著者
片山 一朗 横山 明子 松永 剛 横関 博雄 西岡 清
出版者
Japanese Dermatological Association
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.104, no.7, 1994

重症の顔面皮膚炎を持つアトピー性皮膚炎患者に対する脱ステロイド外用療法の評価を行った.対象は68名の入院患者とし,亜鉛華軟膏の面包帯療法,ないし白色ワセリン,白色ワセリン亜鉛華軟膏混合軟膏の単純塗布を主体とした治療を行った.3分の1の症例において退院後1年以上顔面の皮膚炎の再燃は見られれなかったが残り3分の2の症例においては一年以内に再燃する傾向が見られ,うち10名では増悪時ステロイドの外用が必要であった.この再燃率は顔面の皮膚炎の持続期間,顔面に対するステロイド軟膏の使用期間と比較的よく相関する傾向が見られたが,血清IgE値,使用ステロイド軟膏の強さ,入院期間との間には特に一定の傾向は見られなかった.今回の検討においては30歳以下の患者が9割以上を占め,その増悪因子も多様であった.なお入院時および経過中,9例に白内障の合併が見られた.
著者
片山 寛 カタヤマ ヒロシ KATAYAMA HIROSHI
出版者
西南学院大学学術研究所
雑誌
西南学院大学神学論集 (ISSN:03874109)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.29-40, 2016-03

1933年から1945年までのいわゆるナチズムの時代のドイツのキリスト教会について,以前は,告白教会を善玉とし,ドイツ的キリスト者を悪玉とする単純な対立図式だけで論ずる傾向が強かった。しかし近年はむしろ,この時代を生きたもっと多様な教会像を検討する論考が多く見られるようになった。たとえば,Philipp Thull (Hrsg.), Christen im Dritten Reich)においては,これまでにもよく見られた,DEK(ドイツ福音主義教会)内部の上記の闘争と,カトリック教会内の諸問題の検討の他に,いくつかの教派Neuapostolische Kirche,Mennoniten, Pfingstbewegung, alt-katholische Kirche におけるナチズム時代が,それぞれの著者によって論じられている。そしてその最後に,Karl Heinz Voigt)は,「自由教会」と総称で呼ばれる15の小教派(上記とも重なるが,メノナイト,バプテスト,バプテスト系の兄弟団,エリム教会,メソジスト,福音主義共同体,ヘルンフート兄弟団,自由福音教会,セブンスデイ・アドヴェンティスト,古ルター派教会,古カトリック教会,救世軍,ミュールハイム連盟,神の教会,(ペンテコステ系の)フォルクスミッシオン)について,それらがDEKの告白教会運動から疎外された状況を論じている。自由教会はナチズムと闘うことができなかったことを批判されることが多く,自由教会自身がそれについて苦い後味を抱いているのであるが,それは彼らのせいだけではなかったというのである。この発表で特に取り上げたいのは,ドイツのバプテスト同盟Bund der Baptistengemeinden(1942年にいくつかの小教派を統合して,福音主義自由教会同盟Bund Evangelisch-Freikirchlicher Gemeindenに改称した。現代もバプテストはこの名称を使用している)がナチズムの時代をどのように生きのびたのかについてである。それを私は,Günter Balders の論文「ドイツ・バプテスト小史」の第5章「第三帝国と第二次世界大戦の時代(1933-1945)」)にもとづいて紹介したい。その上で,自由教会としてのバプテストが,どのようなものであり,どのような点で優れ,またどのような点で限界を持っていたかを考察したいと思う。
著者
片山 眞之 片山(須川) 洋子
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.75-80, 2007-02-15
被引用文献数
1

市販乾燥ヒジキ(Sareassum fusiforme(Harvey)Setchell)に含まれるヒ素は,調理前処理として乾燥ヒジキを水に浸し一定時間水戻しすると溶出されてくる.浸漬水の液温を0℃,15℃,30℃,45℃,60℃,75℃,90℃とし,各々浸漬時間を20分,40分,60分,180分,360分に設定して溶出ヒ素量を定量した.同時に,膨潤ヒジキ画分のヒ素含量も定量した.ヒ素の定量は熱中性子放射化分析によった.乾燥ヒジキを75〜90℃の浸漬水で水戻しすると,20分以内に総ヒ素量の約70%が溶出されて膨潤ヒジキ中には約30%が保持されている.この内ヒジキ固形物に結合されているのは約10%である.45℃で水戻しを行うと20分以内に総ヒ素量の約60%が溶出され,約40%が膨潤ヒジキ画分に残存するが,この時ヒジキ固形物中に結合するビ素は総ヒ素量の20%以下である.なお,ヒ素溶出の機構が単一ではないことが推察された.
著者
櫻井 健一 片山 恵里 茂手木 宏美
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.323-328, 2015-05-30 (Released:2015-06-01)
参考文献数
20

