著者
田中 皓介
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集D3(土木計画学) (ISSN:21856540)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.I_241-I_248, 2018 (Released:2019-01-10)
参考文献数
31

日本という国土に生きていく以上,大雨や地震,雪害などあらゆる自然災害への対応が必須である.そのような自然災害発生直後には,例えば多くの自衛隊や警察,消防が動員され救助や復旧にあたっていることは広く国民の知るところである.一方で,地元の建設業者もまた大きく貢献しているものの,地元建設業をはじめとした土木業界の活躍は,人々の認知が十分になされていない.このように,土木建設業あるいは公共事業を軽視する状況が続けば,今後の日本では十分な災害対応が困難となることが懸念される.そこで本研究では,国民世論の形成に寄与する新聞報道を対象に,災害発生後の救助や捜索,復旧活動に着目し,その報道状況を明らかにする.そして,内容の分析,考察に基づきその改善に向けた知見の提供を目的とする.
著者
大対 香奈子 田中 善大 庭山 和貴 松山 康成
出版者
一般社団法人 日本LD学会
雑誌
LD研究 (ISSN:13465716)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.310-322, 2022 (Released:2022-11-26)
参考文献数
27

学校での児童の問題行動に対し,叱責などの嫌悪的な対応ではなく,望ましい行動を積極的に教え,承認することで増やし,問題行動を予防する実践であるポジティブ行動支援(positive behavior support: PBS)が最近注目されている。本研究ではPBSを学校規模で実践する学校規模ポジティブ行動支援(school-wide positive behavior support: SWPBS)を公立小学校1校で実施し,児童と教師への効果を検討した。結果,SWPBS実施後に児童の授業参加行動の増加が見られ,また主観的な友人関係に関わる適応感が改善したことが示された。教師への効果としては,SWPBS実施後に教師の称賛の回数は変化しなかったものの,叱責については減少が見られた。以上より,本研究のSWPBSの実践は児童および教師に一定の効果が認められた。今後は対象校を増やした検討が望まれる。
著者
木村 功二 藤井 滋穂 田中 周平 邸 勇 野添 宗裕
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
環境工学研究論文集 (ISSN:13415115)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.301-308, 2008-11-28 (Released:2011-06-27)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

本研究では、近年注目を集め始めている残留性有機フッ素化合物PFOS、PFOAおよびその類縁化合物6種類に着目し、粉末活性炭による吸着除去特性を検討した。単成分系での各物質の吸着特性は、炭素鎖が長いものほど高く疎水性による吸着である可能性が示唆された。吸着平衡定数KはPFOS: 198.19、PFOA: 64.97であった。8成分混合系ではPFDA、PFDoA、PFOSの3種類で吸着性が高く、単成分系と比較して吸着量が20%しか低下せず、他のPFHxA、PFHpA、PFOA、PFNA、PFHxSでは50-90%低下した。琵琶湖水を溶媒とした8成分混合系では、溶存有機物に吸着が阻害されPFOS、PFHxSで超純水中と比較して除去率が約60%低下し、PFHxA、PFHpA、PFOA、PFNA、PFDA、PFDoAでは不規則な濃度変化を示しほぼ除去されなかった。
著者
松山 康成 沖原 総太 田中 善大
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.139-148, 2022-03-18 (Released:2023-03-18)
参考文献数
8

研究の目的 本研究では、授業開始時に授業準備行動を行う児童が少ない小学4年生の通常の学級に対して、授業開始時の授業準備行動(話の聞き方と準備物の用意)を対象として、集団随伴性を含む介入パッケージを実施し、その効果を検討した。研究計画 ABCDデザインを用いた。ベースライン期(A条件)に続いて、3つの介入(B条件、C条件、D条件)を実施した。場面 公立小学校通常の学級の授業開始時に介入を行った。対象者 公立小学校4年生1学級の31名(男児16名、女児15名)の児童であった。介入 B条件では話の聞き方の授業とステキな聞き方のルールの掲示を、C条件ではB条件に加えて準備物の授業と集団随伴性の手続き(「グーチャレンジ」),さらに担任の対応を、D条件ではC条件に加えてタイマーの表示を実施した。行動の指標 授業準備行動の指標として授業開始時の静かになるまでの時間を連続記録法によって、授業開始時の準備物の用意を産物記録法によって測定した。結果 静かになるまでの時間はB条件及びD条件の実施によって減少し、準備物の用意はC条件の実施によって増加した。結論 授業開始時の授業準備行動に対する集団随伴性を含む介入パッケージの効果が示された。
著者
田中 実 小野 滉貴 山本 康裕 高橋 義朗
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.77, no.6, pp.355-360, 2022-06-05 (Released:2022-06-05)
参考文献数
15
被引用文献数
1

