著者
上野 悟 清水 玲子 中村 治雅
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.219-228, 2019 (Released:2019-09-14)
参考文献数
34

筋ジストロフィーを含む神経筋疾患領域の多くは希少難治性疾患であり,有効な治療法の開発が求められている.新薬開発のためには,患者の背景情報や症状,症候など疾患に関する情報が必要となる.患者レジストリ(疾患登録システム)は,患者情報を登録し行政や研究者,製薬企業に対して患者の疫学的データを提供することができる.また,患者レジストリで収集するデータは,製薬企業には患者の状況把握を可能にし,患者には新薬開発のために治験の情報提供や新薬に関する情報を提供することが可能となる.神経筋疾患領域では,国際的なイニシアティブとして2007年に欧州にTREAT-NMDが設立され,その中の活動の一つとして患者レジストリの構築が行われた.2009年にはTREAT-NMDに続いて,日本においても筋ジストロフィー患者登録システム(Registry of Muscular Dystrophy: Remudy)が立ち上がり患者レジストリを運用している.クリニカル・イノベーション・ネットワーク(Clinical Innovation Network: CIN)は患者レジストリ等の疾患登録情報を活用した臨床開発のインフラであり,2016年からCIN構想として疾患登録情報を活用した効率的な治験,リアルワールドデータの利活用を可能にするインフラ整備と運用が行われている.RemudyはTREAT-NMDと協調してレジストリの項目を設定しているが,国際的なデータの利活用を促進するためにはデータの標準化が有用であり,承認申請データとのデータの利用を考慮すると,現在広く利用されている国際標準の利用は必要不可欠である.CDISC(Clinical Data Interchange Standards Consortium)標準は医学研究における国際標準であり,計画,データ収集,データ交換,解析までを一貫した標準が整備されており,承認申請データの標準としても用いられている.また,CDISCはデュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne Muscular Dystrophy: DMD)などの疾患領域別データ標準も公表している.リアルワールドデータの利活用を考えると,データトレーサビリティを確保でき,標準化によるデータの品質管理にも寄与するため,CDISC標準を用いることに意義は大きい.しかし,CDISC標準が万能ということではなく,他の国内外の標準の調査や実臨床での測定方法や測定環境,評価指標など,研究の実施体制や環境を考慮する必要がある.本稿では,データの利活用を活性化するための事例紹介として,神経筋疾患領域における患者レジストリと標準化について解説する.
著者
上野 悟 竹下 絵里 清水 玲子 小居 秀紀 小牧 宏文 中村 治雅
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.191-195, 2018-05-31 (Released:2018-06-30)
参考文献数
12

クリニカル・イノベーション・ネットワーク(Clinical Innovation Network: CIN)とは疾患登録システム(患者レジストリ)等の疾患登録情報を活用した臨床開発インフラの整備のことであり,疾患登録情報を活用した効率的な治験や製造販売後調査および臨床研究の体制構築を推進する構想である.2009年より筋ジストロフィー患者登録システム(Registry of Muscular Dystrophy: Remudy)が運用されている.レジストリを国際的に連携させるためには,同じ収集項目を設定する必要がある.レジストリの最低限必要となる収集項目として,米国ではGlobal Rare Disease Registry Data Repository(GRDR)から,欧州ではEuropean Union Committee of Experts on Rare Diseases(EUCERD)から収集項目に関する標準が発表されているが,日本ではGRDRやEUCERDが提案する最小データセットは提案されていない.CDISC(Clinical Data Interchange Standard Consortium)は,臨床試験を初めとするヘルスケア業界のデータ共有,交換,再利用等のための世界標準を提案する非営利団体であり,汎用性が高く,様々な疾患の臨床試験データに適用できるCDISC標準を定めている.また,CDISCは2017年にデュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchenne muscular dystrophy: DMD)の疾患領域別データ標準(Duchenne Muscular Dystrophy Therapeutic Area User Guide: TAUG-DMD)も公表している.疾患横断的な研究では,収集項目の設定漏れによるデータの欠損,試験毎の回答の選択肢が異なる等の問題が生じるため,レジストリの構築にはCDISC標準等のデータ標準を用いることは大切である.臨床でのデータ収集のしやすさも考慮し,臨床現場とデータ標準の両方の視点をもつことが重要である.RWD(Real World Data)の利活用を活性化するためにも,レジストリに関する国際的な標準を整備し普及する意義は高いと考えられる.現在,TAUG-DMDおよびGRDR,EUCERD等の国際標準を用いて収集項目を調査し,患者レジストリの標準項目を検討している.
著者
小澤 南 右田 王介 清水 直樹
出版者
学校法人 聖マリアンナ医科大学医学会
雑誌
聖マリアンナ医科大学雑誌 (ISSN:03872289)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.163-172, 2023 (Released:2023-05-16)
参考文献数
20