症例は72歳女性.2型糖尿病経過中にシタグリプチン50 mgを開始し,血糖コントロール良好(HbA1c5 %台)となるも,その後低血糖と思われる症状が出現した.数日間の体調不良・食思不振の後,低血糖性昏睡(血糖値31 mg/dl)にて入院となった.この時の血清インスリンが9.24 uIU/mlと高値であり,インスリンの不適切分泌が疑われた.各種検査により,シタグリプチンとシベンゾリンの併用による薬剤性低血糖が疑われ,両薬を中止したところ低血糖は改善した.シベンゾリンは膵β細胞に対しSU薬と同様にKATPチャネルに作用し,インスリン分泌を促すことが知られている.本症例は高齢であり,腎機能障害を有しており,シタグリプチンとの併用によりインスリン分泌作用が増強したと考えられた.DPP4阻害薬をIa群抗不整脈薬と併用する際には相互作用による重症低血糖に十分留意する必要があると考えられた.
著者
片山 耕二郎
出版者
現代文芸論研究室
雑誌
れにくさ
巻号頁・発行日
vol.3, pp.1-23, 2012-03-30

In this paper, I analyze some novels in which artists are observed by other characters. I focus on these novels in order to fill in the gap between the concept of Künstlerroman (artist's novels) and that of novels about artists. These novels feature artists not as protagonists but as supporting characters: they are not considered technically Künstlerroman. While these novels are no less important in the study of whole artist novels than Künstlerromane, little attention has been given to them. For this reason, it is necessary to research them comparatively in order to show the importance of some of their common themes. First, I look at the life and works of E.T.A. Hoffmann. On the one hand, he wanted to be a great musician; on the other, he became a fairly competent judge. Thus he had both an artistic temperament and an objective perspective on artists, which allowed him to describe the nature of artists through his characters. After examining his career, I analyze some of his "pure" artist stories. In the second half of the paper, I discuss Balzac and Henry James. I examine their artist novels, focusing on Hoffmann's influence on Balzac and their influence on Henry James. In the 1830s, Hoffmann's novels were translated into French and gained popularity. Famous French writers including Balzac were excited by his works. Balzac's artist novels borrow liberally from Hoffmann, adopting, for example, the theme of madness or death of artists. However, the theme of masterpiece eventually became Balzac's primary concern. Finally, I examine the influence of Balzac's "Le Chef-d'œuvre inconnu" on James'"The Madonna of the Future." Comparing the two reveals a) how "Le Chef-d'œuvre inconnu" was analyzed by James, who was also a brilliant critic, and b) what Henry James inherited from Balzac's story. In conclusion, I affirm that these artist novels contain several common themes such as madness and masterpiece.
著者
片山 章雄
出版者
龍谷大学佛教文化研究所
雑誌
佛教文化研究所紀要
巻号頁・発行日
vol.48, pp.192, 2009-12-26 (Released:2011-12-22)
著者
片山 ふみ
出版者
情報メディア学会
雑誌
情報メディア研究 (ISSN:13485857)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.37-58, 2010-11-15 (Released:2010-11-15)
参考文献数
43

本稿では,児童書出版社がどのような利益や価値を志向しているのかを,事業内容の差(児童書専門の出版社か総合出版社の児童書部門か)に着目して明らかにすることを試みた.具体的には,次の手順によって分析した. (1) 長期的利益志向 vs. 短期的利益志向,普遍的価値志向 vs. 同時代的価値志向の2つの軸によって作られる座標軸の象限を提示する. (2) どのような出版社が,(1)のどの象限を志向するかを示す仮説を設定する. (3) 児童書出版社に対する聞き取り調査の回答と仮説とを比較検証することによって,現状を把握する. 以上の作業から,次の結論を導いた.児童書出版社の多くは,長期的利益かつ普遍的価値の象限および短期的利益かつ同時代的価値の象限を志向していた.その際,児童書専門の出版社は販売ルートによって,総合出版社は読者の年齢層によって志向する象限を区別するという違いがあった.
著者
片山 悠樹
出版者
名古屋商科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は、日本における中退者の職業移行パターンを分析することである。分析にあたり、JSGGのデータセットを使用し、次の3つの仮設の妥当性を検証した。(1)「高学歴化」説、(2)「若年労働市場の弱体化」説、(3)「学校経由」説。分析結果によれば、中退者は、経済不況といった問題だけでなく、「学校経由」というシステムそのものが要因となって、無業になる可能性が高まることが明らかとなった。
著者
片山 晶子 寺沢 拓敬
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