素粒子物理学には,いくつかのフロンティアがある.一つは高エネルギーフロンティアで,高エネルギーの状態から新たな素粒子を発見することが主な目的である.CERNの大型ハドロン衝突型加速器(LHC)が現在の最高エネルギーの実験装置であり,LHCにおける2012年のヒッグス粒子の発見により,素粒子標準模型に登場するすべての粒子が既知のものとなった.もう一つのフロンティアは高輝度(あるいは高強度)フロンティアで,特定の素粒子を大量に生成し,その性質を詳しく調べることで素粒子の相互作用について解明することを主眼とするものである.日本ではKEKのスーパーBファクトリー実験やJ-PARCにおけるK中間子,ミュー粒子,ニュートリノの実験等がこれにあたる.宇宙も素粒子物理のフロンティアであり,インフレーション理論の検証等が行われ,コスミックフロンティアと呼ばれている.これらに加えて,高精度フロンティアと呼ぶべき研究が近年重要さを増している.例えば,標準模型を越える新しい素粒子模型の多くが予言する,電子の永久電気双極子能率の探索が,原子や分子を対象とした高精度の測定に基づいて行われている.このフロンティアは,原子物理学の発展と密接に関連している.かつてはマクロな数の原子集団の測定によって個々の原子の性質が決定されてきたが,実験技術の進歩とともに,少数の原子を対象とした実験が可能になり,1個の原子やイオンをトラップし,単独原子の孤立状態を実現できるようになった.また,多数の原子の低温の孤立集団も実現されるようになり,ボーズ・アインシュタイン凝縮といった量子的なマクロ状態も観測されている.私たちは,原子スペクトルの同位体シフトを精密に測定することで,標準模型を越える新しい物理の探索を行っている.もし,電子と中性子に結合する新粒子が存在すれば,この粒子が電子・中性子間で交換されることでも同位体シフトが起こる.同位体シフトの実験値と標準模型での理論値を比較すれば,原理的には,この効果を検出できる.しかし,同位体シフトの系統的精密測定が行われているカルシウムやイッテルビウムのような電子多体系のスペクトル計算の不定性は,実験精度に比べてかなり大きい.このため,同位体シフト自体の実験値と理論値の直接的な比較による新物理探索は,単純な原子を除いて現実的ではない.そこで,複数の遷移の同位体シフトが満たす線形関係に注目し,新粒子の効果でこの線形関係が破れることを利用して,新物理探索を行った.具体的には,魔法波長の光格子に中性イッテルビウム原子をトラップし,578 nmの狭線幅光学遷移(時計遷移)について,数Hzの不確かさで系統的に同位体シフトの測定を行った.この結果と先行研究のイッテルビウムイオンの411 nmおよび436 nmの遷移の同位体シフトの測定結果を合わせることで,世界初の3遷移間の線形性検証を行った.その結果,線形性が有意に破れていることが分かったが,同時に,この線形性の破れは標準模型で説明されるべきものであることも明らかにした.新物理に由来する非線形性には上限が得られ,これに基づいて新粒子の結合定数に対する制限を与えた.現状では得られた制限は既存の実験のものよりも弱いが,今後の実験精度の向上によりこれを上回ることが期待される.
著者
進 夏未 當山 美唯 東 美空 田中 和子 吉村 耕一
出版者
科学・技術研究会
雑誌
科学・技術研究 (ISSN:21864942)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.85-88, 2017 (Released:2017-06-30)
被引用文献数
1

トップアスリートは、集中力を高めてプレイを成功させるためにプレイの直前にある決まった動作(ルーティン動作)を付け加えている。本研究では、非アスリートにおいても、ルーティン動作を付加することにより、集中力が増して作業の精度が高まるか否かについて実験的に検討した。非アスリートの学生13人を対象とし、ルーティン動作に続けて、ダーツ、計算または記憶の作業を課した。ルーティン動作なしを対照実験とした。集中力評価のために、脳波を測定した。その結果、ルーティン動作により、ダーツと記憶作業中の集中力が増した。さらに、ルーティン動作により、ダーツ作業の精度が向上した。これらの結果から、非アスリートにおいても、ルーティン動作により集中力を高めて作業精度を向上できる可能性が示された。
著者
田中 英明
出版者
法政大学経済学部学会
雑誌
経済志林 = The Hosei University Economic Review (ISSN:00229741)
巻号頁・発行日
vol.89, no.2, pp.583-616, 2022-03-20

