著者
岡田 博 久保 さおり 森 康子
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.173-181, 1997-01-28
被引用文献数
1

インドネシア, 西スマトラ, パダンにおいて, 袋かけ, 除雄, 交配実験, 野外観察によりNeuwiedia veratrifoliaの送粉様式を研究した。集団内及び近隣域の多くの固体は同調して花序を形成し, 開花する。30〜50個の花をつける無限花序は1日最大7個, 平均1個を開花する。袋かけ実験で高い結実率が得られたことから, この種は自家和合性であることが分かった。袋かけ実験による高い結実率と柱頭と内向やくが近接していることから, この種は多くの場合自家受粉をしていることも分かった。更に野外で訪花昆虫を観察し, その中でもからだに花粉をつけていたハリナシバチ類が送粉者として働いている可能性が明らかになった。
著者
島崎 博也 水野 圭祐 水谷 真康 中村 毅 前田 一範 出口 晃 川村 直人 鈴村 恵理 美和 千尋 森 康則
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
pp.2310, (Released:2018-06-18)
参考文献数
15

【背景と目的】温泉の効果の一つに温熱作用がある.この効果は体温を上昇させ,体温調節機能が作動し,血流量の増大を引き起こす.今回,これらの変化が,浴槽の大きさ,温泉の泉質によるものかを検討した.  【方法】成人健常男性10名(平均年齢25.2歳)を対象として10分間42°Cの入浴を実施した.実施は,大浴槽(約1700L:アルカリ性単純温泉)と家庭浴槽(約300L:温水,0.1%人工塩化物泉)を用いた.測定項目は,深部体温「深部温モニターコアテンプ CM-210」と最高動脈血流速度「超音波血流計スマートドップ45」とし,それぞれの値を入浴中10分目,後安静10分目,20分目,30分目で比較し,さらに各条件で前安静値からの変化を求めた.  【結果】入浴10分目で深部体温と最高動脈血流速度の上昇値は,大浴槽の温泉が家庭浴槽での値に比べ,有意な高値を示した.また,大浴槽の温泉の深部体温は入浴3分目から有意に上昇した.後安静での深部体温は,大浴槽の温泉は15分間,家庭浴槽の人工塩化物泉は16分間,温水は13分間有意な上昇が維持された.  【考察】温泉大浴槽の方が家庭浴槽に比べて,深部体温上昇,最高動脈血流速度が大きかったのは,大浴槽では豊富な湯量により湯温の下降を妨げ,家庭用浴槽での深部体温上昇が継続されたのは,人工塩化物泉が体温上昇を維持させたと考える.
著者
鈴森 康一
出版者
一般社団法人 日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.53-56, 2019 (Released:2019-01-15)
参考文献数
3
被引用文献数
5 2
著者
山田 美智子 笠置 文善 三森 康世 宮地 隆史 大下 智彦 佐々木 英夫
出版者
一般社団法人 日本放射線影響学会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集 日本放射線影響学会第51回大会
巻号頁・発行日
pp.267, 2008 (Released:2008-10-15)

背景と目的:胎児期に被爆した被爆者では小頭症や知的障害等の神経系への影響が認められる。今回、広島成人健康調査集団の被爆時年齢13歳以上の原爆被爆者とその対照において、原爆被爆が認知機能や認知症の発症に影響したか否かについて調査した。 方法:対象者は1992年の調査開始時に年齢60歳以上で認知症を認めない2286人である。認知機能は認知機能スクリーニング検査(CASI)を用いて評価した。認知症の診断は認知機能スクリーニング検査と神経内科医による神経学的検査の2段階法を用い、人年法により線量階級別の粗発症率を求めた。原爆被曝の認知症発症への影響の評価には他のリスク要因を考慮してポワソン回帰分析を用いた。放射線治療による被曝情報は病院調査と問診調査から得られた。 結果:認知機能は加齢と共に低下し、低学歴で低かったが、被爆時年齢13歳以上の原爆被爆者では認知機能に被爆の影響は認められなかった。約6年の追跡期間中に206人が新規に認知症を発症した。60歳以上の1000人年あたりの粗認知症発症率は15.3(男性12.0、女性16.6)であった。被爆線量別の1000人年あたりの発症率は被爆線量5mGy以下、5-499mGy,500mGy以上で各々16.3、17.0、15.2であった。いずれの被爆線量群でもアルツハイマー病が優位な認知症のタイプであった。ポワソン回帰分析の結果、全認知症ならびにタイプ別認知症において、他のリスク要因を調整後に被爆の影響は認められなかった。対象者の内、68人がこの調査以前に放射線治療を受けていたが、認知症を発症したのは2人にすぎなかった。 結論:原爆被爆者の縦断的調査において認知機能ならびに認知症発症と放射線被曝の関連は認められなかった。
著者
中森 康浩 大澤 亨 二木 元典
出版者
近畿大学医学会
雑誌
近畿大学医学雑誌 = Medical Journal of Kindai University (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1-2, pp.21-24, 2017-06-20

