著者
河津 裕貴 丸井 淳己 榊 剛史 森 純一郎 坂田 一郎
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集
巻号頁・発行日
vol.2015, pp.4I14, 2015

<p>SNS上のユーザーインタラクションから情報を抽出する重要性が認識されて久しい.分析に際しテキスト情報から主観や感情を抽出する技術が多く用いられるが,非自然言語の頻出するSNSの感情分析において話者の感情を司る顔文字の重要性は高い.本研究ではSNSの特徴を考慮した実用性の高い顔文字分類を目的とし, 主に教師なし学習を用いて十分に多数の顔文字を分類し,検証する.</p>
著者
緒方 さつき 森松 嘉孝 幸崎 弥之助 工藤 昌尚 田尻 守拡 井 賢治 渡邉 健次郎
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.17, no.3, pp.99-103, 2006

症例は42歳の男性。400ccの自動二輪車運転中に左側の駐車場から無灯火で出てきた普通車の右側面に衝突し,当院へ搬送された。来院時,呼吸は腹式呼吸で,両上下肢の知覚が消失し,両上下肢で徒手筋力テスト0であった。病的反射の出現は認めなかったが,肛門反射が完全に消失していた。重症の下位頸髄損傷を疑うも,頸椎単純X線,頭部CT,頸髄・胸髄・腰髄MRI検査にて異常所見は認めなかった。その後,6年前の急性一過性精神病性障害の既往が判明し,転換性障害の診断にて入院となった。徐々に症状の改善がみられ,リハビリテーション目的にて第13病日に他院へ転院となった。救急の現場において,症状と検査所見が一致しない事例をみた場合,精神病性障害である可能性に留意すべきである。
著者
深田 陽久 橋口 智美 柏木 丈拡 妹尾 歩美 高桑 史明 森岡 克司 沢村 正義 益本 俊郎
出版者
日本水産學會
雑誌
日本水産學會誌 = Bulletin of the Japanese Society of Scientific Fisheries (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.678-685, 2010-07-15
参考文献数
33
被引用文献数
5 9

養殖ブリの高付加価値化を目的として下記の試験を行った。試験 1 ではユズ果汁をブリ飼料に添加することによって血合筋の褐変を抑制できるか検討した。飼料 1 kg にユズ果汁を段階的に添加し,ブリ幼魚に 40 日間給与した。ユズ果汁の添加によって,成長を損なう事無く,血合筋の褐変が抑制されていた。試験 2 としてユズ果汁を添加した飼料を 30 日間与えたブリの筋肉中からユズ香気成分の検出と同定を行い,香りの成分が果汁を添加した飼料より移行し,蓄積されたことを明らかにした。<br>
著者
西村 一将 大井 孝 高津 匡樹 服部 佳功 坪井 明人 菊池 雅彦 大森 芳 寶澤 篤 辻 一郎 渡邉 誠
出版者
公益社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会誌 (ISSN:18834426)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.126-134, 2011-04-10 (Released:2011-04-21)
参考文献数
39
被引用文献数
2

目的:地域高齢者を対象に,20歯以上の保有と1年間での軽度認知機能障害(Mild Cognitive Impairment: MCI)発現との関連を検討した.方法:70歳以上の地域高齢者に対して心身の総合機能評価を2年にわたり実施し,1年目のベースライン調査時にMCIを認めず,かつ2年目の追跡調査が可能であった557名(女性310名)を分析対象とした.認知機能の評価にはMini-Mental State Examination(MMSE)を用い,スコアが26点以上を正常,25点以下をMCIとした.現在歯数については歯冠を残す20本以上の歯の有無について調査した.MCI発現との関連が疑われるその他の項目として,年齢,Body Mass Index,脳卒中既往,心疾患既往,高血圧,糖尿病,喫煙,飲酒,抑うつ傾向,学歴,配偶者の有無,ソーシャルサポートの状態,身体活動度,主観的健康感について調査した.結果:多重ロジスティック回帰分析を用いてベースライン調査から1年後のMCI発現の規定因子を検索した結果,男性において20歯以上の保有が,他の因子と独立して認知機能低下発現に対し有意なオッズ比の低値(オッズ比:0.19,95%信頼区間:0.04-0.82)を示した.結論:現在歯を20歯以上保有することは,咀嚼機能の維持のみならず,高齢期における認知機能の維持においても優位性を持つ可能性が示唆された.
著者
関 宝棋 森 伸一郎 沼田 淳紀
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
地震工学研究発表会講演論文集 (ISSN:18848435)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.185-188, 1997