This study discusses modern money by examining the relationship between the modern money theory (MMT) approach and the theory of credit money. L. Randall Wray and Stephanie Bell (Kelton) base their monetary theory on the state, or chartalist approach to money of Georg Friedrich Knapp and A. Mitchell Innes. They also inherit from Hyman Minsky the notion of a hierarchy of monies, or a debt pyramid. However, Knapp, Innes, and Minsky revealed that bank debt acts as credit money by being accepted to discharge debts. Due to the organization between banks, central bank money, not state money, is at the top of the hierarchy. Modern central bank money is credit money for discharging its debts, not as a promise to pay gold. Therefore, there is an endogenous supply mechanism in which money is created and destroyed in response to financing demand. The policy implications of MMT must be revisited in the light of these central bank roles and actions.
著者
田中 善大 伊藤 大幸 村山 恭朗 野田 航 中島 俊思 浜田 恵 片桐 正敏 髙柳 伸哉 辻井 正次
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.332-343, 2015 (Released:2017-12-20)
参考文献数
26
被引用文献数
2

本研究では,単一市内の全保育所・公立小中学校の児童生徒の保護者を対象に調査を実施し,ASD傾向及びADHD傾向といじめ被害及び加害との関連を検討した。ASSQによってASD傾向を,ADHD-RSによってADHD傾向を測定した。いじめ被害及び加害は,関係的いじめ,言語的いじめ,身体的いじめのそれぞれのいじめについて測定した。保育所年少から中学3年生までの計8396名の幼児児童生徒のデータに対する順序ロジスティック回帰分析の結果,他の独立変数の効果を調整しない場合には,いじめ被害及び加害ともに,いずれのいじめに対してもASD傾向とADHD傾向の効果が示された。これに対して,他の独立変数の効果を調整した場合には,2つの発達障害傾向のいじめに対する影響は異なるものであった。いじめ被害では,全てのいじめでASD傾向の主効果が確認されたが,ADHD傾向の主効果が確認されたのは関係的いじめと言語的いじめのみであり,オッズ比もASD傾向より小さかった。いじめ加害では,全てのいじめでADHD傾向の主効果が確認されたが,ASD傾向ではいずれのいじめにおいても主効果は確認されなかった。これに加えて,学年段階や性別との交互作用についてもASD傾向とADHD傾向で違いが見られた。
著者
江原 遥 田中 久美子
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.151-167, 2008-10-10 (Released:2011-03-01)
参考文献数
14

近年, 国際化に伴い, 多くの言語を頻繁に切り替えて入力する機会が増えている.既存のテキスト入力システムにおいては, 言語が切り替わるたびに, ユーザーが手動で, テキスト入力ソフトウェア (IME) を切り替えなければならない点が, ユーザーにとって負担になっていた.この問題を解決するために, 本論文では, 多言語を入力する際にユーザーの負担を軽減するシステム, TypeAnyを提案する.TypeAnyは, ユーザーが行うキー入力からユーザーが入力しようとしている言語を判別して, IMEの切り替えを自動で行う.これによって, ユーザーがIMEを切り替える操作量が減るため, 複数の言語をスムーズに切り替えながら入力することが可能になる.本研究では, 隠れマルコフモデルを用いて言語の判別をモデル化し, モデルにおける確率をPPM法を用いて推定することでTypeAnyを実装し, その有用性を評価した.その結果, 人工的なコーパスにおける3言語間の判別において, 96.7%の判別精度を得た.また, 実際に多言語を含む文書を用いて実験したところ, 切り替えに必要な操作の数が, 既存の手法に比べて93%減少した.

