著者
和田 正 田中 彰裕
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.376-382, 2013-06-01 (Released:2014-06-01)
参考文献数
29
被引用文献数
1

筆者らは,スクロースをイヌリンに変換する酵素生産細菌 Bacillus sp. 217C-11 株を見いだすことに成功した.この酵素は,イヌロスクラーゼに分類される新規な糖転移酵素であることが明らかになった.また,酵素の反応条件を任意に選択することによって合成されるイヌリンの平均鎖長を制御できることもわかった.こうして作られたイヌリンは,植物由来のイヌリンに比べて水溶性が高く,食品加工特性に優れるものであった.近年では,脂肪に似た食感のゲルを形成する性質を利用して,油脂含有食品の低脂肪化のための素材としての利用が拡大している.
著者
津曲 俊太郎 森 里美 石津 博子 田中 裕 岡本 義久 栗原 和幸
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.211-218, 2018 (Released:2018-05-17)
参考文献数
30
被引用文献数
1

【目的】近年,カバノキ花粉などによる花粉―食物アレルギー症候群(PFAS)のために,多品目の果物・野菜の摂取に伴う口腔アレルギー症候群(OAS)の発症が全国的に増加している.当科では,PFASの根治を目指して輸入品のシラカバ花粉エキスを含む皮下免疫療法(SCIT)を2011年より実施している.これまで実施した成績をまとめて検討・報告する.【方法】2011年8月~2016年8月に男児9名,女児10名の計19名(6~16歳;平均11.8歳)に実施した.シラカバ特異的IgE値は全例陽性であった(中央値91.9UA/mL).SCITは入院のうえ急速法で導入し,維持期は4~8週間隔で外来での接種を継続している.症例により他抗原も同時に接種した.急速期前後で経口負荷試験を行い,その後の摂取状況についても調査した.【結果】急速期直後では5名にOAS症状の著明改善,9名に改善を認めた.2名は変化なし,3名は評価不能だったが,うち4名は維持期に症状の改善を認めた.維持期経過中に3名でOAS症状の再燃を認めたが,計15名(79%)で著明改善あるいは改善を認め,高い有効性を示した.中止・脱落例は認めなかった.【結論】PFASによるOASは基本的には自然寛解が期待できないとされている.果物・野菜と交差反応性のある花粉の免疫療法を行うことでOAS症状の改善が期待でき,OASの有効な治療法になると考えられる.
著者
井原 司 村上 英嗣 門脇 康二 田中 英二 岡部 正之
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.1511-1514, 2003-06-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
6

症例は90歳,女性.臍部の腫脹と疼痛を主訴に当院を受診.臍部に黒色の3cm大の臍石を認め圧痛と臍周囲に発赤を伴っていた.生活歴において現在までに臍を洗浄した記憶はなくまた手術既往もない.腹部単純レントゲン検査では所見はみられなかったが,腹部CT検査では臍内に層状の3cm大の結石を認めた.治療は臍孔より絞り出すようにして摘出を試みるも困難だったため,臍孔周囲に局所麻酔を行い,臍孔を十分に開大し摘出した.臍石径は27×26×13mmであった.摘出した後の臍窩には不快な悪臭のある垢が存在し臍炎を併発していた.臍石の報告は現在まで数件の報告しかみられない.さらに摘出に難渋するほどの巨大臍石の報告は現在までにみられず非常に稀な症例と考えられる.
著者
田中 雄太 加藤 茜 伊藤 香 五十嵐 佑子 木下 里美 木澤 義之 宮下 光令
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.129-136, 2023 (Released:2023-05-10)
参考文献数
24

【目的】緩和ケアの実践には,現場の医療者の認識や受容性などを考慮することが重要である.本研究の目的は,救急・集中治療領域の医師の緩和ケアに対する認識や緩和ケア実践の障壁を明らかにすることである.【方法】集中治療室および救命救急センターに勤務する医師を対象に緩和ケアに関する質問紙調査を実施し,自由記述データを質的に分析した.【結果】873名に質問紙を送付し,436名から回答を得た(回収率50%).そのうち,自由記述欄に回答した95名(11%)を分析対象とした.【結論】本研究の結果から,わが国における救急・集中治療領域の医師は緩和ケアを自らの役割と捉え,日常的なケアの一部と考えて実践している一方で,緩和ケア実践の難しさや不十分さを感じていることが推察された.実践の障壁として,緩和ケアチームのマンパワー不足と利用可能性,救急・集中治療領域における緩和ケアに対する認識が統一されていないことなどが存在していた.
著者
須山 輝明 田中 貴浩 横山 修一郎
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.72, no.10, pp.723-727, 2017-10-05 (Released:2018-08-06)
参考文献数
24
被引用文献数
1

