著者
池田 まこと
出版者
美学会
雑誌
美学 (ISSN:05200962)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.37, 2016 (Released:2017-07-18)

Language crisis occurred mainly in Germany and Austria of the early 20th century. It means the Situation that a language losts a function of the reality recognition. R. M. Rilke (1875-1926) is one of poets who experienced the language crisis. His crisis has been often compared with that of Hofmannsthal (1874-1929) conventionally. However, the comparisons were intended to rather give the common points of both. Therefore, this article tries to make their difference clear, and throw light on the originality of Rilke’s crisis. This report compares Rilke with Hofmannsthal with following three points: (1) the aspect of the crisis, (2) the factor of the crisis, (3) the way to solve the crisis. In conclusion, the aspect of Rilke’s crisis is more existential than that of Hofmannsthal’s crisis. The crisis of Rilke occurs on a road establishing the view of the world of own, and, for it, the crisis of Hofmannsthal produces it to defeat a view of the world that was already established. The former tries to solve his crisis through verbal expression, and, for it, the latter pursues nonverbal expression.
著者
池田 誠
出版者
日本イギリス哲学会
雑誌
イギリス哲学研究 (ISSN:03877450)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.31-44, 2014-03-20 (Released:2018-03-30)
参考文献数
38

John Rawls is famous for his Kantian conception of justice, and also well known for reviving the significance of Henry Sidgwick's ethical thought in contemporary ethics. Rawls praises Sidgwick partly because Sidgwick attempted to justify a Method of Ethics by appealing to its ʻreflective equilibriumʼ with our considered judgments. However, this interpretation of Sidgwick by Rawls has been criticized by some utilitarians such as Peter Singer. I argue that, against his wish, Singer rather supports Rawlsʼs interpretation of Sidgwick as a reflective-equilibrium-theorist. Furthermore, I defend Rawlsʼs reflective-equilibrium methodology by pointing out his conception of justification behind it and by showing Singerʼs inappropriate conception of objectivity in ethics.
著者
池田 香織 濵崎 暁洋 幣 憲一郎 稲垣 暢也
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.11, pp.805-811, 2015-11-30 (Released:2015-11-30)
参考文献数
13

食事療法の摂取エネルギー量設定方法のうち,標準体重による方法と基礎代謝量推定式による方法の有用性について,入院糖尿病患者の体重変化率を指標として検討した.2013年の入院患者429名中,基準に該当した164名を解析対象とした.標準体重に25を乗じて算出したエネルギー量から実際に摂取したエネルギー量を差し引いた値と入院2日目以降の体重変化率との相関係数は-0.26で,基礎代謝量推定式にて算出した場合の相関係数は,Harris-Benedict式-0.48, Oxford式-0.42,国立栄養研式-0.44,京大式-0.40であった.同様に4日目以降の体重変化率との相関係数は順に,-0.34,-0.51,-0.48,-0.50,-0.48であった(P<0.001).京大式【10×体重-3×年齢+750+125(男性のみ)】を含む基礎代謝量推定法は,標準体重法よりも体重変化率との関連が強かった.
著者
池田 尚志 松本 忠博
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.282-292, 2011-04-01 (Released:2011-04-01)
参考文献数
35

点字は視覚障害者にとっての文字である.晴眼者が用いる墨字のテキストは点字に変換しなければ視覚障害者は読むことができない.一方,手話は聴覚障害者が使用する言語である.聴者の音声言語との間の対話には手話通訳が必要である.このような言語コミュニケーションのバリアを克服するために点訳ボランティアや手話通訳士などが携わっているが,対処できる量には限りがあり理想の状態からは程遠い.技術的な支援が期待されるゆえんである.本稿では,点字と手話を中心に言語バリアフリーへ向けて自然言語処理技術の側面から我々が行ってきた研究について解説する.
著者
池田 勇太
出版者
公益財団法人 史学会
雑誌
史学雑誌 (ISSN:00182478)
巻号頁・発行日
vol.125, no.2, pp.61-79, 2016