7 0 0 0 OA がん原性試験

著者
田中丸 善洋
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.130, no.2, pp.157-162, 2007 (Released:2007-08-10)
参考文献数
12
被引用文献数
1

国内で医薬品のがん原性試験法がガイドラインに記載されてから,既に25年以上が経過している.当初は日米欧でがん原性試験の投与量設定の考え方等に若干差がみられたが,ICH(日米EU医薬品規制調和国際会議)により,考え方の統一が行われた.がん原性試験には評価期間を含めると3年に及ぶ期間と多くの動物を使用し,再試験が容易ではないことから,試験計画の立案は慎重に行う必要がある.投薬起因の腫瘍発生がみられた際には,それがヒトでの発がんリスクを示唆するものか否かの判断も重要である.また,同時にその医薬品のげっ歯類での慢性毒性評価も試験目的に含まれる.
著者
塩瀬 圭佑 飛奈 卓郎 桧垣 靖樹 清永 明 田中 宏暁
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.493-502, 2011 (Released:2011-11-15)
参考文献数
40
被引用文献数
2 2

The decrease of muscle glycogen may be useful for the improvement of endurance performance. Intense anaerobic exercise requires a high rate of glycogen utilization, but consecutive intense anaerobic exercises induce a pronounced decline of external power and muscle glycogen consumption. We hypothesized that a long rest period between consecutive intense anaerobic exercises may aid in sustaining external power and glycogen consumption. Secondly, we hypothesized that active rest (AR) during the long resting period may be more effective than passive rest (PR).Six subjects performed four 30-second Wingate tests (WAnT) with a 4-minute recovery between each bout (Consecutive method). The subjects also performed a similar exercise procedure, but with a 30-minute seated resting period after the second bout (PR method).The other six male subjects performed four 30-second WAnTs with a 4-minute recovery between each bout, with 30-minutes of cycling at 40% VO2max after the second bout (AR method). The subjects also performed PR method.The total work during the third and fourth bouts was greatest under the AR condition, followed by the PR condition, and finally the Consecutive method (p<0.05 for all comparisons). Blood lactate concentration during resting period was significantly lower, while muscle glycogen consumption was greater AR method than PR method (p<0.05 for both).A long resting period between consecutive intense anaerobic exercises may prevent the decline in external power and work. Additionally, AR has more favorable effects on muscle glycogen consumption, resulting in very low muscle glycogen levels, even with a small total amount of exercise.
著者
田中 保平 藤原 慈明 渡邊 伸貴 山黒 友丘 富永 経一郎 新庄 貴文 太田 真 伊澤 祥光 米川 力 間藤 卓
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.58-61, 2020-02-29 (Released:2020-02-29)
参考文献数
7

75歳,男性。ハチ酒造りを趣味とし,これまで多数回のハチ刺傷歴があるが症状を呈したことはなかった。某日スズメバチに両肩を2カ所刺傷された後,意識消失した。血圧低下・頻呼吸・全身の膨疹を認め,アナフィラキシーショックとしてアドレナリンを筋注され当院に搬送となった。病着したとき,呼吸・循環動態は安定していたため,経過観察を目的に入院し翌日に退院した。ハチ刺傷によりアナフィラキシーショックをきたすことはよく知られ,通常は2度目以降の刺傷により発症率が増加すると思われる。一方で複数回の刺傷において無症状であればその危険性は低下していると考えられやすい。しかし本症例は多数回の刺傷歴があるものの無症状で経過し,今回に限りアナフィラキシーを発症した。残念ながらその機序を説明する所見を得ることはできなかったが,このような症例が存在することの重要性に鑑みここに報告する。
著者
加茂 智彦 荻原 啓文 田中 亮造 遠藤 まゆみ 角田 玲子 伏木 宏彰
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.242-249, 2019 (Released:2019-08-20)
参考文献数
34
被引用文献数
2

【目的】本研究では日本におけるめまい症に対する理学療法士による個別リハビリの効果を検証した。【方法】本研究は,後ろ向きのコホート研究である。対象はめまい患者20 例とした。介入群には個別リハを週1 回,1 回40 分,4 週間実施に加え,自宅における自主的な前庭リハビリを指導した。対照群には自主トレのみを指導した。測定項目はDizziness Handicap Inventory(以下,DHI),Dynamic Gait Index(以下,DGI),Functional Gait Assessment(以下,FGA)とした。【結果】介入前後の変化率はDHI_Emotional,DHI_Total,DGI,FGA において介入群とコントロール群間に有意差が認められた。【結論】本研究の結果より,理学療法士による個別リハビリはめまい患者におけるバランス・歩行能力,めまいに関連した日常生活活動を改善させることが明らかとなった。