著者
白岩 健 船越 大 村澤 秀樹 下妻 晃二郎 斎藤 信也 福田 敬
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.422-426, 2018-10-31 (Released:2018-11-29)
参考文献数
14

医療経済評価において,QALY(quality adjusted life years: 質調整生存年)を算出するためには,選好に基づく尺度により測定されたQOL値が必要である.プロファイル型等の非選好型QOL尺度により測定されたスコアを医療経済評価に活用するために,近年「マッピング」と呼ばれる手法が用いられることが多くなってきている.マッピングは,非選好型尺度の測定値から選好型尺度により測定されるQOL値を予測するための手法であり,このマッピングの関数(あるいは変換方式等)を推定することが目的で実施される.このマッピングに関する研究報告については,23項目からなるMAPS声明が作成されており,筆者らによりその詳細を含め全訳されている.この全訳については,本解説のAppendixを参照されたい.マッピング研究は,現状のところその質につき玉石混淆の状況であるが,MAPS声明に従った質の高い報告が行われることにより,マッピング研究の活用可能性も広がっていくのではないかと考えられる.
著者
亀山 郁夫 白井 史人 林 良児 沼野 充義 甲斐 清高 野谷 文昭 梅垣 昌子 藤井 省三 高橋 健一郎 齋須 直人 望月 哲男 番場 俊 越野 剛
出版者
名古屋外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

ロシアの作家フョードル・ドストエフスキーの文学のもつ世界的意義について、「危機」の想像力と「再生」のヴィジョンをキー概念としつつ、主に2つの観点から解明する。Ⅰ、アレクサンドル二世暗殺を頂点とする19世紀ロシアの社会と人間が陥った危機の諸相とドストエフスキー文学の関連性を、歴史、宗教、文学、人間の観点から明らかにし、Ⅱ、「危機」の想像力と「再生」のヴィジョンが、世界諸地域の文学及び表象文化(映画、演劇、美術ほか)にどう受け継がれ、再生産されたかを明らかにする。後者の研究においては、「世界のドストエフスキー表象」と題するデータベース化を目指している。

3 0 0 0 OA 藩翰譜

著者
新井白石 著
出版者
吉川半七
巻号頁・発行日
vol.巻3, 1954
著者
白井 亮洋
出版者
大阪府立大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2018-04-25

免疫測定応用を指向した新規材料: グラフェン含有ハイドロゲル微粒子の開発に関する研究の概要を以下にまとめる。まずグラフェン表面をポリエチレングリコール(PEG)で被覆したグラフェン含有ハイドロゲル微粒子を調製するために、水/N-メチルピロリドンの均一系混合溶媒に、グラフェン、PEGを添加し、攪拌下でPEGの貧溶媒である2-プロパノールを滴下し、PEGをグラフェン表面に析出させた。グラフェンの蛍光消光機能に加え、グラフェン表面に析出したPEG膜に分子ふるい分離機能を付与するために、グラフェン含有ハイドロゲル微粒子調製時のグラフェンに対するPEG量を検討し、未反応蛍光標識抗体と免疫複合体を分離可能な調製条件を決定した。免疫測定法への応用可能性を評価するために、種々濃度のヒトC反応性タンパク(CRP)を蛍光標識抗ヒトCRP抗体と混合・反応させた後、その試料溶液をグラフェン含有ハイドロゲル微粒子と混合し、蛍光強度を測定したところ、ヒトCRP濃度依存的に蛍光強度が増大した。これは試料中ヒトCRP濃度の増大に伴い、グラフェン表面のPEG膜を通過できない免疫複合体濃度が増大したことを示唆しており、作製したグラフェン含有ハイドロゲル微粒子が免疫測定に応用可能な新規材料であることが明らかとなった。さらに、2つのポリジメチルシロキサン(PDMS)製マイクロ流路内壁に、グラフェン含有ハイドロゲル微粒子と蛍光標識抗ヒトCRP抗体を物理吸着固定し組合せた、1ステップ免疫測定用マイクロデバイスを作製した。ここへ種々濃度のヒトCRPを毛細管現象で導入したところ、流路内壁に固定化された2種試薬と試料中ヒトCRPが反応した。蛍光強度変化をモニタリングしたところ、約2分で試料中ヒトCRP濃度依存的に蛍光応答を示したこと(先行研究の応答時間: 約20分)から、本免疫測定用マイクロデバイスの優位性が示された。
著者
白石 佳和
出版者
言語文化教育研究学会:ALCE
雑誌
言語文化教育研究 (ISSN:21889600)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.220-238, 2021-12-24 (Released:2022-02-14)
参考文献数
50

