著者
北村 八祥 森 利樹 小堀 純奈 山田 信二 清水 秀巳
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.89-95, 2015 (Released:2015-03-31)
参考文献数
9
被引用文献数
8 8

炭疽病抵抗性と極早生性を併せ持つ高品質な促成栽培用イチゴ品種‘かおり野’を育成した.1990年に‘女峰’,‘アイベリー’,‘とよのか’および‘宝交早生’の間の総当り交配により育成を開始し,その後‘章姫’,‘あかしゃのみつこ’,‘とちおとめ’および育成集団から品種化された‘サンチーゴ’を交配親として加えながら,9世代に亘り相互に交配を繰り返して改良した炭疽病抵抗性系統群のうち,系統‘0028401’と系統‘0023001’を2003年に交配して得られた実生から選抜された.特性調査,現地適応性試験を経て2008年に品種登録出願を行い,2010年に品種登録された.最重要病害であるイチゴ炭疽病に対して,‘宝交早生’および‘サンチーゴ’と同等の強い抵抗性を持つ.‘章姫’よりも強い早生性を示し,普通促成栽培において11月下旬から収穫を開始することができ,12月までの早期収量,3月まで総収量ともに高い.食味は高糖度,低酸度で甘みを感じやすく,上品な香りを特徴としている.果実は大きく,果形は円錐形で,果皮は光沢の強い橙赤色,果肉色と果心色は白である.品種の普及には,行政,研究および普及の各組織と生産者団体が一体になったプロジェクトにより取り組み,三重県に限定せずに県内外の生産者に生産を認める許諾制度を設け,栽培指針を改良しながら消費者に対する販売促進を進めた結果,‘かおり野’を選択する生産者は三重県内外で大きく増加した.
著者
清水 新二
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.10-1, pp.31-83,154, 1998-03-25 (Released:2010-02-04)
参考文献数
6
被引用文献数
6 5

Research on family problems in Japan during the last 25 years is thoroughly reviewed in this paper. Each decade has been characterised as follows : in the 1970s as the golden age of family pathology research, in the 1980s as the age of Maxist family problem research, and in the first half decade of the 1990s as a transitional age of family problem research.Several topics discussed in this paper include internationalization of research, the family crisis debate, problem-solving orientation, and family policy. Finally, it is concluded that the transition of research trends during the last 25 years can be phrased as from pathological and Marxist prespectives to the normalization perspective of family problem research.
著者
清水 克哉 河口 沙織 高野 義彦 石河 孝洋
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2020-08-31

電気抵抗ゼロで電流が流れる超伝導現象は低温でおこるものとされてきたが、近年の高圧力技術と計算科学の進歩によって、高圧力の条件下では室温でも超伝導になる「室温超伝導体」の実現への期待が高まってきた。本研究は、室温超伝導体を高圧力下で合成すること、超伝導体によるデバイス回路を高圧装置内で動作させることを目的に掲げ、室温で動作する超伝導デバイスの作成へつなげる。我が国の高圧力を用いた超伝導物質合成技術、計算・数理データ科学、結晶構造解析技術、精密デバイス化技術を集結し、室温超伝導の実現にとどまらず、その超伝導を実用へつなげることを目指すものである。
著者
下平 英寿 清水 昌平
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

画像,タグ,文書等の様々な種類(ドメインと呼ぶ)の情報源から得られるデータベクトルと,データベクトル間の関連性の強さに関する情報が得られているデータを,多ドメイン関連性データと呼ぶ.従来の多変量解析ではベクトルが1対1対応するものを扱っていたため,柔軟なデータ構造を表すことができなかった.本研究ではベクトルの関連性をグラフ(ネットワーク)で表現して,そのグラフ構造をなるべく保存するように次元削減を行う情報統合の方法を提案・発展させた.
著者
清水 大地 岡田 猛
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第28回 (2014) (ISSN:27587347)
巻号頁・発行日
pp.1M5OS05b3i, 2014 (Released:2018-07-30)

本研究ではブレイクダンスにおけるバトルというパフォーマンス場面を対象とし,ダンサーが交代して披露し合うことによって踊りに生じる変化を検討した.エキスパートのバトル映像を対象とし,領域で重要とされる「踊りの4要素」といった観点から,クラスター分析等による検討を行った.結果として,踊り方に数種類のスタイルが見られ,同一のダンサーでも踊り合いを通して踊りのスタイルが変化していったことが示された.
著者
清水 いと世 舟場 正幸 松井 徹
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.12-21, 2017-04-10 (Released:2017-05-02)
参考文献数
31

