著者
渡辺 黎也 日下石 碧 横井 智之
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.49-60, 2019 (Released:2019-07-01)
参考文献数
55

コウチュウ目やカメムシ目などの水生昆虫は、水田やため池を主な生息場所としているが、圃場整備や近代農法への転換によって生息環境が改変され、全国的に減少傾向にある。そのため近年では慣行農法の水田に対し、殺虫剤や除草剤の使用を抑えた環境保全型農業の水田を推進する動きが高まっている。水生昆虫群集の動態に影響を与える要因としては、農法以外にも水田内外における生息環境に関わる複数の要因が挙げられるが、それら要因についての知見は少なく総合的な解決が求められている。本研究では、水田内の環境要因および景観要素が水生昆虫群集(コウチュウ目、カメムシ目)に与える影響について調査した。 調査は2017年4月から9月に、茨城県つくば市近郊の5地域から環境保全型水田と慣行水田を1組以上、計16枚を対象に行なった。タモ網を用いた掬い取りを行ない、水生昆虫と餌生物(両生類幼生、ユスリカ科、カ科等)の個体数を種もしくは分類群ごとに記録した。水田内の環境要因として、調査地ごとに水質(水温、水深、電気伝導度、pH)と水田内に生育する植物の植被率、薬剤使用の有無、湛水日数を調査した。また地理情報システム(GIS)を用いて、調査水田を中心としてバッファー(半径500、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000 m)を発生させ、各バッファーに占める景観要素(水田、その他の水域、森林、人工物、その他)の面積の割合を算出した。 調査の結果、水生昆虫の群集組成は農法によって異なっており、水田内の要因のうち湛水日数と餌個体数、水温が群集組成に影響を与えていた。さらに各要因の効果として、分類群数に対しては餌個体数と水温が正の効果を与えていた。また、慣行農法は水生昆虫の分類群数と個体数の双方に負の効果を与えていた。分類群数および個体数の決定に有効な空間スケールはそれぞれ水田周囲の半径3,000 mと2,000 mであり、その他の水域や森林が分類群数や個体数に正の効果を与えていた。以上より、水生昆虫の分類群数や個体数の維持には環境保全型農業の推進に加え、水田内への安定した餌生物の供給や、半径2,000または3,000 m内にその他の水域や森林など様々な環境が存在することが重要であることが示された。
著者
渡辺 勝敏
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.683-693, 2016 (Released:2016-12-28)
参考文献数
12

要旨: 現在、近畿地方に最後に残された絶滅危惧種アユモドキ(淡水魚)の生息地において、京都府と亀岡市によりサッカースタジアムを含む大規模な都市公園建設が計画されており、生物多様性および湿地生態系保全の観点から大きな問題となっている。アユモドキは国の天然記念物に指定され、種の保存法の指定種であるが、この計画は専門家や環境・文化財行政との協議を経ることなく、府・市の行政により決定されたものである。建設の決定後(2012年末)、府・市は環境保全対策のための専門家会議を立ち上げ、自然環境の基礎調査から始めたが、開始から2年半を経た2015年11月現在、環境影響評価の実施には至っていない。そのような中、計画発足からわずか4年後(現在6年後以降に延長;2018年以降)の完成を目指して、都市計画決定、用地買収、道路整備、一帯の営農放棄などが進行し、周辺の環境変化が大きく進んでいる。アユモドキは雨季の氾濫原を繁殖・初期生育に利用する東アジアモンスーン気候に典型的に適応した魚種であり、同様な湿地性動植物とともに、従来の水田営農とどうにか共存してきた。府・市は「共生ゾーン」とよぶ縮小された代替地の整備により保全に務めるとしているが、その実現性は日本生態学会をはじめ、多くの学術団体、自然保護団体等から疑問をもたれている。さらに治水、水道水源の問題、交通問題等、地域住民への悪影響に対する懸念もあり、建設場所の変更を含む計画の再検討が求められている。しかし、府知事や市長をはじめとする行政によるこの貴重な湿地生態系保全に対する認識は十分でなく、強い開発圧の中、環境保全において重要であるべき予防原則はないがしろにされてきた。その結果、たとえ開発計画が見直されても、自然環境およびそれを取り巻く社会状況は、すでに水田営農と共生した湿地生態系の保全を困難とする状況に陥っている。早急に周辺地域環境の保全等を含めた、包括的で永続的な保全方策を模索・構築しなければならない。
著者
渡辺 尚
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.40, no.9, pp.1210-1217, 1991-09-30 (Released:2017-02-10)
被引用文献数
1