1993年北海道南西沖地震以降, 著者らが観測している函館港北埠頭 (KTW) の他, KTW近傍の函館海洋気象台 (JMA), 建設省建築研究所による函館開発建設部 (HDB), 運輸省港湾技術研究所による港湾建設事務所 (PHRI) の計4ヶ所で震度3以上の強い地震動が得られた. ここでは, これらの 地震記録を用い, KTWの地震記録との比較を行った. その結果, KTWは, JMAと比較して, 1秒以上の長周期領域で増幅が大きい. 増幅特性は震源の方位により異なる. また, HDBやPHRIでは, JMAに比べると長周期の増幅特性はKTWと同程度であるが, KTWはPHRIとは1秒以下で異なり, HDBとは3秒以下でほぼ同等の増幅特性を有していることがわかった.
著者
森 陵一 小高 鐵男 添田 聡 佐藤 淳 柿野 淳 浜戸 祥平 高木 久 内藤 善久
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.67, no.12, pp.1223-1229, 2005-12-25
被引用文献数
2 32

若い大型動物の中には, 葉状骨(laminar bone)で長骨を形成し, 成長に伴い, ハバース骨に置換されることが知られている.今回は, 若いウシ, ブタ, ヒツジの脛骨を, 走査電顕による反射電子像で観察した.ウシの新生子と1ヶ月齢は典型的な同心円状の葉状骨を示し, ブタの新生子と1ヶ月齢は葉状骨による網目状構造を示した.ヒツジの新生子はウシに類似し, それらの骨量の形成速度は, 6ヶ月齢までは同様で, ブタよりは高比率を示した.ウシの骨単位は6ヶ月齢で最内層に少数現れ, 1歳齢では外層に葉状骨が残存するものの骨全体に現れていた.ブタの6ヶ月齢は最外層を除き, 多量の骨単位が観察された.ヒツジの6ヶ月齢に骨単位は認められず, 1歳齢では中層に限り少量観察されたが, その量はウシよりも高比率を示した.ヒツジの1歳齢ではウシと比べ, 骨単位の広い骨吸収領域が観察され, ヒツジの骨量は6ヶ月齢から1歳齢にかけて減少した.その結果, 1歳齢のウシは, ヒツジよりも高い葉状骨の割合を保持し, ブタは, 最も速い骨単位による骨改造を示した.今回観察した3種の成長過程における長骨の組織像と骨量の相違は, 同一の科(ウシとヒツジ)では, 体重や体高の違いに起因し, 科が異なるブタは, 前者と比べ多産系で, 幼体期に母体への依存度が高いためかもしれない.言い換えると, ブタの骨量の低さは歩行の遅さを強く示唆する.また, それぞれの動物間で, 骨単位の初期形成の部位が異なることが推察されたが, この, 点と骨改造の正確な開始時期は, 今後, 連続的な経齢変化を追って検討する必要がある.
著者
森山 美香 伊東 美佐江
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.5_823-5_836, 2017-12-20 (Released:2017-12-27)
参考文献数
95