イヌや飼い主の都合により市販のフードが使用できない場合は、手作りによる食餌の調製が必要になるが、入手しやすい食材のみで手作り食を調製する場合、AAFCO養分基準(2015)における特に微量栄養素量の最小値を満たすためには、サプリメントの使用が不可避であった。しかしこの度、AAFCO養分基準(2016)が公表され、多くの微量栄養素量の最小値が減少したため、この新基準に即したレシピ設計を試みた。食材の栄養素量は日本食品標準成分表を主に用いた。通常の食材のみではカルシウムの最小値の充足には限界があるので、カルシウム源として期待できる鶏卵殻のミネラル分析を行った。糖質源とタンパク質源からなる食餌を基本食とし、とうもろこし油、豚レバー、煮干し、小麦胚芽、ひじき、鶏卵殻を補助食とした。糖質源とタンパク質源を湿重量で等量用い、基本食と補助食を代謝エネルギーで等量用いることで、AAFCO養分基準(2016)を満たすことができた。
著者
和田 洋六 清水 健 黒田 康弘 樋口 昌史
出版者
一般社団法人 表面技術協会
雑誌
表面技術 (ISSN:09151869)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.111-117, 2016-02-01 (Released:2017-02-01)
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

Wastewater containing tetrafluoroboric acid-hexavalent chromium was decomposed to fluorine (HF) and boron (H3BO3) in acidic conditions using excess aluminum sulfate at normal temperature. In subsequent processing, boron was separated by coagulation-sedimentation using ettringite and calcium hydroxide in highly alkaline conditions. This processing reduced the boron concentration to 10 mg dm-3 or less in the effluent standard. The ettringite used in this experiment was prepared using aluminum sulfate and calcium hydroxide. Alkaline filtered water containing aluminum ion and calcium ion was pH-adjusted to 6.5-7.0 for fluoride removal. This continuous process produced fluorine concentrations of 8 mg dm-3 or less in the effluent standard. Based on these experiments, we devised a practical advanced wastewater treatment system including processing of tetrafluoroboric acid using ettringite. The contents of this paper will contribute to solving treatment problems for metal surface treatment wastewater containing fluorine and boron, also help in the treatment of other industrial wastewater.
著者
西城 卓也 堀田 亮 藤江 里衣子 下井 俊典 清水 郁夫 川上 ちひろ
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.23-28, 2022-02-25 (Released:2022-06-19)
参考文献数
20
被引用文献数
1

困難な状況にある学習者の支援は難しい. 効果的に支援することは病院・大学等の医育機関の責務の1つである. 従来は, とかく学習者に焦点が当たるバイアスがあり精神論で説得されがちであった. しかし教育現場で困難な状況にある学習者が生まれる要因には, 実は学習者の他, 教育者, 環境も挙げられる. さらに各要素を分析する際にも, 教育学・心理学・文化等からのアプローチがある. 今後は, まず, 支援者一人で複数の視点を持つことを提案したい. しかし支援者にはおかれた文脈があり, 多面的に見ることには限界がある. したがって複数の立場の, 複数の支援者が, 複数の視点をもちより, 大局的視座が担保された支援体制が医育機関には期待される.
著者
田鍋 颯一 久加 朋子 清水 康行 山口 里実 橋場 雅弘 土田 宏一 諏訪田 光浩 今 日出人 岡安 努
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.22-00153, 2023 (Released:2023-03-20)
参考文献数
29

2018年9月,北海道胆振東部地震により厚真川流域で多数の斜面崩壊が発生した.本研究では地震後の厚真川での土砂輸送特性と河床への影響の把握を目的とし,(1)現地データより地震前後の浮遊砂輸送特性の変化を整理すると共に,(2)それら結果を基に同一流量条件下にて浮遊砂供給条件の異なる定常流一次元不等流河床変動計算を行った.結果,崩壊地面積が大きい支川ほど土砂生産量(主に0.075mm以下)が多く,厚真川本川でも浮遊砂量の増加が確認された.数値解析によると,崩壊地から流入する浮遊砂成分の大半は河道内に堆積せず,河口から流出した.ただし,厚真大橋での観測流量が既往最大値を超えた360m3/s程度まで増加すると,河口~4km上流の区間において細粒成分の堆積に伴い河床材料が細粒化する可能性も確認された.
著者
湯田 厚司 小川 由起子 新井 宏幸 荻原 仁美 神前 英明 清水 猛史
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.122, no.2, pp.126-132, 2019-02-20 (Released:2019-03-01)
参考文献数
10
被引用文献数
4 3