緒言:日本においても2020年に6万人近い新生児が生殖補助医療(ART)の恩恵をうけて出生している。体外受精した胚の状態を評価する方法として,胚生検による着床前遺伝子検査が,すでに臨床応用されている。しかし,その侵襲が胚変性を惹起する可能性が残されている。培養液中に認められるcell free DNA(cfDNA)は生検にかわり着床前診断を行う胚の無侵襲な評価方法となりうる。今回,溶液中のcfDNAを回収し,定量することで解析の実用性を検討した。方法:マウス卵を体外受精させ,胚盤胞期胚を得るために5日間培養した。胚盤胞期胚に発育した胚の培養液のDNAの回収を試みた。マウス脳組織DNAをコントロールに用い,リアルタイムPCRを使用した検量線法による溶液中のDNA定量を行った。結果:個別の培養液のDNAは微量であった。5日目の培養液中に平均900 pg前後のDNAが含まれていると推定した。考察:エタノール沈殿処置を行い,マウスの培養液からcfDNAが回収可能となった。cfDNAは培養細胞の状態を無侵襲に評価でき,胚の評価に応用できる可能性がある。一方,胚培養液中のcfDNAはごく微量であり,その回収に当たっては,その後の解析に合わせた精製方法の選択が必要と考えられた。
著者
清水 俊夫
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.22-26, 2022 (Released:2022-06-15)
参考文献数
55

Weight loss is frequently observed in early–stage amyotrophic lateral sclerosis (ALS) and is considered an independent predictor of survival. Weight loss observed in ALS is associated with multifactorial etiology, including muscle wasting and dysphagia ; however, recent studies have implicated disease–specific hypermetabolism in weight loss and disease progression in ALS. The pathophysiology of hypermetabolism as a contributor to weight loss in ALS remains unclear ; however, hypothalamic involvement is considered an early extra–motor manifestation of ALS. TDP–43 protein aggregates detected in the hypothalamic subnuclei may be associated with weight loss or abnormalities of eating behavior in patients with ALS. Weight loss from diagnosis up to tracheostomy also predicts functional prognosis during the long–term period with ventilator. In fact, patients with ALS who survive with prolonged mechanical ventilatory support often develop significant brain and brainstem atrophy, including atrophy of the limbic motor system and the hypothalamus. Nutritional intervention to maintain body weight may be a useful disease–modifying therapeutic approach, and recent studies have reported that slowing of weight reduction rate after diagnosis may be associated with better survival and that a high–calorie diet improves survival in patients with rapidly progressive disease. Nutritional education regarding a high–calorie diet, weight control, and early gastric tube placement are important after diagnosis. Researchers from the USA, Europe, and Japan have established formulas to estimate the recommended daily energy intake. Although a lipid shift in energy metabolism might occur in the brain and muscles in patients with ALS, the effectiveness of high–fat diets requires further investigation.
著者
三浦 麻子 小林 哲郎 清水 裕士
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究の目的は,様々な社会的行動・態度の個人差を説明する新たな価値観概念として「常民性」―民主主義やキリスト教といった現代欧米社会に深く根ざす思想の呪縛を受けない,システム正当化,生活保守主義,個人幸福志向などが複合した概念―を探究し,妥当性と信頼性の高い測定尺度を開発することである.(a)質的面接調査,(b)Web調査,(c)尺度開発の3プロジェクトが遂行される.一般的な質問紙調査ではリーチできない層を対象とする丹念な質的データ収集にもとづいて概念の精緻化を試みる点,尺度開発に統計モデリングを活用する点に学術的独自性と創造性がある.
著者
清水 浩志郎
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.518, pp.17-29, 1995-07-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
305
被引用文献数
7

