著者
富森 一馬 合田 祥悟 松本 悠 金城 綾美 丸藤 哲 瀧 健治
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.541-546, 2021-08-31 (Released:2021-08-31)
参考文献数
16

目的:救急搬送されたカフェイン中毒患者を調査し,診療に役立てることを目的とした。方法:患者の年齢,性別,服用内容,服用目的,推定内服量,症状,検査所見,治療内容,転帰を診療録で後方視的に検討した。結果:調査期間中に13症例が搬送され,中毒原因は市販の眠気防止薬が11例と大半を占め,自殺企図が11例,推定摂取量は8g(中央値)である。推定摂取量と搬入時臨床症状,重症度,検査所見(血圧,脈拍数,呼吸数,体温,K値,乳酸値)の間に関連を認めず,搬入時検査所見は重症度で差を認めなかった。多くは軽症で経過観察で寛解したが,カフェイン半減期を過ぎた遅発性に痙攣と心室細動に至った症例を各々1例認め,人工呼吸,血液透析,経皮的心肺補助装置を使用した。転帰は全員軽快退院した。結論:カフェイン中毒患者の多くは軽症であるが,推定摂取量および搬入時検査所見から重症度を予測できず,遅発性に重篤化する症例もあり注意が必要である。
著者
伊藤 哲哉 中島 葉子
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.57-61, 2020 (Released:2020-05-15)
参考文献数
4

薬剤性L‐カルニチン欠乏症は医原性に生じる二次性L‐カルニチン欠乏症の一種である. 原因となる薬剤としては, 抗てんかん薬, 抗菌薬, 抗がん剤, 局所麻酔剤, イオンチャンネル阻害剤, AIDS治療剤, 安息香酸ナトリウムなどの報告があるが, 長期投与を必要とする抗てんかん薬や, カルニチン欠乏のリスクが高い乳幼児期に投与される薬剤には特に注意が必要である. バルプロ酸ナトリウムの副作用として肝障害や高アンモニア血症が知られているが, これらはカルニチン欠乏やカルニチン代謝の異常が大きく関与すると考えられており, L‐カルニチン投与を行うこともある. また, ピボキシル基含有抗菌薬では腸管からの吸収後に生じるピバリン酸がL‐カルニチンと結合して尿中へ排泄されるためL‐カルニチン欠乏を生じる. 副作用として, L‐カルニチン欠乏からくる低血糖, 意識障害, 痙攣などの重篤な症状が報告されているが, これらの副作用は長期投与ばかりでなく短期間の服用でも認める例があるため, 抗菌薬投与の必要性やその選択について十分吟味したうえで適正に使用することが重要である.
著者
瀧口 述弘 高松 昇三 佐藤 哲也 雉子牟田 美香 庄本 康治
出版者
Japanese Society for Electrophysical Agents in Physical Therapy
雑誌
物理療法科学 (ISSN:21889805)
巻号頁・発行日
pp.21-21, (Released:2023-01-30)

背景:慢性腰痛患者には運動療法を実施すべきと報告されているが,運動時痛により運動が十分に行えていない患者が多い.経皮的電気刺激(Transcutaneous Electrical Nerve Stimulation)は,慢性腰痛患者にも実施されているが,運動時痛に対する効果を検証した報告は少ない.また,TENSは周波数により鎮痛機序が異なるが,腰部運動時痛に対する最適な周波数も明らかではない.本研究の目的として,腰部運動時痛に対するTENSの効果と最適な周波数を明らかにすることとした.試験デザイン:ランダム化比較試験.方法:対象は慢性腰痛患者80名であり,高頻度TENS群(100 Hz),変調TENS群(10-100 Hz),プラセボTENS群にランダムに割付け,TENS実施前,実施直後,30分後に運動時痛評価と運動機能評価を行った.TENSは30分後の評価終了まで実施した.結果:変調TENS群はプラセボTENS群よりも運動時痛が有意に低下したが,運動機能は向上しなかった.結論:変調TENSは慢性腰痛患者の運動時痛を低下させる.
著者
中川 裕太 笠松 悠 福岡 里紗 森田 諒 山根 和彦 小西 啓司 麻岡 大裕 中河 秀憲 白野 倫徳 天羽 清子 外川 正生 後藤 哲志
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.94, no.6, pp.814-820, 2020-11-20 (Released:2021-06-10)
参考文献数
11

大阪市立総合医療センターに入院したCOVID-19関連肺炎13例において,再検例を含むのべ20件の胸部CT画像について検討した.全例で胸膜直下の病変とground-glass opacity(GGO)を認めたが,胸水,心嚢水,縦隔・肺門部リンパ節腫脹,空洞形成は認めなかった.また,酸素投与を要した3例は下葉のvolume loss とともに胸膜直下の病変と結合する気管支血管束の病変が認められた.発症時期から画像所見を分類するとGGOは発症早期(10日未満)に多く認められ,crazy-paving pattern,consolidation,背側のconsolidation の帯状の融合像は発症後期(10日以降)に多く認められた.鑑別疾患としてはインフルエンザなどによるウイルス性肺炎と器質化肺炎が重要と考えられた.詳細な問診による発症からの期間と胸部CT画像の特徴的な所見や経時的変化を合わせて理解することで,COVID-19の事前確率を適切に評価し,診断と治療および感染対策につなげることが重要である.
著者
原口 浩一 遠藤 哲也 阪田 正勝 増田 義人 Mark SIMMONDS
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.287-296, 2000-08-25 (Released:2008-01-11)
参考文献数
25
被引用文献数
17 27