東京大学大学院法学政治学研究科附属近代日本法政史料センター原資料部が所蔵する「安場保和関係文書」マイクロフィルム中にある「政体」と題される史料は、政体書の草案であると考えられる。慶応四年三月に起草され、執筆者は副島種臣と推定される。ただし、なぜ安場家文書中にこの史料があるのかは不明である。本稿では政体書作成の経緯を確認したのち、他の草案や政体書などとの条文比較を行い、本史料が政体書の草案であることを論じた。<br>本史料からは、明治政府がその最初の段階において、西洋の立憲制を参照しながら国民規模の政治参加にもとづく政治体制をつくろうとしていたことがわかる。また天皇が二十四歳になるまでは名代を置くことや、神祇官が制度のなかに書き込まれていないことなど、維新政権の性格を考えるうえで重要な構想が少なからず見られる。ただし「政体」は案としては廃棄され、もう一つの草案である「規律」を下敷きに政体書が書かれ、その過程で「政体」も参照されるという位置に置かれたと見られる。<br>従来、政体書は発布直後から議政官・行政官の兼任が行われて議政・行政を分離する原則に矛盾し、議政官下局も有名無実の議事機関となっていた状況が指摘されてきたが、「政体」に書かれた議会制度構想を念頭に置くと、政体書が高邁な理想をかかげつつも、草案より現実に即したかたちで書かれていたことがわかる。また、戊辰戦争で国内の形勢がほぼ固まった慶応四年冬以降、明治政府によって試みられた議会制度の導入についても、「政体」の影響が考えられる。明治政府発足当初の立憲政体導入の試みについて、再考を迫る史料と言えるだろう。
著者
池田 和子
出版者
地理空間学会
雑誌
地理空間 (ISSN:18829872)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.19-33, 2013 (Released:2018-04-11)

本稿は,ご当地バーガーの開発を通じて開発主体が生産・再生産する場所イメージを明らかにする。本稿では開発主体の語りに加え,無意識に生産される場所イメージを解明するために主体の選択行動を分析の対象とした。福井県坂井市三国町の三國バーガーに関する分析の結果,(1)三國バーガー開発は派生的に行われ,商品の方向づけもメンバーの人間関係や助成の要件の影響を受けていた。(2)三國バーガーの材料の選択と命名の過程には,地域ブランドの密接関連性向上と地域ブランドとしての正当化がみられる。(3)プロジェクトはまちづくり活動や三國バーガー開発に際し,他の複数の場所イメージを断片的に参照していた。その上に特産品を重層的に重ね,三國バーガーのイメージが創出されていた。三國バーガーはプロジェクトが目指す三国を表した商品である。
著者
池田 博
出版者
日本大学
雑誌
日本大学芸術学部紀要 (ISSN:03855910)
巻号頁・発行日
vol.32, pp.A5-A23, 2000-07-15

映画の表現構造の原理は事実と主題との狭間を縫い歩くことから始まったとも言えるが、未だ嘗て事実そのままのドキュメンタリも劇映画もあり得なかった。筆者自身の興味も物語として表現されたものと実世界との相違に興味があったが、マルセーユまで行ってエドモン・ダンテスが幽閉された物語、つまり日本では「巌窟王」と訳されたデュマの「モンテクリスト伯」に描かれたシャトーディフの岩窟を見たときの、フィクションとそのモデルとの違いが更にその思いを強くしたのだった。この小論も如何にしてフィクションは成立するかという原理のためのアプローチの一つである。
著者
加藤 真司 桑沢 保夫 石井 儀光 樋野 公宏 橋本 剛 池田 今日子
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.39-44, 2012 (Released:2013-04-16)
参考文献数
11
被引用文献数
3 4

集合住宅における緑のカーテンによる夏季の室内の温熱環境改善効果を明らかにするため,独立行政法人都市再生機構が所有する集合住宅を使用して,様々な条件設定をした複数の住戸の室内温熱環境改善効果を比較測定したものである。比較条件は,緑のカーテンの設置量の違いと,代替手法である簾との比較である。室内温熱環境の実測の結果,緑のカーテンによる室温の低下が確認できたとともに,簾よりもより大きな室温低下傾向が確認できた。また,この結果をもとに緑のカーテンの節電効果を算定した。さらに,戸窓の開放時においては,通風性と日射遮蔽性を併せ持つ緑のカーテンの特徴から,体感温度においても簾と比べて緑のカーテンの有利性が確認できた。
著者
石塚 晴通 小野 芳彦 池田 証寿 白井 純
出版者
日本語学会
雑誌
國語學 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.86-87, 2001-03-31