本文は『高齢・障害者のための交通計画』に関する本特集号の位置づけについて解説したものである. すなわち, 研究の意義と現状及び問題点についてのレビューをおこない, さらに今後の研究動向についてその課題を整理したうえで将来の研究を展望している.
著者
清水 まさ志
出版者
富山大学地域連携推進機構生涯学習部門
雑誌
富山大学地域連携推進機構生涯学習部門年報
巻号頁・発行日
vol.15, pp.7-14, 2013-03

二十一世紀の今もわが国で広く読まれているフランス文学作品は、おそらくたった一冊―アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの『星の王子さま』だけなのではないだろうか。某インターネットショップサイトで検索してみても結果は同じである。明治期以降、日本語に訳された多くの作品もすでに訳が古び、現在の若者にはその日本語訳自体が難解となってしまっている。新訳を出版している奇特な出版社もあるが、広く読まれているとはいえないだろう。しかしフランスはノーベル文学賞受賞者がもっとも多い国であり、その文学は一国の文学であるとともに文学的世界遺産だということができるだろう。さらに近代日本文学に大きな影響を与えた翻訳作品は、日本語文学の貴重な遺産だともいえる。このまま高度経済成長期に流行った世界文学全集の一部として古紙回収業者に回されていいものであろうか。現代の日本において過去のフランス文学作品をどう読み直したらいいのか考えていきたい。
著者
新井 真 清水 洋治 吉田 匡志 窪田 智史 竹井 仁
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C3P3447, 2009 (Released:2009-04-25)

【目的】スポーツ動作中のジャンプ着地における、膝伸展機構への過剰な牽引力や脛骨前方移動による靭帯のストレスを誘引する要因の一つとして、着地時の大腿四頭筋の過活動がある.大腿四頭筋の過活動の抑制にはハムストリングスの筋活動が重要であり、両筋のバランスを評価する指標として大腿四頭筋とハムストリングスの筋力比(H/Q比)がよく用いられる.H/Q比と着地動作の研究では、筋電図や床反力を比較したものは多いが、着地時の矢状面での関節角度について言及したものは少ない.そこで本研究では、膝屈曲・伸展筋力の測定からH/Q比を求め、その値とジャンプ着地時の矢状面における下肢・体幹の屈曲角度との関係を検討することを目的とした.【方法】対象は、健常男性15名(平均年齢21.8歳)とした.ヘルシンキ宣言に基づき、実験の趣旨を説明し書面にて同意を得た.着地課題は30cmと40cm台からの右下肢片脚跳び後の左下肢片脚着地とした.上肢の影響を取り除くため、両手で体幹側部を把持させた.また、飛び降り動作の滞空時間を統一するため、台上での片脚踏切から着地までを0.5秒に規定した.この動作を側方からビデオカメラで撮影し、Frame-DIASIV(DKH社製)を用いて着地時の足・膝・股・体幹の角度を解析した.膝関節の最大屈曲時の各関節角度を着地時の角度とし、静止立位時の角度との変化量を求めた.等速性膝屈曲・伸展筋力は等速性筋力測定装置(BIODEX SYSTEM3)を用いて測定し、角速度は60°にて求心性収縮と遠心性収縮を各5回測定した.この値からH/Q比を算出し、関節角度との相関をSPSS16.0Jを用いて検定した.【結果】着地時の関節平均角度[°]は30cm、40cm台でそれぞれ足関節背屈27.0±7.7、29.8±6.0、膝関節屈曲99.6±13.8、92.8±12.5、股関節屈曲56.1±17.0、65.0±18.7、体幹前傾17.3±13.8、22.2±13.9であった.また、H/Q比[%]はジャンプ着地時の収縮様式を用い、膝屈筋の求心性筋力、伸筋の遠心性筋力の値を用いたところ平均40.9±9.8であった.H/Q比(x)と各関節角度(y)の関係は、30cm台における足関節背屈(y=1.42x+33.81,R2=0.60,p=0.03)、40cm台における股関節屈曲(y=0.96x+25.07,R2=0.40,p=0.01)、体幹前傾(y=0.59x-1.39,R2=0.30,p=0.04)にそれぞれ正の相関がみられた.【考察】30cm台においてH/Q比と足関節背屈角度との間に正の相関があることからH/Q比が低値なほど、背屈が小さくなることが示唆された.また40cm台での着地において、H/Q比と体幹前傾・股関節屈曲角度に正の相関がみられた.このことからH/Q比が低値なほど、体幹がuprightな姿勢で着地動作を行うために後方重心になり、膝伸展モーメントが増大し、大腿四頭筋に過負荷がかかる可能性が示唆された.よって、低い台からの着地における外力吸収は足関節が主であり、高い台では股関節屈曲・体幹前傾が参加することで姿勢を制御していると考える.
著者
飯嶋 寿江 加瀬 正人 相良 匡昭 加藤 嘉奈子 清水 昌紀 西田 舞 友常 孝則 田中 精一 青木 千枝 城島 輝雄 鈴木 國弘 黒田 久元 麻生 好正
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.707-714, 2015-09-30 (Released:2015-09-30)
参考文献数
30
被引用文献数
1

