著者
橋本 巌 澤田 忠幸 松尾 浩一郎
出版者
愛媛大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2005

本研究では、成人期および成人になろうとする青年期における感情経験(つらさや感動)によって「泣くこと」が、自己の内面や他者との関係を揺り動かし内省する機会となり、自他認識の変容をもたらすという可能性を検討した。19年度は、中年期(看護師、およびボランティア)を対象として、成人版の泣き経験状況と泣きによる心理的変化を調査・分析した。また青年対象では、つらさによる泣き(17、18年度)に加えて感動による泣きを検討した。本年度までの主要な成果を報告する:1.泣きを経験する状況本研究では、結果的な泣きの頻度ではなく、泣きそうになって自己抑制する喚起過程を考慮した新たな泣き経験尺度を開発した。自分の直接的つらさによる泣き状況には、青年・成人共通に、A愛着危機、B自己確信のなさ、があり、成人ではC対人的葛藤(対人的業務にかかわる)が見出された。一方、代理的(共感的)な泣き状況因子は、青年・成人ともにD身近な他者の肯定的(またはE否定的)感情、Fメディア・物語の他者の感情、の3因子が抽出された。代理的泣きの傾向は、過去の感動経験の影響を受ける。また代理泣き傾向は、感動時の実際の落涙を促すと実験的に実証された。直接・代理の泣き状況因子には年齢差を示すものがあった。2.つらい状況での泣きによる心理的変化は、(1)自己意識の変化(共通に、(1)解放・安堵、(2)自己の直視・意欲(3)否定的現実の実感、成人では他に(4)消極的態度、(5)絆の実感)と(2)他者への影響(6)泣きへの否定的評価、(7)被援助・慰め、成人では他に(8)他者の巻き込み)とから捉えられた。泣きによる他者への影響は自己意識の変化と相関した。心理的変化は気分変動だけでなく持続的な人格面も含み、肯定・否定両面がある。また上記の(1)、(2)、(5)は感動による心理的変化とも共通する。3.泣きによる心理的変化に影響する要因として、泣きエピソードにおける感情、出来事の種類や、泣く際の対人表出選択(ひとりで泣くか、他者の前で泣くか)、性別、パーソナリティ要因(多元的共感性、ストレス対処)の関与が示された。上記諸要因間の関係の考察・モデル化が課題である。
著者
山元 亮典 橋本 周司 三輪 貴信 ギエルモ エンリケズ フェイイー ヤップ
雑誌
第78回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2016, no.1, pp.255-256, 2016-03-10

リズムタップダンスでは,一定のリズムでもってステップを踏むことが,よいパフォーマンスの条件とされている.したがって,ダンサーがリズムタップダンスの技術を修得する際には,ステップのリズムを定量的に計測し,演奏の特徴を評価することが役立つと考えられる.そこで,本論文では,9軸モーションセンサと圧力センサを内蔵し,ステップのタイミングと種類を同時に計測することが可能なリズム計測タップシューズを提案し,実際にこのシューズを用いてユーザ実験を実施することで,提案手法の有効性を評価する.また,提案手法によって計測されたリズムにダンサーの演奏の特徴がどのように現れるかを考察した結果について述べる.
著者
岡部 繁男 橋本 浩一 渡辺 雅彦
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2013-06-28

学習や経験依存的な脳機能は、生後の臨界期に獲得され、この時期に脳回路はシナプスリモデリング・刈り込みを受ける。イメージングと電気生理学により、臨界期の回路改変へのグリアの影響を解析した。大脳皮質ではミクログリアが組織体積を複数の領域に区切り、それによって錐体細胞樹状突起をシナプス動態の異なる領域に分節することが明らかになった。一方で小脳の登上線維の刈り込みにおいてミクログリアが重要な役割を果たすことがミクログリア特異的なCsf1r-cKOマウスの関与により明らかとなった。ミクログリアによる制御は貪食以外の機序による可能性が高く、抑制性シナプスの機能を介して影響を与える可能性を示唆した。
著者
向井 由紀子 橋本 慶子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.467-473, 1978-10-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
7
被引用文献数
2

1) 被験者中60%をしめるA型の持ち方をする者は幼いころよりとくに母親に継続的な訓練をうけたようであった.2) 一定の作業を行った場合, 作業能率に及ぼす影響は持ち方の違いよりも, 個人の器用さや箸を使う熟練度のほうが大であった.3) 筋活動度は伝統的な持ち方の方が第一指 (母指) の活動が大きく現われた.他の持ち方を伝統的な持ち方に変えた場合よりも, 伝統的な持ち方を他の持ち方に変えたほうが筋活動度の増加は大であった.
著者
後藤 真孝 橋本 裕司
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.1993, no.109, pp.1-8, 1993-12-10
被引用文献数
15