2015年9月14日,アメリカのレーザー干渉計重力波天文台(LIGO)の2台の検出器によって人類初の重力波の直接検出がなされた.これはニュースでも大々的に報道されたので,多くの読者がご存じだろう.重力波の直接検出自体大ニュースだが,研究者をさらに驚かせたのは,その重力波の源が,およそ30倍の太陽質量を持つ2つのブラックホール(以降BHと省略)合体によるものだということである.恒星質量域のBHの存在自体は,これまでにも間接的には知られていた.コンパクト天体とそこにガスを供給する星からなる連星系(X線連星と呼ばれる)からの電磁波信号を説明するためには,そのコンパクト天体がBHであることが最も自然だったのである.しかしながら,20例ほどあるX線連星で見つかっていたBHの推定質量はどれも数倍~15倍太陽質量程度に収まっており,30倍太陽質量ほどもある重いBHが見つかったのは,驚きであった.しかも,そのような重いBH同士が連星という形で宇宙にたくさん存在し,それらが合体することが明らかになったことも大きな発見であった.つまり,宇宙には想像以上にBHが溢れていることが分かったのである.新しい観測の窓が開くと必ず(良い意味で)予想を裏切る発見があるというのが天文学の歴史であるが,重力波も例に漏れずそうだったわけである.このLIGOの発表以降,見つかった連星BHの起源解明が宇宙物理学の重要なテーマとして躍り出てきた.この記事では,「LIGOで見つかった重力波は,原始ブラックホール連星の合体から生じた」可能性を指摘した著者達の最近の研究を紹介する.原始ブラックホール(英語名はPrimordial Black Holeであり,以後PBHと書くことにする)は,ビッグバン宇宙誕生直後にできたBHのことであり,存在可能性の理論予言は60年代にまで遡る.電磁波を用いた探索ではこれまでPBHの存在の証拠は見つかっていなかったが,今回の重力波検出によって初めてPBHが見つかったかもしれないのだ.PBHシナリオでは,ビッグバン後6万年未満のまだ熱い放射優勢の時代に,PBH間の強い重力によって連星が自然に作られる.一旦形成した連星BHは,公転運動によって重力波を放射し,長い時間をかけて徐々にその軌道半径を縮めていき,宇宙年齢の時間スケールで合体をする.その合体に伴って強烈に放射された重力波をLIGOはとらえたというのが,PBHシナリオでのLIGOの観測結果の説明である.PBHが形成時には宇宙空間にランダムに分布していたという仮定の下で,PBH合体頻度を理論的に評価したところ,PBHが暗黒物質の約0.1%に相当する量であれば,予測合体頻度がLIGOの結果と一致することを明らかにした.これは天の川銀河内に約3,000万個のPBHがあることに相当する.これは莫大な数のPBHに思えるが,BHは光を出さないので,既存のPBH存在量に対する制限とは矛盾しない.PBHはインフレーション理論と密接な関係性があり,PBHシナリオが確定すると,未だ大きな不確定要素があるインフレーション模型を,宇宙マイクロ波背景放射等の従来の制限とは全く別の切り口から制限することになり,初期宇宙に対する我々の理解が大幅に進展する.現段階では,PBHシナリオは一つの可能性に過ぎないが,今後多数のBH連星合体イベントが見つかり,データが蓄積されてくると,PBHシナリオの検証が可能になってくる.
著者
打浪 文子 岩田 一成 熊野 正 後藤 功雄 田中 英輝 大塚 裕子
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.29-41, 2017-09-30 (Released:2018-02-07)
参考文献数
30
被引用文献数
1

