著者
山中 伸弥 青井 貴之 中川 誠人 高橋 和利 沖田 圭介 吉田 善紀 渡辺 亮 山本 拓也 KNUT Woltjen 小柳 三千代
出版者
京都大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
2007

4つの転写因子を体細胞に導入することで多分化能を持ったiPS細胞が樹立できる。c-Mycを含めた4因子を用いた場合にキメラマウスで腫瘍化が高頻度で認められ、レトロウイルス由来のc-Mycが原因の一つであることが分かった。樹立条件などを検討しMycを用いずにiPS細胞を作ることに成功したが、性質の点で不十分であった。c-Mycの代替因子の探索を行いL-Mycを同定した。L-Myc iPS細胞は腫瘍化リスクもほとんど認められず、性質の点でも十分であった。レトロウイルスを用いずにプラスミドを用いることでもiPS細胞の樹立に成功した。このことにより体細胞への初期化因子の挿入が起こらずより安全な作製方法の確立に成功した。神経細胞への分化誘導とそれらの移植実験により安全性を検討する方法の確立も行った。また、肝細胞、血液細胞、心筋細胞への分化誘導系も確立した。iPS細胞の性状解析をディープシークエンサーなどを用いて詳細に解析する技術の導入も完了し、網羅的な遺伝子発現、メチル化解析、スプライシング解析なども行った。
著者
小林 由佳 井上 彰臣 津野 香奈美 櫻谷 あすか 大塚 泰正 江口 尚 渡辺 和広
出版者
公益財団法人 産業医学振興財団
雑誌
産業医学レビュー (ISSN:13436805)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.225-250, 2021 (Released:2021-01-01)
被引用文献数
1

多様化する産業保健上のニーズに応える能力として、産業保健専門職のリーダーシップが注目されている。本稿では産業保健専門職がリーダーシップをさらに向上させ、活動を展開していくための指針となる考え方を提案することを目的とし、リーダーシップ研究の文献レビューから産業保健専門職のリーダーシップにふさわしい概念を検討し、活動事例による例示を行なった。文献レビューでは、これまでの変遷から、近年提唱された「権限によらないリーダーシップ」に着目し、適応型および共有型リーダーシップの産業保健専門職への適用の有用性を掘り下げた。さらに事例検討から、両リーダーシップは産業保健専門職が日常的に発揮できるものであり、課題解決に有効となり得ることが示された。
著者
名倉 秀子 渡辺 敦子 大越 ひろ 茂木 美智子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.146-156, 2003-05-20
被引用文献数
4

雑煮の構成内容から地域の特徴を知る目的で,全国を12地域に分割し,各地域に在住する学生の家庭を対象に,アンケートによる実態調査を行った。雑煮のもち,だし,調味料,具,盛り付けの器,伝承など雑煮の地域的な特徴について以下のような結果が得られた。1)もちの形態は角もちが北陸,東海以北,丸もちが近畿以西にそれぞれ80%以上出現した。もちの扱い方は「焼く」が関東以北4地域,「ゆでる」が北陸,中国,北九州の3地域,「そのまま汁へ」が東海,近畿1,近畿2,四国,南九州の5地域に分類できた。2)だしの種類は魚介類が東海および中国以西,肉類が東北,海藻類が北海道,北陸,九州,野菜・きのこ類が九州でやや高めの出現率を示した。3)調味料の種類から,すまし仕立て系が北海道,東北,関東1,関東2,北陸,東海,中国,北九州,南九州の9地域,味噌仕立て系が近畿1,近畿2,四国の3地域に分類できた。4)具の種類は人参,大根,鶏肉が全国的に高い割合で出現した。野菜類の緑色系において,北海道の三つ葉,東北のせり,関東1の小松菜,関東2と北陸の三つ葉,東海のもち菜,近畿1の水菜,近畿2と中国のほうれん草,北九州のかつお菜,南九州の京菜にみられるように地域に限られた野菜や正月の期間だけの野菜が出現していた。また,かまぼこやなるとの出現は地域の特徴を捉えていた。5)盛りつけの器の材質は全国的に椀の出現率が70%をしめ,母方系統の雑煮を20〜29年前から調理していることが明らかとなり,伝承について地域的な特徴は見出せなかった。
著者
喜馬 佳也乃 佐藤 壮太 渡辺 隼矢 川添 航 坂本 優紀 卯田 卓矢 石坂 愛 羽田 司 松井 圭介
雑誌
筑波大学人文地理学研究 = Tsukuba studies in human geography
巻号頁・発行日
vol.38, pp.45-58, 2018-04