症例は70歳,女性.1型糖尿病,うつ病にて加療中,自殺企図のためインスリンデグルデク300単位,インスリンリスプロ300単位を皮下注射し,注射3時間後に意識障害で家族に発見され,当院救急外来に搬送となり,入院となる.簡易血糖測定では,測定感度以下(30 mg/dl未満)を示し,血清インスリン値は2972.1 μU/mlと極めて高値を示した.直ちに,ブドウ糖の静脈投与を開始した.低血糖は大量注射30時間後を最後に認めなかったものの,大量投与36時間後の血清インスリン値は1327.0 μU/mlと依然として高く,低血糖の予防のため,第6病日まで経静脈的ブドウ糖投与を継続した.本症例の経過より,インスリンデグルデクの大量投与症例では他のインスリン製剤以上に長時間にわたる注意深い観察と対応が必要であると思われた.インスリンデグルデク大量投与による遷延性低血糖の症例は極めて稀であり,文献的考察を加え報告する.
著者
翁 康健 清水 香基 伍 嘉誠
出版者
日中社会学会
雑誌
21世紀東アジア社会学 (ISSN:18830862)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.12, pp.76-93, 2023-03-01 (Released:2023-03-03)
参考文献数
17

大多数少数民族由于居住在相对落后的西部地区,所以少数民族的社会经济发展相对落后,与汉族存在差异。为了追求更高的收入,更好的生活,少数民族流动人口不断增加。 那么,通过社会移动是否可以消除少数民族和汉族之间的差异?基于上述问题意识,本文的研究目的为,通过使用CGSS2017 的数据进行探索性的分析,即社会移动是否改变了少数民族与汉族之间所存在的格差。分析结果为,通过社会移动,确实能改善在个人收入,家庭收入,本人学历,母亲学历,健康状态等方面,少数民族与汉族的差异。但另一方面,通过社会移动,使少数民族在人际关系以及社会公平感方面与汉族面临着相同困境。因此整体来说,通过社会移动少数民族的生存和发展未必得到了提升。主观幸福感的数据也显示,通过社会移动未使少数民族更加幸福。
著者
山極 哲也 酒井 和加子 吉岡 亮 上野 博司 山代 亜紀子 川上 明 荻野 行正 土屋 宣之 大谷 哲之 大里 真之輔 信谷 健太郎 竹浦 嘉子 上林 孝豊 清水 正樹 大西 佳子 上田 和茂
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.123-128, 2023 (Released:2023-04-24)
参考文献数
11

