著者
岡田 幸子 小林 一郎 増山 晃太 田中 尚人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D2(土木史) (ISSN:21856532)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.76-85, 2016 (Released:2016-08-20)
参考文献数
25

「軌道用敷石」とは,近代の都市交通の主役を担ってきた路面電車に欠かせない「板石舗装」〔1957(昭和32)年には全国の軌道敷舗装の78.84%を占めていた〕の表層に用いられる舗装材である.板石舗装用材として最も普及した軌道用敷石は,路面電車を支えてきた重要な石材だった.本研究ではこれまであまり研究されてこなかった軌道用敷石の体系化の基礎資料として,軌道用敷石の規格と産地を調査し,整理することを目的とした.その結果,軌道用敷石は舗装材の要求性能を満たす仕様(材質,形状,寸法,許容差,仕上げ)が明確な規格品であり,国内の主要6ヶ所の産地(茨城県稲田,群馬県沢入,山梨県塩山,岐阜県恵那,広島県倉橋島,香川県小豆島)から明治から昭和にかけて全国に供給された花崗岩であることが明らかになった.
著者
中谷 辰爾 野村 俊貴 引地 悠太 田中 信太郎 崔 敏鎬 今村 宰 津江 光洋 富岡 定毅
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会論文集 (ISSN:13446460)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.151-158, 2013 (Released:2014-06-27)
参考文献数
38

Experiments on the effects of thermally cracked components of n-dodecane on the ignition and the combustion performance of a scram jet model combustor at Mach 2 were performed. Gaseous components of the thermally cracked n-dodecane at various temperature and 1MPa were measured by a gas chromatograph. Surrogate mixtures including hydrogen, methane, ethane and ethylene were injected into the supersonic air stream in the model combustor, and ignition and combustion behaviors were investigated at total temperatures of 1800 to 2400K. Pressure measurements on the combustor wall and optical observations of combustion using a high speed video camera were conducted. Results indicated that three combustion modes of intensive, transient and weak combustions were observed. Ignition was observed in the boundary layer positioned at the downstream of the cavity, and the flame propagated upward to the cavity. The ignition performance of ethylene was superior to methane and ethane, and their performances were elucidated from the reactivities predicted by a 0-dimensional calculation of chemical reactions for stoichiometric mixtures. An increase in the methane concentration reduced the ignition performance, and an increase in ethylene enhanced the ignition and combustion.
著者
田中 博之 有山 智博 石井 敏浩
出版者
一般社団法人 日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会
雑誌
日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会雑誌 (ISSN:18820123)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.195-201, 2016-07-30 (Released:2016-09-01)
参考文献数
22

日本における薬剤性光線過敏症の発症状況を把握する目的で,日本の有害事象自発報告データベース(JADER)を用いて薬剤性光線過敏症症例の調査を行った。 JADERに登録された症例のうち,“光線過敏性反応”,“日光皮膚炎”,“光線性皮膚症”および“光線性口唇炎”が報告された症例を対象とし,患者背景,使用薬剤,発症日,転帰を解析した。 総報告件数は293件(男性 : 160件,女性 : 133件)であり,年齢は60歳代が75件,70歳代が83件と高齢者が多かった。被疑薬はロサルタンカリウム・ヒドロクロロチアジドが72件と最も多く,次いでケトプロフェンが25件であった。発症月は4~8月に集中する傾向があった。多くは回復または軽快するが,なんらかの障害が残る症例も確認された。 本調査より,薬剤性光線過敏症の発症状況が明らかとなった。これらの知見は薬剤性光線過敏症の予防や治療の一助となると考えられる。
著者
浅原 正幸 金山 博 宮尾 祐介 田中 貴秋 大村 舞 村脇 有吾 松本 裕治
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.3-36, 2019-03-15 (Released:2019-06-15)
参考文献数
40
被引用文献数
2 3

Universal Dependencies (UD) は,共通のアノテーション方式で多言語の構文構造コーパスを言語横断的に開発するプロジェクトである. 2018 年 6 月現在,約 60 の言語で 100 以上のコーパスが開発・公開されており,多言語構文解析器の開発,言語横断的な構文モデルの学習,言語間の類型論的比較などさまざまな研究で利用されている. 本稿では UD の日本語適応について述べる.日本語コーパスを開発する際の問題点として品詞情報・格のラベル・句と節の区別について議論する.また,依存構造木では表現が難しい,並列構造の問題についても議論する.最後に現在までに開発した UD 準拠の日本語コーパスの現状を報告する.
著者
池尻 良平 池田 めぐみ 田中 聡 鈴木 智之 城戸 楓 土屋 裕介 今井 良 山内 祐平
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.247-255, 2021-09-10 (Released:2021-09-22)
参考文献数
17

