著者
田中 英海
出版者
公益社団法人 日本数学教育学会
雑誌
日本数学教育学会誌 (ISSN:0021471X)
巻号頁・発行日
vol.104, no.4, pp.3-14, 2022-04-01 (Released:2023-04-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

本研究の目的は,倍の意味理解を促すために,基準量と比較量を入れ変えると二量の関係を表す数が互いに逆の関係になるという基準量交換の考えに焦点を当てた教材開発,授業実践を行い,児童の思考の様相を考察することである. 第4学年を対象に,基準量を求める比の第三用法の場面において白衣の帽子のゴムを取り変える文脈で授業を行った.その結果,元のゴムの長さを1とみて伸びたゴムの長さを3倍とみる見方と,伸びたゴムの長さを1とみて元のゴムの長さを1/3とみる見方が生まれた.1/3の解釈では,整数倍のテープ図,数直線との比較を通して,3等分した量から,1を3等分した1/3を1つ分として1/3,2/3,3/3とする割合の見方へ変わっていった.さらに1/3を3倍と同じように,割合の見方で比較する発言を経て,二量の関係を表す3倍と1/3が互いに逆の関係になることを捉えていった.基準量交換の考えを数直線で比較しながら説明することを通して,倍の意味を割合の見方で解釈している様子が捉えられた.
著者
尾﨑 充希 塩津 裕康 田中 悟郎 岩永 竜一郎
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.87-97, 2022-08-31 (Released:2023-02-28)
参考文献数
18

特別支援学校高等部に通う脳性まひ者2名に対して主体的に問題を解決する力を育むために、日常作業遂行に対する認知オリエンテーション(CO-OP)を基盤とした個別介入を行い、その有用性を検証することを目的とした。その結果、生徒自身で目標を設定し、認知戦略を発見し、目標を達成することができた。カナダ作業遂行測定(COPM)、ゴール達成スケーリング(GAS)、遂行の質評定スケール(PQRS)の数値が、事前評価から事後評価で生徒2 名ともに向上し、その後のフォローアップにおいても効果を維持することができた。そのうち1名の生徒は、Vineland-Ⅱの粗大運動のスコアが、事前評価の22点から事後評価では34点に向上した。本研究により、脳性まひ者の主体的な学びの実現を目指すために、CO-OPを基盤とした個別介入が特別支援教育の場において有効であることが示唆された。
著者
臼田 春樹 和田 孝一郎 岡本 貴行 田中 徹也 新林 友美
出版者
島根大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

腸粘膜バリアの慢性的な低下(leaky gut syndrome: LGS)は全身疾患の発症に深く関与することが示唆されている。しかし、ヒトに使用可能で適切にLGSを評価する方法は確立していない。本研究では、軽度、中等度、重度のLGSを呈するマウスモデルを確立し、これらを用いてLGSの新規診断指標(試薬K)を確立した。また、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)とクローン病を誘発したマウスでは、発症初期の段階でLGSが生じることが試薬Kによって判明した。特にクローン病の小腸ではLGS状態と炎症の両方に関連する内因性因子の発現が増加しており、LGSがクローン病の発症に関与する可能性が示唆された。
著者
大隣 辰哉 大田 慎三 関原 嘉信 西原 伸治 大田 泰正 佐藤 倫由 田中 朗雄
出版者
産業医科大学、産業医科大学学会
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.231-242, 2015-09-01 (Released:2015-09-12)
参考文献数
25

脳脊髄液漏出症は特発性または時に外傷性に発症し,起立性頭痛や誘因のない慢性硬膜下血腫(CSDH)の原因となる稀な疾患である.我々はこの連続20例の治療経験があり,この疾患の現状と問題点も含め報告する.2006年4月から2014年3月までにCTミエログラフィー(CTM)または脊髄MRIで硬膜外髄液漏出を確認した連続20例(女性11例,年齢44.7±12.1歳,22-65歳)の臨床的特徴を後ろ向きに調査した.症状は,起立性頭痛のみが10例,起立性頭痛にCSDH合併が6例,体位と無関係の頭痛にCSDH合併が4例であった.治療は,2例で直達術での縫合またはフィブリン糊による瘻孔閉鎖を施行した.14例で硬膜外自己血パッチ(EBP)を施行(うち1例は上記直達術),後半9例は血管内カテーテルを用いた腰椎からの単回アプローチでの広範囲EBPを施行した.穿頭血腫ドレナージ施行の1例を含む残る5例は,輸液のみで治療した.症状が頭痛のみの10例中9例は,この消失または軽減が得られた.CSDHを合併した10例は,1例で穿頭血腫ドレナージ後に輸液のみで治療,9例でドレナージ後にEBPを施行して全例再発を抑制できた.脳脊髄液漏出症はいまだ病態が不明だが,CTMおよび脊髄MRIにて的確に診断し,点滴加療が無効,起立性頭痛が高度またはCSDHを繰り返す症例には,血管内カテーテルを用いた広範囲EBPでほぼ治癒可能とわかった.
著者
川島 朋也 澁澤 柊花 林 正道 池田 尊司 田中 悟志
出版者
日本認知心理学会
雑誌
認知心理学研究 (ISSN:13487264)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.91-101, 2023-02-28 (Released:2023-03-31)
参考文献数
49