飲酒によっておこる喘息症状の悪化は, 西洋人には認められず, 日本人もしくは東洋人にみられる人種差の著しい現象とされる. 今回このアルコール(飲酒)誘発喘息の発症機序を解明する目的で, 喘息患者20名を対象に, エタノール経口負荷試験と, エタノールおよびアセトアルデヒドを用いた白血球ヒスタミン遊離試験を実施した. エタノール経口負荷試験で20名中11名(55%)が陽性を示し, かつ負荷後の血中アセトアルデヒド濃度ピーク値は陽性群では陰性群に比べ有意に高値を示した(26.4±13.5μM vs 17.3±6.6μM, p<0.05). またアセトアルデヒドは, 2μM〜100μMの範囲において容量依存性に白血球からヒスタミン遊離を促進させる作用が認められた. 以上より, アルコール(飲酒)誘発喘息の病態には, 飲酒後のアセトアルデヒドの異常高値が関与しており, アセトアルデヒドによる肥満細胞(もしくは好塩基球)からのヒスタミン遊離作用を介して, 気道平滑筋の収縮反応が惹起されることが示唆された. 日本人にみられるアルコール(飲酒)誘発喘息の発症機序に関する最初の報告と思われる.
著者
渡辺 伸一
出版者
奈良教育大学
雑誌
奈良教育大学紀要. 人文・社会科学 (ISSN:05472393)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.115-125, 2007-10-31 (Released:2017-02-27)

Environmental cadmium pollution causes cadmium poisoning. The first cadmium-polluted area ever discovered in the world was the Jinzu River basin in Toyama Prefecture in Japan. The most severe case of cadmium poisoning is Itai-itai disease (osteomalacia), which was officially recognized as a pollution-related disease by the Japanese government in 1968, and a less severe case is tubular kidney dysfunction. In other words, the occurrence of Itai-itai disease is only the "tip of the iceberg". The tubular kidney dysfunction is the earliest and most prevalent adverse result of chronic cadmium poisoning. The Japan Public Health Association Cadmium Research Committee, supported by the Environmental Agency, carried out health surveys in cadmium-polluted areas of 8 prefectures during the period of 1976-1984 and reported that many cases of tubular kidney dysfunction were found not only in Toyama but also in Ishikawa, Hyogo and Nagasaki prefectures. However, the Environmental Agency and the research committee have never certified this kidney dysfunction as a pollution-related disease. In 1970, the Japanese government set tentative acceptable standards of 1ppm for brown rice and enacted the Agricultural Land Soil Pollution Prevention Law in 1971. Based on this Law, restoration projects of polluted soils of rice paddies were started. If cadmium nephropathy was certified as a officially pollution-related disease, acceptable standards for brown rice must be more strict than 1ppm, because 1ppm is a standard to prevent habitants from suffering from Itai-itai disease. This new strict standard arrives at increases in polluted rice and soils. This means increases in the expenses to buy polluted rice and to restore polluted soils. To offer indemnity to farmers for any reduction in his rice crop is the responsibility of polluting industries and to pay expenses to restore polluted soils is the responsibility of polluting industries, the central government and local authorities. This paper concludes that the main reason why cadmium nephropathy has not been certified as an official pollution- related disease is that the decision-making of the Environmental Agency and the research committee reflects the intention of the polluting industries and the government who regard the expenses above as too heavy a burden.
著者
Naveen CHANDRA Prabir K. PATRA Jagat S. H. BISHT 伊藤 昭彦 梅澤 拓 三枝 信子 森本 真司 青木 周司 Greet JANSSENS-MAENHOUT 藤田 遼 滝川 雅之 渡辺 真吾 齋藤 尚子 Josep G. CANADELL
出版者
Meteorological Society of Japan
雑誌
気象集誌. 第2輯 (ISSN:00261165)
巻号頁・発行日
vol.99, no.2, pp.309-337, 2021 (Released:2021-04-15)
参考文献数
92
被引用文献数
6 38

