著者
建林 正彦
出版者
JAPANESE POLITICAL SCIENCE ASSOCIATION
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.201-227,353, 2005-11-10 (Released:2010-04-30)
参考文献数
17

This article examines the relationship between politicians and bureaucrats in postwar Japan. The author argues that the governing Liberal Democratic Party (LDP) has manipulated bureaucrats' policy preferences towards the LDP's ideal position by using “ex ante control” such as recruitment and promotion policy. With the framework of the principal-agent model, the author claims that the spurious autonomy of Japanese bureaucrats can be interpreted as the outcome of successful control over bureaucrats' preferences by LDP politicians. The paper provides evidence with a quantitative analysis of surveys conducted in 1976-77 and 2001-2002. For example, the closer the policy preference of the bureaucrat is to the ideal position of the LDP, the wider he tends to find his discretion.
著者
森本 稔 松浦 祥悟 甲斐 政親 丹松 美由紀 坂本 広太 林 史夫 江端 新吾
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.47-53, 2020-05-01 (Released:2020-05-13)
参考文献数
12

After the national universities becoming into the national university corporations, the status of the technical staffs of the universities has been reviewed actively from the viewpoint of their career paths and skill improvement to increase their motivation and activity. Some unique proposals and initiatives have been practiced. In Tottori University, the university technology administrator (UTA), a management person in the technical staff's organization, was created as a career path model and in Gunma University, the Meister Education Program, as a novel skill improvement method. In this paper, we introduce some examples of career path models and skill improvement methods of technical staffs in Japanese national universities and American national laboratory as a comparison.
著者
若林 馨 小畠 秀吾
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 = Journal of the International University of Health and Welfare (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.37-51, 2020-02-29

我々は,更生保護施設入所者の社会復帰への支援を考察する手がかりとして,当事者の孤独感を評価した . まず,孤独感を感じる原因ならびにその関係性について因子分析を行った.結果,孤独感を感じる原因として 3 因子が抽出され,うち「抱えられる関係の不在」因子のみ退所時に値が低下していた.そのプロセスと原因の考察のため,次にインタビュー調査を行った.対象者は施設入所当初は自身を深く否定するものの,施設という安全基地=疑似家族的な軸足と,雇用先など外の社会との行き来による相互作用体験の連続により,自分の再定義づけを行っていた.そして,自分の再定義づけができていくことが,孤独の原因を外的要因へ帰属させることを低減させ,自身の環境や感情を自身で抱えられることに影響を及ぼしていた . 今後の社会復帰への心理的支援として,本人の孤独の原因帰属・対処方法への着目や,自己の再定義づけの中で起こる多様で複雑な葛藤への心理的サポート等が有用であると考えられる .
著者
小林 裕明
出版者
新潟大学大学院現代社会文化研究科
雑誌
現代社会文化研究 = 現代社会文化研究 (ISSN:13458485)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.89-106, 2010-03

R. Steiner's The Philosophy of Freedom(die Philosophie der Freiheit) puts moral imagination (die moralische Phantasie) at its center. This moral imagination is the intuition of individual idea. By this, the human is freedom, and individual. In this ideal intuition, the idea is mediated through the representation (Vorstellung) to the perception (Wahrnehmung), in such a way that the representation mediates as a motive between the feeling (Gefuhl) and the perception. Under this structure of the duple mediation, the idea and the action are mediated and conjoined through the motive according to the moral idea. Without the unity of idea and action, it isn't in the right, and the action without the mediation through the motive isn't free. In this way, freedom is all human self-development of (individual) Idea which corresponds to love. This structure of moral imagination necessarily leads to the weltanschauung of triple worlds, material-, soul- and spiritual world in his later works on the science of the spirit (Geisteswissenschaft). Because individual idea that is the core of human freedom is true actual only as the unity of these triple worlds, namely as the self that penetrates samsaras. The content of moral imagination is the necessity of samsaras (karma)=idea of the individual, and what is more, the idea of the nation and the age that flows in it. On the other hand, the form of moral imagination is faith. By faith, the human is freedom, and by freedom, the human loves the others.
著者
林 雄介 福井 昌則 平嶋 宗
出版者
一般社団法人 CIEC
雑誌
コンピュータ&エデュケーション (ISSN:21862168)
巻号頁・発行日
vol.46, pp.38-45, 2019-06-01 (Released:2019-12-01)