[抄録] 今回,我々はオキシドールを浣腸し急性出血性大腸炎を発症した1例を経験した.症例は43歳男性.以前よりグリセリン浣腸を習慣的に使用していたが,今回誤ってオキシドールを浣腸し,その後より血便,腹痛,倦怠感を認めた.近医を受診し直腸炎の診断にて精査加療目的に当科紹介となる.大腸内視鏡にて直腸から連続する粘膜浮腫像,炎症像を認めた.CTでは直腸からS状結腸にかけて浮腫状の腫張及び周囲脂肪織の濃度上昇を認め,口側腸管との口径差を認めた.明かなfree air,腹水貯留は認められなかった.オキシドールの浣腸による急性出血性大腸炎の診断にて絶飲食,ステロイド注腸,点滴による保存的加療を開始した.発症4日目より飲水を開始.発症7日目の大腸内視鏡では炎症像が残存するも症状は消失しており,経口摂取開始後も症状再燃無く,発症14日目に退院となった.オキシドールは容易に入手できるが誤用により重篤な症状を呈するためその危険性を認識しておく必要があると考えられた.
著者
池田 浩子 今井 昇 井川 雅子 岩井 謙 道端 彩 高森 康次
出版者
日本口腔顔面痛学会
雑誌
日本口腔顔面痛学会雑誌 (ISSN:1883308X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.55-63, 2017 (Released:2019-04-24)
参考文献数
34

症例の概要:72歳男性.咀嚼時の両側咬筋の疲労感・開口障害による咀嚼困難を主訴に口腔外科を受診した.顎跛行,開口障害,複視,めまい,体重減少,間歇的な頭皮の痛みなどの症状が認められたため,精査目的に専門施設(神経内科)を紹介した.頸動脈エコー,側頭動脈生検の結果,巨細胞性動脈炎と診断された.ステロイド治療が施行され,速やかに症状の改善が認められた.考察:巨細胞性動脈炎は頭痛以外にも多彩な症状を呈する.顎顔面領域にも顎跛行や開口障害など様々な症状が発現するため歯科を受診する可能性も高いと考えられる.巨細胞性動脈炎が呈する症状のうち,顎跛行,複視,側頭動脈の拡大・圧痛・拍動消失は陽性尤度比の高い症状とされており,そのような症状が認められた場合は速やかに専門施設へ紹介することが重要である.そのためには歯科医師も巨細胞性動脈炎の病態を正確に理解しておく必要性があると考えた.結論:顎跛行および開口障害を主訴に口腔外科を受診し複視,めまい,体重減少,間歇的な頭皮の痛みおよびリウマチ性多発筋痛症の合併も考慮された巨細胞性動脈炎の症例を経験した.
著者
中森 康之 ナカモリ ヤスユキ Yasuyuki Nakamori
雑誌
雲雀野 = The Lark Hill
巻号頁・発行日
vol.29, pp.80-65, 2007-03-31

