著者
笛木 司 吉田 理人 田中 耕一郎 千葉 浩輝 加藤 憲忠 並木 隆雄 柴山 周乃 藤田 康介 須永 隆夫 松岡 尚則 別府 正志 牧野 利明
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.336-345, 2018 (Released:2019-08-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1

中国天津市及び上海市の上水道水を用いて「ウズ」の煎液を調製し,煎液中のアルカロイド量を,新潟市上水道水を用いた場合と比較した。中国の上水道水を用いて調製した煎液中のアコニチン型ジエステルアルカロイド(ADA)量は,新潟市上水道水を用いた場合に比べ有意に少なく,この原因として,中国の上水道水に多く含まれる炭酸水素イオンの緩衝作用によりウズ煎煮中のpH 低下が抑制されることが示唆された。また,ウズにカンゾウ,ショウキョウ,タイソウを共煎した場合,ウズ単味を煎じたときと比較して煎液中ADA 量が高値となり、さらにこの現象は中国の上水道水で煎液を調製した場合により顕著に観察された。煎じ時間が一定であっても,用いる水や共煎生薬により思わぬADA 量の変化を生じる可能性が示唆された。また『宋板傷寒論』成立期の医師たちが,生薬を慎重に組み合わせて煎液中のADA 量を調節していた可能性も考えられた。
著者
柴山 英樹
出版者
教育思想史学会
雑誌
近代教育フォーラム (ISSN:09196560)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.193-209, 2005-09-18 (Released:2017-08-10)

本稿は、ルドルフ・シュタイナーの色彩論について、19世紀末から20世紀にかけて展開された科学的色彩論やクレー、カンディンスキーなどのバウハウスの教師たちの色彩論などの同時代のコンテクストから読み直すことによって、シュタイナーの色彩論の意味内実をより明確に捉えられることを示したものである。シュタイナーは、色彩と身体のつながりを二元論的に捉えようとする科学的色彩論から距離を置き、ゲーテの色彩論における実在論的視点からの影響を受けつつ、進化論的視点という独自の視点に立脚した一元論的な色彩論を提示したのである。シュタイナーは、実在論的視点や進化論的視点に立脚することによって、自然界における色彩現象と人間の身体や感覚とのつがなりを解明し、そこから導き出された色彩が直接身体や感覚に働きかけてくるという観点に基づき、色彩を通じて自然の生成過程を追体験する絵画方法を提示したのである。
著者
坂井 建宣 柴山 正輝 野方 文雄 蔭山 健介
出版者
日本実験力学会
雑誌
実験力学 (ISSN:13464930)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.39-44, 2017-04-12 (Released:2017-04-12)
参考文献数
13

Multichannel heart motion sensors using flexible circuits were fabricated for the monitoring the heart motion in the heart diseases. In this study, the PVDF sensors were used as the heart motion sensors. These sensors were modified with the air gap and the protection sheet, and the sensors with the flattest frequency response were selected. These selected modified sensors were preliminary used in a 4-channel sensor array in order to check whether the heart sounds were detected, and they precisely detected the motion of S1 and S2. Furthermore, 80 sensors were used for the multichannel sensor array using the flexible printed circuits. By using this 80-channel sensors array, the vibrations of the chest surface were measured and analyzed. As a result, this multichannel sensor array could measure the heart sound and detected a sound distribution of the chest surface. It was concluded that our developed measurement system could be applied to inspect heart diseases employing a digital database management of the auscultation examination.
著者
柴山 惟
出版者
北海道大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2020-04-24

本邦で肥満者の割合は増加しており、肥満を原因とするメタボリック症候群は高血圧や耐糖能異常を呈るため肥満合併症の病態解明は喫緊の課題である。肥満者で副腎から鉱質コルチコイドであるアルドステロンが過剰分泌されることが報告され高血圧の原因の一つと考えられるが、その機序は明らかでない。脂肪蓄積に関わる脂肪滴周囲蛋白ペリリピンは肥満の病態と深く関わっており、肥満によるアルドステロン過剰分泌がペリリピン1により調整されているという仮説のもと、副腎でのペリリピン1発現を調整する因子が肥満高血圧の新たな治療の標的となるかを解明する。
著者
柴山 栄
出版者
一般社団法人 日本オリエント学会
雑誌
オリエント (ISSN:00305219)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3-4, pp.1-93,A191, 1970 (Released:2010-03-12)