本研究は,終末期医療に関する法的整備が整っている米国の文献と比較し,日本のクリティカルケア領域のDNARに関する看護実践上の課題を明らかにすることを目的に,文献検討を行った。文献は,「DNAR指示が出される患者の病態・背景」「DNARの意思決定をする家族の状況」「医師によるDNAR指示の判断基準の不明瞭さ」「DNARの意思決定を支援する看護師の認識と看護実践」に分類された。両国ともに事前指示をもつ患者は少なく,クリティカルケア領域における看護実践に違いはなかった。米国ではDNAR指示に関するガイドラインやマニュアルが整備されているが,クリティカルケア看護師はDNARの意味を誤認し,DNAR指示後に治療やケアの差し控えを行っていた。日本ではDNAR指示のマニュアルを整備している施設は少なく,看護師は米国同様にDNARの意味の誤認し,家族へかかわる困難を感じていることが推測された。
著者
増岡 秀次 森 満 野村 直弘 桜井 美紀 吉田 佳代 岩渕 由希子 青木 典子 白井 秀明 下川原 出 浅石 和昭
出版者
特定非営利活動法人 日本乳癌検診学会
雑誌
日本乳癌検診学会誌 (ISSN:09180729)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.63-68, 2006-03-25 (Released:2011-03-02)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

日本女性の乳癌死を減少させるために, 症例対照研究によるリスク因子解析により検診推奨者を選定した。当院で手術を施行した原発乳癌2,103例を症例とし, 当院受診者で受診時乳腺疾患のない3,131例を対照とした。解析結果より, 次のとおり検診推奨者を選定した。 (1) 35歳以下のhigh risk group : 1.初潮が11歳以下と早い者, 2.良性乳腺疾患の既往がある者, 3.癌の既往がある者, (2) 閉経前 : 1.初潮が早い者, 特に11歳以下の者, 2.肥満度 (BMI) が18.5未満と痩せの者, 3.既婚者で未産の者, 4.出産しても授乳をしていない者, 5.独身者, 6.第1度近親者あるいは第2度近親者に乳癌の家族歴のある者, (3) 閉経後 : 1.肥満度 (BMI) が18.5未満と痩せの者および25.0以上の肥満の者, 2.体重が58kg以上の者, 3.既婚者で未産の者, 4.出産しても授乳をしていない者, 5.独身者検診は癌の発生の予防ではなく, 早期発見により癌による死亡を減少させるためのものである。厚生労働省は「健康日本21」において, 2010年の受診率目標を1997年の50%増の約39%を掲げている。しかし目標が達成されたとしても対象者の半分以上が依然として検診を受けていない状況になっている。以上を踏まえ, われわれは症例対照研究によりリスク要因を特定し, 効率のよい検診を進めるため検診推奨者を選定した。
著者
森 豊彦
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.701, 2005

中米ホンデュラスの標高約1600mから2300mの山地において、ガジナコガネ<i>Phyllophaga obsoleta</i>(甲虫目コガネムシ科)の生活史、食性、行動、発生消長等を2000年4月から10月までの間に調査した。生息地の優占植生は松と広葉樹の混交林であった。主な土地利用形態は野菜栽培、トウモロコシ栽培、ジャガイモ栽培、果樹、コーヒー栽培、牧場であった。生活史において、成虫の出現期間と産卵期間は4月上旬から7月上旬、幼虫期間は4月から12月、蛹化期間は12月から4月までと推定された。産卵は土中へ行われ、孵化から幼虫、蛹、羽化までも土中で行われた。卵から成虫までの発育期間は1年であると推定された。幼虫の食性において、1令幼虫は主に土壌中の有機物を摂食し、2令と3令幼虫は有機物だけでなく、多様な草本植物、野菜、作物、牧草、コーヒー樹等の根を摂食した。一方、成虫の食性では、室内実験と野外調査の結果、コナラ属の樹木、特に落葉広葉樹のコナラ類の葉や低木果樹のモラ(バラ科)の葉をより好んで摂食した。しかし、成虫は果樹のリンゴ類、モモ類、アボガド類の葉への摂食は比較的少なく、柑橘類の葉の摂食は見られなかった。成虫は夜間に活動し、灯火に飛来した。交尾行動は5月において、午後7時頃から午後9時頃に観察された。日中、成虫は土中や落葉下に潜入して活動を休止した。成虫の発生消長において、雨期が始まる4月上旬からはじまり、5月中旬から下旬にかけて出現数が最大になり、6月下旬から7月上旬に終息した。土中で羽化した成虫が地上へ出現する引き金は、乾期から雨期に変わり、降雨量が10mm前後の日が数日間続くことであると考えられた。成虫は野菜、作物の害虫として大発生し、街灯がある村全域に大量に飛来した。
著者
石川 陽介 森下 一樹 寺島 裕雅 山城 真里子 木村 州作 片山 幸広 出田 一郎 平山 統一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101276, 2013

