著者
上野 敏昭 渡辺 耕造 石川 元一
出版者
日本作物学会関東支部
雑誌
日本作物学会関東支部会報 1 (ISSN:13416359)
巻号頁・発行日
pp.51-52, 1986-12-01 (Released:2017-08-24)

転換畑における麦-大豆体系の繰り返し作付けは、地力の低下や土壌病害虫等による障害の増加により、安定生産が阻害されている。このため転換畑の経過年数と麦、大豆の生育収量について検討し、適切な転換期間を明らかにしようとした。
著者
古野 東洲 渡辺 弘之
出版者
京都大学農学部附属演習林
雑誌
京都大学農学部演習林報告 = BULLETIN OF THE KYOTO UNIVERSITY FORESTS (ISSN:0368511X)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.41-55, 1970-03-25

この研究は, 愛媛県下の西条営林署管内および今治市長沢にあるフランスカイガンショウ林のマツノシンマダラメイガによる被害と雪による被害を, 1968年10月21 - 24日および1969年1月30日に調査し, その被害の状況を記録したものである。雪害は1968年2月14 - 16日にみられた降雪のために, 冠雪によりおこったもので, 当時あ降雪量は西条の林分では40 - 50cm, 今治市長沢の林分では20 - 30cmであったようである。調査したフランスカイガンショウの林分は調査時つぎのような状態になっていた。西条の林分は, 約1haで, 1930年に造林され, 平均胸高直径は18. 5cm, 平均樹高は推定13m, ha当り1257本で, フランスカイガンショウの純林であったが, 雪害で大きな被害をうけていた。今治市長沢の林分は, 西南向きの斜面に成立し, 約0. 2haにフランスカイガンショウに少数のアカマツ, クロマツが混生していた。ha当りの立木本数は7033本の高密度で, そのうちフランスカイガンショウは6368本であった。この林分は, 1952年秋に40年生のフランスカイガンショウを伐採した跡地に天然更新でできあがったもので, 胸高直径は1cmから12cmまで, 樹高は2. 1mから8. 9mまでの各種の大きさの個体よりなり, それぞれの平均値は4. 5cmと5. 5mであった。この林分も雪害で激しい被害をうけていたが, 約100m離れた尾根に植栽されている約0. 1haの小林分 (平均胸高直径9. 7cm, 平均樹高7. 2m, ha当り2000本) では, 雪による被害は軽微であった。雪害調査は, 幹の折損および幹の曲りを記録し, 折れたものでは, その状況 (幹が全く切断されているもの, 幹は折れているが一部で付いているもの, 幹が割れているもの) およびその位置 (樹冠内および下枝より下部) を調べ, 折損高を測った。さらに長沢の林分では折損部の直径を測り, 折損部を分枝部, 分枝部上部, 分枝部下部および節間に分け調査した。フランスカイガンショウに対するマツノシンマダラメイガの加害はすべて幹に限られ, その被害率は, 西条の林分では43%, 長沢の斜面の林分では3%, 尾根の林分では6%で, 西条と長沢で差がみられた (表-1)。雪害は幹の折れと曲りが大部分で, 幹の割れや枝抜けは数例みられたにすぎなかった。雪害率は西条の林分では71%, 長沢の斜面の林分では80%で雪害は激しかったが, 長沢の尾根の林分では13%の微害で, 長沢での両林分の雪害差の原因は, 林分を構成している個体の形状比にあるようであった (表-1, 2, 3)。雪により激害をうけた両林分を比較すると, 西条では幹の折れが雪害木の大部分 (98%) を占めていたが, 長沢では幹の折れと曲りがほぼ半々であった。さらに, 幹の折損で, 西条では折損木のうち完全に切断されたものが72%であったが, 長沢では4%とすくなく, 両林分で雪害のあらわれ方に大きな違いがあった。この原因の1つに両林分の幹の形状比の違いが考えられる (図-1)。幹の曲ったものは形状比の大きいものに, また胸高直径の細いものに多くあらわれている。幹の折損部は胸高直径が太いものは樹冠内で, 細くなるにしたがって樹冠の下で折れる個体が多くなっているが, 長沢の林分では, 折損木の23%が, 西条の林分では75%が樹冠内で折れていた (図-3)。さらに長沢の林分では, 枝階の分枝部の直ぐ上で折れているものが67%で最も多く, 分枝部 (15%), 分枝部の直下 (10%), 節間 (8%) の順になった。折損高は, 長沢では樹高の0. 2 - 0. 5倍の位置に集中 (69%) し, 大部分 (91%) は樹高の0. 6倍より下で折れていた (図-4)。西条では樹高の0. 6 - 0. 8倍のところで折れたものが多かった。折損部の直径は, 大部分の個体では, 胸高直径の0. 7倍より太く, 折損個体の約半数は胸高直径の0. 7 - 0. 9倍の太さのところで折れていた (図-5)。附近のアカマツと比較して, フランスカイガンショウは雪に対してやや弱いようであった (表-1, 4)。西条の林分で, マツノシンマダラメイガの被害をうけていた73本中, 虫害部で折れていたものは4本で, また, 雪で折れた119本中, 42本は虫害をうけていたにもかかわらず, 健全部で折れていた。すなわち, 本調査でのフランスカイガンショウの雪による折損はマツノシンマダラメイガによる幹の被害とは, とくに関係がないことがわかった。以上の結果から, フランスカイガンショウは, マツノシンマダラメイガによる被害に加えて, 雪に対しても相当に弱いことがわかり, 生長が非常に良いということで, これらの要因を考慮せずに利用することには, 大きな危険がともなうのではないかと考えられる。
著者
松廣 達也 橋本 哲也 北岡 見生代 ア デイビッド 落合 翼 渡辺 秀行 片桐 滋 大崎 美穂
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.1295-1308, 2018-04-15