地域全体の緩和ケアの質の向上を図るためには,各施設が緊密につながることが必要であると考え,2017年9月に「京都ホスピス・緩和ケア病棟(PCU)連絡会」を発足させた.個々のPCU施設が抱える問題を気軽に話し合い,共に悩み考え,成長,発展させる場,新規立ち上げ施設を支援する場とした.連絡会では,その時々の話題(緊急入院,輸血,喫煙,遺族会など)をテーマに議論を行った.2020年,COVID-19流行のため連絡会は休会となったが,メール連絡網を用い,感染対策,PCU運営などの意見を交わし,WEB会議システムを用い連絡会を再開させた.日頃より顔の見える関係があることで,COVID-19流行という有事においてもPCU間の連携を維持し,がん治療病院との連携にも発展させることができた.京都府のPCUが一つのチームとなることで,患者,家族がどのような場所においても安心して生活できることを目指している.
著者
西本裕 紀子 惠谷 ゆり 加嶋 倫子 伊藤 真緒 麻原 明美 清水 義之 曺 英樹 川井 正信 位田 忍 川原 央好
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.647-653, 2018 (Released:2018-04-20)
参考文献数
23
被引用文献数
1

【目的】重症心身障がい児(者)(以下、重症児(者)と略)におけるベースライス法ミキサー食の臨床的有用性について検討する。【対象・方法】べースライス法ミキサー食を導入した重症児(者)27例を導入前の栄養法が栄養剤のみの栄養剤群10例と加水法ミキサー食の加水法群17例に分類し、診療録から導入前後のBMI、血清アルブミン(以下、Albと略)値、摂取エネルギー量を後方視的に検討した。アンケートから導入前後の排便回数、便性、嘔吐頻度、調理・介護時間、感想について検討した。【結果】べースライス法導入前後でBMIは有意差がなく、Alb値は栄養剤群で、総摂取エネルギー量は加水法群で有意に増加した。便性は両群とも有意に改善し、嘔吐も改善した。介護時間は56%が短くなったと回答し、「家族と同じ食事を入れられるのがうれしい」という感想が最も多かった。【結論】ベースライス法ミキサー食を導入した重症児(者)において、導入前の栄養法にかかわらず栄養状態は維持改善できた。また消化器症状の改善が認められ、家族の高い満足度が得られた。
著者
孫 建強 湯 敏 清水 謙多郎 門田 幸二
出版者
日本乳酸菌学会
雑誌
日本乳酸菌学会誌 (ISSN:1343327X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.124-132, 2015-06-29 (Released:2016-07-29)
参考文献数
10

次世代シーケンサー(以下、NGS)データの解析は、大まかに①データ取得、②クオリティコントロール(以下、QC)、③アセンブルやマッピング、④数値解析の4 つのステップに分けられる。連載第4 回は、Bio-Linux にプレインストールされているFastQC(ver. 0.10.1)プログラムを用いたQC の実行および解釈の基本を述べる。また、FASTX-toolkit(ver. 0.0.14)で提供されているアダプター配列除去プログラムであるfastx_clipper の挙動を例に、Linux コマンドを駆使した動作確認の重要性を述べる。多様なインストール手段に対応すべく、apt-get, pip, cpan コマンドを利用したプログラムのインストール(FastQC ver.0.11.3、nkf ver. 2.1.3、cutadapt ver. 1.8.1、HTSeq ver. 0.6.1、FaQCs ver. 1.34)やパスなどの各種設定についても述べる。ウェブサイト(R で)塩基配列解析(URL: http://www.iu.a.u-tokyo.ac.jp/~kadota/r_ seq.html)中に本連載をまとめた項目(URL: http://www.iu.a.u-tokyo.ac.jp/~kadota/r_seq.html#about_ book_JSLAB)が存在する。ウェブ資料(以下、W)や関連ウェブサイトなどのリンク先を効率的に活用してほしい。
著者
山内 靖夫 清水 義秋
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.11, pp.517-524, 1973-11-01 (Released:2009-11-10)
参考文献数
26

Fluorescent whitening agents (FWAs) have been manufactured since 1950 in Japan. Now, they are used very widely in the fields of paper, textile, and detergent industries.Discussions were given to the results of medical surveys and studies on the safety of the FWAs derived particularly from diaminostilbene disulphonate.The FWAs can be considered to be safe both in chronic and acute toxicities.Further, possibility of the FWAs' contamination to human skin or table-wares from papers and textiles was examined.The results showed that the degrees of contamination were very small or negligible.As a conclusion, the FWAs are practically nontoxic even if they are taken into human bodies, though they can not migrate to human skin from papers or textiles containing the FWAs.
著者
清水 麻帆
出版者
コンテンツツーリズム学会
雑誌
コンテンツツーリズム学会論文集 (ISSN:24352241)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.47-57, 2018 (Released:2021-09-01)