メタン(CH4)は主要な温室効果気体の一つであり、対流圏および成層圏における化学過程にも重要な役割を果たしている。気候変動および大気汚染に関するCH4の影響は非常に大きいが、過去30年間のCH4濃度増加率や経年変動の要因については、未だ科学的な確証が得られていない。本研究は、十分に検証された化学輸送モデルを用いて、1988年から2016年の期間を対象に大気中CH4濃度をシミュレートし、逆解析によって地域別CH4排出量を推定した。まず、標準実験としてOHラジカルの季節変動のみを考慮し、大気中CH4濃度の観測データを用いた逆解法モデル、排出インベントリ、湿地モデル、およびδ13C-CH4のボックスモデルを用いた解析を行ったところ、1988年以降におけるヨーロッパとロシアでのCH4排出量の減少が示された。特に、石油・天然ガス採掘と畜産由来の排出量の減少が1990年代のCH4増加率の減少に寄与していることが明らかとなった。その後、2000年代初頭には大気中CH4濃度が準定常状態になった。 2007年からはCH4濃度は再び増加に転じたが、これは主に中国の炭鉱からの排出量の増加と熱帯域での畜産の拡大によるものと推定された。OHラジカルの年々変動を考慮した感度実験を行ったところ、逆解析による中高緯度域からのCH4排出推定量はOHラジカルの年々変動には影響されないことが示された。さらに,我々は全球的なCH4排出量が低緯度側へシフトしたことと熱帯域でのOHラジカルによるCH4消失の増加が相殺したことによって、南半球熱帯域と北半球高緯度域の間のCH4濃度の勾配は1988-2016年の間にわたってほとんど変化していなかったことを明らかにした。このような排出地域の南北方向のシフトは、衛星によるCH4カラム観測の全球分布からも確認された。今回の解析期間には、北極域を含めて地球温暖化によるCH4排出量の増加は確認できなかった。これらの解析結果は、気候変動の緩和へ向けた効果的な排出削減策を行う上で重要な排出部門を特定することに貢献できると思われる。
著者
小笠原 正 笠原 浩 小山 隆男 穂坂 一夫 渡辺 達夫
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.899-906, 1990-12-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
10
被引用文献数
2

健常な幼児の寝かせ磨きに対する適応性と発達年齢,暦年齢との関連性を明らかにするために,保護者に寝かせ磨きをさせ,その状態を観察するとともにVTRにて記録し,AICに基づき解析を行った.調査対象者は,健常な幼児98名である.発達検査は遠城寺式乳幼児分析的発達検査を実施した.結果は以下の通りである.1.歯磨き介助(仕上げ磨きを含む)を1日1回以上行っていた保護者は,89.8%であった.2.寝かせ磨きの際に,観察された幼児の不適応行動のうち,最も多かったのは「手を出して邪魔をする(20.4%)」であった.以下,「頭を動かす(17.3%)」,「体位を変える(17.3%)」,「口を閉じる(15.3%)」,「歯ブラシを〓む(13.3%)」,「泣く(13.3%)」の順であった.3.寝かせ磨きに適応した者は78.6%で,不適応であった者は21.4%であった.4.寝かせ磨きの際に,子供を抑制した保護者は,12.2%認められ,他の87.8%は抑制しなかった.子供が拒否行動を示したにもかかわらず,抑制しなかった保護者は9.2%いた.5.寝かせ磨きの適応性と発達年齢,暦年齢とは,強い関連性が認められた.6.寝かせ磨きの適応・不適応を判別できる最適なカテゴリーは,遠城寺式乳幼児分析的発達検査項目のいずれも2歳6カ月前後であった.7.暦年齢2歳6カ月以上であれば,寝かせ磨きに適応できるレディネスが備わっていることが明らかとなった.
著者
渡辺 正之 門馬 大和
出版者
海洋理工学会
雑誌
海洋理工学会誌 (ISSN:13412752)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.3-13, 2003 (Released:2019-02-16)