本稿ではMIDIとLANを融合した分散協調システムについて述べる.本システムでは,コンピュータの支援を受けながら複数のユーザがMIDI楽器を合奏できる.本システムにより,MIDIに対応した専用機器を用意しなくても,汎用のコンピュータを組み合わせて様々な演奏の支援や特殊効果を得られる.例えば,広域ネットワークを使って遠隔地間の合奏をしたり,他のユーザの演奏状態を視覚化したり,演奏情報に反応して変化するCGを表示したりすることなどができる.これらを実現するために,MIDIプロトコルをそのまま用いるのではなく,ブロードキャストなどの特徴を持つ通信プロトコルRMCPを設計した.本システムは実際にネットワークで結ばれたワークステーション上に実装され,3人での合奏が可能であった.This paper presents a distributed cooperative system, which integrates MIDI and LAN. This system allows the users to play an ensemble with computer support. Because of the integration of MIDI and LAN, various kinds of support are obtained by exploiting existing computers without special MIDI materials. For example, the users may play a remote session through a wide area network. They also may see visualized information of other user's play, and computer graphics reacting to the play. This paper also shows RMCP (Remote Music Control Protocol), which is an extension of MIDI protocol; it supports broadcasting, for example. This system was implemented on workstations connected to Ethernet. In our experience, 3 users were actually able to play an ensemble.

2 0 0 0 OA 大武鑑

著者
橋本博 編
出版者
大洽社
巻号頁・発行日
vol.巻之2, 1935
著者
橋本 鉱市
出版者
東京大学大学院教育学研究科
雑誌
東京大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13421050)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.97-107, 2016

The purpose of this article is the content analysis of university advertisements placed in the exam-study magazine "Keisetsu-Jidai" during the 40 years following World War II. Especially focused on the graphics (non-textual matter), it traces universities' publicity activities and their transformation. Findings were as follows. 1) Buildings pictures have been used as a symbol of reconstruction of universities during postwar Showa era. 2) Chat scenery of students and laboratory pictures has increased since the late 1960s. 3) Portraits placed only one student also increased after the late 1970s. It is assumed that these changes reflect the transformation of the image for university.
著者
橋本 泰央 小塩 真司
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
pp.28.1.4, (Released:2019-05-16)
参考文献数
37
被引用文献数
1

本研究では辞書から抽出した対人特性語から円環構造が見出されるかどうかを検討した。大学生719人の回答をもとに主成分分析を行い,第1主成分と第2主成分からなる平面上に対人特性語をプロットすると円環状の配置が得られた。また海外の先行研究同様,支配性と親密性と解釈可能な2つのほぼ直交する軸が見出された。このことから対人特性の円環構造と支配性・親密性の軸の汎文化的特性が示唆された。外向性を表す対人特性語群の配置も先行研究通りであった。一方,協調性を表す対人特性語群の配置は海外での先行研究とは異なり,親密性寄りに配置された。今回円環上に配置された対人特性語群は語彙プールとしての活用が今後期待される。
著者
松本 洋一郎 德永 保 吉川 潔 辰巳 敬 真壁 利明 橋本 周司 松尾 豊 坂田 一郎 上山 隆大 浦島 邦子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究促進費
巻号頁・発行日
2014-04-01

シンガポールは一人当たりGDPではわが国を超え、大学ランキングでも台頭しているが、わが国における政策研究は限られていた。本研究では、シンガポールの科学技術政策(特にバイオメディカル推進策)について、文献調査や現地での専門家への聞き取り等によって明らかにした。シンガポールでは産業政策のために科学技術政策が実施されているといっても過言ではない。著名研究者を大量に誘致するなどし、旧来から行われてきた多国籍企業誘致を先端科学分野の研究開発へ拡充する形で、成功を収めてきている。大学政策においては、テニュア制度や会計、財務など、モデルとする米国の事例から徹底的に学ぶ姿勢が見られた。
著者
橋本 成仁 山本 和生
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 = Papers on city planning (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.769-774, 2011-10-25
被引用文献数
1 1

自動車の利用を前提とした社会への移行が進み、地方都市やその郊外部、あるいは中山間地域においても地域構造自体が自動車依存型となっている。このような地域では多くの高齢ドライバーが不安を抱えながらも運転を継続し続けざるを得ない状況にある。今後、高齢ドライバーのより一層の増加が確実な日本において、運転免許を返納しても生活できる環境の創造は重要な課題である。そこで本研究では、岡山県において運転免許返納者を対象にアンケート調査を実施し、運転免許返納の条件や、返納後の生活で困っている要因について分析を行った。分析の結果、自主的に運転免許を返納するためには公共交通のサービスレベルが大きく影響していることを明らかにした。