本研究では,知的障害者に対する「わかりやすい」情報提供を実践する媒体である「ステージ」と,外国人向けの「やさしい日本語」で時事情報の配信を行うNHKの「NEWSWEB EASY」(以下NWE),およびNWE記事の書き換え元であるNHKの一般向けニュース原稿の3つのメディアのテキストを,文長や記事長,難易度や使用語彙の観点から計量的および質的に分析し,その共通点および相違点を明らかにした.分析の結果から,ステージとNWEの共通点として形態素数や和語の率が近いことや,「外来語」や「人の属性を表す語」などの名詞や動詞を中心とした難解語彙の群があることが示された.また相違点として,ステージには副詞や接辞等に「やさしい日本語」の基準に照らせば書きかえ可能なものがあること,さらにステージのみの特徴として同じ動詞をさまざまな形で重ねて使っていることが示された.条件を統制した上で上記3つのメディアの共通・相違性に関する比較研究を深めること,知的障害者向けの情報提供のさらなる分析と知見の収集を行うこと,従来の研究領域を超える「言語的な困難を有する人」すべてを対象とした「わかりやすい」日本語による情報保障の具体的な方法を提示することの3点が本研究の今後の課題である.
著者
田中 和之 常仁 春成 谷川 力 池中 良徳 石塚 真由美
出版者
日本環境毒性学会
雑誌
環境毒性学会誌 (ISSN:13440667)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.61-70, 2009-12-30 (Released:2014-04-11)
参考文献数
35

Warfarin is commonly used worldwide as a rodenticide. Warfarin inhibits blood coagulation, and continuous intake of warfarin causes potentially fatal hemorrhages. However, warfarin-resistant roof rats(Rattus rattus)are found in Japan, especially in the Tokyo area. Recently, warfarin-resistant brown rats(Rattus norvegicus)were discovered in rural areas of Japan. Warfarin-resistant house mice have not been reported, but it is highly possible that resistant mice will be also found in our country. Warfarin-resistant rats, which have acquired resistance to anticoagulant rodenticides, are called &lquot;super rats&rquot;. Rodenticide-resistant roof rats, brown rats, and house mice have been also reported in the United States and European countries, e.g., Britain, France, Denmark, and Germany. In addition, warfarin-resistant rodents may be widespread in other countries that have not been investigated yet. The warfarin target molecule is vitamin K epoxide reductase(VKOR).Warfarin inhibits the function of VKOR, which recycles vitamin K to activate blood coagulant factors, and causes hemorrhage. Substitutions in the VKORC1 gene were reported in warfarin-resistant rodents. Moreover, the metabolism of warfarin is accelerated in warfarin-resistant rats due to the elevation of cytochrome P450-dependent xenobiotic metabolizing activities. The combination of a VKOR mutation and P450 acceleration causes warfarin resistance in wild rodents, which is an evolutionary adaptation to the pesticide-polluted environment. After the appearance of warfarin-resistant rodents, a second-generation rodenticide was developed and replaced warfarin in Europe and America. In Japan, difethialone is the only the second-generation rodenticide that can be used in public buildings. In Japan, a critical zoonosis infection has not yet spread on a large scale through wild rodents. However, it is necessary to consider how to prevent serious infestation by house rodents in the industrial, administrative, and academic sectors before such infestation occurs.
著者
田中 雅一
出版者
京都大学大学院人間・環境学研究科 文化人類学分野
雑誌
コンタクト・ゾーン = Contact zone (ISSN:21885974)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.30-59, 2014-03-31

本稿の目的は、日本におけるセックスワーク(売春)の性質を、肉体労働、感情労働、官能労働の3つの労働から理解しようとするものである。資料は5人の日本人女性セックスワーカーたちへのインタビューに基づく。セックスワークは、1970 年代に作られた言葉で、売春をほかの仕事(ワーク)と同じく合法的な活動(サービス産業)ととらえるべきであるという主張がこめられている。しかし、このような主張には、根強い批判が認められる。 ひとつは、セックスワーカーが人身売買の犠牲者であって、セックスワークを合法化しようとするのは、その犯罪性を隠蔽することになるという主張である。二つ目は、セックスワークは若くて未熟なワーカーが喜ばれ、価値もあるという点で、熟練度が重視される通常の仕事と同じだとみなすべきではないという主張である。最後の批判は、本来私生活に属するセックスを仕事とすることで、ワーカーたちは多大な精神的被害を受けるはずであるため仕事とはいえないという批判である。本稿では、セックスワーカーたちと顧客との親密なやり取りについての語りを分析することで、これらの批判の妥当性を吟味した。 日本のセックスワーカーは、1時間から2時間を単位として顧客と限られた時間を過ごす。彼女たちは、顧客の支払額を増やすためにできるだけ長くいること(延長)を顧客に求め、また収入を安定させるために繰り返し一人の女性を指名する常連を増やそうとする。顧客はワーカーが自分に好意を示し、自分との性行為によってオーガズムに達することを好む。このような顧客の要望に応じるため、ワーカーは「感情労働」を通じて好意があるかのような演技をする。オーガズムについては、あたかも女性が感じているかのようなふりをする「官能労働」が必要となる。 本稿のデータから明らかなのは、どのワーカーも自分を犠牲者だとみなしていないことである(だからといって、日本のセックスワーカー全員が犠牲者ではないとはいえない)。また、素人が好まれることから、素人のようにふるまう技術を身につける。さらに、顧客の気づかないところで気を遣い、暴力を回避するための交渉を行っている。顧客の要望に応じて、感情労働や官能労働の主体として彼女たちは積極的に顧客と接しているのである。たしかに、セックスを仕事にすることで私生活に影響が出るが、これはむしろ合法化することで解決可能だと考えられる。問題があるから合法化すべきでないというのは本末転倒であろう。
著者
白川 誠 石川 陽 渕上 拓朗 田中 恵
出版者
一般社団法人 日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.104, no.7, pp.351-362, 2022-12-28 (Released:2023-01-21)
参考文献数
61

