著者
安藤 哲 河合 岳志 松岡 可苗
出版者
日本農薬学会
雑誌
Journal of pesticide science = 日本農薬学会誌 (ISSN:1348589X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.17-20, 2008-02-20
参考文献数
18
被引用文献数
1 23

蛾類昆虫の分泌する性フェロモンは,ボンビコールのような末端官能基を有するタイプIの化合物群(直鎖の炭素数: C_<10>〜C_<18>)と,末端官能基を含まない不飽和炭化水素およびそのエポキシ化物からなるタイプIIの化合物群(直鎖の炭素数: C_<17>〜C_<23>)に大別される.昆虫の種の多様性を反映しフェロモン成分も多様であり,それは生合成の原料ならびに関与する酵素系の違いに起因する.ボンビコールの生合成研究を踏まえ,シャクガ類が生産するタイプIIの性フェロモンの生合成,ならびに頭部食道下神経節から分泌されるホルモン(性フェロモン生合成活性化神経ペプチド,PBAN)による生合成の制御機構に関して追究した.その結果,エポキシアルケニル性フェロモンの前駆体(トリエン)はフェロモン腺では生産されず,またPBANはフェロモン腺が体液中に存在する前駆体を取込む過程を活性化することが判明し,タイプIの性フェロモンでの知見とはかなり異なることがわかった.さらに,PBANをコードするcDNAを同定し,シャクガのPBANは構造もユニークであることを明らかにした.
著者
高寺 政行 大谷 毅 森川 英明 乾 滋 南澤 孝太 佐藤 哲也 鋤柄 佐千子 大塚 美智子 金 キョンオク 宮武 恵子 松村 嘉之 鈴木 明 韓 載香 柳田 佳子 古川 貴雄 石川 智治 西松 豊典 矢野 海児 松本 陽一 徃住 彰文 濱田 州博 上條 正義 金井 博幸 坂口 明男 森川 陽 池田 和子 鈴木 美和子 北折 貴子 鄭 永娥 藤本 隆宏 正田 康博 山村 貴敬 高橋 正人 中嶋 正之 太田 健一 堀場 洋輔
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2012-05-31

我が国ファッション事業の国際化に寄与する研究を目指し,国際ファッション市場に対応する繊維工学的課題の解決,国際ファッション市場に通用するTPS/テキスタイル提案システムの構築を行った.国際市場に実績ある事業者を対象とし,現場の調査,衣服製作実験,商品の評価を行い我が国との比較を行った.欧州・中国と日本における衣服・テキスタイル設計,評価および事業の違いを明らかにし,事業と技術の課題を明らかにした.デザイナーのテキスタイル選択要件を調査し,テキスタイルの分類法,感性評価値を組み込みTPSを構築した.日欧で評価実験を行い有効性を確認した.また,衣服・テキスタイル設計評価支援の技術的知見を得た.
著者
安藤 哲生 川島 光弘
出版者
立命館大学
雑誌
社会システム研究 (ISSN:13451901)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-22, 1999-03-31

本稿は立命館大学BKC社系研究機構が,福岡県国際技術取引推進協議会からの研究委託に基づき,日中間技術取引促進の前提となる諸条件を解明しようとしたものである.中国の科学技術,技術移転を取り巻く動向を見ると,自主開発については公的R&D機構中心のR&D体制から企業中心へと改革中であり,一定の変化が認められる.技術導入については年々拡大する傾向にあるものの,プラント・設備偏重導入,重複導入,弱い自主開発との結合などの問題点を抱えている.技術導入に関わる法令は,いくつかの論争点が含まれており,技術導入の認可プロセスは複雑で注意が必要である.技術導入の意思決定,交渉,技術使用の各局面で主体が異なるという従来の問題はほぼ解消され,企業が各局面で主体性を有していると言える.技術取引市場一般について見ると,技術取引は一般商取引とは異なる特徴を有し,技術情報が取引対象になるには,導入側は対象技術の技術的・経済的有用性などを,供与側は対価獲得の有利性などを認識し,双方によって取引の必要性が認識されなければならない.このような技術取引を規定する諸条件のもと,96年より新たな技術取引形態として日中テクノマート(技術商談会)が試みられている.'98日中テクノマートで双方の参加企業にアンケート・ヒヤリング調査が行われた.その分析の結果からは,事前情報交換の促進,商談・説明に対する考え方の相互理解,多数の「合作」希望への対応など幾つかの課題が見いだされた.とりわけ中国の場合,資本不足から技術取引に限定した形態が難しいという点は,今後の日中技術移転促進にとって最大の課題であると言えよう.
著者
山川 博美 伊藤 哲 中尾 登志雄
出版者
日本生態学会暫定事務局
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.219-228, 2013
参考文献数
39
被引用文献数
3