Search and recovery operations for the failed H-II Rocket Flight No.8 engine were carried out in 1999 at the request of the National Space Development Agency of Japan (NASDA). The rocket was launched in November 15, 1999 and the first stage engine stopped in 4 minutes. The engine fell in the northwestern Pacific Ocean region at a water depth ofabout 3,000m. The predicted search area was limited to 3.3km width and 26km length ofbox by orbital calculation ofthe NASDA. The size ofthe main engine was about 3.4m in height, with a diameter about 1.8m. The Japan Marine Science & Technology Center (JAMSTEC) employed the latest equipment for the three search cruises and the following procedures: (1) wide area survey for the submarine topography using multi-narrow-beam echo sounder (Seabeam 2112) which was equipped on R/V ”Kairei”, (2) narrow area survey for the unique sonar contacts by side scan sonar on a 10,000m class ROV ”Kaiko” and the deep tow sonar towed at a speed of0.5 knots and a swath width of 1,000m for each side, and (3) detailed visual observation of the engine by the super-HARP camera (an ultra-sensitive color TV camera) or the 3CCD TV camera which was equipped on the deep tow camera and a 3,000m class ROV ”Dolphin-3K”. As a result, the JAMSTEC was able to locate the engine in approximately 5 weeks. Then, NASDA employed an U.S. salvage company for recovery operation that was carried out by a 6,000m class ROV ”Remora6000”and succeeded in recovering the engine from the deep seafloor within only two months after the launch. The success of the mission demonstrated the high of level technical expertise and underwater technology that JAMSTEC has cultivated over the last 30 years.
著者
片倉 慶子 河上 友宏 渡辺 洋一 藤井 英二郎 上原 浩一
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.606-612, 2019-05-31 (Released:2019-07-27)
参考文献数
37
被引用文献数
1 1

現在日本に生育するイチョウは中国から伝来したものだが,日本各地に拡散された過程は明確でない。本研究では,樹齢が長く日本に伝来した当初に近い遺伝的特徴を維持していると考えられる各地のイチョウ巨木を対象とし,遺伝的変異の地域的特性から,日本におけるイチョウの伝播経路および伝播方法の推定を試みた。九州から本州東北部の胸高幹周8 m以上の巨木から葉を採取し,180個体199サンプルについて8つのマイクロサテライトマーカーを用いて解析を行った。解析の結果,8遺伝子座から8~21の対立遺伝子を検出し,142種類の遺伝子型が認識され,13種類の遺伝子型が70個体で共有されていた。遺伝子型を共有している個体はクローンであると考えられ,地理的に離れて分布している場合もあることから,日本におけるイチョウの伝播には種子だけでなく挿し木等の方法も用いられたと考えられる。遺伝的多様性を比較すると,遺伝子多様度(HE)は0.57-0.82,アレリックリッチネス(AR)は4.51-8.49を示し,どちらも他地域に比べ東日本で低い値を示したため,中国から西日本にイチョウが伝来し,その一部が東日本に運ばれたと考えられる。
著者
渡辺 恵里子
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.19-34,237, 2008-02-29 (Released:2015-06-06)
参考文献数
34
被引用文献数
1

Based on interviews with women applying for the post of a clinical psychologist (CP), this paper analyzes the manner in which the number of CPs has increased. In Japan, the clinical psychology profession has the following three features. First, it is a new profession established as recently as 1988 by the Japanese Society of Certified Clinical Psychologists (JSCCP). Second, individuals aspiring to become CPs are required to attend graduate school. Third, despite unstable employment, a rapid increase in the number of CPs has been observed since 1988. Approximately 70 percent of CPs are women, although the JSCCP does not welcome only female CPs. However, the reason women aspire to become CPs is different from the reason that they pursue other traditional occupations such as a nurse, a nursery school teacher or a librarian. In order to make the profession of clinical psychology as advanced as that of medicine, the JSCCP applied two strategies that resulted in mostly women working as CPs. First, the JSCCP stopped making an effort to secure the employment of CPs. Second, they expanded educational institutions and demanded that those applying for the post of CP have a master’s degree. Both these strategies attracted highly educated women who were not looking for work to support themselves or for a career. Rather, they were motivated to work for the following two reasons. First, they wished to work as a CP for pleasure while managing other housework. Second, they had academic backgrounds that enabled them to attend graduate school without expending a great effort. As a result, the JSCCP inadvertently placed women at an advantage in becoming CPs. This paper suggests that this will result in CPs becoming a new occupation that is suitable for women.