本論文では、コンテンツツーリズムにおいて、聖地への訪問回数に影響を及ぼす要因が聖地再訪と地域の人を含めた地域文化が要因であることを重回帰分析から明らかにしている。本研究の背景には、近年、コンテンツツーリズムが地域の活性化の1つとして自治体から注目され、多くがそれに関連した政策や取り組みを実施しているが、実際には試行錯誤していることが挙げられる。自治体はコンテンツツーリズムに関する知見がほとんどないため、観光振興を持続するための施策や取り組みもイベントなどの一過性のものになっているのが現状である。近年ようやくコンテンツツーリズムが学術的に研究され始め、その成果の蓄積が少ないことも1つの要因である。 そこで、本研究では、コンテンツツーリズムの再訪要因を明らかにする。その方法は、水泳青春アニメの「Free!」の舞台である鳥取県岩美町を研究対象とし、そこに再訪している人達に対するアンケート調査の結果を分析する。以下、第2節では、先行研究の整理を通じて再訪要因を検討する。第3節では、本研究の分析方法を概説し、第4節では、分析結果より、本事例におけるコンテンツツーリズムの特性と再訪要因を論考する。最後に、再訪要因から考察したコンテンツツーリズムの地域の活性化のあり方について言及する。
著者
原 健太郎 渡辺 雄貴 清水 克彦
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.239-252, 2019-12-31 (Released:2020-02-14)
参考文献数
22
被引用文献数
1

夜間定時制高校は,算数・数学の基礎学力に課題を抱える生徒が多く在籍している.本研究では,夜間定時制高校でのアクティブ・ラーニング型の授業設計の検討を見据え,数学科での反転授業の有効性について検証することを目的とした.そのためにADDIE モデルに従って開発した授業に対し,ID の目指す価値としての効果・効率・魅力の観点から検証し,以下の結果を得た.授業前に動画を視聴しない状況,動画を視聴していてもそれを前提とした授業展開は厳しい状況が見られた.学習形態の変容により学習に困難を抱える生徒は取り組みやすくなり,教え合いの対話的活動での動画活用や,復習として主体的な動画利用の状況が見られた.定期考査等の得点が低かった生徒でも得点が増加し,効果的な習得が確認された.学習場面での必要時間が短縮され,効率的な学習が行われた.反転授業によって,基礎学力に課題を抱える生徒において大きな効果が得られる可能性が示唆された.
著者
滝川 正晃 合屋 雅彦 池ノ内 孝 清水 悠輝 雨宮 未来 鎌田 龍明 西村 卓郎 田尾 進 宮﨑 晋介 笹野 哲郎
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.36-43, 2023-04-04 (Released:2023-04-07)
参考文献数
9
被引用文献数
1

心房細動アブレーションに関連する心房頻拍(AT)は,しばしばマクロリエントリーを機序とし,とりわけ,肺静脈,僧帽弁輪,三尖弁輪を解剖学的障壁として旋回する.それゆえ,解剖学的障壁間の線状焼灼は,これらのATを治療する上で不可欠である.Differential pacingを用いたブロックラインの確認は,心房粗動に対する,三尖弁-下大静脈間峡部の線状焼灼の完成度を評価する方法として報告されたが,他の線状焼灼の完成の有無の確認にも応用される.しかしながら,高解像度のマッピングで,Differential pacingではブロックラインの完成を20~30%で誤診してしまう可能性が報告されている.オムニポーラー技術を用いると,3つの単極電極と直行する2つの双極電極からなるクリックという単位において,360°の心内電位から最適な電位を選択し,Activation Vectorとしてリアルタイムに表示することが可能である.今回本機能を用いて,線状焼灼の完成をリアルタイムに評価するのに成功した1例を経験したので報告する.
著者
寿野 良二 清水(小林) 拓也
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.16-20, 2023 (Released:2023-03-25)
参考文献数
11

脂質メディエーターであるプロスタグランジン(PG)はその受容体を介したシグナル伝達によって,生体内の様々な作用を示す.PG受容体の構造生物学によるシグナル伝達の分子機構の解明は創薬にも貢献する.