著者
東 剛志 田中 宏明
出版者
安全工学会
雑誌
安全工学 (ISSN:05704480)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.282-289, 2012-10-15 (Released:2016-08-31)
参考文献数
57

近年,タミフル等に代表される抗インフルエンザ薬成分の河川環境中への流出が新たな社会的問題を提起している.タミフルは,新型インフルエンザパンデミックの被害軽減の切り札として位置付けられており,日本の依存度は季節性インフルエンザにおいても使用されており世界の中でも特に高い.そのため,水環境中に流出する抗インフルエンザ薬成分の問題は,生態系への毒性影響に加え,水環境中からの薬剤耐性ウイルス発生の危惧を生み,日本ばかりではなく世界的に新型インフルエンザ対策を検討するきっかけとなっている.そこで,本稿では近年明らかになりつつある最新の知見を踏まえ,河川環境中における抗インフルエンザ薬成分の汚染実態・環境動態や,下水処理場での除去効率,そして環境毒性及び薬剤耐性ウイルスの発生危険性について概説し,今後の環境リスク評価・リスク管理の展望についてまとめる.
著者
田中 ゆかり 上倉 牧子 秋山 智美 須藤 央
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.5-17, 2007-09-30
被引用文献数
1

日本でもっとも多言語化が進行している東京圏のデパート37店舗を対象に,言語景観調査を2005年に実施した.ランドスケープの観点から店内案内のパンフレットと店内の全館案内掲示,サウンドスケープの観点から閉店時の店内放送の多言語化の実態について報告する.その上で,東京圏のデパートにおける多言語化の進行過程と,デパートという商業形態における言語の経済価値について述べる.実態調査結果からは次の点が明らかとなった.(1)「23区内多言語使用」対「東京近郊単言語使用」という地域差が観察された(2)23区内には次のような地域特徴が観察された.「新宿地域の東アジア系言語重視」「銀座・有楽町・日本橋・東京の西欧言語の取り入れ」(3)東京近郊における「大宮・立川・吉祥寺の多言語化の萌芽」(4)旗艦店に多言語化が著しい(5)パンフレットの多言語化がもっとも進んでいる.ついで店内放送が多言語化している.店内掲示はほとんど多言語化していなかった.(6)多言語化の進行過程として次のパターンが指摘できる.「日本語単言語⇒日本語・英語(2言語)⇒日本語・英語・中国語・韓国/朝鮮語(4言語)⇒日本語・英語・中国語・韓国/朝鮮語+α(5言語以上)」上記結果の背景としては,東京23区における日本語以外の言語を使用する居住者ならびに観光などによる一時滞在者数の多さと,東アジア系ニューカマーの新宿地区における増加が指摘できる.顧客が使用する言語に対応した実質言語としての英語・中国語・韓国/朝鮮語の採用と,デパートのイメージ戦略に対応したアクセサリー的言語(イメージ言語)としての西欧言語(フランス語・イタリア語)の取り入れの両側面が指摘できる.
著者
峯木 眞知子 田中 隆介 田中 友香里 西念 幸江 五百藏 良 庄司 善哉
出版者
日本官能評価学会
雑誌
日本官能評価学会誌 (ISSN:1342906X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2-2, pp.98-106, 2011-10-25 (Released:2012-10-26)
参考文献数
9
被引用文献数
1 2

Sake yeasts are classified as foaming yeasts, which are hydrophobic, and non-foaming yeasts, which are hydrophilic. In this study the influence and function of using Sake yeasts for bread are clarified.  Breads fermented by bread yeasts, foaming yeasts, and non-foaming yeasts were examined by texture properties, microstructure, and sensory evaluation.  1) Breads fermented by bread yeasts made with butter had the largest volume among bread fermented by bread yeasts, while bread fermented by non-foaming yeasts had the smallest volume. However, specific volume of bread made without butter were each 4.5 value.  2) The color of bread fermented by foaming yeasts was similar to bread fermented by bread yeasts. As for color of the bread fermented by non-foaming yeasts, that of bread fermented by bread yeasts was able to be identified.  3) The hardness of three kinds of bread in which butter was added was not significantly different. The hardest bread without butter was bread fermented by foaming yeasts, and the softest was bread fermented by non-foaming yeasts. The cohesive property of breads tended to be lowest for breads fermented by foaming yeasts.  4) Differences in the microstructure of breads were the shape and size of gas cell. The gas cells of bread fermented by non-foaming yeasts were round and small. The gas cells in breads without butter were larger and had a flatter oval shape than those with butter. The inside of the gluten netstructure of breads without butter was observed as rough and contained a lot of gaps.  5) The results of sensory evaluation showed that the three types of bread could not be differentiated.
著者
海老原 淳 田中 法生 濱崎 恭美
出版者
日本植物分類学会
雑誌
分類 : bunrui : 日本植物分類学会誌 (ISSN:13466852)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.39-43, 2013-02-25