【はじめに】大動脈瘤に対する手術療法においてステントグラフト内挿術(endovascular aneurysm repair;以下、EVAR)は2006年7月に腹部用、2008年3月に胸部用が薬事承認となった。EVARは低侵襲の手術であり、術後リハビリテーション(以下、リハビリ)介入が必要ない場合も多く存在するという見解もある。しかし、大動脈疾患患者は虚血性心疾患患者と比較し、高齢でしかも併存症、合併症を有していることが多いという報告もある。また、我々が調べ得た範囲では本邦でのEVAR 術後のリハビリに関する報告は散見されるのみであった。当院でのEVAR術後のリハビリの現状をまとめ、理学療法介入の必要性について検討した。【方法】2011年10月1日から2012年9月30日までの間に当院にて腹部大動脈瘤(abdominal aortic aneurysm;以下、AAA)又は胸部大動脈瘤(thoracic aortic aneurysm;以下、TAA)に対するEVAR目的に入院された患者で、術後リハビリ依頼があった連続48例(男性36例、女性12例、平均年齢78.85±5.72歳)とした。当院でのEVAR術後の設定在院日数(術当日含む7日間)の1.5倍である11日以上を要した例を遅延例とし、それ以外の例を順調例とし、診療録より後方視的に検討した。【倫理的配慮、説明と同意】当院では、倫理的配慮として入院時に御本人、又はその御家族に個人情報保護に関する説明をしており、個人が特定されないことを条件として院内外へ公表することに同意を得ている。【結果】EVAR 48例中、手術部位別ではAAA38例(男性30例、女性8例、平均年齢78.66±6.15歳)、TAA10例(男性6例、女性4例、平均年齢79.60±3.53歳)であった。順調例は43例(AAA37例;平均年齢78.49±6.14歳、TAA6例;平均年齢80.33±3.45歳)であり、遅延例は5例 (AAA1例;年齢85歳、TAA4例;平均年齢78.50±3.35歳) であった。入院前ADLはBarthel Index(以下、BI)が100点を自立、95点以下をADL低下とし、順調例は自立39例(AAA33例、TAA6例)、ADL低下4例(AAA4例、TAA0例)、遅延例は自立2例(AAA1例、TAA1例)、ADL低下3例(AAA0例、TAA3例)であった。離床開始日は全体2.17±0.75日で、順調例2.07±0.25日(AAA37例;2.05±0.23日、TAA6例;2.17±0.37日)で、遅延例3.00±2.00日(AAA1例;2日、TAA4例;3.25±2.17日)であった。術後平均在院日数は全体8.96±5.08日(中央値8.00日)、順調例7.84±0.83日(中央値8.00日)、遅延例18.60±11.76日(中央値12.00日)であった。遅延理由としては、術後合併症(仮性動脈瘤、下肢虚血による大腿切断等)や転院調整によるものであった。転帰は自宅復帰39例(AAA34例、TAA5例)、転院9例(AAA4例、TAA5例)で、転院率はAAA10.5%、TAA50.0%であり、TAA患者の転院率が高かった。転院の理由としては継続加療(リハビリ)目的が2例、療養目的が7例であった。入院前ADLが低下していたAAA4例 (術後平均在院日数8.00±0.71日)の転帰は自宅復帰2例、転院2例であり遅延例は認めなかった。一方、TAA3例(術後平均在院日数22.00±14.14日)は全て遅延例であり、転院していた。【考察】EVARは低侵襲な手術であり、術後リハビリ介入が必要ない場合も多く存在するという見解もある。本研究においては特にTAAの患者で入院前ADLが低下している症例では術後在院日数の長期化や自宅復帰困難な症例を多く認めた。一方、AAAは術後順調例が多く、殆どの症例が自宅復帰可能であったが、少数の症例では入院前ADLが自立しているにも関わらず、術後在院日数が長期化する症例も存在していた。EVAR 術後におけるAAAの多く(38例中34例;89%)は自己完結型の治療が可能であるが、TAAには転院を必要とする例(10例中5例;50%)が多いため、TAAにおいては地域完結型の包括的心臓リハビリを提供する必要性があり、TAAでは術前を含めたより早期かつ密接な理学療法介入が必要であると考えられた。AAAにおいては入院前ADL状況から術後経過を予測することは困難であり、希に合併症などにより在院日数の長期化も認めるため、手術部位に関わらず理学療法介入は必要である。【理学療法学研究としての意義】EVAR術後は手術部位に関わらず、全ての症例に対してより早期かつ密接な理学療法介入によって適切なアウトカムの設定や円滑な地域完結型の包括的心臓リハビリの提供が出来る可能性が示唆された。
著者
滝本 佳予 西島 薫 森 梓 金 史信 小野 まゆ
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
pp.14-0039, (Released:2015-11-20)
参考文献数
13