都市近郊二次林における外生菌根菌(以下,菌根菌)の種多様性を明らかにするために,東京都青梅市のコナラを優占樹種とする二次林において,ラインセンサスおよびプロットサンプリングを実施し,子実体436個,菌根327根端,菌核3個の計766サンプルを採取した。形態分類およびrDNA-ITS領域を対象とした分子生物学的解析の結果,23科41属159 MOTUの菌根菌が同定され,林内にはテングタケ属,イグチ科,カラハツタケ属,ベニタケ属,ロウタケ属,ラシャタケ属が広く分布していることが確認された。一方で,ショウロ属やヌメリイグチ属など,センサスルート上やプロット内の各所において局所的に分布する菌種も多数確認された。これらのことから,人為的攪乱を受ける比較的小面積の二次林においても多様な菌根菌種が生息していることが明らかになった。また,プロットから得られた菌根菌を対象とした階層クラスター分析では,各プロットは共通の頻出群を有するものの,局所的に分布する科によって特徴づけられた。樹種構成の相違や人為的攪乱,林内に存在する多様な微地形といった要因が群集組成に影響を及ぼしていることが示唆された。
著者
山下 麗 田中 厚資 高田 秀重
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.51-68, 2016 (Released:2016-06-01)
参考文献数
104
被引用文献数
5

プラスチックの生産量は増加傾向にある一方で、廃棄量も増加しており、適切に処理されないものは最終的に海洋へと流出していく。プラスチックは難分解性であるため長期間にわたって海洋中に存在し、鯨類やウミガメ類など様々な海洋生物に摂食されている。特に、海鳥類では高頻度のプラスチック摂食が確認されている。プラスチック摂食による影響は、物理的な摂食阻害とプラスチック由来の化学物質が体内へ移行して起こる毒性の2 つが考えられる。近年、プラスチックに吸着するポリ塩化ビフェニル(PCBs)と難燃剤として添加されているポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDEs)がプラスチック摂食によって外洋性海鳥の体内に移行する証拠が出された。また、動物プランクトンなどの低次栄養段階の生物にもマイクロプラスチックと呼ばれる微小なプラスチックと化学物質が取り込まれていることが報告され始め、海洋生態系全体に汚染が広がっていることが明らかになってきた。このようにプラスチックが汚染物質のキャリヤーとしてふるまうことから、海洋生物のプラスチック摂食が生態系内での新たな汚染物質の暴露ルートとな。 今後、海洋へのプラスチック流出量の増加に伴って海洋生物への汚染物質の負荷量が大きくなり、海洋生態系全体へ脅威が増すと考えられる。
著者
浜田 純一郎 高瀬 勝巳 藤井 康成 乾 浩明 小林 勉 後藤 昌史 塩崎 浩之 畑 幸彦 田中 栄 林田 賢治 森澤 豊 森原 徹 山本 宣幸
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.122-126, 2021 (Released:2021-08-30)
参考文献数
9