本稿では,木村ほか(2011)の職場における経験学習尺度を用いて,若年労働者の経験学習を測定する際,どのように因子構造を解釈するのが妥当なのかを考察した.その結果,若年労働者を対象にした場合は,「具体的経験」で1因子,「内省的観察」,「抽象的概念化」,「能動的実験」で1因子の合計2因子構造が,最も妥当性が高いことが示された.この結果を踏まえ,経験学習の測定時における因子構造については,4因子構造に固定化せず,経験学習モデルと因子構造の対応を柔軟に解釈する方が分析の質の向上につながる可能性があることを示した.
著者
田中 重好
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.5, pp.73-80, 1995-11

本報告では、津波警報・注意報に関する情報の伝達と地域住民の対応を検討する。この問題を検討するために、三陸はるか沖地震の際に津波警報・注意報が発令された対象地域を中心に、北海道、東北各県の太平洋沿岸の地方自治体防災担当部局あてに、「三陸はるか沖地震に関するアンケート調査」を実施した。1994年12月28日午後9時19分に、青森県八戸市の東方沖釣200キロの海底を震源として発生した三陸はるか沖地震の際には、地震発生の4分後、9時23分には仙台管区気象台が東北地方に津波警報を発令した。北海道地方には、北海道管区気象台が午後9時26分に、津波注意報を発令している。三陸はるか沖地震の際には、気象台からの津波警報・注意報が迅速に発令され、それを各市町村でいち早く放送をとおして知り、地域内の危険集落に連絡した。この気象台→地方自治体→地域住民への情報伝達は、全般的にいえば、適切におこなわれたと判断できる。これは、1993年以来、釧路沖地震、北海道南西沖地震、北海道東方沖地震、三陸はるか沖地震と打ち続く大規模地震の発生により、各市町村の防災担当者による津波警報・注意報の連絡体制や避難勧告の発令などの対応が改善されてきたためである。いわぱ、各市町村による災害からの「学習効果」がみられる。避難勧告・命令を発令した市町村は、合計で21市町村にのぽっている。21市町村のうち、避難勧告を出した市町村は18、避難命令を出した市町村は3である。1道3県全体で、対象者は42,523世帯、141,908人にものぼった。道県別には、その市町村は岩手県に集中している。避難勧告・命令が発令された地区の住民が、その後、実際にどの位避難したかといえば、13,527人で、全休のに9.5%にすぎないと推定される。北海道・東北地方の太平洋沿岸では1993年以来、度重なる津波警報や注意報が発令されてきた。警報伝達発令の迅速化がはかられ、マスコミをとおして大量の警報が短時間のうちに住民に届くようになった。しかし、過去4回の地震では実際の被害が、今回調査対象地区とした太平洋沿岸地区では、少なかった。こうしたことが繰り返されてきた地域の住民からすれば、「はずれる/不必要に出される避難勧告・命令」という判断が一部に生じている危険性すらある。これは津波警報の「オオカミ少年」効果の問題である。この効果をどう低減するか、各市町村で真剣に対策をたてる必要がある。そのためにもっとも必要なことは、「行政から情報をもらって避難する」という行政依存型住民ではなく、「自らの身は自らが守る」という、主体的に防災に取り組む住民を育ててゆかなけれぱならない。そのためにも、参加型防災対策の立案へと方向転換が求められている。
著者
熊原 秀晃 西田 順一 坂井 洋子 金平 真由美 金平 桂一郎 進藤 宗洋 田中 宏暁
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
pp.14008, (Released:2014-05-22)
参考文献数
27
被引用文献数
1