伐採後の森林再生に及ぼす散布種子(伐採後に新たに散布される種子)の効果を明らかにするため、照葉樹二次林に隣接する伐採地において、伐採直後から6年間の種子の散布範囲および種子数をシードトラップによって調査した。伐採地へ散布された種子数は、隣接する照葉樹二次林およびスギ人工林と比較して明らかに少なかった。種子散布様式で比較すると、風散布型種子は伐採地に限らず隣接する照葉樹二次林およびスギ人工林でも少なかった。伐採地において重力散布型種子は林縁でのみで散布され、林縁から10m以上離れた地点ではほとんど散布されていなかった。被食散布型の種子は伐採地での散布が確認されたが、照葉樹林の林冠を構成する高木性木本種は少なく、多くは低木性木本種で、その6割以上をヒサカキおよびイヌビワの2種で占めていた。しかしながら、伐採地において、被食散布型の種子は伐採からの時間経過に伴って、散布される種子数および種数が増加する傾向がみられた。さらに、種子の散布範囲も伐採から3年目程度までは林縁から15m付近までの木本種が多かったが、伐採5年目以降は林縁から35m地点まで種子が散布されるようになり、種子の散布範囲が広がっていた。以上の結果から、暖温帯における散布種子による更新は、風散布型木本種がほとんどなく、重力散布型および被食散布型の木本種が主となる。そのなかで、伐採後の森林の再生を短期的な視点で捉えると、重力散布種子の散布は林縁周辺に限定され、被食散布型種子も伐採直後に伐採地内に散布される種子数は少ないことから、散布種子による更新は非常に難しいと考えられる。しかしながら、長期的な視点で捉えると、伐採からの時間経過とともに伐採地への散布種子数および種数の増加していることから、被食散布型種子による更新が可能となるかもしれない。ただし、本研究は母樹源となる照葉樹林が隣接する伐採地であることを考慮すると、特に辺り一面に人工林が卓越するような森林景観では、過度な期待は避け方が無難であろう。また、伐採後の更新において萌芽などの前生樹のみの更新では更新する樹木が伐採前の前生樹の分布や萌芽力に依存し種組成が単純化する恐れがあるため、伐採後に散布される種子は、長い時間スケールのなかで多様性を高めるための材料として重要であると考えられる。
著者
松岡 育弘 内藤 哲義 山田 碩道
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.51, no.9, pp.759-765, 2002-09-05
被引用文献数
1 7

数多くの溶媒について水を飽和した状態で,溶媒のアクセプタ性を示す E_T値と水の溶解度を測定した.水の溶解度は,カールフィッシャー法により電量滴定で測定した.用いた溶媒は,7 種類のアルカン,3 種類の芳香族溶媒,3 種類の塩素化炭化水素,4 種類のエステル,6 種類のケトンと5 種類のアルコールである.各溶媒のE_T値は 1,2- ジクロロエタンを除いて対応する水の溶解度とかなりよい直線関係が成立することが分かった.これらの溶媒の中でデカン酸による銅 (II) イオンの抽出に関して研究してきた溶媒に対して,水の溶解度とこれらの抽出系に含まれる種々の平衡定数との間にかなりよい直線関係があることを示した.このことは,これらの抽出平衡が水和の影響を受けていることを示唆している.本研究で用いた溶媒への水の溶解度は 2.36×10^-3から 4.74 mol dm^-3であり,E_T値と比べて広い範囲にわたっている.このことは,有機溶媒への水の溶解度は,溶媒抽出における溶媒効果を研究する際,有機溶媒の性質を示す高感度な尺度として有用となることを期待させる.
著者
岡村 靖 北島 正大 荒川 公秀 立山 浩道 永川 正敏 後藤 哲也 倉野 彰比古 中村 正彦 丸木 陽子
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.91-102, 1979-03-01

人間の寿命は70年±10年であり, 無限の空間と久遠の宇宙実存において思惟するならば, 人間の一生は瞬時の生命に過ぎない。しかし, その間, 先天的な素因, および, 環境要因に加えて, 感情や意志, すなわち, 人間の大脳皮質, とくに, 新皮質の神経細胞の機能が, 側体のhomeostasisを司る内分泌一自律神経系に種々の影響を及ぼして疾病が発生し, また, 多様な予後を示すので, 心身相関の問題は, 疾病の発生, 経過, および, 治癒の上に極めて重要である。したがって, 疾患の発生機序について, 心理学, 内分泌学, ならびに, 自律神経学の3方面から, 系統的な研究, ならびに, 考察を行い, 疾患のとらえ方に新しい概念を導入した。そして, この概念に基づいて疾患の診断と治療を行なう意義の重要性を提起した。その具体例として, 内分泌疾患, 自律神経失調症, および, 分娩における, 心身の環境因子と精神-自律神経-内分泌系との関連について研究を行った成績を述べた。(1979年1月16日 受付)
著者
戸部 暢 加藤 哲治
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集
巻号頁・発行日
vol.1996, no.547, pp.75-86, 1996