現在,俳句や連句を用いた言語教育実践が国内外でおこなわれているが,その実践を支える文学理論の検討が十分になされていない。本論文では,和歌に始まる座の文学の歴史を整理しつつ,座の文学とは西洋の「文学」概念と異なり文学「する」こと,文学活動そのものであるという理論・日本独自の文学のあり様を検討する。まず,座の文学の性格を,対話性,当座性,帰属性,民衆性の4点にまとめた。それを踏まえて座の文学の教育的側面に注目し,俳句・連句教育における最も重要な活動が対話の場である句会であることを示す。その上で,文学活動と教育活動を合わせ,越境して拡がる座の文学を「活動型文学」と呼ぶことを提案する。活動型文学は人と対話しことばでつながる文学活動である。特に,座の文学の典型である「連句」は,ダイナミック・アセスメントや協働学習,多文化共生を志向した活動として期待できる。本論文により,文学作品を対象とした言語文化教育ではなく,文学活動それ自体を言語文化教育とする「活動型文学」という新たな視点を提案する。
著者
白水 大吾
出版者
北海道大学大学院文学院
雑誌
研究論集 (ISSN:24352799)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.1-16, 2019-12-20

現代美学にとってカントの『判断力批判』が今もって最も重要な参照点の一つである理由は,そこで展開されている美的判断の分析が先鋭的であることによる。本稿では,私たちが美的判断を行うために欠かすことのできない能力である反省的判断力の分析を,『判断力批判』のテキストに基づいて行う。本稿は6節からなる。第1節と第2節ではカントの美的判断の分析について,よく知られている4つの特徴を紹介する。第3節では,『判断力批判』における最も重要な箇所の一つである「有機体論」について,それが本稿で主題的に扱われない理由を述べる。第4節では,反省的判断力を論じるに先立ち,判断力一般について規定する。第5節では,カントが「反省的判断力のアンチノミー」と呼ぶ問題を提示する。このアンチノミーを適切に解釈できるかどうかが,反省的判断力の解釈が妥当であるかどうかの一つの基準となりうる。最後に第6節では,まず反省的判断力がどのような能力であるかということを提示したあとで,反省的判断力のアンチノミーの再解釈を通じてこの理解が適当であることを示す。そして,反省的判断力の理解を得ることによって,美的判断についても一つの妥当な見解を得ることができるということを主張する。
著者
白髪 宏司
出版者
一般社団法人 日本小児腎臓病学会
雑誌
日本小児腎臓病学会雑誌 (ISSN:09152245)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.129-133, 2015 (Released:2015-11-15)
参考文献数
4

要旨: 血液ガスの新しい分析方法を考案しそれについて述べた。その方法は,ペア解析法に基づく7 アクション法からなる。ペアとなる因子は血清Na とCl,血清K とpH,pHとpCO2,pCO2 とHCO3−,そしてアニオンギャップ計算に用いる因子である。7 アクション法をどのように進めるかについて詳細に述べた。ことに,血清(Na-Cl)値から酸塩基平衡異常の一部の病態が推測できる事実を強調した
著者
林 良雄 今野 翔 ⼩林 清孝 神⾕ 亘 千⽥ 俊哉 千⽥ 美紀 ⼩島 正樹 ⽩坂 善之
雑誌
日本薬学会第141年会(広島)
巻号頁・発行日
2021-02-01

