を考察の対象とする。具体的事案の分析を通して、児童虐待の問題の所在と児童虐待防止の方策について検討する。児童虐待事案は、ケースにより裁判員裁判の対象となり、厳罰化傾向の指摘されるなか最高裁第一小法廷平成二六年七月二四日判決は量刑に関する判断を示した。 本稿の基本的視座は、「児童虐待は、犯罪であり、刑事制裁の対象である。」、「被害者のサポートは、最優先課題である。」、「加害者に対する治療プログラムの提供は、児童虐待防止のため不可欠である。」との三点である。
著者
小林 弘
出版者
英米文化学会
雑誌
英米文化 (ISSN:09173536)
巻号頁・発行日
no.37, pp.43-59, 2007-03-31

In his The Elements of Law, De Cive, and Leviathan, Thomas Hobbes says that the English common lawyers in the seventeenth century confused lex with jus, law with right. He emphasizes that "Right, consisteth in liberty to do, or to forbear; whereas Law, determinth, and bindeth to one of them." (Leviathan,117) In brief, he regards right as liberty, or the absence of obligation and law as restraint, or the imposition of obligation. And he insists on a sharp distinction between right and law, and that right is priority of law. Hobbes's distinction between right and law is criticized by many commentators. For example, Richard Peters criticizes the word right Hobbes says for "a strange use." On the other hand, Leo Strauss admits the comment that Hobbes subordinates law to right. And Richard Tuck follows Strauss. Which comments are true? This is one of my subjects, though it is very difficult to solve. I dealt with this subject by Hobbes's method and his linguistic theory in De Corpore. And I reached the conclusion that the comment of Strauss is more proper than that of R. Peters.
著者
相澤 章仁 田中 愛子 小林 弘和 小林 達明
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.527-533, 2015 (Released:2016-04-19)
参考文献数
28
被引用文献数
4

外来種を管理・防除するためには,どの外来種が在来生態系に影響を与えているかを評価する必要がある。本研究では千葉県北西部を流れる利根運河の堤防植生を対象として,コドラートを使ったランダムサンプリングによる植生調査を行い,TWINSPANと統計モデリングを用いて外来種の在来生態系への影響評価を行った。TWINSPANの結果,対象地の植生はセイバンモロコシ・セイタカアワダチソウを指標種とした 2つの外来植物群落と 2つの在来植物群落に分かれ,統計モデリングでもこの外来種 2種が在来種の分布に影響を与えていることが示された。影響の度合いはセイバンモロコシの方が強く,個体レベルでの影響 (50 cm × 50 cm)と個体群レベルでの影響 (5m × 10 m)の両方の空間レベルで在来種に影響を与えていた。セイタカアワダチソウは個体レベルでの影響は検出されなかったため,本種の完全排除というよりは,低密度管理を行うことで在来種の回復が望める可能性があることがわかった。現地において防除活動を進める際には本研究の調査方法を用いてモニタリングを進めていくことが有用であると考えられる。
著者
相澤 章仁 田中 愛子 小林 弘和 小林 達明
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.527-533, 2015
被引用文献数
4

外来種を管理・防除するためには,どの外来種が在来生態系に影響を与えているかを評価する必要がある。本研究では千葉県北西部を流れる利根運河の堤防植生を対象として,コドラートを使ったランダムサンプリングによる植生調査を行い,TWINSPANと統計モデリングを用いて外来種の在来生態系への影響評価を行った。TWINSPANの結果,対象地の植生はセイバンモロコシ・セイタカアワダチソウを指標種とした 2つの外来植物群落と 2つの在来植物群落に分かれ,統計モデリングでもこの外来種 2種が在来種の分布に影響を与えていることが示された。影響の度合いはセイバンモロコシの方が強く,個体レベルでの影響 (50 cm × 50 cm)と個体群レベルでの影響 (5m × 10 m)の両方の空間レベルで在来種に影響を与えていた。セイタカアワダチソウは個体レベルでの影響は検出されなかったため,本種の完全排除というよりは,低密度管理を行うことで在来種の回復が望める可能性があることがわかった。現地において防除活動を進める際には本研究の調査方法を用いてモニタリングを進めていくことが有用であると考えられる。
著者
塩澤 和章 小林 弘和 寺田 正夫 松井 明
出版者
社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集. A編 (ISSN:03875008)
巻号頁・発行日
vol.67, no.662, pp.1639-1646, 2001-10-25
参考文献数
12
被引用文献数
2 2 1