40 0 0 0 OA 面白絵話

著者
渡辺芙美 著
出版者
成光社
巻号頁・発行日
1938
著者
日野 愛郎 粕谷 祐子 西川 賢 MCELWAIN KENNETH FAHEY ROBERT・ANDREW 渡辺 耕平 SONG JAEHYUN 三輪 洋文
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

近年、反エスタブリッシュメントを掲げて登場したポピュリストが政権に就く事例が増えている。このような「ポピュリストの体制化」とでも呼ぶべき逆説的な展開を踏まえて、本研究は、既存のポピュリスト態度の指標を改善し、新たな指標を検討する。体制化したポピュリストは、マス・メディア、学者、官僚、財界人などのいわゆる非政治的エリート(non-political elite)を批判して反エリート感情を煽り、庶民からの支持を調達する。本研究は、非政治的エリートの項目を含む新たなポピュリスト態度の指標を考案することにより、ポピュリストが体制化した国においても、正確にポピュリスト態度を測定することを目指す。
著者
渡辺 大輔
出版者
日本教育政策学会
雑誌
日本教育政策学会年報 (ISSN:24241474)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.56-65, 2017 (Released:2018-08-27)

It is important that Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology (MEXT), has expanded its coverage of support to“Sexual Minorities” and promoted Human Rights Education about Diversity of Sexuality in schools in the“Regarding the Careful Response to Students with Gender Identity Disorder”(2015). On the other hand, the challenges are that support cases are only for Gender Identity Disorder students, and that those are yet be reached to rethink gender binary system in school. Bullying situations that come from one’s Sexual Orientation, Gender Identity, and Sexual Expression are seen from the first grade in elementary school. It proves that children already KNOW about “Sexual Minorities”as negative things. Therefore, we need to learn about “Sexual Diversity”from before a lower grade of elementary school. This means “to match the developmental stage”. The current Guideline for the Course of Study is biased to the“Cis-gender and Heterosexual”education. Therefore, in order to guarantee the neutrality of education, learning about “Sexual Diversity”is necessary for us.
著者
渡辺 恭良
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.129, no.2, pp.94-98, 2007 (Released:2007-02-14)
参考文献数
8
被引用文献数
2 4

疲労感・倦怠感は,我々が日常的に経験している感覚であり,発熱,痛みとともに,身体のホメオスタシス(恒常性)の乱れを知らせる三大アラーム機構の1つである.疲労は,万人にとって非常に身近な問題であり,ストレス過多の現代社会に生きる私たちの中で慢性疲労に悩んでいるヒトが40%近くを占めるにもかかわらず,科学的・医学的研究はこれまで断片的であった.我々は,ストレスの過重蓄積によって陥る状態を疲労と定義している.ここ数年で,生活習慣病をはじめとする疾患の予防医療・予知医療の発展とともに,このような前病状態(未病ともいわれる)に如何に対処するかという気運が高まり,「疲労の科学」に目を向けられるに至った.多忙なスケジュールに振り回されている状況を回避することが困難な我々21世紀の住人にとって,如何に疲労に対処し回復策を探り過労に陥らないように知恵を絞るかが求められている.文部科学省・科学技術振興調整費による疲労研究班[生活者ニーズ対応研究「疲労および疲労感の分子・神経メカニズムとその防御に関する研究」(平成11-16年度,研究代表者:渡辺恭良)]では,これまでに知られてきた断片的な疲労の分子・神経メカニズムの研究結果を統合し,脳機能イメージングや遺伝子解析などの新しい方法論も取り入れて「疲労」と「疲労回復・予防」についての研究を深めてきた.ここでは,ストレスの人体への影響と大きな関連性を持つ「疲労の神経メカニズム」についての研究の現状についての情報を提供したい.また,2004年夏からは,文部科学省の21世紀COEプログラム革新的学術分野に我々大阪市立大学が申請した「疲労克服研究教育拠点の形成」が採択された(拠点リーダー:渡辺恭良).現在,COE拠点を挙げて,疲労の基礎・臨床研究と抗疲労食薬・環境開発プロジェクトを進めており,現時点での成果についても述べたい.
著者
河合 駿 鉾碕 竜範 鈴木 彩代 若宮 卓也 中野 裕介 渡辺 重朗 岩本 眞理
出版者
特定非営利活動法人 日本小児循環器学会
雑誌
第51回日本小児循環器学会総会・学術集会
巻号頁・発行日
2015-04-21