最近,識別学習法の1つ,最小分類誤り(MCE: Minimum Classification Error)学習法が,大幾何マージン最小分類誤り(LGM-MCE: Large Geometric Margin Minimum Classification Error)学習法に拡張された.LGM-MCE法は,利用可能な学習用標本上の分類誤り数損失の最小化と,標本空間における幾何マージンの最大化とを同時に行うものである.学習用標本に対する過学習を抑制することで,この新しいLGM-MCE法は,理想的な最小分類誤り確率状態に対応する分類器状態を近似する.その有効性は,プロトタイプ型分類器用に実装され,様々な固定次元ベクトルパターンの分類課題において実証されている.本稿は,可変長パターンに対しても過学習が抑制された望ましい分類が実現されることを目指し,状態遷移モデル型分類器を用いて可変長パターンのための幾何マージンを新たに導出し,それを用いたLGM-MCE学習法を構築し,その有効性を3種の音声認識課題において評価した結果を報告するものである.実験では,LGM-MCE学習法と,その基盤となったMCE学習法とを比較する.実験の結果,いずれの課題においても,LGM-MCE学習法が,過学習を抑制し,未知の試験用標本上で高い分類精度を達成することが示される.比較実験に用いるLGM-MCE学習法の実装は,適応型損失最小化手段である確率的降下法を用いている.本稿では追加的に,高速な並列処理に適したRPROP法に基づく実装も行い,その動作確認結果も報告する.
著者
井上 智代 渡辺 修一郎
出版者
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.723-733, 2015
被引用文献数
2

本研究は, 農村における住民の生の声から健康に資するソーシャル・キャピタルの地域特性を整理することを目的にグループ・インタビュー法を用いて調査し, 質的記述的に分析を行なった。A村に在住する65歳以上高齢者6~9名のグループ3組にインタビューを実施した結果, ソーシャル・キャピタルに関する発言内容が610抽出され, コード数141にまとめられた。141のコードから農村に特徴的な20コードを抽出したのち, 8サブカテゴリー,4カテゴリーに集約した。4カテゴリーは【自然との共生】, 【農村ならではの信頼関係の維持】, 【農村の社会規範を重んじる】, 【農村であることを活かした社会参加とネットワーク】にまとめられた。農村における健康に資するソーシャル・キャピタルには, 自然の中で共生してきた農村独特の人と人とのつながりがもたらす特徴がみられた。先祖の農地を守って生活する農村独特の地縁社会の中で培われてきた強い絆に基づく結束型ソーシャル・キャピタルの側面が多く抽出されたが, 農村の人々の中には橋渡し型ソーシャル・キャピタルの視点も着実に育まれている。農村における高齢者の健康づくりや豊かなコミュニティづくりを推進していくにあたり有用な知見を得ることができた。
著者
林 明宏 和田 康孝 渡辺 岳志 関口 威 間瀬 正啓 白子 準 木村 啓二 笠原 博徳
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.68-79, 2012-01-27