国立科学博物館の維管束植物標本室では,2012年,拡張に合わせて新エングラー体系からAPGIII分類体系への配列替えが行なわれた.その背景,準備,移動作業,移動後の利用者の反応を記録した.
著者
古田 吉史 田中 貴絵 甲斐 達男
出版者
西南女学院大学
雑誌
西南女学院大学紀要 = Bulletin of Seinan Jo Gakuin University (ISSN:13426354)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.145-151, 2017-03-01

米糠を自然発酵させて調製する糠床に、種々の野菜を漬け込んで造る糠漬けは日本の伝統的発酵食品の一つである。糠床の微生物叢に関する研究は多いものの、糠漬け野菜の微生物叢とその変化についてはほとんど報告されていない。本研究では、85 年以上経過した熟成糠床3種と新たに調製した糠床1種にナスとキュウリを漬け込み、それら野菜に付着する微生物叢の変化を調べた。まず糠床中の微生物叢を調べたところ、今回使用した4種の糠床間で乳酸菌数と酵母数、その割合に大きな違いが見られた。浸漬野菜(糠床に18 時間浸漬後、水洗いした野菜)に関しては、コントロール(水洗いした野菜)と比べて、何れの糠床に浸漬した場合でも、一般細菌数は著しく減少し、乳酸菌・酵母数は増大した。付着した乳酸菌・酵母数は全体的にキュウリと比べてナスの方が多く、また糠床自体の乳酸菌・酵母数が多いほど付着菌数も多いと思われた。糠床中の乳酸菌数を高く維持すること等により、糠漬け野菜のプロバイオティクスとしての利用が今後期待される。
著者
鵜飼 和浩 山本 恭子 森本 七重 松下 紀美子 山田 みゆき 尾崎 富美代 田中 美代子 谷垣 友子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.4_59-4_66, 2003-09-01 (Released:2016-03-31)
参考文献数
26

看護職の石鹸と流水による手洗いの有用な方法について,石鹸泡立て時間,流水すすぎ時間,手拭き乾燥方法を種々に設定し除菌効果より検討を加えた。 その結果,流水時間を15秒間とした場合,石鹸泡立て時間8秒間群と15秒間群で手洗いによる有意な細菌数の減少を認めたが,30秒間群では減少は認められなかった。 石鹸泡立て時間を15秒間とした場合,流水すすぎ時間は15秒間,30秒間,60秒間群共に手洗いによる細菌数の有意な減少を認め,60秒間群の除菌効果が最も高かった。 ペーパータオル使用枚数は2枚以上で除菌効果があり,特に3枚使用群が最も高く,1枚では除菌効果は認められなかった。 布タオルの連続使用ではタオルに付着した細菌数は漸次増加し,手洗いによる除菌効果を認めたのは1人目のみであった。 以上より石鹸と流水による手洗いでは石鹸泡立てを8~15秒間行い,泡とともに存在する細菌を時間をかけ十分に洗い流し,ペーパータオル2枚以上,出来れば3枚を使用し十分に手指を乾燥させることが重要である。 また,共用タオルは使用する毎に手洗いによる除菌効果が低下するので,その使用は厳に慎むべきである。
著者
紀田 康雄 柏木 厚典 田中 逸 小川 勉 阿部 奈々美 池淵 元祥 朝比奈 崇介 高木 敬文 吉川 隆一 繁田 幸男
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.277-283, 1993-04-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
30