「日下部表」と称する資料は,JIS漢字第1次規格(JIS C 6226-1978)の原典の一つである「標準コード用漢字表(試案)」(情報処理学会漢字コード委員会,1971年)の土台となった漢字表であり,日下部重太郎の著した『現代国語思潮続編』(中文館書店,1933年)に附録「現代日本の実用漢字と別体漢字との調査及び「常用漢字」の価値の研究」として掲げられている。この研究では,(1)JIS漢字の字種の選定に果たした日下部表の位置,(2)日下部表の「別体漢字」とJIS漢字における異体字の扱いとの関係,(3)日下部表に反映した現代日本語の漢字の使用実態,の3点について日下部表の内容を検証し,次の結論を得た。(1)日下部表掲載の漢字6473字のうち,JIS X 0208:1997で符号化可能なのは約90%,JIS X 0213:2000で符号化可能なのは約97%である。(2)日下部表の「別体漢字」796字のうち,JIS X 0208:1997で符号化可能なのは約68%,JIS X 0213:2000で符号化可能なのは約84%である。日下部表の「別体漢字」の枠組みと,JIS X 0208:1997及びJIS X 0213:2000のそれはおおむね合致している。枠組みの精度は同程度である。(3)JIS X 0208:1997に不採録の漢字667字のうち,461字がJIS X 0213:2000に採録されており,これらは現在でも使用の実績が確認できるものである。また,研究・調査のために文字を符号化し電子化テキストとする際に問題となるのは・JISの包摂規準の適用方法である。特に問題となるのは,「互換規準」に該当する29組の漢字,人名許容字体別表・常用漢字康煕別掲字の漢字104字,及び包摂規準の変更・追加に該当する漢字であり,これらに留意し,適用した包摂規準を明示すれば操作可能なかたちで情報交換が可能である。
著者
福本 陽平 岸本 幸広 前田 直人 西向 栄治 金藤 英二 岡田 克夫 内田 靖 河野 通盛 是永 匡紹 池田 弘 藤岡 真一 西野 謙 河野 友彦 辻 恵二 平松 憲 柴田 憲邦 児玉 隆浩 周防 武昭
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.484-489, 2007 (Released:2007-11-01)
参考文献数
19
被引用文献数
1 2

2006年開催の第85回日本消化器病学会中国支部例会では,シンポジウム「急性肝炎の疫学的変遷」が行われ,最近の中国地方における急性肝炎の発生動向が報告された.その結果,最近5∼25年間の総計1,815症例の報告では,ウイルス性急性肝炎が約52%で,薬物性肝炎14%,自己免疫性1%,原因不明33%であった.また,山陰地域ではA型急性肝炎が,山陽地域ではC型急性肝炎や薬物性肝炎がより多く発生した.一方,最近の10年間では,急性肝炎は発生総数として約15%減少し,その要因はA型急性肝炎の減少であった.また,原因不明の急性肝炎が増え,薬物性肝炎も増加する傾向にあった.この間のウイルス性肝炎は,成因別にA型急性肝炎に代わりB型急性肝炎の割合が一位となり,C型急性肝炎の割合は変化なかった.すなわち,最近5年間に発生したウイルス性急性肝炎の割合は,HBVが約45%,HAV 25%,HCV 15%,HEV 1%,EBVとCMVとは併せて15%であった.
著者
森 幹彦 池田 心 上原 哲太郎 喜多 一 竹尾 賢一 植木 徹 石橋 由子 石井 良和 小澤 義明
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.1961-1973, 2010-10-15