コンピュテーショナル・シンキング,日本では「プログラミング的思考」という言葉をキーとしてプログラミング教育に注目が集まっている。そして,日本では既存の教科の中にプログラミング教育を組み込むクロスカリキュラムとなっているため,どのようにプログラミング教育を実施していくかが問題となっている。本稿では,ベン図,Yes/Noチャート,ビジュアルプログラミング言語,対話型ロボットを利用したプログラミング的思考の育成モデルを紹介し,その実践事例やそれに基づく学習環境を紹介する。この特徴は,分類を対象として教科の中で学習する内容の理解を深めることを目標としてプログラミングを行うこと,プログラムという抽象的なものをロボットとのインタラクションという具体的なものにすることである。
著者
小口 悦子 小林 恵子 津久井 亜紀夫 永山 スミ 樽本 勲
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.43, no.9, pp.879-886, 1992

わが国の代表的な13品種の甘藷を用いていも羊羮を製造し, 硬さ, 付着性, 凝集性, 破断応力および破断ひずみを測定した。また, 生甘藷およびいも羊羮の水分量を測定し, テクスチャー値との関係を検討した.さらに, 官能検査を実施し, 以下の結果を得た.<BR>(1) いも羊羮は日本的, 家庭的, 女性的で甘い菓子というイメージであった.<BR>(2) いも羊羮の製造においては, 蒸し時間は20分が適当であった.<BR>(3) いも羊羮の硬さ, 付着性, 破断応力および破断ひずみは13品種間において差が認められた.しかし凝集性はほとんど差がなかった.<BR>(4) いも羊羮の硬さと破断応力は, 正の相関関係が認められた.硬さと破断ひずみ, 付着性と破断ひずみは負の相関関係が認められた.<BR>(5) 生甘藷, 蒸し甘藷およびいも羊羮の水分量といも羊羮の硬さは負の相関関係が認められた.<BR>(6) いも羊羮の嗜好調査の結果から高系14号, 沖縄100号, ベニコマチの明るい黄色が好まれた.この3品種のいも羊羮について官能検査を行ったところ, 高系14号は, 硬さおよび付着性が13品種中, 中位にあり, いも羊羮として好まれた品種であった.
著者
神保 佳典 高比良 裕之 小林 一道 安田 章宏
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 B編 (ISSN:03875016)
巻号頁・発行日
vol.76, no.762, pp.219-229, 2010-02-25 (Released:2017-06-09)
参考文献数
17

The growth and collapse of a bubble under a floating body are simulated by using the boundary element method with linear elements to predict the damage of ship bodies induced by underwater explosion. The three-dimensional deformation of the bubble, the translation and rotation of the floating body, and the motion of water surface are taken into account in the simulation. It is shown that the bubble deforms three-dimensionally, and the liquid jet threads the bubble due to the interactions among the bubble, the floating body, and the water surface; the directions of the bubble translation and the liquid jet depend on the initial location of the bubble. The Kelvin impulse is found to be useful in evaluating the translational motion of the bubble. Also, the horizontal translational motion of the bubble is much dependent on the rotational motion of a floating body; when the moment of inertia of the floating body is small, the largest horizontal translation is realized between the axis of flotation and the edge of the floating body. It is also shown that there exists an initial horizontal bubble location where the moment of force acting on the floating body has the maximum value.
著者
白岩 義夫 増田 公男 林 文俊 石垣 尚男
出版者
愛知工業大学
雑誌
総合技術研究所研究報告 (ISSN:13449672)
巻号頁・発行日
no.1, pp.85-90, 1999-06
被引用文献数
2