この研究は、日本において誰にとってどのような英語力が利益になるのかを、社会学者ピブルデューのいう「資本」の観点から量的質的に探求することを目的でとしておこなわれた。日本版総合的社会調査(JGSS)の2次分析から導き出された日本人英語使用者「男性40代半ば・高学歴・都市在住・有職者」、「女性30代後半・高学歴・無職者」というプロファイルからあてはまる男女6人を録音インタビューし、日本人英語使用者の現実を本人の立場から検討した。データから英語は日本人にとって極めて限定的かつ複雑な交換がなければ資本にはならないと予測され、「国際語としての英語」が事実ではなく言説であるという説を裏付ける結果となった。
著者
片山 徹郎 菰田 敏行 古川 善吾 牛島 和夫
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.34, no.11, pp.2223-2232, 1993-11-15
被引用文献数
3

ソフトウェアのテストを行う際、テストデータについての条件を記述したテストケースは、ソフトウェアの信頼性向上に重要な役割を果たす。逐次処理プログラムのテストケース作成技法については、さまざまな方法が実用化されている。しかしながら、並行処理プログラムの場合、テストケースの考え方すらほとんど研究されていない。並行処理プログラムが実用化されるようになり、並行処理プログラムのテストの質を向上させることが重要になっている。本稿では、並行処理プログラムのテストケースの定義、およびその生成ツール(TCgen)の試作と利用経験について述べる。プログラム単位ごとに事象グラフを作り、事象グラフ間で同期する節点を同期関係で結んだ事象同期グラフ(ESG)によって、並行処理プログラムをモデル化する。事象同期グラフ上の協調路(Copath)を、並行処理プログラムのテストケースと定義する。テストケース生成ツールTCgenは、プログラミング言語Adaで書かれた並行処理プログラムを入力とし、協調路を出力とするツールである。ツールTCgenによって作成された協調路は、テストケースの漏れや重複を少なくすると期待される。しかしながら、実際のテストデータを作成する段階で、実行可能性についての間題が残る。
著者
辛 英範 小川 紹文 片山 平
出版者
日本育種学会
雑誌
育種學雜誌 (ISSN:05363683)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.56-62, 1978-03-01

近年,耐病虫性など野生種のもつ有用な遺伝子を栽培植物に導入することを目的とした新しい育種技術の確立が試みられ,すでに実用品種の育成に成功した例もある。野生イネのもつ有用遺伝子を栽培イネに導入する試みは,これからのイネ育種を進める1方法として,充分考慮されるべき問題の1つである。本報告は異種染色体添加型植物を作出するための基礎として,まず栽培イネの人為同質4倍体を育成し,これに近縁野生2倍程を交雑して,えられた異質3倍体sativa(AA)-puncta(B),sativa(AA)-intermediate(C)およびsativa(AA)-officinalis(C)について行った細胞遺伝学的・形態学的研究の結果をまとめたものである。体細胞で2n=36の染色体が数えられ,いずれの個体も明らかに人質3倍体であることを確認した。減数分裂は,PF_126を除いて,各個体間で大体類似しており,MIでは大部分の細胞で12II+12Iを示す分裂像が,また,AIでは1価染色体による分裂異常が観察された。一方,PF_126はMIで1II+34Iまたは36Iを示し,明らかに相同染色体間の不対合現象が観察され,以後の分裂に種々の異常が認められた。この染色体不対合がasynapsisであるかdesynapsisであるかは不明であるが,供試した同質4倍体の細胞質とO.officinalis(W1281)の核との何れか一方,または両者に不対合を誘起する遺伝的要因がある可能性が考えられ,その解明は今後の検討に期待したい。
著者
片山 英樹 青江 啓介 関 千尋 阿部 宏美 三村 雄輔 上岡 博
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.202-208, 2012 (Released:2012-08-13)
参考文献数
12

緩和ケア病棟へ入院中の進行がん患者48名の血清マグネシウム値を測定し, マグネシウム製剤の内服の有無や全身状態とその臨床的意義を検討した. 血清マグネシウムの平均値は2.09 mg/dlであり, マグネシウム製剤投与例の平均値は2.17 mg/dlと, マグネシウム製剤非投与例の平均値1.80 mg/dlに比べて有意に高値であった(p=0.006). 基準値(1.8~2.8 mg/dl)を外れた高マグネシウム血症を2例, 低マグネシウム血症を8例に認めたが, 臨床的にマグネシウム異常に関連した症状は認められなかった. また, マグネシウム製剤の投与期間, 投与量と血清マグネシウム値との関連も認められなかった. 今回の検討では血清マグネシウム値の著明な異常は認められず, 臨床的にもマグネシウム異常に関連した症状はみられなかった. しかし, 緩和ケア病棟の患者はマグネシウム異常をきたしやすい状態であり, かつマグネシウム異常に伴う症状はがんの進行時にみられる症状と類似している. そのため, 特に終末期でそのような症状を呈した場合, 血清マグネシウム値の異常についても留意する必要があると考えられた.