凍結肩について,AAOSの定義と分類やISAKOSの提言があり混乱がある.そこで会員に対し凍結肩のアンケート調査をおこなった.その結果,AAOSの一次性凍結肩の定義,一次性・二次性凍結肩の分類に同意する会員はそれぞれ63%,53%であった.原因不明の拘縮肩の診断名は凍結肩31%,拘縮肩22%,肩関節周囲炎16%,五十肩16%と多くの病名が使われていた.調査結果から凍結肩と拘縮肩の定義の曖昧さとAAOSの定義や分類への同意率が低いことがわかった.英語論文100編を調査するとadhesive capsulitisが45%,frozen shoulderが41%であり欧米ではこの2病名を主に使っていた.拘縮肩と凍結肩の定義を明確化するため学術委員会では,可動域制限があれば拘縮肩とし,そのうち原因不明な拘縮肩のみを凍結肩,原因の明らかな拘縮肩を二次性拘縮肩とするISAKOSの提言を採用した.
著者
十塚 正治 The Super Science High School Consortium 佐藤 陽一 田中 雅嗣
出版者
一般社団法人 日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.124, no.2, pp.85-91, 2016 (Released:2016-12-20)
参考文献数
19

平成20~24年度に文科省のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)コンソーシアムとして日本国内(八重山諸島,宮古島,沖縄本島,佐賀県,兵庫県,宮城県,青森県)の高校と共同で,Y染色体DNAとミトコンドリアDNA(mtDNA)のハプログループを解析し,日本各地における頻度分布を調査した。その結果,Y染色体ハプログループに関してはDE*は佐賀県,青森県と比較して,琉球地域で高い割合を示した。ハプログループC1は佐賀県,青森県と比較して,琉球地域で高く,逆にC3は佐賀県,青森県と比較して琉球地域で低い結果となった。ハプログループO2b1は沖縄本島において低頻度を示したが,O2b*, O3の頻度は地域間で大きな違いはみられなかった。mtDNAに関しては,佐賀県,兵庫県,青森県と比較し,琉球地域においてハプログループM7aは高頻度を示し,N9aは低頻度を示すことがわかった。N9bは頻度数値がどこも小さいが,青森,琉球地域に対し,中間に位置する兵庫・大阪・京都と佐賀が比較的低かった。日本本土と琉球地域ではY染色体DNAとmtDNAのハプログループの頻度に違いがみられることがわかった。
著者
田中 耕史 井上 耕一 豊島 優子 岡 崇史 田中 宣暁 外海 洋平 野里 陽一 岩倉 克臣 藤井 謙司
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.SUPPL.3, pp.S3_48-S3_53, 2014 (Released:2015-10-26)
参考文献数
1

症例は51歳男性. 頻拍の加療のため近医より紹介となった. 洞調律時, V1誘導はrsR’ パターンで+/-のデルタ波を伴っていた. 発作時心電図は230bpmのregular wide QRS tachycardiaであった.  心臓電気生理学的検査では頻拍中の心房最早期興奮部位は冠静脈洞入口部近傍であり, His不応期での心室期外刺激で頻拍はリセットされた. 房室結節を順行性に, 後中隔副伝導路を逆行性に伝導する正方向性房室回帰性頻拍と診断した.  冠静脈入口部近傍で頻拍中に高周波通電を行ったところ頻拍は速やかに停止した. その後, 逆伝導は房室結節を介するもののみとなり, デルタ波も消失した. 一方, 右脚ブロックが顕在化し, QRS幅は術前140msから術後160msに拡大した. 術前は, 右側後中隔副伝導路を介して右室が早期に興奮していたため元来の右脚ブロックがマスクされ, QRS幅も相対的に狭くなっていたと考えられた.
著者
田中 裕子
出版者
早稲田大学
巻号頁・発行日
2013

制度:新 ; 報告番号:甲3882号 ; 学位の種類:博士(文学) ; 授与年月日:2013/2/25 ; 早大学位記番号:新6340
著者
島倉 大輔 田中 健次
出版者
一般社団法人日本品質管理学会
雑誌
品質 (ISSN:03868230)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.104-112, 2003-07-15
被引用文献数
4

医療業界では,組織事故と考えられる医療事故が多く発生している。組織事故を防止するために,医療現場では医師や看護士など人間による防護の多重化が行われている。しかし,事故原因を取り除くために実施された防護が,新たな事故を誘発したり,防護作業を行う作業者が多重化に安心して抜きを行う恐れがあり,多重化はかえって事故を招く危険性がある。本研究では,医療現場など人間による防護の多重化の有効性に着目する。人間による防護の多重化は,複数の人間が同質の防護作業を行う同種防護の多重化と,複数の人間が異なる作業を行う異種防護の多重化に分類される。本研究では,同種防護と異種防護の多重化に相当する模擬実験により,人間による防護の多重化の有効性の検証を試みた。結果として、同種防護を多重化する場合,防護の二層への絞込みがもっとも事故防止に有効であること,通常事故防止に有効であると考えられている三層以上の多重化は逆効果であり,むしろミスの発生率が下がる可能性があることが明らかとなった。一方,異種防護を多重化する場合は,防護を多重化するほど,事故防止に有効であることも明らかになった。
著者
田中 公教 小林 快次
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.57-68, 2018 (Released:2018-05-11)
参考文献数
98