電気刺激や磁気刺激などの脳刺激技術を用いて脳活動と認知機能の因果関係を調べる試みが続けられている.本稿では,さまざまな脳刺激研究を概観することで認知心理学研究の展開を考えることを試みた.池田はtDCS(経頭蓋直流電気刺激)とワーキングメモリ変調の可能性について,澁澤はtACS(経頭蓋交流電気刺激)と知覚変調の可能性について,林はTMS(経頭蓋磁気刺激)と時間知覚変調の可能性について紹介する.これらの話題提供の後,田中による指定討論を受け,脳刺激研究の新たな視点と認知心理学における今後の展開について議論する.
著者
美濃羽 靖 和田 誠 田中 紡
出版者
一般社団法人 日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.103, no.5, pp.351-360, 2021-10-01 (Released:2021-11-12)
参考文献数
45

本研究では,立木を叩いた際に発生した音を画像化し深層学習を用いて樹高,材積を推定した。立木20本の樹幹を1本につき100回打撃した際に発生した音を録音,0.6秒間における各周波数の音圧を表したスペクトログラムを10,000枚作成し入力画像とした。深層学習システムはNNCを,深層学習アルゴリズムは出力層を回帰層としたLeNetを用いた。学習用データを5セットに分割し,三つの学習パターン(LP-Ⅰ:訓練事例8割,未知事例2割,LP-Ⅱ:大中小三区分から1本ずつ抽出した木を未知事例,LP-Ⅲ:2本ずつ抜出した木を未知事例)の樹高,材積を推定した。推定精度の検証には平均絶対誤差,平均絶対パーセント誤差および決定係数を用いた。その結果,各学習パターンの未知事例に対するR2値は,LP-Ⅲの樹高(0.3672)を除き,非常に高い値(0.9192から0.9996)を示した。LP-Ⅲの樹高では,30 m以上が過小に,30 m以下が過大に推定される傾向を示した。一方,材積はどの学習パターンにおいても全体的に偏りのない推定を行うことができたことから,本手法は材積推定において有効であることが示唆された。
著者
田中 瑛津子 市川 伸一
出版者
心理学評論刊行会
雑誌
心理学評論 (ISSN:03861058)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.203-215, 2017 (Released:2019-02-07)
参考文献数
76
被引用文献数
5

Interest in learning has an important role in learning context. Recent research on interest focuses not only to how much interest there is but also on the extent that the interest develops. The less-developed and well-developed interests are established in different ways and have different functions. However, a unidimensional model proposed in previous studies does not clearly capture the differences in the development of these interests. This article proposes a model that identifies the level of development of interest based on three elements: continuity, inherence, and value. These three elements define the development of interest more clearly and make it possible to describe different psychological states of interest. Using this model, previous studies were reviewed and analyzed in an integrated manner. Finally, we discuss future research on both interest and insight for educational practice.
著者
田中 研之輔
出版者
法政大学キャリアデザイン学部
雑誌
法政大学キャリアデザイン学部紀要 (ISSN:13493043)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.381-428, 2012-03

This article states the social world of youth subcultures in contemporary Japan using social exclusion theory. By examining "structurally embedded inequalities," which tend to be disregarded by post-sub cultural theory, this study will shed some light on the social contexts in which youth subcultures are created.The conceptual and theoretical frameworks that I will employ differ from those of previous works in three regards. First, my approach treats the socially excluded youth not as a group of the "new poor," but as a new collection of social actors produced as a consequence of social stratification. Second, I will focus on the epistemological turn from socio-political social exclusion where it account new poverty provoke a socially exclusive situation, to sociological social exclusion, which focuses on the process of the relationship between new poverty and social exclusion. Third, I will argue that the process of social exclusion is not only forcibly created by structural factors in the global context, but also that mundane exclusion regard to reproduce the everyday practice in local social world.
著者
田中 幹人 石橋 真帆 于 海春 林 東佑 楊 鯤昊 関谷 直也 鳥海 不二夫 吉田 光男
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.71-82, 2022-04-28 (Released:2022-05-26)
参考文献数
27
被引用文献数
1

