著者
永田 浩一 田尻 久雄 光島 徹 歌野 健一 高林 健 渡辺 直輝 赤羽 麻奈 加藤 貴司 平山 眞章
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 = Gastroenterological endoscopy (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.435-444, 2013-03-20
参考文献数
33

【目的】大腸3D-CTを用いて日本人とアメリカ人の大腸の長さを比較した.<BR>【対象】50歳以上の日本人とアメリカ人650名ずつ,合計1,300名を対象とした.<BR>【結果】全対象における全大腸の長さの平均は日本人とアメリカ人でそれぞれ154.7cm,158.2cm,(<I>p</I>値:0.003,効果量:0.17),S状結腸と直腸を合計した長さの平均はそれぞれ63.3cm,62.5cm,(<I>p</I>値:0.23,効果量:0.07)であった.世代別では,50歳代で全大腸の長さの平均は日本人とアメリカ人でそれぞれ153.2cm,155.6cm,60歳代で155.2cm,159.3cm,70歳代で161.8cm,165.2cmで,日米ともに世代が上がるにつれて有意に長くなった.<BR>【結論】日本人とアメリカ人の大腸の長さの差に実質的効果はみられずほぼ同等である.一方,日米ともに世代が上がるにつれて全大腸の長さは長くなる.
著者
渡辺,伸一
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
no.4, 1998-10-05

本稿の課題は、新潟水俣病を中心事例として、当該地域社会における被害者への差別と抑圧の論理を解明することである。水俣病患者に対する差別には異なった2つの種類がある。ひとつは、「水俣病である」と周囲から認知されることによって引き起こされるいわば「水俣病差別」とでも呼ぶべきものであり、もうひとつは、その反対に「水俣病ではない」と認知される、つまり「ニセ患者」だとラベリングされることによって生じる差別である。新潟水俣病の第一次訴訟判決(1971年9月)および加害企業との補償協定締結の時期(1973年6月)の以前においては、地域の社会構造や生活様式、社会規範に密接に関わる形で生み出されてきた「水俣病差別」の方だけが問題化していた。しかし、その後、水俣病認定基準の厳格化によって大量の未認定患者が発生する頃から、別の否定的反応が加わるようになった。これが、「ニセ患者」差別という問題である。これは、地域社会における「水俣病差別」と「過度に厳格な認定制度(基準)」が、相互に深く絡み合う中で生み出されてきた新たなる差別と抑圧の形態であった。本稿ではさらに、差別と抑圧の全体像を把握すべく、新潟水俣病における差別と抑圧の問題は、以下の7つの要因が関与して生み出された複合的なものであること、しかし、その複合化、重層化の度合いは、阿賀野川の流域区分毎に異なっていることを明らかにした。1.加害企業による地域支配、2.革新系の組織・運動に対する反発、3.漁村ぐるみの水俣病かくし、4.伝統的な階層差別意識の活性化、5.水俣病という病に対する社会的排斥、6.認定制度による認定棄却者の大量発生、7."水俣病患者らしさ"の欠如への反発。
著者
渡辺 優 上田 正仁
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.71, no.6, pp.372-376, 2016-06-05 (Released:2016-08-10)
参考文献数
25