汎用CPUコアに加え特定処理を高効率で実行可能なアクセラレータを搭載したヘテロジニアスマルチコアが広く普及している.しかしながら,ヘテロジニアスマルチコアでは様々な計算資源へのタスクスケジューリングやデータ転送コード挿入等多くをプログラマが記述する必要があるためプログラミングが困難である.そこで本論文では,逐次プログラムを入力とし自動並列化コンパイラを用いることで自動的に汎用コアとアクセラレータコアにタスクを配分し,高い性能および低消費電力を実現可能なソフトウェア開発フレームワークを提案する.本手法はアクセラレータコンパイラやアクセラレータライブラリ等既存のアクセラレータ開発環境を有効に利用可能である.本フレームワークを情報家電用ヘテロジニアスマルチコアプロセッサRP-Xをターゲットとして,アクセラレータライブラリを使用し,AACエンコーダおよびOptical Flow計算の自動並列化性能および消費電力を評価した.その結果,8つの汎用CPUコアおよび4つのアクセラレータコアを使用した場合,逐次実行時と比較してOptical Flow計算で最大32倍,AACエンコーダで最大80%の電力を削減可能であることを確認し,ヘテロジニアスマルチコアを対象とした汎用的なコンパイラフレームワークを実現した.There has been a growing interest in heterogeneous multicores because heterogeneous multicores achieve high performance keeping power consumption low. However, heterogeneous multicores force programmers very difficult programming. In order to overcome such a situation, this paper proposes a compilation framework which realizes high performance and low power. This paper also evaluates processing performance and the power reduction by the proposed framework on RP-X processor. The framework attains speedups up to 32x for an optical flow program with eight general purpose processor cores and four DRP (Dynamically Reconfigurable Processor) accelerator cores against sequential execution by a single processor core and 80% of power reduction for the real-time AAC encoding when we utilize an existing accelerator library.
著者
太田 賢 渡辺 尚 水野 忠則
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.35, pp.141-146, 1997-04-24
被引用文献数
4

モーバイルコンピューティング環境、ワイヤレス通信環境でもマルチメディアを利用したいという要求が高まっている.ワイヤレス通信環境は帯域幅が狭く、バースト誤り、移動時のハンドオフにより転送の途切れが生じるという問題があり、比較的大容量の帯域幅とスムーズな転送を必要とするマルチメディア通信の扱いは難しい。本研究は狭帯域環境において効率的にマルチメディア情報にアクセスする選択的マルチメディア通信方式を提案する.マルチメディア情報の内容を考慮してそのシーンごとに優先度を与えるシーン優先度と、フレームの種類、音声ブロックの音量によって機械的に付けられるユニット優先度という2つの優先度を導入する。利用可能帯域幅の範囲で、優先度に基づいた選択的なマルチメディア転送が行われ、重要なシーンは比較的高品質な再生を行うことができる。さらに、高優先度の情報の先読みにより、転送の途切れが生じても再生を続行させる手法、キャッシングにより巻きもどし時のマルチメディア再生の品質を向上させる手法について提案する。選択的マルチメディア通信方式の実装についても述べる。The realization of multimedia communication in mobile computing environment can lead developments of various attractive applications. However, there are following problems when using wireless link. In general, wireless link doesn't have bandwidth enough to accmodate multimedia communication. A transport service may be interrupted during carrying continuous media such as video and audio by a burst-error and a hand-off. We propose a priority-based multimedia communication protocol for wireless communication: SMAP(Selective Multimedia Access Protocol). It adopts the selective transport service accoring to priority of a video fame and an audio block, and the prefetching and the caching multimedia data with high priority. Authors or providers of multimedia data assign priority to important scenes in the multimedia data so that the selective transport service allocates them more bandwidth than trivial scenes. The prefetching allows a multimedia application to continue to playback even when a burst error or a hand-off occurs. The caching can improve quality of contents of multimedia data when a user rewinds the playback.
著者
渡辺 真希子 松村 有子 登坂 善四郎
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.196-199, 2018-04-01 (Released:2018-04-01)