新興感染症であるCOVID-19に対処する中では,日々更新されるリスク知識を社会で共有し,また政策から個々人のレベルに至るまでリスクを判断していく必要があった。このリスク情報の流通と議論の場となってきたのは,もちろんメディアである。本稿では,我々の研究結果を基に,まず情報の送り手である新聞報道の傾向を振り返り,また情報の受け手である日本のメディア聴衆の相対的リスク観を把握する。そのうえで,ソーシャルメディアを含むオンラインメディア上でのコミュニケーションの成功例,失敗例を確認し,そこから教訓を得る。更にマス/オンラインメディアが複雑に絡み合う中で,COVID-19禍を通じて明らかになった感染者差別,ナショナリズム,懐疑論や隠謀論といった問題を確認したうえで,コミュニューション研究の知見を踏まえて,リスクのより良い社会共有に向けた方針を提示することを目指す。COVID-19という災害は,新興感染症として私達の医療・社会制度の刷新を求めているのみならず,コミュニケーションを通じたリスク対応のあり方についても大きな変革を求めているのである。
著者
田中 良英
雑誌
宮城教育大学紀要
巻号頁・発行日
vol.55, pp.65-81, 2021-01-29

2006年の「世界史未履修問題」に象徴される、近年の日本社会における「歴史離れ」に関しては、歴史研究者・歴史教育者の双方に危機感が広がり、それが2022年度からの高等学校における歴史系教科再編の背景ともなっている。本稿では、この「歴史離れ」への対応策の一つとして、学校教育以外の場においても児童・生徒に歴史への関心を喚起し得るものと予測される、最近の歴史系エンターテインメント作品、とりわけ歴史漫画の現状の確認を図った。当初の予想に反し、近年の歴史漫画は数が増加しているのみならず、扱う時期・地域・テーマも多様化しており、さらには学術的な知見と重なる内容を持つものも多い。それゆえ、これらを通じて歴史への関心を涵養すること、そして歴史を多様な観点から眺め思考することを伝える方途にも、大きな有効性が見込めるように思われる。ただしその一方、内容が低年齢層の講読に適さない作品もあり、そのまま活用することには一定の困難も予想される。また、もともと歴史に関心がない読者にいかにして手に取ってもらうか、そして歴史的背景に関する解説などが付されていない作品にどのような補完的情報を具体的に追加すべきかなど、今後の課題も見いだせる。
著者
田中 光一
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.142, no.6, pp.291-296, 2013 (Released:2013-12-10)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

グルタミン酸は,中枢神経系において主要な興奮性神経伝達物質であり,記憶・学習などの脳高次機能に重要な役割を果たしている.しかし,その機能的な重要性の反面,興奮毒性という概念で表されるように,過剰なグルタミン酸は神経細胞障害作用を持ち,主要な精神疾患に関与すると考えられている.我々は,グルタミン酸の細胞外濃度を制御するグリア型グルタミン酸トランスポーターの機能を阻害したマウスを作製し,そのマウスに,自閉症や統合失調症で観察される脳形成異常と似た脳発達障害や社会行動の障害,強迫性行動,統合失調症様の行動異常が観察されることを発見した.さらに,統合失調症,うつ病,強迫性障害,自閉症など主要な精神疾患において,グリア型グルタミン酸トランスポーターの異常が報告されている.これらの結果から,我々は,主要な精神疾患の中に,グルタミン酸トランスポーターの異常による興奮性と抑制性のアンバランスが原因で発症する患者が一定の割合存在し,「グルタミン酸トランスポーター機能異常症候群」として分類できると考えている.グリア型グルタミン酸トランスポーターを活性化する化合物は,新しい抗精神疾患薬として有用であると期待される.
著者
田中 美穂
出版者
独立行政法人 国立高等専門学校機構 大分工業高等専門学校
雑誌
大分工業高等専門学校紀要 (ISSN:13460781)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.1-6, 2014-11-14 (Released:2018-02-28)
参考文献数
36

アイルランド人はいつ,どこからやって来たのであろうか.隣国のブリテンや遠く離れた東アジアの日本と同じく,アイルランドは島国である.アイルランド人の起源をめぐって,古今を問わず,さまざまな議論がされてきた.歴史学的には,過去の人々が,アイルランド人の起源についてどのように考えてきたのかを探ることも重要である.一方,現在に生きる私たちは,最新の研究では,どこまで明らかになっているのか,どのような見解が示されているのかについても知りたいと考える.本稿では,とくに分子遺伝学者たちの研究に注目しつつ,アイルランド人の起源について考えていき たい.彼らがいわゆる「ケルト」についてどのように考えているのかについても明らかにしていく.
著者
伊藤 隆 田中 哲朗 胡振江 武市 正人
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.3012-3020, 2002-10-15