This is to probe the authenticity of this inscription by philological, linguistic and paleographic studies.There are many pre-Columbian texts from various parts of America, but most of them are more or less unintelligible. A notable exception turned up by the inscription found in 1872 under strange circumstances. In the 19th century, the text was discussed pro and con, and the weight of scholarly opinion finally rejected the text as a fake. Competent Semitists expunged it from the list of authentic texts, however, the text is now intelligible to any modern scholar who knows Hebrew and Phoenician and other semitics by our presenting a lot of materials having been excavated since 1872.Now we appreciate that the role of the Phoenicians, as intermediaries of ancient civilization, was greater than has been supposed.
著者
山根 崇嘉 加藤 淳子 柴山 勝利
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.441-447, 2007 (Released:2007-07-24)
参考文献数
29
被引用文献数
4 3

広島県内各地における‘安芸クイーン’の着色実態と気温との関係を明らかにするため,栽培条件の異なる7園について,ブドウ‘安芸クイーン’の着色実態を2001年に調査した.また,2005年に栽培条件の異なる着色不良園3園において環状はく皮処理および着果量の軽減による着色改善を試みた.着色は園地により大きく異なり,カラーチャート値(0~5段階)で0.2~4.5となった.樹齢や栽培方法が異なったにもかかわらず,着色と糖度および着色開始後8~21日における20~25℃に遭遇した時間との間に有意な正の相関が認められた.また,高温条件下でも着果量を減らし,環状はく皮処理することにより,着色および糖度が向上したが,新梢生育の旺盛な園では,着色改善効果が小さく,気温や糖度以外にも着色阻害要因があることが示唆された.
著者
大村 英史 柴山 拓郎 高橋 達二 澁谷 智志 岡ノ谷 一夫 古川 聖
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.954-966, 2012-10-15 (Released:2012-11-05)
参考文献数
20
被引用文献数
2 2

本稿では,人間の認知バイアスのモデルを用いた音楽生成システムを提案する.音楽は期待の満足や裏切りによって情動豊かな作品として構成されている.このような音楽における期待の形成とその期待に対する満足や裏切りのダイナミクスを実現するために,緩い対称性(LS)モデルを使用した.このモデルは人間の思考や推論に特徴的な非論理的な対称性バイアスと相互排他性バイアスに基づいた確率モデルである.本システムは,(1)音から音への遷移を音楽におけるメロディの最も単純なイベントとみなし,既存の楽曲から音の遷移の特徴量を抽出し,(2)LS モデルにより「人間的な」改変,汎化を行い,(3)新たなメロディを生成する.メロディ生成に用いられる汎化後の確率分布の平均情報量を調べた結果,LS モデルがほどよい複雑性を作り出していることが確認された.さらに,生成されたメロディの評価のために心理実験を行い,LS モデルが期待に関する満足(音楽的まとまり)と裏切り(意外性)をバランスよく含んだメロディを生成していることを確認した.この結果は,音楽生成における期待感生成に関する認知バイアスの適用の有効性を示唆する.
著者
鈴木 穣 柴山 慶行 岡本 誠一郎
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.87-96, 2017 (Released:2017-03-10)
参考文献数
34

公的機関の水質調査データ等を用いて, 霞ヶ浦 (西浦) における藍藻類の長期的消長に影響する主要水質因子の検討を行い, 藍藻類は, 底泥表面の溶存酸素濃度が低下し溶解性マンガン濃度が増加傾向にあるときに増殖する傾向にあることを明らかにした。水質の統計解析結果と合わせて, 底泥から溶出する溶解性マンガンが藍藻類の増殖に及ぼす影響を考察するとともに, 底泥表面の溶存酸素濃度の低下は, 海水侵入が主要因と考えられることを示した。併せて, 今後必要な調査・研究に関する提言を行った。
著者
柴山 由理子
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.67-80, 2020