本論文では,幼稚園児におけるテレビ視聴とテレビゲーム遊び行動が子どもの視力に与える影響について,園児の保護者を対象とした調査に基づいて分析された結果が報告された。1日のテレビ視聴時間は週日よりも休日が,また女児よりも男児の方が長かった。テレビゲーム遊びの経験は男児の方が多かったが,経験月数は逆に女児が多い傾向にあった。テレビゲーム遊びの頻度及び1回当たりの遊び時間は男児が長かった。テレビ視聴時間と視力の間,テレビゲーム遊びの経験及び時間と視力の間には明確な関係は見出だせなかった。
著者
小林 未菜実 川角 謙一 齋藤 佳久 寺尾 靖也 佐野 勝弥 石井 裕也 辰巳 麻由美 大瀬 眞人(MD)
出版者
東海北陸理学療法学術大会
雑誌
東海北陸理学療法学術大会誌 第28回東海北陸理学療法学術大会
巻号頁・発行日
pp.89, 2012 (Released:2013-01-10)

【目的】 肩関節疾患に対する理学療法において、肩甲上腕関節の可動域制限は良化しても結帯動作の改善に難渋するケースを多くみる。結帯動作において同側肋骨は前方回旋、胸椎は対側回旋の運動連鎖を生ずる。今回、体幹回旋可動域の左右差、体幹対側回旋可動域の変化に伴う患側肩関節の結帯動作可動域の変化に着目し、体幹の対側回旋へのアプローチを行い、結帯動作可動域に改善のみられた症例を経験したので報告する。【方法】 対象は当院に通院する女性患者3名(右肩関節周囲炎2名、右石灰性腱炎1名)である。また本発表にあたり、対象者には倫理的配慮としてヘルシンキ宣言に基づき十分に説明を行い同意を得た。 3症例の共通した条件は、患側肩関節屈曲・外転可動域160°以上、結帯動作に関してL5レベル以上の可動域を有することである。実施介入としては、自動での体幹対側回旋を患側肋骨の前方回旋を徒手にて補助しながら5回繰り返し、5回目は最終域で徒手抵抗下にて10秒間の保持を行った。介入前後に下記の方法で患側の結帯動作と体幹の両側回旋を行い、メジャー、角度計にて測定した。いずれも測定肢位は端座位である。1. 結帯動作:肘関節屈曲90°にて座面-橈骨茎状突起距離を測定。2. 体幹回旋:胸骨前方で両側の手掌を合わせ、骨盤を中間位にて固定、両膝関節内側を接触させた状態で体幹の回旋角度を測定。【結果】 体幹回旋運動に関しては、症例1:同側45°/対側30°、症例2:同側50°/対側35°、症例3:同側45°/対側40°と、3症例すべてにおいて体幹対側回旋可動域は同側回旋に比べ制限がみられた。介入後、体幹対側回旋可動域は3症例すべてにおいて拡大した。それに伴い結帯動作に関して、座面-橈骨茎状突起距離は、症例1:介入前26.0㎝→介入後30.0㎝、症例2:24.0㎝→27.5㎝、症例3:27.0㎝→35.0㎝と、3症例すべてにおいて結帯動作可動域の拡大が確認できた。【考察】 今回対象とした結帯動作制限の3症例では、全例において体幹の対側回旋制限がみられた。この原因の1つとしては患側の前鋸筋の機能不全が考えられる。前鋸筋と外腹斜筋には筋連結があり、前鋸筋の機能不全は外腹斜筋の機能不全を招くといわれている。このようなことから患側前鋸筋、外腹斜筋の機能不全が体幹対側回旋可動域の減少を生じさせたと考えた。従って、介入により外腹斜筋の活動性を向上させ、体幹対側回旋可動域を拡大させた結果、同側肋骨の前方回旋運動が促進され、肩甲骨の前傾角度が増加することで結帯動作可動域の拡大につながったのだと考える。以上より、結帯動作可動域拡大のアプローチとして、体幹対側回旋可動域の拡大による同側肋骨の前方回旋運動の促進は有効であることが示唆された。【まとめ】 結帯動作と体幹回旋可動域との相関性について考えた。今後は体幹回旋可動域の変化が結髪動作に与える影響についても考えていきたい。
著者
杉森 義一 正木 俊一郎 小西 喬郎 林 幸之
出版者
Japan Poultry Science Association
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.309-317, 1990-07-25 (Released:2008-11-12)
参考文献数
21