近年,医学学術雑誌や各種診療情報のデジタル化が進み,その利用環境は大きく変化している。本稿では,2013年から直近までの神奈川県立病院機構における医療情報の整備状況を報告し,病院における医学情報整備の課題を検討する。段階的にオンラインジャーナル等の契約改善に取り組んだ結果,オンラインジャーナルの契約誌数が約3倍に増加した。しかしながら,医師らへのアンケートでは,その満足度は十分とはいえない。その理由として一部を除いて,医学情報を管理する図書室は体系的に整備されていない。今後も価格高騰,病院向けの医学・学術情報の維持・管理,及びコンソーシアムを含めた包括的な議論が必要である。
著者
渡辺 明夫 百目木 幸枝 軸丸 裕介 笠原 博幸 神谷 勇治 佐藤 奈美子 高橋 秀和 櫻井 健二 赤木 宏守
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集 第52回日本植物生理学会年会要旨集
巻号頁・発行日
pp.0053, 2011 (Released:2011-12-02)

多くの植物種では頂芽の成長が優先され側芽の成長が抑えられる頂芽優勢と呼ばれる機構が働き、全体の草型が制御される。私たちは主茎や側枝が長期間伸長を続け、最終的に鳥の巣のような姿となるシロイヌナズナ変異体を見いだした。解析の結果、この独特の草姿は、全ての枝の茎が頂芽優勢による抑制をのがれ長期間伸長を続けることに主な原因があり、一枝当りの分枝数は極端には増加していないことが分かった。頂芽優勢を免れて全ての茎が伸長を続ける表現型は単一の劣性変異に起因していたため、この原因変異をnoah (no apical dominance in branch hierarchy)と名付け、noah変異体の特異な草姿形成機構の解明を試みた。 主茎や側枝の伸長を詳細に調べた結果、WTの茎では茎頂から約1.5 cmほど下部を中心に幅広い領域が伸長していたのに対し、noah変異体の茎では茎頂から約0.5 cm以内の狭い領域のみが伸長していた。茎の細胞伸長が茎中を極性輸送されるオーキシンにより引き起こされると考えると、上記の結果は変異体の茎中のオーキシン分布が著しく変化していることを意味していた。そこでオーキシン濃度を詳細に測定した結果、変異体の茎のオーキシン分布はWTのものと著しく異なっていた。このため、noah変異体では茎中のオーキシンの極性輸送が著しく撹乱されていることが推察された。
著者
榎本 麻里 高橋 房恵 宮腰 由紀子 石川 みち子 渡辺 誠介 Mari Enomoto Fusae Takahashi Yukiko Miyakoshi Michiko Ishikawa Seisuke Watanabe 千葉県立衛生短期大学看護基礎理論 千葉県立衛生短期大学成人看護学 千葉県立衛生短期大学看護基礎理論 千葉県立衛生短期大学成人看護学 千葉県立衛生短期大学内科学 Chiba College of Health Science Chiba College of Health Science Chiba College of Health Science Chiba College of Health Science Chiba College of Health Science
雑誌
千葉県立衛生短期大学紀要 = Bulletin of Chiba College of Health Science (ISSN:02885034)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.37-45, 1983
被引用文献数
1

脳血管疾患は,我が国の死因の首位を昭和56年より悪性新生物に譲ったとは言え,依然第2位を占めている疾患である。幸いにして救命し得た場合でも,後遺症の1つである片麻痺は患者が社会復帰する上で大きな問題となっている。特に利き手側に片麻痺が生じた場合には,日常生活動作上の支障をきたし,利き手変換を余儀なくされることが多い。そこで,今回,我々は,日常生活動作の中でも重要と思われる食事動作と,コミュニケーションの大きな要素である書字について,健常者を対象として利き手変換を行ない,筋電図を用いて検討したので,その結果を報告する。
著者
澤菜々美 河辺隆司 山本倫也 渡辺富夫
雑誌
第76回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2014, no.1, pp.257-258, 2014-03-11