The purpose of this study was to investigate the effects of acute exercise mimicking boxing on affect and mood states. In a randomized crossover design, sixteen adults (35.8±6.6 yrs) underwent both a boxing exercise program based on shadow boxing (Boxing) as well as a boxing program combined with a focus mitts workout (pad work) (Boxing+Mitts). The Waseda Affect Scale of Exercise and Durable Activity (WASEDA) and the Profile of Mood States-Brief Form (POMS-Brief) were administered before and after both exercise programs. There were no gender differences in any psychological scales before and after the programs as well as in heart rate during exercise. The Boxing+Mitts program tended to show a lower exercise intensity, defined as the percentage of the average heat rate reserve (HRR), than the Boxing program (40.4±13.3 vs. 50.4±17.5%HRR, p<0.10). However, both programs were considered to give a moderate level of exercise intensity on average, which is regarded as the minimum intensity required to improve individual cardiorespiratory fitness. The Boxing program significantly improved all three scales of negative affect, positive engagement and tranquility assessed by the WASEDA. Moreover, the POMS-Brief showed an iceberg profile after the program, which was followed by significant decreases in the scores of tension-anxiety, depression-dejection, anger-hostility and confusion, and a significant increase in the vigor score. In addition, a composite score of total mood disturbance calculated by summing the subscale scores changed in a positive direction. The Boxing+Mitts program was shown to lead to similar changes in the WASEDA and POMS-Brief. However, no significant program×time interactions (by two-way ANOVA) were observed in any of the scales. These results indicate that acute boxing-style exercise programs would improve negative psychological variables and enhance both feelings of pleasant activation, as well as relaxation. A further study is warranted to explore whether any long-term (chronic) effects on mental health exist, and to compare these programs with other modes of exercise.
著者
田中 佐代子 小林 麻己人 三輪 佳宏
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.6_47-6_56, 2017-03-31 (Released:2017-05-10)
参考文献数
21

国内の研究者・技術者によるグラフデザインの実態を明らかにし、ビジュアルデザインの質を高めるための基礎的要件を抽出した。そのためアンケート調査を実施し209件分の回答を得た。その結果、多くがMicrosoft Excelを使用し(85%)、主に棒グラフ(75%)・折れ線グラフ(74%)・散布図(66%)をデザインしていた。グラフの主な利用媒体は、スライド(86%)、論文等の文書類(83%)で、専門性の高いグラフデザインが求められていると考えられた。そしてほとんどの研究者・技術者がグラフデザイン技術の向上は有益だと思っていたが(94%)、自身のグラフデザインに満足していないものも少なくなかった(41%)。また研究者・技術者は、わかりやすさ、学術的な正確さ、センス良く美しさが保証された、グラフデザインを学ぶためのWebサイト(67%)やガイドブック(62%)を望んでいることがわかった。特に大学生・大学院生を対象に向上技術を示すと効果的であることもわかった。
著者
川村 軍蔵 松永 ふうま 田中 淑人
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.542-546, 2002-07-15 (Released:2008-02-01)
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

孵出直後のアカウミガメとアオウミガメは特定の波長の光に走光性を示し,アオウミガメの錐体は3種の感光色素をもつことが知られており,これらはウミガメが色覚をもつ可能性を示す。筆者らは弁別学習実験でアカウミガメの色覚を確認した。孵出後23日目の稚ガメと3才の個体を,それぞれ緑パネルと赤パネル,緑球と黒球の弁別を学習させ,学習完成後に赤パネルと黒球を明度の異なる3段階の灰色と置換して移調試験を行った。移調試験で3才個体は絶対選択反応(正選択率80-100%)を,稚ガメは移調色に関わらず一貫性のない絶対選択反応とランダム選択反応(正選択率40-100%)を示したことより,両者は色覚をもつが稚ガメの色覚は未熟であると結論された。
著者
田中 絵里 綿引 大祐 吉松 慎一 渡久地 彩子
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.27-36, 2020-02-25 (Released:2020-03-01)
参考文献数
45
被引用文献数
1

The masson pine moth, Dendrolimus punctatus(Walker)(Lepidoptera: Lasiocampidae), is a notorious pest of pine trees in Asian countries and was recorded in Japan for the first time from Ishigakijima Island and Iriomotejima Island. We performed taxonomic studies involving the male and female genitalia and clarified the distinguishable features among the following four Japanese species of the genus Dendrolimus: D. superans(Butler), D. spectabilis(Butler), D. okinawanus Sonan, and D. punctatus based on many specimens including the lectotype of D. punctatus. As for DNA barcoding, five of the analyzed Japanese haplotypes from Ishigakijima Island and Iriomotejima Island and three of the Chinese haplotypes registered in GenBank as D. punctatus belonged to the same clade in the NJ tree. The intraspecific divergence value within D. punctatus was higher than the interspecific divergence value between D. okinawanus and D. spectabilis. In addition, we revealed that D. punctatus induced severe damage in Pinus luchuensis Mayr on Ishigakijima Island in 2016.