鶏の敗血症大腸菌症より分離した大腸菌(O2型)を用いて4種類の不活化抗原液(BF:約109CFU/ml含む培養菌液,BFS:BF液を超音波処理した菌液,CF:BF液を遠心によって,約1010CFU/mlに濃縮した菌液,CFS:CF液を超音波処理した菌液)を調整した。これら抗原液を1日齢ヒナにクロアカ接種法(pa法)で免疫,その後20日目にホモ株の致死量を静脈内攻撃し,攻撃後7日後の生存率で評価した。抗原液の内,超音波処理を施したBFSとCFS液で攻撃による生存率が統計的に有意であったが,含有菌量が約10倍量多いCFS液の方が強かった(P<0.01)。一方,超音波処理を施していないBF液とCF液では,生存率の改善傾向は見られたが,その効果は有意ではなかった。超音波処理は,15分間(5分間を3回)で最も強い免疫効果が得られた。その効果はKetodeox-yoctonate (KDO)値や抗体結合性などに相関性が認められ,in vitroでの重要な指標となった。CFS液をpa,筋肉内あるいは皮下接種法で接種した時の免疫性と安全性を調査したところ,免疫効果はpa法(P<0.01)と筋肉内接種法(P<0.05)で認められた。安全性は筋肉内や皮下接種法では接種後の体重増加が有意(P<0.01)に低下したが,pa法ではこのような現象は観察されなかった。CFS液のpa法による免疫効果は接種7日目以降27日間にわたると推察されたが,O抗原型が異なるO78型の攻撃に対して,効果を認めなかった。
著者
大平 哲也 中野 裕紀 岡崎 可奈子 林 史和 弓屋 結 坂井 晃 福島県県民健康調査グループ
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.34-41, 2018

<p>2011年 3 月11日,東日本大震災が発生し,それに引き続き福島第一原子力発電所の放射線事故が起こった.原子力発電所周辺の多くの住民が避難を余儀なくされ,生活習慣に変化が起こってきた.そこで,各市町村で実施している健康診査、及び福島県で実施している県民健康調査のデータを用いて、震災後の避難が循環器疾患危険因子及び生活習慣病に影響する可能性を検討した。本稿では,震災前後における健康診査結果の変化及び県民健康調査の生活習慣病に関する縦断的検討の結果を概説する.震災前後において健康診査データを比較した結果,震災後,避難区域住民においては過体重・肥満の人の割合,及び高血圧,糖尿病,脂質異常,肝機能異常,心房細動,多血症有病率の上昇がみられた.さらに,震災後 1 ~ 2 年間と 3 ~ 4 年間の健診データを比較したところ,糖尿病,脂質異常についてはさらなる増加がみられた.したがって,避難区域住民,特に実際に避難した人においては心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患が震災後に起こりやすくなる可能性が考えられた.また、これらの要因としては震災後の仕事状況の変化、避難による住居の変化などによる身体活動量の低下、心理的ストレスの増加などが考えられた.今後,避難者の循環器疾患を予防するために,地域行政と地域住民が協働して肥満,高血圧,糖尿病,脂質異常の予防事業に取り組む必要がある.</p>
著者
岩木 和夫 林 譲
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.134, no.4, pp.207-211, 2009 (Released:2009-10-14)
参考文献数
5
被引用文献数
2