We think that Shiko might have practiced haikai previous to becaming a disciplle of Basyo; however we can not find any evidence to support this hypothesis. Morever Shiko himself makes no mention of practicing haikai before becaming a disciplle of Basyo. Perhaps Shiko is telling the truth. Shiko has been very much misunderstood until now. The reason is that Shiko has been regarded simply as just another haikaishi. We know that Shiko said he studies Zen, Zyukyo, Raoshi (tao), and Chinese poetry diligently starting at around 9 years old. When Shiko became a disciple of Basyo, Basho's haikai would have been a philosophical way of life. In addition, this philosophy would have been considered superior for Shiko. When we look at it from this point of view, it helps us to better understand the method and theory behind Shiko's haikai composition. In this paper, I wish to make it clear from my investigation into Shiko's own words about himself prior to becoming a disciple of Basho, that Shiko considered haikai a philosophical way of life.
著者
美和 千尋 島崎 博也 出口 晃 前田 一範 水谷 真康 川村 陽一 森 康則
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.106-111, 2016-05-31 (Released:2016-07-04)
参考文献数
11
被引用文献数
1

部分浴は体に一部を入浴する方法で,足浴と手浴がよく用いられている.部分浴は温められた部分の大きさにより温熱効果が異なると思われるが,その詳細は明らかとなっていない.そこで,この論文では,足浴と手浴における体温応答がどのように異なるのかを検討する.若年健常者10名(平均年齢23.2±1.3歳)の被験者を対象とし,座位にて安静5分間,足浴として一側と両側の下腿部を,手浴として一側と両側の前腕部を42°Cの湯に15分間浸け,さらに終了後5分間安静を行った.測定項目は鼓膜温,皮膚血流量,発汗量と主観的変化として温熱感と快適感を申告させた.鼓膜温についてはサーミスターにより外耳道の皮膚温を,皮膚血流量として右側の上腕部(非浸水部)をレーザードップラー血流計で,発汗量として右側の上腕部(非浸水部)をカプセル換気法で測定した.両側の足浴と手浴時の鼓膜温は,有意に上昇し,最大上昇温度は入浴しないときに比べ,有意に上昇した.皮膚血流量と発汗量は,全ての負荷条件で有意な増加は認められなかった.温熱感と快適感は全ての入浴負荷で,入浴しないときに比べ,有意に,「暑い」,「快適である」と申告した.温熱感においては両側の足浴,手浴で一側と比べて,「暑い」と申告した.これらの体温応答の変化は,同一身体部位においては温める表面積の大きさに依存し,異なる身体部位では,様々な要因により異なることが示唆された.
著者
大森 康宏
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国立民族学博物館研究報告 (ISSN:0385180X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.421-457, 1984-08-31

The recording of image sequences on film, in other words makingmovies, is one of the principal activities in visual media. The moviewas developed for scientific purposes by Edward Maybridge. Hiscontinuous still photographs of the natural movements of animals andhumans not only provided the basis for further research, but alsorepresented the first instance of the ethnographic film. Subsequentproductions may be classified broadly as either fiction or documentaryfilms.With the development of portable devices for visual recording,the ethnographic film has come to be regarded as an integral part ofanthropological and ethnographic research. Ethnographic filmmakinghas yet to emerge as a definite genre within the field of anthropology.This paper examines certain features unique to ethnographic filmproduction, with particular emphasis on the process of shooting froman anthropological perspective. The ethnographic approach tofilming in field situations is also addressed.Theory and practice is a prerequisite to ethnographic film production,and the cameraman should therefore be a qualified ethnographerwith enough technical knowledge and experience to operate theequipment. Further, an understanding of the history of film ethnographynot only establishes the context within which production takesplace, but also often gives rise to new approaches to research design.In addition, before entering the field, the visual anthropologist isobliged to study general features of production, including patterns offilming, reportage, footage film, direct film, and cinema verite .In conclusion, emphasis has been attached to problems confront-ing the filmmaker under actual field conditions. This encompassesthe composition of the film staff as well as the responsibilities implicitin shooting under diverse social and environmental conditions. Noteven the production of a technically fine work can justify ignoringrelationships between the people filmed and the research team.
著者
奥村 信夫 森 康夫
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
vol.31, pp.32-35, 2015-08