不確定性関係は量子力学の本質を端的に表現する関係式として知られているが,その意味するところは見かけほど単純ではない.不確定性関係の研究はハイゼンベルクがガンマ線顕微鏡で電子の位置と運動量の測定精度に関する思考実験を行ったことにはじまる.ガンマ線で電子の位置をΔxの精度で測定すると,測定の反作用を受けて運動量がΔpだけ不確定になり,両者が不確定性関係ΔxΔp≳ħ/2を満足するという主張である.この不確定性関係は,測定器の役割が物理量の測定結果に本質的な役割を果たすというボーアの相補性を端的に表現したものであると解釈できる.一方,標準的な量子力学の教科書で議論される,物理量の標準偏差の間に成立する不確定性関係は「互いに非可換な物理量が同時に定まった値を持つことはできない」という量子状態の非決定性を表している.これは,測定の相補性の数学的な証明であると間違って紹介されることもある.しかし,相補性と非決定性は全く異なった概念である.実際,後者は任意の波動関数に対して数学的に不等式が証明できる概念であるが,前者は誤差とは何か,擾乱とは何かを指定してはじめて具体的な意味を獲得する.不確定性関係が今なお最先端の研究対象として議論されているのは,誤差と擾乱に関して万人に共通する認識が未だ確立されていないからである.ハイゼンベルクのガンマ線顕微鏡の議論は,粒子を古典的に扱った半古典論であるため,現代的な量子測定理論の枠内で考えた場合に,誤差と擾乱の間にどのような不確定性関係が成立するのだろうかという自然な疑問が沸き起こる.しかしながら,量子測定理論では測定される対象系だけでなく測定器も量子力学にしたがうため,対象系の量子揺らぎだけでなく測定器の量子揺らぎも測定結果に影響し,その解析は単純ではない.一般の測定過程について,測定器の出力と対象となる物理量の間の関係を明らかにし,対象について有意な情報を取り出す合理的な方法は何か,という問題が生じる.このような問題に対して解答を与えるのが量子推定理論である.量子推定理論の観点からは,測定誤差は測定によって得られたフィッシャー情報量の逆数として与えられる.フィッシャー情報量は統計学における最も重要な量の一つであり,測定データから推定された物理量の推定精度を与える.すなわち,物理量の変化に対応して,測定値がどれだけ変化するかという感度を与える量である.測定の反作用の影響で,測定過程はユニタリではなくなり,非可逆な過程となる.そのような非可逆な過程では情報量は単調減少するため,測定過程の非可逆性を失われた情報量として特徴付けられる.したがって,擾乱は対象系の持つフィッシャー情報量の損失として定式化できる.我々は,このように定式化された誤差と擾乱の積の下限が交換関係で与えられるというトレードオフ関係を見出した.こうして,ハイゼンベルクが思考実験で指摘した測定誤差と擾乱の間の不確定性関係が量子推定理論の観点から定量的に示された.
著者
渡辺 匠 櫻井 良祐 綿村 英一郎 唐沢 かおり
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.53-56, 2014-07-30 (Released:2014-08-26)
参考文献数
6
被引用文献数
2 1

This research developed a reliable and valid Japanese version of the Free Will and Determinism Plus Scale (FAD+) to measure people's belief in free will. Study 1 developed a Japanese version of the FAD+ using questionnaire data from 203 undergraduates. Study 2 tested the reliability and validity of the Japanese FAD+ in a sample of 362 adults. The results provide evidence that the translated scale has the same factor structure as the original scale. In addition, free will beliefs were associated with locus of control, sense of trust, and belief in a just world, indicating high validity of the scale.
著者
渡辺 勝敏 森 誠一 名越 誠 田 祥麟 清水 義孝
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.157-162, 1992-09-15 (Released:2010-06-28)
参考文献数
11

日本の伊勢湾周辺に局在するネコギギCoreobagrus ichikawaiは, 韓国に分布するウサギギギC. brevicorpusとの核型の相違が報告されているが, 過去にはその形態的類似性から, 独立した種としての有効性が疑われることがあった.櫛田川と田切川 (員弁川水系) 産のネコギギ32個体, および南江 (洛東江水系) 産のウサギギギ35個体について, 計数および計量的な合計18形質を比較した.その結果, 臀鰭軟条数, 鰓耙数, 体高比, 眼径比, および頭部と各鰭の大きさや形など, 多くの形質で有意な差異が認められた.さらに, 胸鰭棘前縁の鋸歯の形状や固定標本の色彩にも差異が認められた.また, 体長約50mmを越えた個体については, 両者を識別する際に相体成長をほとんど無視できることがわかった.一方, Jayaram (1966) が記載したC. okadaiは, C. ichikawaiのシノニムと判断された.
著者
渡辺 澄夫
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:05252997)
巻号頁・発行日
vol.97, no.5, pp.1145-1161, 2012-02-05

この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。
著者
張 成年 山本 敏博 渡辺 一俊 藤浪 祐一郎 兼松 正衛 長谷川 夏樹 岡村 寛 水田 浩治 宮脇 大 秦 安史 櫻井 泉 生嶋 登 北田 修一 谷本 尚史 羽生 和弘 小林 豊 鳥羽 光晴
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.190-197, 2013 (Released:2013-03-22)
参考文献数
17
被引用文献数
3 2