本研究は, 厚い凍土壁を地下水が貫流している場合の凍結閉塞現象を論じたもので, 平板状の開口部内の凍土の成長を表わす計算式を新しく導出した. また, この場合の凍土壁の閉塞条件を明示し, 凍結閉塞しない場合には, 通常, 2個の平衡凍土面が存在することを示した. 実施工への応用として, 本研究の理論を適用したものを例示した.
著者
神山 恭平 遠藤 哲郎 小室 元政
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.250, pp.145-150, 2014-10-09

我々は,これまでの研究において離散力学系(マップ)と連続力学系(フロー)の準周期解(正確にはマップの1-トーラスとフローの2-トーラス)について,その局所分岐の位置と型が分岐の直前におけるDominant Lyapunov Exponent (DLE)とDominant Lyapunov Bundle (DLB)によって知ることができることを明らかにした.すなわち, DLEが零になる点で分岐がおこり,その分岐の型はDLBをみることによってあきらかとなる.すなわち,マップの1-トーラスの場合はDLBにはA^+,A^-,M,Fと4つの型がある.フローの2-トーラスのDLBはマップの1-トーラスの2つのDLBの組み合わせであらわされるが,このうち,基本的にA^+×A^+(サドル・ノード分岐), A^-×M(被覆度倍分岐, M×A^-とM×Mは同じ分岐である), F×F(ネイマルク・サッカー分岐)の3種類の分岐しか存在しないことを明らかにした.被覆度倍分岐においてはポアンカレ断面の取り方によって被覆度倍分岐と周期倍分岐両方がみられる.本研究では,位相同期回路において被覆度倍分岐がおこることを示す.
著者
藤原 澄人 稲葉 直彦 関川 宗久 藤本 憲市 吉永 哲哉 遠藤 哲郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.112, no.487, pp.77-80, 2013-03-07

本研究では,delayed logistic写像の結合系を解析し,2-トーラスと3-トーラスの境界について調べた.2-トーラスと3-トーラスの境界については,リミットサイクルの2度のネイマルクサッカー分岐によって生じるという仮説があった.その仮説は多くの研究者を惑わせるシナリオであったに違いない.しかしながら,1世代前の計算機の計算機速度ではそのシナリオの可否を十分に検証することは難しかった.本研究では,3-トーラスを発生するdelayed logistic写像の結合系をリアプノフ解析することにより,その仮説が成り立たないことを明らかにする.
著者
関川 宗久 藤原 澄人 稲葉 直彦 遠藤 哲郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.113, no.15, pp.29-33, 2013-04-18

本研究では,delayed logistic写像の結合系を解析し,ICCと不変トーラスの関係を数値実験によって調べた.リアプノフ解析により,不変トーラスの発生パラメータ領域を調べたところ,縦横無尽に走るICC-アーノルドタングが観察された.同図において,準周期ネイマルク・サッカー分岐および準周期サドルノード分岐の発生を確認した.さらに,アーノルドタングがネイマルク・サッカー分岐によってICC-アーノルドタングに遷移するという極めて興味深い分岐構造を見出した.
著者
関川 宗久 稲葉 直彦 遠藤 哲郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NLP, 非線形問題 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.250, pp.129-132, 2014-10-09

本研究では, delayed logistic写像の2個の結合系である離散時間力学系を解析する.単体のdelayed logistic写像は不変1次元トーラス(invariant one-torus: IT_1)を発生するため, 2個のdelayed logistic写像の結合系は不変2次元トーラス(invariant two-torus: IT_2)を発生しうる. IT_2を発生する力学系では, IT_2を発生するパラメータ領域内部でIT_1を発生する部分同期引込領域(IT_1-Arno1'd tongues)が縦横無尽に交錯する.このような蜘蛛の巣状のIT_1部分同期引き込み領域はArnol'd resonance webと呼ばれている. 2つのIT_1-Arnol'd tonguesの交点ではChenciner bubblesと呼ばれる完全同期引き込み現象が生じ,周期解が発生する.本研究では,このChenciner bubblesの分岐構造を解析し,この同期引き込み領域がサドル・ノード分岐とネイマルク・サッカー分岐によって囲まれていることを明らかにする.