As a study in a series to investigate the effect of anodized coating on fatigue strength of aluminum alloys, repeated tensile fatigue test was conducted in laboratory air and at room temperature under the stress ratio of 0.01 using smooth plate specimen of A2014-T6 and A6151-T6 with anodized film thickness of 3&mu;m. Fatigue strength of the anodized specimens decreased by 20-30% as compared with those of uncoated one. Decrease of fatigue strength depended on static strength of the tested materials. The fracture of anodized coating film occurred at the critical strain formed by the accumulation of plastic deformation of substrate metal at an early stage of repeated tensile fatigue process and crack was induced in the substrate at the flaw of the anodized film. It was recognized that fatigue life of anodized specimens was quantitatively evaluated by the consideration of cyclic stress-strain response and strain-life fatigue behavior.
著者
吉永 龍史 小野 武也 沖 貞明 大塚 彰 梅井 凡子 星本 諭 中平 剛志 高橋 祐二 小林 弘基
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.A4P2062-A4P2062, 2010

【目的】関節拘縮の治療に関わるものは、関節の動きを維持するために一日に必要な関節運動の時間を知りたい。この検討は動物実験を通して、関節をギプスなどで固定した後、固定を外してストレッチを一日につき一定時間実施し、再び関節を固定する方法で行われている。これを1週程度毎日繰り返し、最終日は固定を外して治療として持続的伸張運動(以下、ストレッチ)を実施した後に、効果判定の関節可動域テストを行っている。ここでポイントとなる点は、最終日の効果判定直前に治療としてのストレッチを行っている点である。先に述べた方法による最終日の関節可動域の効果判定結果は、 2つの影響が含まれていると考えられる。一つは毎日行う関節運動の影響(蓄積効果)である。もう一つは、最終日の関節可動域測定直前のストレッチの影響(即時効果)である。蓄積効果と即時効果を含む方法による研究結果によると、関節の動きを維持するために一日に必要な関節運動の時間はおよそ30分/日であろうと推測されている。ところが、我々は朝起きるとストレッチを行わないでも関節可動域は維持できている。これは、前日までの関節運動が十分に行われているためと考えることができる。このようなことから、効果判定を行う直前にストレッチを行わないで、関節の動きを維持するために一日に必要な関節運動の時間を検討することも重要と考えられる。本研究の目的は、即時効果を省き蓄積効果により関節の動きを維持するために一日に必要な関節運動の時間の検討である。<BR>【方法】8週齢のWistar系雌ラット20匹を用いた。ラットは10匹ずつ無作為に2群に振り分けた。そのうち1群は、左後肢を「正常群」、足関節最大底屈位でギプス固定した右後肢を「固定群」とした。さらに、固定群と同様にギプス固定を行い、2日目から最終日(7日目)の前日までの計5回、1日1回ギプスを外し、麻酔下でバネ秤を用い30gで30分ストレッチを実施した右後肢を「30g伸張群」とした。尚、固定期間は1週間とした。すべてのラットは飼育ゲージ内で水と餌も自由に摂取する事ができるようにした。足関節背屈角度(以下、背屈角度)は、初日と最終日(7日目)の背屈角度を測定した。ただし、実験最終日には、ストレッチを実施しないでギプス除去後に測定した。測定は、麻酔で小型筋力計を用いて30gの力を加えた状態で行った。統計処理は、実験前の各群間の背屈角度の比較に一元配置分散分析を、また各群の初日と最終日の背屈角度の比較をKruskal-Wallis検定によって確かめた後、有意差を認めた場合は多重比較検定にScheffe法を適用した。なお、危険率は5%未満をもって有意とした。<BR>【説明と同意】本研究は、本学の研究倫理委員会の承諾を受けて行った。