全身の痛みを中心とする多彩な症状を訴え心因性多飲を合併する患者に対し,薬物療法・認知行動療法と併せて行った,患者の語りの傾聴と対話を重視した診療が有用であった1例を報告する.症例は68歳の女性,全身の痛みを訴えて当科を紹介受診した.併存合併症として心因性多飲による低ナトリウム血症と意識混濁,むずむず脚症候群,過敏性腸症候群,睡眠障害,失立失歩があり,ドクターショッピングを長年続けた後の受診であった.患者の語りの傾聴と対話により,まず心因性多飲が改善した.次いで痛みの訴えを線維筋痛症・中枢感作性症候群と診断し薬物療法・認知行動療法を実施したところ,ドクターショッピングをやめ症状も軽減した.“説明不能な”痛みの訴えはペインクリニックではたびたび遭遇する.器質的原因が明確ではない疾患の症状を一元的にとらえ,診断治療を行う役目を果たすためには,患者との語り合いにも問題解決への可能性があることが示唆された.
著者
志賀 裕二 下江 豊 千種 誠史 楠 進 森 雅裕 栗山 勝
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.385-389, 2018 (Released:2018-06-27)
参考文献数
19
被引用文献数
1

症例は28歳の男性.サイトメガロウイルス(cytomegalovirus; CMV)感染後に四肢しびれ感,両手の脱力が出現し,末梢神経障害を認めた.血清IgM抗CMV抗体,IgM抗GM2,抗GalNAc-GD1a抗体が陽性で,脳脊髄液で蛋白細胞解離を認め,神経伝導検査で脱髄型ニューロパチーを示した.CMV感染後急性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(acute inflammatory demyelinating polyneuropathy; AIDP)と診断し,免疫グロブリン大量療法で軽快退院した.神経伝導検査は4ヶ月後に正常化した.CMV感染後AIDPで報告されているランビエ絞輪蛋白モエシンに対する抗体が治療前血清で陽性を示し,4ヶ月後,神経伝導検査が正常化するとともに同抗体が陰性化し,病態への関与が考えられた.
著者
仁科 拓也 上森 麻美 佐藤 智彦 浅野 彰彦
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.395-398, 2018 (Released:2018-06-27)
参考文献数
8

症例は52歳男性.44歳時に神経梅毒治療歴あり.3ヵ月前より持続する頭痛,記憶障害,発熱を訴え,左片麻痺を呈し頭部MRI拡散強調画像で右側頭葉に高吸収域を認めた.髄液検査で細胞数増加,梅毒検査陽性を認め神経梅毒再発と診断,Lissauer型進行麻痺と考えられた.梅毒抗体価が治療により低下しない例での再発,画像上脳血管障害類似の所見を呈すること等,神経梅毒の管理上の問題を痛感した1例であった.
著者
松永 安由 松本(高木) 来海 山下 舞亜 森(木津) 久美子 廣瀬 潤子 冠木 敏秀 酒井 史彦 成田 宏史
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.105-113, 2019 (Released:2019-06-14)
参考文献数
27