国民年金機構Kelaは、1937年国民年金法の制定によって議会直属の機関として設立されたフィンランド社会政策の主要な担い手である。本稿では、フィンランド社会政策の特徴をKelaの歴史的発展経緯から考察する。同組織は設立当初から農民政党との結びつきが強く、政治的な組織であることが指摘できる。Kelaは農民政党の意向を反映しながら管轄業務を拡大し、一律給付方式の保障や現金給付の割合の高いサービスを実現してきた。一方、社会民主党の役割は限定的で、同党が志向した所得比例方式の保障は妥協の産物としてKelaによる社会保障の枠外に置かれた。フィンランド社会政策の対立軸は「農村」対「都市」であり、Kelaを中心とする政治的対立に注目することは同国の社会政策の特徴を捉える上で意義深い。本研究では、フィンランド社会政策研究に「Kelaの視点」を加える必要性を主張し、比較福祉国家論の「社会民主主義レジーム」に多様性がある可能性を示す。
著者
坂本 佑太朗 柴山 直
出版者
日本分類学会
雑誌
データ分析の理論と応用 (ISSN:21864195)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.31-45, 2017-03-01 (Released:2020-04-02)
参考文献数
37

テストが測定すべき心理学的な特性が多様化してくるにしたがって,「テスト(項目)はそもそも何を測っているのか」という構成概念に関する精緻な検証が求められている.最近では,その手段として多次元IRTが注目されてきており,これまでそれほど測定論的な関心が注がれてこなかったテストの下位領域についての定量的な検証の必要性も指摘されている.そこで本研究では,わが国の学習指導要領に則って作成された平成18年度新潟県全県学力調査における中学校2年生数学データ (N=9,102)に対して,多次元IRTを使って下位領域特有の影響について定量的に検証した例を示す.その結果,テスト全体が測定する「数学力」よりも下位領域特有の影響を強く受けている項目は25項目中2項目存在し,その内容は定性的な観点からも妥当であることが確認できた.つまり,多次元IRTを用いることにより,テスト項目の測定内容に関して項目レベルで次元に応じた情報が得られることを意味し,今後のテストデータ分析においても,単にIRTモデルを適用するだけではなく,多次元IRT分析にもとづくより精緻な妥当性検証が可能であることが示された.

2 0 0 0 OA 華族類別譜

著者
柴山典 編
出版者
屏山書屋
巻号頁・発行日
vol.上巻 皇別, 1884
著者
柴山 真琴 ビアルケ(當山) 千咲 高橋 登 池上 摩希子
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究
巻号頁・発行日
vol.2019, no.29, pp.236-256, 2019

<p> 本研究では,小学校高学年児の国際児が,親の支援を受けながら現地校と補習校の宿題を遂行する過程で,どのような家族間調整がなされているのかを独日国際家族の事例に基づいて検討した.日本人母親が記録した約4 年間の日誌記録を「生態学的システム」の修正モデルを分析枠組みにして,家族間の調整過程を具体的に分析した結果,次の3 点が明らかになった.第一に,父母間では,対象児の学年に拘らず,自分が母語とする言語の宿題を支援する言語別役割分担を基本とする支援パターンが形成されていた.第二に,この言語別役割分担は,宿題をめぐる親子間調整の基本単位ともなっていた.現地校宿題をめぐる父子間調整は円滑に進んでいたが,補習校宿題をめぐる母子間調整では対立が頻発していた.第三に,対象児は,自分と活動(宿題遂行)との間に不具合が生じた時に,自らの環境認知に基づいて親に働きかけたり自らの行動を変化させたりする調整を行っていた.対象児の調整過程では,「役割期待」「時間展望」「目標構造」という3 つの軸が参照されていたと考えられる.</p>
著者
柴山 明寛
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.9, pp.458-463, 2020-09-01 (Released:2020-09-01)

2011年東日本大震災が発生した以降,災害記録を残すべく,自然災害デジタルアーカイブが数多く構築された。証言記録,行政文書,写真記録,動画など数百万点にも及ぶ災害記録を今後の防災・減災に活かすためには,災害記録がどのようなものであるかを知ることが重要である。本稿では,自然災害デジタルアーカイブで公開されている数百万点に及ぶ災害記録を活かすために,災害記録の活用方法やその注意点について述べる。さらに,東日本大震災デジタルアーカイブを中心に,近年の様々な自然災害デジタルアーカイブについても紹介し,利用方法についても合わせて概説する。