<BR>【結果】実験前の背屈角度は、正常群が37.9±1.2°、固定群が37.6±1.3°、30g伸張群が37.0±1.6°ですべての群間で有意差を認めなかった。最終日の背屈角度は、正常群が37.9±1.7°、固定群が73.4±4.8°、30g伸張群が84.5±6.5°であった。実験前後の背屈角度の比較から固定群および30g伸張群には、実験後に有意をもって拘縮発生を認めた。また、各群間の比較では、すべての群に有意差が認められ、30g伸張群がストレッチを行ったにも関わらず、関節拘縮が最も発生していた。<BR>【考察】本研究の結果から、最終日にストレッチを行わずに効果判定を行うことで、30分/日で行うストレッチによる蓄積効果のみではギプス固定除去直後に関節拘縮が生じることが明らかとなった。また、ストレッチを行った30g伸張群が固定群と比較して関節拘縮がより悪化していた。ストレッチを行ったにも関わらず30g伸張群が固定群と比較して関節拘縮が悪化した原因について、先行研究によると、ギプス固定1週間のラット足関節の制限因子は、皮膚切開によって10%、下腿三頭筋切除によって80.5%であったと報告していることからも、軟部組織による制限因子であると推測される。そのため、30gによるストレッチが重すぎたのではないかと考えられる。もう一つの原因は関節可動域運動の時間が不足していたと考えられる。小児を対象とした先行研究では1日約6時間の関節運動を必要としている。このことから、関節可動域運動の伸張時間が長いほど関節拘縮を防ぐことができると考えられる。よって、本研究の関節可動域運動の時間は不足していたと考えられる。蓄積効果により関節の動きを維持するために一日に必要な関節運動の時間は、即時効果を含めた場合よりも多くの時間を必要とする可能性が考えられる。<BR>【理学療法学研究としての意義】日々臨床で遭遇する関節拘縮を予防するために必要な運動時間を知ることは重要である。<BR>
著者
小林 弘幸 大村 卓矢 山本 知仁
出版者
公益社団法人 計測自動制御学会
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.233-239, 2015 (Released:2015-04-15)
参考文献数
17
被引用文献数
4

Speech dialogue systems, such as Apple's “Siri,” have gradually become more widespread, and in the near future, a greater number of general users will have the opportunity to communicate with such systems. To facilitate this, it is necessary for the system to communicate more naturally with users, and to realize that both verbal and nonverbal information must be taken into consideration. In this research, using an available speech recognition platform, we have developed simple dialogue system that consider utterance timing and evaluated it. As a result, it is clarified that the mean error of generated pause duration is controlled within 20msec, and the proper fixed pause duration is turned to be 600msec in this system. Moreover, the evaluation of generative models of pause duration showed that the model that synchronized the utterance duration weakly or fixed pause duration (600msec) model tended to get best results.
著者
山口 清次 長谷川 有紀 小林 弘典 虫本 雄一 PUREVSUREN Jamiyan
出版者
島根大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

成人には無害でも小児に対して健康被害を起こす薬剤が知られている。そこで、培養細胞とタンデムマス質量分析計を用いるin vitro probe acylcarnitine(IVP) assayという方法を応用して、小児に対する薬物等の脂肪酸β酸化に対する毒性を評価するシステムを確立した。アスピリン、バルプロ酸などは、脂肪酸代謝の脆弱な細胞でβ酸化障害が増強された。ベザフィブレートはβ酸化異常症の代謝を改善した。