近年、学習者の授業に対する積極性を高める取り組みが行われている。本研究では、挙手動作が学習者の積極的な授業参加につながると考え、授業参加のきっかけ作りを支援する挙手ロボットを開発している。このロボットは、学習者の意思に合わせて、元気よく手を挙げ、気軽に教師への意思表示を行うとともに、他の学習者に同調行動を提示して授業参加を促す。また、教師の発問の場面でも、見本となる挙手動作をロボットが行うことで、学習者が手を挙げやすくする。これにより、挙手の身体性を活かし、学習者と教師のインタラクションを深めることで、引き込みの度合いを高め、さらなる身体動作を引き出すことで積極的な授業参加の実現が期待される。
著者
平川 史央里 白仁田 秀一 小栁 泰亮 堀江 淳 林 真一郎 渡辺 尚
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0749, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】The Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD)が報告しているCOPDに対する呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)のエビデンスにおいて,不安や抑鬱の軽減はエビデンスAと強い根拠を示している。当院においても3ヵ月間の呼吸リハを施行したCOPD78例に対し,HADS鬱の点数は初期が6.8±3.1点から3ヵ月後は5.1±3.0点(p<0.01)で,また,HADS鬱疑いである8点以上の割合も初期が38%から3ヶ月後は22%(p<0.01)と有意な改善が認められた。しかし,鬱疑いのあるCOPDは22%も継続されていることは課題である。そこで今回,鬱が改善した群と改善しない群の諸項目の変化量の比較と変化量の影響因子の検討をする事で鬱改善はどのような項目のリハ効果に影響しているのか調査した。【方法】対象はHADSが8点以上の鬱疑いのある外来COPD30例(年齢:71.8±10.6歳,BMI:22.2±4.3,%FVC:80.0±26.7%,%FEV1.0:60.0±29.9%,modified Medical Research Council scale(mMRC):2.4±1.1,COPD Assessment Test:19.3±8.9点)中,呼吸リハ実施3ヶ月後にHADSが8点未満になった(鬱改善群)13例,HADSが8点以上のままだった(鬱非改善群)17例とした。検討する項目は,症状検査はmMRC,生活範囲検査はLife Space Assessment(LSA),身体活動量検査は国際標準化身体活動質問票(IPAQ),身体機能検査は膝伸展筋力/体重比(%膝伸展筋力)と6分間歩行距離テスト(6MWT),QOL検査(St. George's Respiratory Questionnaire(SGRQ)とした。統計解析方法は,鬱改善群と鬱非改善群の諸項目の変化量の比較を対応のないt検定を用い,また,HADSの点数の変化量と諸項目の変化量の関係をpearsonの積率相関を用いて分析した。なお,帰無仮説の棄却域は有意水準5%とし,解析にはSPSS ver21.0を用いた。【結果】2群間の実測値と比較結果は,改善群vs非改善群の順に⊿mMRCは-0.5±0.7vs-0.4±0.6(p=ns),⊿LSAは+13.2点±11.4vs+0.4±12.5点,⊿IPAQは+164.9±206.4vs+48.4±366.7(p=ns),⊿%膝伸展筋力は+9.0±11.7%vs+6.3±9.4%(p=ns),⊿6MWTは+44.6±56.1mvs+38.2±37.3m(p=ns),SGRQは-7.0±10.9vs-0.7±7.1(p<0.05)であった。⊿HADSとの相関分析の結果は,⊿mMRC(r=0.05),⊿LSA(r=-0.48),⊿IPAQ(r=-0.27),⊿%膝伸展筋力(r=0.33),⊿6MWT(r=0.12),⊿SGRQ(r=0.05)で有意差が認められたのはLSAだけであった。【考察】鬱改善群は非改善群より,生活範囲や外出の頻度,QOLの改善が高かった。その他の身体活動量,症状,身体機能は両群ともに同量の改善を示した。また,HADSの変化量には特にLSAの変化量の影響を受ける事が示唆された。鬱軽減に対して,身体活動や身体機能の改善ではなく,外出頻度向上させることが重要となることが示唆された。【理学療法学研究としての意義】本研究は,COPDの鬱改善に関わる検討であり,COPDの鬱に対する呼吸リハの効果を客観的に示した研究である。本研究結果は鬱に対する呼吸リハプログラムのアセスメントとなる研究である。
著者
橋本 貴尚 菊池 大輔 新沼 佑美 小原 拓 村井 ユリ子 畑中 貞雄 栃窪 克行 渡辺 善照
出版者
Japanese Society of Drug Informatics
雑誌
医薬品情報学 (ISSN:13451464)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.158-171, 2018 (Released:2018-03-21)
参考文献数
15