2014年11月6日・7日の2日間にわたり第47回全国中学校社会科教育研究大会(滋賀大会)が開催された。大会2日日(7日)には,守山市立守山南中学校において社会科3年(公民的分野)の授業を公開した。単元「くらしを支える地方自治」のなかで,タブレット端末(SHARP「10.1型手書き学習端末」)と電子黒板(SHARP「BIG PAD Campus」),リモコン型レスポンスアナライザ(内田洋行「EduClick HE」)を使って,グループ・学級討議を行い,討論の活性化を図ろうと試みた。本授業を通して,生徒がどのように積極的に討論し,生徒の思考が深まったのかを検証し,携帯情報端末や電子黒板を活用した授業の効果や課題等について考察を深める。
著者
高木 允 森 康真 田村 慶一 北上 始
出版者
社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.93-104, 2008-03-15

本研究では,ブログの書き手であるブロガに焦点を当て,ブロガをノード,トラックバックによるつながりを辺としたグラフから,数カ月にわたって頻出し,かつ重複を許したコミュニティを発見する手法を提案する.提案手法は,複数のグラフから頻出部分グラフを抽出し,得られた頻出部分グラフに重複を許したクラスタリング手法を適用することにより,重複を許した頻出コミュニティを発見する.頻出部分グラフの抽出については,頻出部分グラフ抽出の問題を頻出アイテム集合抽出の問題に変換し,LCM 法を用いることで頻出部分グラフ抽出を達成している.重複を許したクラスタリングについては,頻出部分グラフをNewman らのクラスタリング手法を応用し,縮約グラフの作成と再クラスタリングすることで達成している.提案手法の有用性を確認するために,複数カ月にわたりブログデータを収集し,頻出コミュニティの抽出を行った.その結果,共通の興味・関心を持って頻出するコミュニティと,複数のコミュニティに重複してクラスタリングされるブロガを発見できた.In this study, we focus on bloggers who are writers of blog articles and propose a technique which extracts frequent and overlapped communities across multiple months from graphs consisting of nodes and edges. A node is defined as a blogger and an edge is a connection of trackback. First, the proposed technique extracts frequent communities by extracting frequent subgraphs. Second, the proposed technique extracts overlapping communities by clustering the extracted subgraphs. In the procedures of extraction of frequent subgraphs, we transform the frequent subgraphs extraction problem to the frequent itemsets extraction problem. In the first step, the LCM algorithm is applied to extract the frequent itemsets. In the second step,we applied the Newman's algorithm to find overlapping clusters. To confirm the availability of proposed technique, we collected the graph data and extracted the frequent communities.As a result, frequent communities which have common interests and the bloggers who are clustered into multiple clusters are extracted.
著者
高木 允 田村 慶一 森 康真 北上 始
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告情報学基礎(FI)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.54, pp.39-45, 2007-05-31

本研究では、Newman らの提案するネットワーク構造解析に基づくクリスプなクラスタリングアルゴリズムを改良し、ひとつのノードが複数のクラスタに重複してクラスタリングされることを許したグラフのクラスタリング手法を提案する。提案する手法は、一度 Newman らの提案するアルゴリズムを用いてグラフのクラスタリングを行った後、それぞれのクラスタをひとつのノードとした縮約グラフの作成を行う。縮約グラフを再度 Newman らの提案するアルゴリズムを用いてクラスタリングし、重複してクラスタリングされるノードを識別する。重複を許したクラスタリングを行うことで、クリスプなクラスタリングに比べ、柔軟なクラスタリングを行うことができる。ブログのトラックバックデータを用いた評価実験を行い、提案手法の有効性を示すことができた。In this paper, we propose a method of overlapping cluster based on network structure analysis which improves the clustering algorithm proposed by Newman et al. Newman's clustering algorithm is the crisp clustering algorithm. In the proposed technique, first, we cluster the nodes using the Newman's algorithm. Then, we make the contraction graph which is considerd a cluster as a node. In addition, we cluster the created contraction graph by using the Newman's clustering algorithm again and identify the overlapping nodes. Overlapping clustering is more flexible than crisp clustering. The experimental results using the trackback data based on blog represented efficacy of proposed technique.
著者
今野 良彦 森 康久仁 松葉 育雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.573, pp.21-26, 2007-02-26
参考文献数
5