【背景】動脈管早期収縮は胎生期に動脈管が狭小化することにより出生後から遷延性肺高血圧や右室壁肥厚を来す疾患である。母体が摂取する様々な物質が本疾患を誘起することが報告されている。今回我々は妊娠中の食生活が影響したと推測される動脈管早期収縮の一例を経験したので報告する。【症例】日齢6の女児。在胎39週3日、体重3792g、APS8/9、自然分娩で出生。出生3時間後からチアノーゼ(体動によりSpO2が80~95%で変動する)を指摘されて前医NICUに入院した。日齢1より酸素投与(鼻カヌラ1.0L/min)開始したがその後もチアノーゼは改善せず、日齢6で当院NICUに新生児搬送となった。心エコー検査で右室求心性肥大と右室圧上昇、卵円孔での両方向性短絡を認め、わずかに開存している動脈管を確認した。動脈管は前医での出生直後の心エコー検査でも同様に細かったことが確認されており、遷延性肺高血圧の原因となる他の疾患を認めないことから、動脈管早期収縮を疑った。転院後も酸素投与のみで経過観察を継続し、日齢13で肺高血圧の改善を確認し酸素投与を中止、再増悪なく日齢18で退院した。母からの聴取により、妊娠中は毎日プルーン3個と種々のドライフルーツ、1日1杯市販の青汁を積極的に摂取していたことが判明した。【考察】プルーンに多く含まれるアントシアニンなどのポリフェノールにはMAP kinaseやPI-3 kinaseの作用を阻害することによるCOX-2発現の抑制作用が報告されている。胎児の動脈管は胎生期後半に増加するPGE2によりその開存が維持されるが、COX-2阻害によりPGE2の産生を抑制されると、妊娠後期に動脈管狭小化を引き起こす。本症例では胎児期の動脈管は評価できていないが、経過より妊娠中のポリフェノール過剰摂取が関与した可能性が疑われた。【結語】ポリフェノールは様々な健康食品に含まれる。妊娠中の過剰摂取は動脈管早期収縮の原因となる可能性もあるため、その危険性を周知する必要がある。
著者
渡辺 恵 嶌本 樹 渡辺 義昭 内田 健太
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.2127, (Released:2022-10-20)
参考文献数
34

近年、野生動物への餌付けは、個体の行動や生物間相互作用の変化を引き起こすなど、生態系への影響が危惧され始めた。そのため、生物多様性保全の観点から、一部の地方自治体では、餌付け行為を規制する動きが見られる。しかし、国内において餌付けが与える影響を調べた研究は、大型の哺乳類を始めとした一部の生物に限られているなど、未だ限定的である。本調査報告では、滑空性の哺乳類であるエゾモモンガへの餌付けの捕食リスクへの影響を明らかにすることを目的に、北海道網走市の餌台が設置された都市近郊林におけるルートセンサスにより、 1.餌台の利用頻度と、 2.自然由来の餌と人為由来の餌を利用する場合の行動の比較(採食中の滞在高さと一か所の滞在時間)、 3.聞き取り調査も加えてイエネコやキタキツネなどの捕食者の出現と捕食事例について調査を行った。調査の結果、エゾモモンガは餌台を頻繁に利用していた。人為由来の餌を利用する場合は、自然由来の食物を利用する場合よりも、採食中の滞在高さが有意に低く、一か所の滞在時間が有意に長かった。また、聞き取りから調査した冬に餌台周辺でイエネコによる捕食があったことがわかった。餌台を介した餌付けは、エゾモモンガの採食行動を変化させ、捕食リスクを高めることに繋がると考えられる。今後は、餌付けによる生態系への影響を評価するために、餌台のある地域とない地域での比較など、更なるモニタリングが必要だろう。