Objective: To evaluate (1) a questionnaire for pharmacists on learning about drug information (DI) and using DI in practice, and (2) our DI seminar.Methods: (1) 72 hospitals and 105 community pharmacists in Miyagi, Japan were recruited.  The questionnaire included items on DI activities and questions about topics that pharmacists “want to study.”  (2) We held a seminar based on the questionnaire results and the reports of six pharmacists (one from a nonprofit corporation specializing in disseminating information on dietary supplements, one acute care pharmacist, two chronic and cancer hospital pharmacists, one community pharmacist, and one belonging to a community pharmacist association).  At the end of the seminar, participants were asked to complete an evaluation questionnaire on the seminar.Results: (1) The DI activity “participate in scientific meetings and collect information” was associated with other DI activities among both hospital and community pharmacists.  Multivariate analyses revealed that this DI activity was more strongly significantly associated with the topics “want to study techniques for presentation skills” (p<0.0001) and “want to study other DI practices” (p=0.008) than other DI activities.  (2) Sixty seven participants attended the seminar.  According to the evaluation questionnaire, the mean grade for the seminar was 80.5/100 points, and 96% of participants agreed with the “necessity of information sharing.”Conclusion: Participation in scientific meetings is important for pharmacists to develop their DI practice, and encourages information sharing between hospital and community pharmacists.  Environments in which more pharmacists have opportunities to participate in scientific meetings and related seminars are needed.
著者
村上 義孝 西脇 祐司 金津 真一 大庭 真梨 渡辺 彰
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.20-24, 2018 (Released:2018-02-10)
参考文献数
17

目的 23価の肺炎球菌ポリサッカライドワクチン(以下PPSV23)は現在高齢者に定期接種されているが,事業の運用は地方自治体に一任されており,被接種者への助成額や啓発活動等は各自治体によって様々である。今回,65歳高齢者の接種率および各自治体の接種啓発活動の実態について全国調査を実施したので報告する。方法 2016年6月から8月に全国地方自治体1,741を対象とし,自記式調査票による郵送およびウェブベースの調査を実施した。調査項目には各自治体のPPSV23接種者数,当該自治体の65歳対象数,ワクチン接種に対する個別通知の有無,回数,実施月,PPSV23の接種啓発活動,接種者の自己負担額を含めた。調査票の記入は地方自治体の保健担当部局の担当者が調査票に記入する形で調査を実施した。結果 本調査の有効回答率は58.0%であった。PPSV23接種率の全国平均値は40.8%,自己負担額の中央値は3,000円であり,自治体間のバラツキが見られた。個別通知を実施する市町村は全体の85%で,多くは4月に1回実施していた。接種啓発活動として自治体の広報紙やホームページが多い傾向がみられた。結論 65歳高齢者を対象にPPSV23接種率,地方自治体の同ワクチン接種啓発活動に関する全国調査を実施した結果,高齢者対象とした同ワクチン接種および,その啓発活動の全国的な傾向が明らかになった。
著者
三添 朗宏 古川 正志 渡辺 美知子
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会学術講演会講演論文集 2007年度精密工学会春季大会
巻号頁・発行日
pp.455-456, 2007 (Released:2007-09-01)

近年物流システムでは設備を最適に制御するという要求は少なくなる傾向だが、人手での作業が円滑に行えるような作業支援をコンピュータにより行うという要求が多くなってきている。本研究では、多品種少量小物を扱う物流センターに於ける出荷梱包計画の立案に遺伝的アルゴリズム(GA)を適用し、効率的な計画を立案・提示することにより作業者の意思決定を支援するシステムを構築・実用化を行ったことを報告する。
著者
渡辺 恭彦 ワタナベ ヤスヒコ Watanabe Yasuhiko
出版者
同志社大学人文科学研究所
雑誌
社会科学 = The Social Science(The Social Sciences) (ISSN:04196759)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.239-258, 2016-05-30

論説(Article) 本論では、戦後日本の哲学者廣松渉の著作『生態史観と唯物史観』(1986)を扱った。同書は、1957年に梅棹忠夫が発表した「文明の生態史観」を批判的に検討したうえで、廣松渉自身の歴史観を打ち出したものである。生態学の遷移(サクセッション)理論を文明論的な歴史の展開に援用した梅棹の生態史観を、廣松は人間社会と自然環境との相互作用を対象化していないとみている。廣松は、両者を媒介するのは人間の歴史的営為であるという。 We are concerned with "The ecological view of the history and the historical materialism" (1986) by Japanese philosopher Hiromatsu Wataru. This writing describes his perspective of history, examining " an ecological vie of the history" (1957) by Umesao Tadao. Umesao applies the ecological succession theory to development of the history. However, Hiromatsu points out that Umesao's theory doesn't explain how the human society and the environment interact each other. Hiromatsu claims that what mediate both of them is historical action of human kinds.