``しりとり''を完全情報ゲームとして数学的に定義した``しりとりゲーム''を考えると,グラフ上のゲームとしてモデル化することができる.これは完全情報ゲームであるため理論上は解けることになるが,問題のサイズが大きくなるにつれ全探索は困難となる.本論文では,しりとりゲームに関する解析を行い,ゲームを効率的に探索する手法を提案する.この手法は数理的解析,探索の効率化の2つの部分から成っており,数理的解析としてグラフのより簡単な形への変形を行っている.加えて,しりとりゲームにおける先手の勝率に関して実験,考察を行う.The word-chain game (SHIRITORI in Japanese) in which two players are assumed to know all the words can be modeled as a game on graph.When given a set of words with a word to start,it is theoretically possible to decide whether the first player can win the game or not because it is a game with perfect information,but it is practically difficult to find the solution because of the huge searching space.In this paper,we propose a mathematical approach to finding a solution to the word-chain game.We show how to simplify the game by means of mathematical analysis,and give a more efficient searching algorithm.In addition, we examine the possibility for the first player to win the game.Our experimental results show that our approach is quite promising.
著者
滝瀬 竜司 田中 哲朗
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2011論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.6, pp.25-31, 2011-10-28

現在の将棋プログラムの多くは入玉が絡む局面の扱いを不得意としているが,トッププロに勝つためには,入玉が絡む局面を正しく扱い「自玉が入玉できそうな時は入玉を目指す」,「敵玉の入玉を正しく阻止する」将棋プログラムの作成が不可欠だと考えられる.本稿ではオープンソースの将棋プログラムBonanzaの評価関数と定跡を変更することにより入玉志向の将棋プログラムを作成する試みをおこなう.その結果,元のBonanzaの評価関数に「入玉ステップ数」という特徴を加えて学習した評価関数を用いることにより,勝率を落とさずに入玉率を大幅に上げることができた
著者
高木 啓伸 村田 将之 佐藤 大介 田中 俊也 籔内 智浩 粥川 青汰 木村 駿介
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.63, no.11, pp.d12-d29, 2022-10-15

視覚障がい者の自由な移動を可能にするため,白杖やスマートフォンアプリなどさまざまな支援技術が開発されてきた.しかし初めて訪れる公共空間での移動は依然として困難である.そこで行き先を対話的に選択することで目的地まで誘導する,スーツケースを模した自律型ナビゲーションロボットシステム「AIスーツケース」を開発した.本稿では開発のきっかけから複数企業による共同開発に至った経緯を紹介するとともに,AIスーツケース・システムを構成する技術について解説する.各組織が実施している実験から得られつつある最新の知見を紹介するとともに,今後の普及に向けた技術的,制度的,社会的課題について考える.
著者
東山 雄一 田中 章景
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.392-401, 2016-09-30 (Released:2017-10-05)
参考文献数
29
被引用文献数
3 1

コンピュータの急速な普及により, 脳損傷によるタイピング障害が社会生活に与える影響は深刻となりつつある。そこで我々は, 失タイプを呈した自験例の検討と, 健常者 fMRI 研究の結果から, タイピングの神経基盤, 失タイプの責任病巣について検討した。  【症例】78 歳の右利き男性。失語や失行, 半側無視, 運動感覚障害は認めなかったが, 選択的タイプ障害が明らかであった。病歴と脳 MRI, 各種検討課題の結果から, 本例は左中下前頭回後部の脳梗塞により, 音素-書記素変換と書記素バッファに障害を認め, 特に後者が失タイプの原因になっていると考察した。  【fMRI 検討】健常タッチタイピスト16 名を対象に fMRI による, タイプ・書字の神経基盤の検討を行った。その結果, 左上頭頂小葉前部~縁上回, 左上中前頭回後部にタイプ・書字の両課題で有意な賦活を認め, さらに左頭頂間溝 (IPS) 後部内側にタイピングでより強い賦活を認めた。  【考察】タイピングは書字中枢として知られる多くの脳領域や, 左 IPS 後部内側皮質など複数の脳領域が関与する複雑な認知プロセスであり, 障害部位に応じて質の異なる障害が生じる可能性がある。本例のように個々の症例の障害機序を検討していくことで, 失タイプの症候学の確立やリハビリテーションへの発展が今後期待される。
著者
田中館 秀三
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第1輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.10, no.12, pp.529-542, 1938-12-25 (Released:2010-03-09)
被引用文献数
1