本研究には平成28年度科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究:課題番号16K13297)の一部を利用した.
著者
河内 明宏 渡辺 泱 中川 修一 三好 邦雄
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.84, no.10, pp.1811-1820, 1993-10-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
16
被引用文献数
7 7

一般の小学生と幼稚園児2,033名を対象として, 正常児および夜尿児の膀胱容量, 夜間尿量と夜尿を含む夜間の排尿行動を, 質問紙法により調査した. 正常児の朝, 昼の膀胱容量と夜間尿量は, 年齢との間で直線回帰式にて表せる, 有意な相関関係を示した. また体の成長との関係においては, 身長, 体重および体表面積の3者の内で, 体重との間で最も良い相関関係を示した. 夜間尿意覚醒時の膀胱容量と朝, 昼の膀胱容量を比較すると, 朝の膀胱容量が夜間の膀胱容量に近い値を示し, 夜尿を論じる際の膀胱容量は朝起床時の膀胱容量を重視すべきであると思われた. 夜尿児の朝の膀胱容量は, 正常児と比較して, 6歳までは小さいが, 7歳以上では逆に大きいと考えられた. 正常児の間でも10~15%に夜間多尿であると思われる児童が存在し, これらは覚醒機能が正常で, 夜間尿意覚醒するために夜尿とならないと考えられた. 夜尿児の頻度は全体で14%であり, 9歳までは男が多かったが, 10歳以上ではほぼ同じ頻度であった. 過去に夜尿があった児童の調査結果より, 夜尿の平均自然消失年齢は7.3歳であり, このことより8歳以降持続する夜尿は積極的治療の対象になると考えられた.
著者
今井 康之 黒羽子 孝太 渡辺 達夫
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

化学物質アレルギーにおいて、抗原感作を強める作用(アジュバント作用)の機構には不明な点が多い。マウス接触性皮膚炎モデルにおけるフタル酸エステルのアジュバント機構について、侵害刺激受容チャネルTRPA1の重要性を明らかにした。作動活性のある既知の天然物、アンタゴニストを用いた実験結果も上記の機構を支持した。アジュバント物質の予測において、TRPA1作動活性の検索が有用であることを、化粧品や薬剤処方に汎用されている代替可塑剤を題材として明らかにした。
著者
大庭 伸也 渡辺 黎也
出版者
Entomological Society of Japan
雑誌
昆蟲.ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.12-15, 2023-03-25 (Released:2023-04-13)
参考文献数
9

Hydaticus grammicus (Germer, 1827) (Coleoptera: Dytiscidae) is a common diving beetle with a body length of 9.0–11.0 mm and yellowish brown with vertical stripes on their elytra. We found an unidentified beetle resembling H. rhantoides Sharp, 1882 because of dark brown on its body color in Hyogo Prefecture, Japan. Based on the phylogenetic analysis using mitochondrial COI gene sequences (646 bp), we concluded that the unidentified beetle is a color variation of H. grammicus (no stripe type). This color variation with no stripe is the first report of this species.
著者
柏木 征三郎 工藤 翔二 渡辺 彰 吉村 功
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.74, no.12, pp.1044-1061, 2000-12-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
25
被引用文献数
27 29

リン酸オセルタミビル (Ro64-0796) は, A型およびB型インフルエンザウイルスの増殖に必須の酵素であるノイラミニダーゼ (NA) に対する強力で選択的な阻害剤オセルタミビル・カルボン酸 (Ro64-0802) のプロドラッグで, 経口投与後速やかにRo64-0802に変換される. 今回, 我々は, 16歳以上のインフルエンザウイルス感染症患者を対象に, リン酸オセルタミビル (Ro64-0796) 1日2回朝・夕食後5日間経口投与時の本剤の有効性および安全性を検討する目的で, プラセボを対照とした第III相二重盲検並行群間比較試験を実施した. 本試験に登録された患者数は316例で, プラセボ投与群162例, Ro64-0796投与群154例であった. このうち治験薬が投与され, かつインフルエンザウイルスの感染が確認された症例 (ITTI: Intent-to-treat infected population) は, プラセボ投与群130例, Ro64-0796投与群122例の計252例であった.その結果, Ro64-0796は, 有効性の主要評価項目であるインフルエンザ罹病期間を約1日 (23.3時間) 短縮させ (p=0.0216, 一般化ウイルコクソン検定), 投与3日目の鼻・咽頭ぬぐい液中のウイルス力価を有意に低下させた (p=0.0009, 共分散分析). さらに, 平熱までの回復時間 (36.9℃以下になるまでの期間) をプラセボに比べ約45%短縮させ, インフルエンザ症状の改善に要する時間の短縮ならびに症状の重症度軽減をもたらした. 一方, 安全性については, 有害事象として, 嘔気, 嘔吐, 腹痛などの胃腸障害が多くみられたが, 副作用の発現率は, プラセボ投与群40.9%, Ro64-0796投与群33.1%と, 両群で有意な差は認められず (p=0.155, x2検定), 臨床的に問題となる臨床検査値異常変動およびバイタルサインの異常も認められなかった.以上の成績から, Ro64-0796は, 臨床的に有効かつ安全な経口インフルエンザ治療薬であると考えられた.
著者
木村 光孝 西田 郁子 牧 憲司 高橋 宙丈 渡辺 博文 野沢 典央 堤 隆夫 岡 裕美子
出版者
一般財団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.291-298, 1991-06-25 (Released:2013-01-18)
参考文献数
33
被引用文献数
2