本来時系列データからリアプノフ指数を推定する場合,大量のデータを必要とする.しかしながら常に十分な量のデータが得られるわけではない.そこで,著者らはブートストラップ法を用いて,少数時系列データからリアプノフ指数を精度よく推定する方法を提案している.ローレンツモデルなどのシミュレーションデータで実験を行った著者らの提案法は,時系列の自己相関が短くなければブートストラップ法を用いた提案手法の効果が得られることを示した.そこで本研究では,実際の時系列データである日次日経平均と日次TOPIXを用いた検証をする.実験結果より実際の時系列データでもある程度の自己相関があれば提案法の効果が得られた.また経験的であるものの,ブートストラップ長の適切な値の傾向を示すことができた.
著者
大森 康宏 北野 圭介 望月 茂徳 古川 耕平 鈴木 岳海
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

北米と欧州の美術館等における作品と展示方法の考察並びに舞台芸術と映像作品制作の実践から、デジタル映像表現の話法や技法、リテラシー、多角的体験について調査を行った。作品や展示がマルティモーダルな経験構造をとることと、作品制作の過程と社会還元において操作性や身体性、制作技法を共有することの重要性を明らかにし、デジタル映像表現が科学映像における表現と受容の可能性を拡げることを示した。
著者
村井 政史 堀 雄 森 康明 古明地 克英 八重樫 稔 今井 純生 大塚 吉則 本間 行彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.29-34, 2019 (Released:2019-08-26)
参考文献数
13

症例1は72歳男性で,重たいものを持ち上げるなどの重労働を約半年間行い,全身に痛みを自覚するようになった。肩の凝りと痛みが著明なことから葛根湯を,瘀血が存在すると考え桂枝茯苓丸料を合方して治療を開始した。 尿の出が悪化し麻黄の副作用と考え減量し,治療効果を高める目的で蒼朮と附子を加味したところ,体の痛みはほぼ消失した。症例2は53歳男性で,頚椎捻挫受傷や外科的手術歴があり,全身に痛みを自覚するようになった。左右の胸脇苦満が著明なことから大柴胡湯を,瘀血が存在すると考え桂枝茯苓丸料を合方して治療を開始した。便が出過ぎて日常生活に支障を来すため大黄を減量し,肩凝りが著明なことから葛根を加味したところ,体の痛みは消失した。線維筋痛症は治療に難渋することが多いが,煎じ薬ならではのさじ加減により,副作用を軽減し治療効果を発揮させることができた。
著者
田近 正洋 田中 努 石原 誠 水野 伸匡 原 和生 肱岡 範 今岡 大 小森 康司 木村 賢哉 木下 敬史 山雄 健次 丹羽 康正
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.10, pp.900-907, 2015 (Released:2015-10-31)
参考文献数
34
被引用文献数
3 3

【目的】家族性大腸腺腫症(FAP)に対する大腸全摘術後に造設された回腸嚢における腺腫や癌の発生について解説する.【方法】FAP術後の回腸嚢に発生した腺腫あるいは癌に関する36論文をreviewし,その発生頻度,特徴,サーベイランスの方法について自験例も含めて検討した.【結果】回腸嚢における腺腫発生頻度は6.7%~73.9%で,回腸嚢造設から5年,10年,15年で,それぞれ7~16%,35~42%,75%と経時的に増加していた.癌の発生は22例の報告があり,発生までに術後中央値で10年(3~23.6年)を要していた.サーベイランスに関しては,術後6~12ヵ月ごとに内視鏡を行っている報告が多く,適切なサーベイランスを行う上では,最適な腸管洗浄とインジゴカルミンの使用が重要である.【結論】FAP術後の回腸嚢には,高率に腺腫,ときに癌が発生するため,術後早期からの定期的な内視鏡サーベイランスが重要である.