自律神経障害を有する糖尿病患者の突然死は既に報告されているが, その頻度や臨床特徴は明らかではない. 本研究では606例の糖尿病患者の中での突然死の頻度と臨床的特徴を調べた. 平均観察期間は7年であった. さらに交感神経機能の指標としてのQTc間隔を, これら糖尿病患者と年齢, 性をマッチした45例の非糖尿病健常者とで比較し, 突然死との関係を検討した. 1) これら606例の糖尿病患者中既に127例が死亡しており, 39例 (約31%) が突然死であった. 2) 突然死例は生存例と比較すると高齢で高血圧, 虚血性心疾患, 自律神経障害, 末梢神経障害, 壊疽, 腎症の合併頻度が高かった. 3) 突然死例の死因には心・脳血管障害が多かったが, 半数以上で死因の詳細は不明であった. 4) QTcは糖尿病群では生存例 (418±26msec), 突然死例 (445±33msec) 共に対照群 (401±17msec) と比べ有意に延長していた. 5) 突然死群の著明なQTc延長には自律神経障害の関与が示唆された.
著者
横山 直也 大矢 稔 百鬼 史訓 田中 秀幸 浅見 裕
出版者
日本武道学会
雑誌
武道学研究 (ISSN:02879700)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.26-36, 1995-11-30 (Released:2012-11-27)
参考文献数
28

For the purpose of determining the technical characteristics of the striking motion from Nito-no-Kamae in Kendo, we measured the impact force of the striking motion with DAITO (long-shinai) and SHOTO (short-shinai) using as subjects three male university teachers, who are majoring in Kendo, and analyzed the data by a motion analysis system with a video tape recorder.For comparison, similar measurements were performed on the striking motion with the two-handed striking motion from Chudan-no-Kamae and the one-handed striking motion from Jodan-no-Kamae.The following results were obtained from a examination of the data.1. The maximum downward magnitude of the impact force and the downward impulse value of three kinds of the striking motions with SHOTO from Nito-no-Kamae were greater than that of the two-handed Shomen striking motion from Chudan-no-Kamae. However, the maximum downward magnitude of the impact force and the downward impulse value of two-kinds of striking motion with DAITO from Nito-no-Kamae were smaller than that of two-handed Shomen striking motion from Chudan-no-Kamae.2. The impact time of all the striking motion from Nito-no-Kamae were shorter than that of the two-handed striking motion from Chudan-no-Kamae.3. The motion of shinai in the striking motions from Nito-no-Kamae were chiefly made using the left elbow and the left wrist.4. The angular velocity of shinai immediately before impact using Hikikote striking motion with SHOTO of Nito-no-Kamae was the largest, and that using the Shomen striking motion with DAITO of Nito-no-Kamae was the smallest.
著者
川嶋 浩二 田中 芳一 梅田 圭司
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.21, no.12, pp.592-596, 1974-12-15 (Released:2010-01-20)
参考文献数
8

(1) 市販プロテアーゼ製剤9種に,殺菌線量(0.75~1Mradで芽胞菌を103~104減少させる)の放射線照射(氷水中,線量率約0.9~0.95Mrad/hr)を行なった。その結果酵素の保持活性は,もとの95%以上のもの7種,約93%のもの,および約80%のもの各1種であった。この結果,プロテアーゼ製剤の放射線殺菌は十分可能であると考えられた。(2) 照射時の酵素の水分量が,酵素の放射線感受性に影響することはなかった。(3) 数種のプロテアーゼで放射線照射により,最高4~60%の活性増加が見られた。その時の線量はいずれも250Krad付近にあった。(4) 照射酵素の熱安定性は未照射のものと差はなかった。(5) 照射酵素で5℃に2ヵ月間貯蔵中に酵素活性のやや回復するものがみられた。
著者
楠見 孝 子安 増生 道田 泰司 MANALO Emmanuel 林 創 平山 るみ 信原 幸弘 坂上 雅道 原 塑 三浦 麻子 小倉 加奈代 乾 健太郎 田中 優子 沖林 洋平 小口 峰樹
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は,課題1-1「市民リテラシーと批判的思考のアセスメント」では市民リテラシーを支える批判的思考態度を検討し,評価ツールを開発した。課題1-2「批判的思考育成のための教育プログラム作成と授業実践」では,学習者間相互作用を重視した教育実践を高校・大学において行い,効果を分析した。課題2「神経科学リテラシーと科学コミュニケーション」では,哲学と神経生理学に基づいて推論と情動を検討した。さらに市民主体の科学コミュニケーション活動を検討した。課題3「ネットリテラシーと情報信頼性評価」では,放射能リスクに関する情報源信頼性評価とリテラシーの関連を調査によって解明し,情報信頼性判断支援技術を開発した。
著者
古谷 真樹 山尾 碧 田中 秀樹
出版者
日本小児保健協会
雑誌
小児保健研究 (ISSN:00374113)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.504-512, 2008-05-30
参考文献数
16
被引用文献数
4
著者
田中 健作 井上 学
出版者
東北地理学会
雑誌
季刊地理学 (ISSN:09167889)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.91-103, 2017 (Released:2017-08-12)
参考文献数
17