本研究は食物の硬軟による咀嚼機能の変化が下顎骨にどのような変化を及ぼすかを明かにした.3週齢のWistar系雄ラットにそれぞれ固型飼料群,練飼料群-I,練飼料群-IIおよび粉末飼料群の飼料を与え,飼育6週間後に下顎骨に及ぼす影響を検索し,次のような結果を得た.1.飼料の平均圧縮強さは固型飼料群で94.32kg/cm2,練飼料群-I 45.23kg/cm2,練飼料群-II 14.20kg/cm2,粉末飼料群0であった.2.写真濃度所見は,固型飼料群が最も濃度が高く練飼料群-I,練飼料群-II,粉末飼料群の順に歯槽骨骨濃度は減少した.3.下顎骨計測所見は,固型飼料群と練飼料群-Iおよび練飼料群-IIの下顎骨長および下顎枝高はほぼ同程度の値を示したが,粉末飼料群の値は減少した.4.X線マイクロアナライザーによる分析所見では,歯槽骨のCa,Pの点分析による定量分析を対照群と比較した相対Ca量比(Ca/[Ca]c)およびP量比(P/[P]c)を求めた結果,固型飼料群および練飼料群-Iはほぼ同程度の値を示し,練飼料群-IIおよび粉末飼料群に比べ高い値を示した.5.下顎骨破砕強度は固型飼料群が最も強く,練飼料群-I,練飼料群-II,粉末飼料群の順に低値を示した.以上のことから食物の硬軟の変化によって歯槽骨の内部構造に影響を及ぼすことが明らかになった.
著者
大澤 剛士 三橋 弘宗 細矢 剛 神保 宇嗣 渡辺 恭平 持田 誠
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.2105, (Released:2021-10-31)
参考文献数
56

Global Biodiversity Information Facility(GBIF)日本ノード JBIFは、体制を刷新した 2012年以降、国内における生物多様性情報に関わる活動の拠点として、生物多様性に関わるデータの整備や公開、それらの支援、普及啓発等の活動を行ってきた。日本は 2021年 6月をもって GBIFの公式参加国、機関から外れることが決定しているが、 JBIFは引き続き同様の活動を継続していく。本稿は、 JBIFのこれまでの主な活動をまとめると同時に、国内における生物多様性情報が今後進むべき方向、課題について意見を述べ、日本の生物多様性情報の発展について今後必要と考える事項について提案する。
著者
渡辺 英一
出版者
公益社団法人日本船舶海洋工学会
雑誌
造船協会誌 (ISSN:03861597)
巻号頁・発行日
no.412, pp.518-526, 1963-12-25
著者
渡辺 哲朗 近山 隆
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.113, pp.27-32, 2006-10-27
被引用文献数
6

今日のコンピュータ音楽においては,本来の人間の演奏に内在するずれやゆらぎといった「グルーヴ感」を表現することに困難がある.本研究では,プロのドラマーが実際に演奏したドラム演奏を収録した音源を解析することにより,演奏に内在するグルーヴ感の定量的評価を行い,グルーヴ感を持った「人間らしい」演奏を自動生成するシステムの構築を目指す.本稿においては,演奏中のハイハットシンバルの打点時刻から仮想的なメトロノームの位置を定め,その仮想メトロノームに対する各楽器の打点のずれと打点音量を解析した.その結果,グルーヴ感の種類によって打点のずれの標準偏差や打点音量の平均値に特に大きな差が生じることがわかった.When we create a music on a computer, it is very difficult to express humanlike touch, called"groove feeling". We evaluate groove feeling of drums play quantitatively by analyzing a professional drummer's play, and aim at structuring a system of "humanlike" automatic playing. In this paper, we defined the position of the virtual metronome, and analyzed time-lags between attacks and the virtual metronome and attacks' volume. As a result, we found significant differences in the deviation of time-lags and the mean value of volume between each groove feeling.