アサリ殻模様の非対称性は優性遺伝形質である。非対称型(A)頻度は北海道と関東周辺で高く(14.5~28.1%),東北,浜名湖以西,中国で低かった(0~9.9%)。千葉県盤州では A 型頻度が低いと考えられる地域のアサリが 2007 年まで放流されてきた。盤洲の 2005 年度標本では殻長 20 mm 未満で A 型が 22%,25 mm 以上で 0% であり大型グループで放流個体が多いことが示されたが,2011 年以降の標本ではサイズによらず A 型が 17.2~20.3% 見られ,放流個体による遺伝的攪乱が限定的であることが示された。

24 0 0 0 OA 心霊治療秘書

著者
渡辺藤交 著
出版者
日本心霊学会
巻号頁・発行日
1924
著者
本堂 毅 平田 光司 関根 勉 米村 滋人 尾内 隆之 笠 潤平 辻内 琢也 吉澤 剛 渡辺 千原 小林 傳司 鈴木 舞 纐纈 一起 水野 紀子 中島 貴子 中原 太郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

科学技術の専門的知識には,程度の差はあれ,様々な不確実性が避けられない.また,社会の中で科学技術の知識を用いる際にどのような科学的知識が必要かは価値判断と不可欠であるため科学自体では定まらない.このような「科学的知識の不定性」を直視し,不定性の様々な性質を踏まえた上で,より的確な判断を私たちが主体的に下すための条件を考察し,科学的知識に伴う不定性の性質・類型を明らかにするとともに,その成果を書籍にまとめた(2017年度に出版予定).
著者
佐々木 那津 津野 香奈美 日高 結衣 安藤 絵美子 浅井 裕美 櫻谷 あすか 日野 亜弥子 井上 嶺子 今村 幸太郎 渡辺 和広 堤 明純 川上 憲人
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.275-290, 2021-11-20 (Released:2021-11-25)
参考文献数
28

目的:本研究では,医学研究における患者・市民参画(PPI: Patient and Public Involvement)の枠組みを用いて日本人女性労働者の就労上の悩みと期待する職場での研究を把握し,研究の課題発見と優先順位を決定する.対象と方法:日本の女性労働者を対象に,インターネット調査を利用した横断研究を行った.独自の調査票を用いて「女性労働者の就労上課題となる生物心理社会的な要因(身体症状,精神症状,月経の悩み,妊娠・出産の悩み,ワーク・ライフ・バランスなど)」,「女性労働者が活用できる制度の利用状況」,女性労働者が「期待する職場での研究テーマのニーズ」を尋ねた.「就労上課題となる生物心理社会的な要因」と「期待する職場での研究テーマのニーズ」は基本的属性(年齢,配偶者の有無,子どもの有無,未就学児同居の有無,勤務形態,職種)別にχ2 検定および残差分析を行い,また期待する職場での研究テーマとして頻度の高い4項目に関して症状の有無との関連をχ2 検定で検討した.調査は2019年7月に実施した.結果:本調査では416名から回答を得た.就労上課題となる生物心理社会的な要因として,なんらかの就労に支障がある症状を持つ者の割合は,身体症状(89%),月経に関する悩み(65%),精神症状(49%),ワーク・ライフ・バランスの悩み(39%),妊娠出産に伴うキャリアの悩み(38%)の順で多かった.制度利用の状況として,回答者本人の利用率は不妊治療連絡カード(0%),フレックスタイムやテレワーク(1~3%),生理休暇(4%),短時間勤務制度(8%)であった.期待する職場での研究は,「肩こりや腰痛をやわらげる研究」(45%),「女性のメンタルヘルスを向上させる研究」(41%),「月経と仕事のパフォーマンスに関する研究」(35%),「ワーク・ライフ・バランスを向上させる研究」(34%)の順に多かった.20代/30代・配偶者がいない・こどもがいない・フルタイム勤務という要因をもつ対象者では「メンタルヘルス」と「月経」に関する研究への期待が高かった.未就学児同居の対象者では「産後の精神的な支援」「産後の身体的な支援」「産後うつ予防」の研究への期待が有意に高かったが,「ワーク・ライフ・バランス」に関する研究への期待は有意差がなかった.月経の悩みやワーク・ライフ・バランスの課題を抱えていることと,それらの研究を期待することには有意な関連が見られたが,有症状者のうち介入を期待した者の割合はいずれも48%であった.男性労働者にも共通する心身の課題を除くと月経に関する悩みは最も頻度の高い女性労働者の就労上課題となる生物心理社会的な要因であった.考察と結論:就労上困難を感じる症状として月経に関連したものは頻度も高く,女性労働者の健康課題として婦人科に関連した心身の状態は今後研究の対象となることが期待された.しかし,悩みや困難を抱えていることと職場での研究を希望しているかどうかについては,個別の文脈で慎重に検討する必要があると考えられる.
著者
渡辺 ゆうか
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.57, no.9, pp.641-650, 2014-12-01 (Released:2014-12-01)
被引用文献数
1