本稿では,バス路線運営における自治体間関係の特質を見出すために,中心集落規模の異なる中部地方の名張市周辺ならびに栄村周辺の2地域を事例に,山村の県際バス路線の運営枠組みを検討した。両地域ともに,周辺山村側の自治体や集落では,経済的機能や地形条件といった地理的な制約の下で受益を最大化させるために,生活圏や行政域に対応した領域横断的な交通サービスの設定を目指した。その際には県際バス路線に対する広域的な視点よりも,地域の中心周辺関係と行政域によって形成された利害関係が影響しているため,周辺性が高く財政力の弱い自治体ほど財政負担を増大させていた。自治体間のバス路線の運営枠組みは,地理的条件に基づく利害関係の差異によって,周辺性の高い山村側の負担や制約が大きくなる構造にあるといえる。
著者
保木 昌徳 横谷 早姫 瀧 奈津江 田中愉加利 濱田 佳奈
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学研究紀要 (ISSN:21860459)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.209-216, 2011-01-31

【目的】アスリート、男性、肥満女性、マウスを対象としたVAAM配合のヴァーム(R)(明治乳業株式会社)投与の研究では脂肪燃焼促進効果が報告されている。しかし、若い女性を対象とした検討はなされていないため、今回我々は女子大生におけるヴァーム(R)経口摂取による脂肪燃焼促進効果の検討を行った。【方法】ボランティア学生25名を対象にヴァーム(R)または対照飲料投与後30分に自転車エルゴメーターで持久性運動を負荷した。脂肪燃焼促進作用は呼気ガス分析器(ミナト医科学株式会社)で得られたV4 CO2、V4 O2より、脂肪由来のエネルギー消費量を算出(西の方法)し比較検討を行った。分析にはt検定を用いた。【結果】ヴァーム(R)摂取群と対照飲料摂取群を比較したところ脂肪由来のエネルギー消費量に目立った差は得られなかった。しかし、ヴァーム(R)摂取時、体脂肪率28.0%超(過多)の群において、18.0〜28.0%(標準)の群より脂肪由来のエネルギー消費量が有意に高値であった(P<0.05)。
著者
田中 武一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.34 Suppl. No.2 (第42回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0627, 2007 (Released:2007-05-09)