2019年末に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、パンデミックを引き起こし、世界中に感染が拡大している。この克服には、原因ウイルスであるSARS-CoV-2を標的とする治療薬の開発が不可欠である。ウイルスプロテアーゼ阻害剤は、エイズやC型肝炎の特効薬となっているが、SARS-CoV-2も感染細胞でのウイルス複製に不可欠な3CLプロテアーゼ(3CL-ProまたはM-Pro)を有している。したがって、当該酵素を標的とする選択的阻害剤は、明確な作用機序に基づいたCOVID-19治療薬の候補になると思われる。 我々は、 2002年のSARSの発生を機にSARS-CoVが有する3CL-Proの阻害剤開発を進めてきた。1-6 その結果、 アリールケトン型阻害剤4-Methoxyindole-2-carbonyl-Leu-Ala((S)-2-oxopyrrolidin-3-yl)-2-benzothiazole(YH-53、 Ki = 6 nM against SARS-CoV 3CL-Pro)の創製に至った。本阻害剤は、当該システインプロテアーゼの活性中心にあるSH基に対して、アリールケトン部が可逆的な化学反応を起こし、強力な競合型阻害を示す。 SARS-CoVとSARS-CoV-2における3CL-Proのアミノ酸配列相同性が非常に高いことから、我々はSARS-CoV-2に対するYH-53の効果を現在検討している。最新のデータではYH-53はSARS-CoV-2の3CL-Proに対し、強力な酵素阻害活性を示す。更に細胞ベースの抗ウイルス評価においてSARS-CoV-2の感染を良好に抑制することを確認した。シンポジウムではYH-53の開発経緯と共に評価結果を報告したい。References: 1) Sydnes, O. M., Kiso, Y., et al., Tetrahedron, 2006, 62, 8601-8609. 2) Regnier, T., Kiso, Y., et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 2009, 19, 2722-2727. 3) Konno, S., Hayashi, Y., et al., Bioorg. Med. Chem., 2013, 21, 412-424. 4) Thanigaimalai, P., Hayashi, Y., et al., Eur. J. Med. Chem., 2013, 65, 436-447. 5) Thanigaimalai, P., Hayashi, Y., et al., Eur. J. Med. Chem., 2013, 68, 372-384. 6) Thanigaimalai, P., et al., J. Med. Chem., 2016, 59, 6595-6628 (総説).
著者
本間 裕大 白濱 篤
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.475-481, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
24
被引用文献数
1

人や物,情報によってなされる地域間交流は,社会活動の特徴を把握するための重要情報である.それらは空間的に離れた地域間で生じるが,その交流はいくつかの圏域に分割されている場合も多い.このような交流圏域の存在は,同一圏域に属する地域間交流を活発にし,また,異なる圏域に属する地域間交流を阻害する要因となり得る.この交流圏域と地域間流動データとの因果関係を逆に捉えると,地域間流動データから暗黙的な交流圏域を推定することも可能と思われる.そこで本研究では,人口移動や物流の地域間流動データから,その交流圏域を数理最適化手法によって推定することを試みる.交流圏域同士の重なりを明示的に考慮することによって,社会的変化と交流圏域の空間的特徴との関係を考察する.本研究の特色としては,主に以下の3点が挙げられる;(i) 同一圏域内における交流のみならず圏域を隔てた交流にも着目していること,(ii) 交流圏域同士の多層的重なりを明示的に考慮していること,(iii) それらを汎用数理最適化ソルバで求解できるよう定式化していること.
著者
白石 雅紀
出版者
学校法人 三幸学園 東京未来大学
雑誌
東京未来大学研究紀要 (ISSN:18825273)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.181-189, 2017

<p> 本論文は保育者不足の現状を踏まえ、保育者養成校における実習が就職に影響を与える要因を探り、就職に結びつくより良い実習の在り方を考察することを目的としている。上記の目的のため、A短大の学生10名に対して、実習経過毎に半構造化面接を行い、修正版グラウンデッドセオリーアプローチにて面接内容の分析を行った。分析結果として、「実習を通じて培われる実習生自身の技術・自信」「実習先で出会う保育者」が実習を通して就職に影響を与える要因であると判明した。この結果を踏まえ、結論として保育者として就職に結びつくより良い実習の在り方のポイントとして「実習で学生が保育者としてより成長できるような大学における講義や指導」「実習園における保育者の立ち振る舞い」の2点を挙げている。</p>

3 0 0 0 OA 雀の生活

著者
北原白秋 著
出版者
新潮社
巻号頁・発行日
1920
著者
金森 悟 坂本 宣明 白田 千佳子 海野 賀央 江口 泰正 山下 奈々 北島 文子 厚美 直孝 小林 宏明 高家 望 福田 洋
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.79-86, 2021-02-28 (Released:2021-03-10)
参考文献数
6