ファブラボ(FabLab)と呼ばれる,3Dプリンターやカッティングマシンなどの工作機械を備えたオープンな実験工房が,世界50か国600か所以上に設立されその数を増やしている。人々にデジタル工作機械に触れる機会を提供し,個人による発明を可能にする試みを行っている。2011年,東アジア初のファブラボが,鎌倉と筑波で同時に誕生した。以降,国内に11か所設立されている。本稿では,デジタル工作技術の普及によって創出される「新たな領域」を,世界や鎌倉の事例から掘り下げていく。これからの「学びの場」「人材育成」「研究開発」「ビジネス」を促進させ,個人から地域へと価値を最大化させていく可能性を提示していく。
著者
島津 善美 藤原 正雄 渡辺 正澄 太田 雄一郎
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.106, no.11, pp.747-755, 2011 (Released:2017-03-21)
参考文献数
43
被引用文献数
1

味と温度の関連性については必ずしも一致した結論が得られてないのが現状であるが,近年,清酒の特性を生かした飲み方の提案として,温めて飲む燗酒及び酒質と様々な食材・料理との相性を求めるような研究も多く見られるようになった。そこで,ワインの有機酸の研究を長年に亘って研究を重ねてこられた筆者らに,清酒の味を左右する二つの成分,有機酸及びアミノ酸と飲用温度の関係について,官能評価の結果に基づいて,詳しく解説して頂いた。日常の料理メニューで最も普及している21品目について,清酒と料理の相性基本表など新しい知見も提示されている。得られた知見が清酒の需要拡大につながるものと期待し,清酒業界の方々にも是非参考にしていただきたい。
著者
谷本 芳美 渡辺 美鈴 河野 令 広田 千賀 高崎 恭輔 河野 公一
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.52-57, 2010 (Released:2010-03-25)
参考文献数
27
被引用文献数
43 64 12

目的:高齢者の介護予防に向けた健康づくりを支援するために,日本人を対象とした大サンプル数の調査から筋肉量を測定し,部位別に筋肉量の加齢による特徴を明らかにすることを目的とした.方法:18歳以上の日本人4,003人(男性1,702人,女性2,301人)を対象者とし,平成19年5月から平成20年9月にかけて上肢,下肢,体幹部および全身筋肉量の測定を行った.対象者は大都市近郊や農村在住の住民,大学の学生や教職員,民間企業の職員,地域の既存施設(図書館,老人福祉センターなど)の利用者である.マルチ周波数体組成計MC-190(タニタ社)を使用して筋肉量を測定し,性,年齢別に検討した.結果:筋肉量はすべての部位において年齢に関わらず男性が女性よりも有意に多く,また,加齢に伴う減少の割合は男性の方が女性よりも大きいことを示した.部位別の特徴として,下肢は20歳代ごろより加齢に伴い著明な減少を,上肢は高齢期より緩やかな減少を,体幹部は中年期頃まで緩やかに上昇した後減少を示した.さらにこれらの総和である全身筋肉量は中年期頃まで微量に増加あるいは横ばい状態から減少した.このように筋肉量の加齢変化は部位により異なり,減少率が最も大きいのは下肢で,次に全身,上肢,体幹部の順であった.結論:本研究では日本人筋肉量の部位別の加齢変化が明らかとなった.特に下肢筋肉量は早期より加齢に伴い大きく減少することから,高齢期の健康づくりにおいて下肢筋肉量に注目した支援の必要性が示された.