乳児の経口免疫寛容の誘導に関して母親へのプロバイオティクス投与の有効性が報告されている。本研究では, 母親マウスにLactobacillus gasseri SBT2055 (LG2055) と食物抗原を同時に投与し, その母乳で育った仔マウスの免疫寛容応答に与える影響を評価した。雌マウスにカゼイン食 (C群) , 卵白食 (E群) , 卵白+LG2055食 (E+LG群) を交配前から離乳まで摂取させ, 仔マウスには離乳後にオボアルブミン (OVA) を抗原としたアレルギー性下痢誘発試験を行った。その結果, 仔マウスの下痢発症率はE群に比べてE+LG群で有意に低下した。また, LG2055を投与した母親マウスの母乳中の総IgA濃度とOVAと特異的IgAの免疫複合体 (IgA-IC) 濃度が有意に増加した。以上より, 母親のLG2055摂取は仔マウスの経口免疫寛容を増強した。この増強には母乳中のIgA-ICが関与することが示唆された。
著者
萩田 賢司 森 健二 横関 俊也 矢野 伸裕
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.B_22-B_27, 2017-02-01 (Released:2017-02-01)
参考文献数
7

飲酒運転取締りによる飲酒運転事故抑止効果を明らかにするために、GIS による飲酒運転取締り・飲酒運転事故の統合分析ツールを活用した分析を行った。東京都と岡山県のデータを活用して、飲酒運転取締り地点の近接空間の飲酒運転事故件数を、飲酒運転取締り前後で比較したところ、岡山県は事後に飲酒運転事故が大きく減少していたが、東京都はそのような傾向がみられなかった。この原因としては、飲酒運転厳罰化により、東京都では 15 年間で飲酒運転事故が約 95%も減少し、加えて代替交通機関も発達しており、飲酒運転取締りによる飲酒運転抑止効果が表れにくい悪質運転者による飲酒運転が多く残されているためと推察される。岡山県の減少率は約 65%であり、飲酒運転取締りによる飲酒運転事故抑止効果が出現する余地があるのではないかと考えられた。
著者
森本 壮亮
出版者
経済理論学会
雑誌
季刊経済理論 (ISSN:18825184)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.54-64, 2014-10-20 (Released:2017-04-25)

This paper examines Dumenil and Foley's "New Interpreta-tion(NI)" of Marx's value theory as an interpretation of Capital. We can summarize the NI as follows. First, it bridges the dimensions of labor values and prices by the concept of the "value of money," which is defined as the ratio of aggregate labor time to aggregate money value added. Second, it interprets Marx's value theory as a macroeconomic labor theory and the equality between total value and total price as the net one in a given period. Third, it defines the value of labor power as the money wage multiplied by the "value of money," and argues that exploitation is an issue of the distribution of the net value added between workers and capitalists. Although Dumenil and Foley claim that the NI is just what Marx tried to argue in Capital, Marx's texts and manuscripts of Capital show the opposite. Marx's starting point was to criticize classical economists who explained that wage was a proportion of the net value added and exploitation was a distributional issue. The argument of the NI is totally the same with the one of classical economists. In contrast, Marx argues that the capitalist exploitation is for workers to be absorbed into the circuit of capital whose sole aim is to increase the value. Also Marx points out that variable capital, which is used for wage, is the value that workers created not in the present but in the past. These Marx's arguments show that Marx's value theory is quite similar to the "temporal single-system interpretation (TSSI)." Therefore the orthodox(or Sraffian)interpretation of Marx's value theory and the transformation problem is also invalid as an interpretation of Marx. First, although the orthodox interpretation claims that Marx considers exploitation as an issue of the distribution of labor for production, Marx doesn't. Marx's exploitation theory is constructed based on the concept of the circuit of capital, and it is irrelevant to the distribution of labor for production. Second, although the orthodox interpretation claims that the dimension of the transformation is labor time, such claim is both unrealistic and alien to capitalism. Capitalists'criteria are their rates of profit or amounts of profit, not their "rates of profit" of labor time. There is no reason for such "rates of profit" to be uniformed at least in a capitalist society. Thus we conclude that the most appropriate new interpretation of Marx's Capital is the TSSI.