目的:筆者らは,多職種産業保健スタッフの研究会にて「コロナは世界・健康教育・ヘルスプロモーションをどう変えたのか?」というテーマで夏季セミナーを開催した.本報告ではセミナーの開催概要を紹介するとともに,参加者によるセミナーの評価について報告する.方法:2020年9月13日に多職種産業保健スタッフの研究会のコーディネーター12名がセミナーを開催した.参加形態はZoomを用いたオンライン形式とした.全体の構成は第I部に基調講演,第II部は産業保健の現場からの話題提供,第III部は「オンラインの対面型コミュニケーションツールで可能になったことや新たな使い方」についてのグループワークとした.セミナーの評価を行うため,参加者を対象にGoogle formを用いた質問票調査を実施した.結果:参加者は71名,調査への回答者は52名(73.2%)であった.回答者のうち女性が69.2%,年代では40代が34.6%,職業では看護職が53.8%であった.各部について参考になったという者は80.8~96.2%であった.学んだことを今後に活用していこうと思う者は94.2%,全体について満足であった者は96.2%であった.結論:本セミナーでは,新型コロナウイルス流行下での健康教育やヘルスプロモーションの意義や事例,可能性が議論された.参加者のほとんどがセミナーに満足し,本セミナーの開催は意義があった.
著者
白岩 洋子
出版者
一般社団法人 日本画像学会
雑誌
日本画像学会誌 (ISSN:13444425)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.284-289, 2014-08-10 (Released:2014-08-13)
参考文献数
16
被引用文献数
1

写真の修復技術はあいにく国内ではまだ馴染みが薄くほとんど知られていない.しかしデジタル媒体が主流になりつつある現在においても,過去から現在の「もの」としての写真を保存する上で重要な役割を担っている.昨今,写真の歴史的価値がますます注目され,写真作品が収集の対象となっている中,この分野に関する理解と発展の必要性を強く感じている.写真は制作,保存,展示のそれぞれの工程で劣化が起こるため,損傷や劣化の促進を防ぐための適切な対策が重要である.またそのような予防対策だけではなく,損傷を治療する修復,修理も必要な場合がある.ここでは,修復に対するアプローチ,修復工程や処置を紹介すると共に,2011年に起こった東日本大震災によって被災した写真の救済について,筆者の経験を解説する.
著者
小泉 準三 白石 博康 宮本 真理 松本 好正
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.255-261, 1981-06-01 (Released:2017-08-01)

A 24-yearold male was admitted to our hospital with his complaints of severe polydipsia, polyuria and headache. The total volume of urine reached up to nearly 15 liters per day. He showed nausea, vomiting, aggravation of headache and polydipsia by psychic stress during his hospitalization. No remarkable organic changes were observed in the laboratory data and other examinations. Being given a water deprivation test, he was diagnosed as psychogenic polydipsia. Psychological and environmental factors were considered to be related to the development of the disorder. He received supportive psychotherapy as well as drug treatment with no marked improvement. When the intake of water was restricted to the volume of 2 liters per day by using a scaled polyethylene vessel, the patient made a rapid recovery.
著者
園生 智弘 白川 透 藤森 遼 島田 敦 奈良場 啓 高橋 雄治 橋本 英樹 中村 謙介
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.151-155, 2020-06-30 (Released:2020-06-30)
参考文献数
16

目的:救急外来(ER)における患者動態の把握は,業務の評価および患者予後改善の観点から重要であるが,測定が困難である。本研究では,システムログを用いてER混雑度と患者待ち時間の定量化を行った。対象:2019年6月1日〜2019年6月30日に当院ERをwalk-in受診した患者を対象とした。ERシステムNext Stage ERの記録を解析することで,ERにおける待ち時間およびER滞在時間・滞在人数を算出した。結果:観察期間中のwalk-in受診患者857名のうちトリアージ時間のデータのある者691名を解析対象とした。トリアージ待ち時間の中央値は10分36秒であった。急なwalk-in患者の増加に対して,待ち時間の延長を認めた。結語:日常診療において自動的に収集されるシステムログを活用することで,ERの業務評価,および診療の質評価と改善につながる可能性が示唆された。