本邦でのスギ花粉とダニが原因のアレルギー性鼻炎合併例は多い. スギ花粉とダニを同時に用いた皮下免疫療法は行えるが, 舌下免疫療法の併用治療 (併用 SLIT) に関する知見は十分ではない. 併用 SLIT が行えれば有用であり, 安全性を検討した. 当院で2017年6月以降にスギ花粉 (シダトレン ®) とダニ (ミティキュア ®) で併用 SLIT を行った53例 (男性31例, 女性22例, 年齢12~53歳, 平均21.7±11.6歳, スギ花粉先行39例) を対象とした. 先行と後行 SLIT の間隔は1カ月以上あけ, 朝夕に分けて開始した後に5分間隔でスギ花粉・ダニの順で行った. 併用 SLIT 後6カ月まで受診毎に副反応を確認した. 完遂率は51/53例 (96.2%) で, 脱落2例の理由は副反応によるものではなかった. 副反応はすべて軽度で, 処置不要であった. 併用 SLIT 期の副反応は, 全副反応で増加せず, 口腔咽頭感覚症状で有意に減少した. 投与間隔による副反応は変わらず, 投与順で副反応は変わらなかったが, ダニ後行 SLIT で維持アレルゲンを減量する例が増えた. 併用 SLIT は1~2カ月以内の短期間間隔で安全に行えた.
著者
藤田 恵理 清水 美穂 跡見 友章 長谷部 由紀夫 跡見 順子
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第70回(2019) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.155_3, 2019 (Released:2019-12-20)

身体は細胞と細胞が分泌する細胞外マトリクスからなる。老化や慢性炎症状態にある組織ではコラーゲンなどの細胞外マトリクスが沈着・線維化する。線維化した固い皮膚は身体の移動性を制限し日常の不活動の原因になりうるので、身体運動にとって重要である。卵殻膜は古くから東洋において皮膚治療への民間薬として使用されてきた。そこで我々は、可溶化卵殻膜を女性の皮膚に塗布したところ、腕の弾力性や顔のしわを有意に改善することを見出し、可溶化卵殻膜を塗布したマウス皮膚ではIII型コラーゲンが有意に増加した。さらに、特殊なMPCポリマーに結合した可溶化卵殻膜を付けた培養皿上でヒト皮膚線維芽細胞を培養する実験系を設計し、可溶化卵殻膜環境ではIII型コラーゲンなどの若い乳頭真皮を促進する遺伝子が誘導された。若い皮膚と同様のIII型/I型コラーゲン比(80%:20%)のゲルはI型コラーゲン100%ゲルよりも高い弾性をもたらし、そのゲル上のヒト皮膚線維芽細胞は高いミトコンドリア活性を示した。卵殻膜はIII型コラーゲン等の細胞外マトリクスの発現を誘導し、組織弾性の喪失を減少させることにより、身体活動を改善するために使用することができると考えられる。
著者
清水 香代
出版者
森林遺伝育種学会
雑誌
森林遺伝育種 (ISSN:21873453)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.166-170, 2017-10-25 (Released:2020-04-22)
参考文献数
6
被引用文献数
2
著者
岡 秀宏 河島 雅到 清水 曉 宇津木 聡 大澤 成之 佐藤 公俊 藤井 清孝 Albert L. Jr. Rhoton
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.418-423, 2011-06-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

本稿では,側脳室病変に必要な微小外科解剖と種々の手術アプローチについて解説した.側脳室の部分は前角,体部,三角部,後角,下角に大別され,それらの構造とともにvelum interpositumの微小解剖についても解説した.主な側脳室各部への手術アプローチは以下のとおりである.前角部および体部への手術アプローチは経前頭皮質到達法と前方経脳梁到達法である.三角部へのアプローチは主に4種類あり,lower posterior parietal lobe approach,high superior parietal lobe approach,occipital transcortical approach,そしてtranssylvian approachである.これらの中で優位半球の高次脳機能障害を防ぐために最も推奨されるアプローチは,high superior parietal lobe approachである.下角へのアプローチには経脳溝到達法や経脳回到達法がある.以上,側脳室病変に必要な微小外科解剖と各部への種々の手術アプローチについて解説した.この知識は顕微鏡手術のみでなく最近進歩している神経内視鏡手術にも重要である.