平成15年度に必履修科目として導入された高等学校普通教科「情報」を履修した学生が平成18年度から大学に入学してきている.これに対して,大学における情報教育も種々の対応が求められているが,そのためには新入生の状況把握が必要となっている.本論文では,平成18年度から京都大学で継続的に実施している情報教育についての新入生アンケートから大学新入生の状況の変化を調査し分析する.その結果,高等学校における教科「情報」の履修状況が多様で,十分に実質化していない可能性も残っていること,アプリケーションソフトの利用に関するスキルの向上などが見られること,情報セキュリティに関するリテラシは改善傾向にあるが不十分であること,大学における学習への希望としてプログラミングをあげる学生が多いことなどが明らかになった."Information Studies" are the new subjects for information/computer literacy which were introduced into high school as compulsory subjects from 2003. Students who took these subjects have entered in universities since 2006, and education in university has to deal with the change of students. For that, it has been necessary to know what and how much these students have knowledge, skills and practice about information/computer literacy. Since 2006, the authors have conducted questionnaire surveys of the literacy to freshmen in Kyoto University. This paper reports the results of the surveys from the view point of information/computer education. The results show the learning experience about Information Studies in high school has wide variety, and suggests Information Studies may not well implemented in some high schools. Skills to use application software are improved gradually. Literacy about information security still remains insufficient while it is also improved. Many freshmen listed computer programming as a matter that they want to learn in university.
著者
池田 昌之
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.124, no.12, pp.1033-1048, 2018-12-15 (Released:2019-03-15)
参考文献数
97
被引用文献数
1 1

地球軌道要素変化のミランコビッチ・サイクルは地球環境変化のペースメーカーである.この周期性を万年オーダーの時間目盛とする天文年代学により,新生代の年代学や古環境学は飛躍的に発展し,さらに古い時代へと展開している.中古生代の層状チャートはチャートと頁岩のリズミカルな互層からなり,この堆積リズムがミランコビッチ・サイクルに起因した可能性が古くから指摘されてきた.近年,ペルム-白亜系層状チャートの化石層序と古環境指標の周期解析により,ミランコビッチ・サイクルの認定基準である堆積リズムの周期と階層性が確認された.さらに,天文学的年代モデルを用いて堆積速度や物質収支を推定した結果,チャートを構成する生物源シリカは海洋溶存シリカの主要シンクであり,主要ソースである珪酸塩風化速度の変化を反映した可能性が示された.ミランコビッチ・サイクルに伴い超大陸パンゲアのメガモンスーン強度が変化するため,この生物地球化学的シリカ循環を介して層状チャートの堆積リズムが形成されたと考えられる.

7 0 0 0 OA 第14回 ムヒ

著者
池田 嘉津弘
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.50, no.8, pp.802-803, 2014 (Released:2016-09-17)

効能効果:かゆみ,虫さされ,かぶれ,しっしん,じんましん,あせも,しもやけ,皮ふ炎,ただれ成分分量:100g中,ジフェンヒドラミン1.0g,グリチルレチン酸0.3g,ℓ-メントール5.0g,dℓ-カンフル1.0g,イソプロピルメチルフェノール0.1g用法用量:1日数回,適量を患部に塗布してください.
著者
山本 哲 山本 定光 久保 武美 本間 哲夫 橋本 浩司 鈴木 一彦 池田 久實 竹内 次雄
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.173-177, 2011 (Released:2011-07-27)
参考文献数
6

北海道函館赤十字血液センター(以下函館センター)の製剤部門は2006年に北海道赤十字血液センター(以下札幌センター)に集約され,管内供給は北海道ブロックの需給コントロールによって管理されることとなった.製剤部門の集約は,在庫量の少ない血小板製剤に影響が現れやすいと考えられたので,同製剤の緊急需要(当日受注)に対する供給実態について,受注から配送に至る経過に焦点をあて回顧的に調査した.当日受注で,在庫分に由来すると思われる配送所要時間が2時間未満の血小板製剤の割合は集約直後の2006年度で減少したものの,在庫見直し後の2009年度は2005年度並みに回復した.在庫分がなく札幌からの需給調整に由来すると思われる所要時間6時間以上の割合は2005年,2006年に比べ,2009年度では半減した.時間外発注で1時間以内に配送した割合も在庫見直し後の2009年度に有意に増加し88.5%に達した.製剤部門の存在は,血小板製剤の緊急需要に対し,一時的な在庫量の増加をもたらすものの安定供給の主要な要因とはならず,適正な在庫管理が最も重要な要因であることがわかった.血小板の緊急需要に対しては,通常の需要量を基礎にして在庫量を設定すること,需要量の変化に応じてそれを見なおすことにより対応が可能であった.供給規模が小さく,在庫管理の難しい地方血液センターでは,血小板製剤の広域の需給調整を活発にすることで経済効率を保ちつつ医療機関の需要に応えるべきと考える.