ヘスペロルニス目Hesperornithiformesは,白亜紀前期アルビアン期-白亜紀後期マーストリヒチアン期の北半球に広く分布した歯のある潜水鳥類である.鳥類の進化史上初めて潜水適応した最古の潜水鳥類として知られており,これまで15属31種が報告されている.1871年に初めて骨格化石が発見されたヘスペロルニスHesperornis regalisは,前肢が極端に発達しており,胸骨は竜骨突起を失い平たくなり,後肢は非常に発達していた.これらの形態的特徴から,ヘスペロルニスは白亜紀の飛翔能力を失った後肢推進性潜水鳥類と考えられる.この発見の後,アメリカ,カナダ,イギリス,スウェーデン,ロシア,カザフスタン,モンゴル,日本などから新たなヘスペロルニス目の化石が報告され,最古の潜水鳥類の進化の道のりが徐々に明らかになってきた.本稿では,現生鳥類の起源についての近年の研究のレビューを行い,現生鳥類がいつ頃から多様化を始めたのかを議論し,中生代の鳥類の最近の系統分類学を概観する.さらに,ヘスペロルニス目の発見からこれまでの研究を概説し,明らかになってきたヘスペロルニス目の生態や今後の研究課題について議論する.
著者
田中 邦裕
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.7-9, 2018-12-15

2018年9月6日,直下型の地震が少ないというイメージのある北海道において,胆振東部を震源とする大きな地震が発生した.これにより,北海道全域でブラックアウトが発生し,戦後最大ともいわれる大停電が引き起こされた.この地震の影響により,石狩市に立地するさくらインターネットの石狩データセンターへの給電も停止し,非常用発電機設備を60時間近く稼働させて事態の収拾にあたった.その際の,日本のデータセンター史上,例を見ない長時間の非常事態に対応した,現場における奮闘記である.
著者
香川(田中) 聡子 大河原 晋 埴岡 伸光 神野 透人
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.43, pp.P-207, 2016

【目的】近年、高残香性の衣料用柔軟仕上げ剤や香り付けを目的とする加香剤商品等の市場規模が拡大している。それに伴い、これら生活用品の使用に起因する危害情報も含めた相談件数が急増しており、呼吸器障害をはじめ、頭痛や吐き気等の体調不良が危害内容として報告されている。このような室内環境中の化学物質はシックハウス症候群や喘息等の主要な原因、あるいは増悪因子となることが指摘されているが、そのメカニズムについては不明な点が多く残されている。本研究では、欧州連合の化粧品指令でアレルギー物質としてラベル表示を義務付けられた香料成分を対象として、FormaldehydeやAcroleinなどのアルデヒド類や防腐剤パラベン、抗菌剤など多様な室内環境化学物質の生体内標的分子であり、これらの化学物質による気道刺激などに関与するTRP (Transient Receptor Potential Channel)イオンチャネル活性化について検討を行った。<br>【方法】ヒトTRPV1及びTRPA1の安定発現細胞株を用いて、細胞内Ca<sup>2+</sup>濃度の増加を指標として対象化合物のイオンチャネルの活性化能を評価した。Ca<sup>2+</sup>濃度の測定にはFLIPR Calcium 6 Assay Kitを用い、蛍光強度の時間的な変化をFlexStation 3で記録した。<br>【結果および考察】香料アレルゲンとして表示義務のある香料リストのうち植物エキス等を除いて今回評価可能であった18物質中9物質が濃度依存的にTRPA1の活性化を引き起こすことが判明した。なかでも、2-(4-tert-Butylbenzyl) propionaldehydeによるTRPA1の活性化の程度は陽性対象物質であるCinnamaldehydeに匹敵することが明らかとなった。以上の結果は、これら香料アレルゲンがTRPA1の活性化を介して気道過敏の亢進を引き起こす可能性を示唆しており、シックハウス症候群の発症メカニズムを明らかにする上でも極めて重要な情報であると考えられる。