【目的】ストレッチングの効果や生理学的な検討は様々な観点で研究されている。その中で可動域の変化を指標とした報告は多いが、そのほとんどが強度を明記していないことが多く、痛みを伴わない程度など主観的に設定している。また、ストレッチングは伸張痛を出現させないのが一般的であると言われているが、伸張痛を伴う強度でのストレッチングでも可動域の向上を認めるという報告もあり一貫していない。そこで本研究では、膝関節伸展位での股関節屈曲(SLR)ストレッチングにおけるハムストリングの筋活動電位(いわゆる防御性収縮)を定量化し、ストレッチング効果を検討することによって、筋活動電位の度合いが客観的な強度として使用できるかを明らかにすることを目的とした。【対象と方法】本研究に同意を得た健常男性10人(平均年齢29.2±4.7歳)を対象とし、測定姿位は背臥位とした。等尺性最大股関節伸展筋力を100%MVCとし、ストレッチングにおける筋活動電位は100%MVCに対する割合で定量化した。SLR角度は2.5%MVCの筋活動電位を認めた時点とし、ストレッチング前後で三回ずつ測定した。ストレッチングとSLR角度測定はBIODEXsystem3(酒井医療)を用いて、等速運動モードで設定速度2°/secにて実施し、ストレッチングは3セット行った。対象群はストレッチングをしない群(C群)、2.5%MVCの強度で20秒ストレッチングする群(S1群)、5.0%MVCの強度で20秒ストレッチングする群(S2群)の3群とし、各群はランダムに日を変えて行った。なお、S1群とS2群ではストレッチング中の伸張痛をVAS変法を用いて評価した。表面筋電図はMyoResearch(酒井医療)を用い、電極設置部位は半腱様筋の遠位1/3とした。統計学的検討には、対応のあるt検定、分散分析、多重比較を用いた。【結果】各群の平均変化率は、C群102.2±3.8%、S1群111.0±5.2%、S2群120.2±11.9%であり、ストレッチングの前後の角度は各群とも有意に増加した。また各群間の多重比較では、C群よりS1群が、C群よりS2群が、S1群よりS2群が有意に増加した。VASはS1群6.8±1.5よりS2群8.1±1.7の方が有意に増加した。【考察】一般的にストレッチングは伸張反射が起こらない痛みのない範囲で行うと言われている。しかしS1群よりS2群に有意な可動域改善を認めたことから、ゆっくりとした速度で5.0%MVCまでの強度であれば、伸張痛を伴ってもより強いストレッチングの方が効果的であることが示唆された。これは、SLRの可動性制限因子が主にハムストリングスだけであることに加え、防御的な筋収縮が起こることでより張力が増し、Ib群線維による自原抑制を助長したのではないかと考えられる。 今回の結果により、ストレッチングに対する客観的な強度設定として、ストレッチングにおける筋活動電位を指標とすることの有用性は示唆されたが、短期的な効果であり、その後の筋の弾力性の評価や長期的経過を今後検討していく必要がある。
著者
池辺 正典 田中 成典 古田 均 中村 健二 小林 建太
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.1687-1695, 2006-06-15

近年のインターネットの複雑化にともない,Web の自動解析による情報取得に対する需要が高まっている.そのため,Web ページをカテゴリに分類する手法やWeb の関係情報を解析する手法が数多く提案されてきた.しかし,既存の研究では,Web の自動解析は,リンク関係を中心とした解析を行っており,リンク関係のないWeb ページを関連付けることが困難であった.このため,本論文では,リンク構造解析だけでなく,形態素解析によって任意の単語から関係情報の抽出を行うことで,リンク関係のないWeb ページを関連付ける.また,その結果と品質判定を行ったリンク構造解析結果を組み合わせることで,信頼性の高いWeb ページの関係図を作成する.さらに,アルゴリズムの評価として,Web から取得した情報を利用して,組織の関係図を作成する.そして,既存研究においての主要な方式であるリンク構造解析による結果との比較を行った.評価方式には,リンク構造解析で一般的に用いられている評価値とグラフ理論による可視化を採用し,その結果から本方式の有用性を確認した.
著者
田中 究
出版者
一般社団法人 日本児童青年精神医学会
雑誌
児童青年精神医学とその近接領域 (ISSN:02890968)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.705-718, 2016-11-01 (Released:2017-05-17)
参考文献数
73

近代になって子ども虐待は民間福祉機関や個人によって気付かれ, 子どもの保護が始められ, それを公的機関, 司法が支援してきた。しかし, そのことで市民社会からは見えにくくなっていた。Kempら(1962)の「殴打された子の症候群(Battered Child Syndrome)」の報告は, 子ども虐待対応の枠組みを, 福祉モデルから医療モデルに変化させた。こうして, 子ども虐待は再発見されたのである。虐待された子どもの現す特異な行動は, 心的トラウマの症状として診断され, 社会病理ばかりではなく養育者の精神病理が虐待の要因として捉えられるようになった。その上で, 子どもの心的トラウマを評価し, 治療することの知見や研究が積み重ねられ, 治療技法が考案されている。さらに, 基本的なアタッチメントへの理解がすすみ, アタッチメントの再構築についても議論されるようになった。こうした治療的な関与には医療だけではなく, 福祉, 保健, 教育, 司法がそれぞれ相補的な役割を果たし, 協働していくことが一層重要である。