検出限界は,ある物質を検出できる最少量であり,ノイズとシグナルの境界とも言える.科学としての学問的興味から,分析化学の分野では数十年前から熱心な研究が行われている.一方,ある物質が存在するか否かは,クリティカルな国際問題とも成りえることから,国際ルールである分析法バリデーションにおけるパラメータとして採用されている.たとえば,ISO,IUPACなどで検出限界が取り上げられている.しかし,検出限界の概念を統計学的に与えてある解説は多いが,実際に求める方法を提示してある文献は少ない.現実には,分析者は,自分の分析法の検出限界を自分の責任で推定し,提出または公表しなければならない.しかし,求めた検出限界の信頼性が最も重要な問題である.数少ない繰り返し測定から求めた検出限界は,求めるごとに数倍異なることもある.少ない実験からの検出限界はばらつくことを知りながら,その偶然の値を採用し,危険な物質の検出限界を大きく推定することや,発見したい目的物質の検出限界を小さく見積もるのは反則である.本稿では,ISO11843 Part5の方法を解説する.この方法は,統計的に信頼できる検出限界を与えるので,国際的に通用するデータの信頼性を保証できる.分析法としては,競合法ELISAと非競合法ELISAを例に挙げる.
著者
石井 陽介 出家 正隆 藤田 直人 車谷 洋 中前 敦雄 石川 正和 林 聖樹 安達 伸生 砂川 融
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0343, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】内側半月板損傷は膝関節の疼痛を呈する。しかし,内側半月板自体に神経線維は少なく,内側半月板損傷の疼痛は他の要因が影響していると考えられる。内側半月板逸脱(medial meniscus extrusion:以下MME)は内側半月板付着部の損傷や伸長によって内側半月板がより内側に逸脱する現象で,膝関節内側部の衝撃吸収を破綻させ,内側大腿脛骨部の荷重負荷を増大させる。しかし,MMEと疼痛との関係は明らかにされておらず,荷重下でのMMEの逸脱量と疼痛に着目した報告は見られない。本研究は,内側半月板損傷者における荷重下MMEの逸脱量が疼痛を増加させるのかを明らかにすることを目的とした。【方法】対象は内側半月板損傷と診断された患者16名16膝(平均年齢57.6±9.5歳)を対象とした。内側半月板の逸脱量は超音波装置(Hivision Avius,HITACHI社)を用いて,内側半月板中節部で測定し,脛骨骨皮質の延長線から垂直に内側半月板の最大内側縁距離を逸脱量として計測した。測定は臥位と立位の2条件で行い,臥位と立位の逸脱量の差から,内側半月板移動量を算出した。先行研究を参考に,対象者を内側半月板の逸脱量が3mm以上の6名をLarge群,3mm未満の10名をSmall群に分類した。疼痛はVASとKOOSを用いて評価した。内側半月板の逸脱量の比較には,群間(Large群,Small群)と条件(臥位,立位)を2要因とした混合2元配置分散分析を行い,交互作用を認めた場合には単純主効果検定を行った。2群間における内側半月板移動量,VAS,およびKOOSの比較には,Mann-WhitneyのU検定を用いた。統計解析には,SPSS Ver19.0(日本IBM社,東京)を用い,統計学的有意水準は5%未満とした。【結果】Large群,Small群ともに,内側半月板逸脱量は臥位よりも立位で有意に大きかった(Large群臥位:3.7±1.2mm,立位:4.5±1.0mm;Small群臥位:1.7±0.5mm,立位:2.1±0.7mm)。内側半月板移動量はLarge群がSmall群より有意に大きかった(Large群:0.9±0.3mm,non Small群:0.4±0.3mm)。VAS値はLarge群がSmall群より有意に高く,KOOSのpain scoreはLarge群がSmall群より有意に低かった。【結論】本研究の結果から,荷重下MMEの逸脱量が疼痛に影響を及ぼす一要因である可能性が示唆された。これは荷重に伴う内側半月板の逸脱が膝関内側部の負荷をより増大させたためと予想される。内側半月板損傷者の疼痛には,荷重下MMEの逸脱量が影響している可能性が示された点に関して,理学療法研究としての意義があると思われる。