1999年, 全国6都市で販売されていた鯨肉製品61点について, 重金属 (水銀, カドミウム, 鉛) 及び有機塩素系化合物 (PCBs, DDTs, HCHs, HCB, dieldrin) の汚染実態調査を行った. ハクジラの赤身肉では水銀汚染が, ハクジラ及び北太平洋産ミンククジラの脂身にはPCB及び有機塩素系農薬の汚染が顕著にみられた. 鯨肉の多食によってこれらの汚染物質の摂取許容量を超えることも考えられるので, 食品としての安全性を再検討する必要がある.
著者
後藤 龍太郎 邉見 由美 Jonel Mangente Corral 塩﨑 祐斗 加藤 哲哉 伊谷 行
出版者
日本ベントス学会
雑誌
日本ベントス学会誌 (ISSN:1345112X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.79-82, 2018-03-31 (Released:2018-04-19)
参考文献数
21
被引用文献数
2

Ikedosoma elegans (Ikeda, 1904) (Annelida: Echiura: Thalassematidae) is a rare, large deep-burrowing spoon worm that has been observed only in Japan. This species was first described based on the specimens collected from Misaki, Sagami Bay (Kanagawa Prefecture), eastern Japan, in 1902. Since the first description, this species has not been collected until the recent studies, which reported that I. elegans was collected from Hamana Lake (Shizuoka Prefecture), Boso Peninsula (Chiba Prefecture), and probably Amakusa, Ariake Sea (Kumamoto Prefecture). Furthermore, the specimen collected from Takasu, Seto Inland Sea (Okayama Prefecture) in 1975 was identified to be I. elegans. In this study, we present a new locality of this species in Japan. We collected a large individual of I. elegans with a probably commensal scale worm (Polynoidae: Polynoinae) by using a yabby pump in a mud flat in the Doki River Estuary, which is facing the Seto Inland Sea, in Marugame (Kagawa Prefecture), northern Shikoku Island. To the best of our knowledge, the present study is the first record of I. elegans from Shikoku Island and the second record from the Seto Inland Sea, following a 42-year-old record from Takasu, Okayama.
著者
加藤 良平 近藤 哲夫 中澤 匡男 大石 直輝
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

20歳以下の若年甲状腺乳頭癌 (P-PTC) 81例と21歳以上の成人甲状腺乳頭癌 (A-PTC) 83例について、臨床病理学的に比較検討するとともに、BRAFV600E突然変異とTERT promoter突然変異を解析した。その結果、P-PTCはA-PTCよりも、腫瘍径が大きく、リンパ節転移率が高いことがわかった。一方、BRAFV600E突然変異率は、P-PTCは37%で、A-PTCの82%よりも低く、TERT promoter突然変異はA-PTCでは13%が陽性を示したが、P-PTCでは全例陰性となった。以上より、若年甲状腺癌はその臨床像とともに遺伝子背景も成人とは異なることが示唆された。
著者
石川 立 加藤 哲平 加藤 哲平
出版者
同志社大学
雑誌
基督教研究 (ISSN:03873080)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.51-70, 2010-07

資料(Material)本稿は平成22年度科学研究費補助金ならびに日本学術振興会特別研究員研究奨励金による研究成果の一部である(加藤哲平)。
著者
森嶋 彌重 伊藤 哲夫 古賀 妙子 近藤 宗平
出版者
近畿大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

チェルノブイリ原発事故が発災災生し、3年を経過した。日本本土のほぼ中央に位置する琵琶湖生態圏における放射性核種の動向および経時変化について観察した。(1)琵琶湖水については、表層水1m^3を採取し、検出された放射性核種は半年後以降Cs-137のみとなり、ほぼ1/10以下で平衡行状態を示し、現在は事故以前の濃度0.2mBq/1に減少した。(2)湖泥のCs-137の深度分布は表層土より10〜20cmで最高値を示し、その濃度は粘土成分の多い所で高く、場所により2倍の変動を示した。このCs-137は、チェルノブイリ原発事故以前の放射性降下物による影響が大きいと思われる。これはチェルノブイリ事故の降下物中のCs-134/Cs-137比が1/2であるが、Cs-134の沈着が少ないことより推測される。(3)琵琶湖に生育している生物には、3年後でもCs-137が検出され、その濃度はブラックバスの肉部で0.5Bq/kgとなり、半年後の最高値2.0Bq/kgに比べ、約25%と経時的に減少している。(4)水草中のCs-137濃度は、夏に低く、冬に高い傾向を示しながら徐々に減少していく。これは冬季は枯れて芽体で越冬し、夏には生長して生物学的希釈を生じるものと思われる。(5)湖水中のCs-137濃度に対する生物中の濃度比を濃縮係数とすると、ブラックバス、モロコ、ブル-ギルは1000〜4000コイ、フナは200〜1000、貝は100〜170と低かった。原発事故などにより放出される核分裂生成物の生態圏への影響を知る上で指標生物としては濃縮係数の大きい生物が望まれるが、ブラックバスなどが有効であると思われる。
著者
早川 峰司 丸藤 哲
出版者
日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.278-280, 2009-06

各種出血に対して止血は重要な処置である.動脈性の出血に対しては外科的な処置で対応することが基本となるが,oozing様の出血に対しては血管強化薬や局所止血薬が使用されることがある.以下に血管強化薬と局所止血薬の特徴を概説する.
著者
菅野 幸恵 北上田 源 実川 悠太 伊藤 哲司 やまだ ようこ
出版者
日本質的心理学会
雑誌
質的心理学研究 (ISSN:24357065)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.6-24, 2009 (Released:2020-07-07)

本論文は,奈良女子大学で行われた日本質的心理学会第 4 回大会におけるシンポジウムの内容を収録したものである。北上田氏は,沖縄での平和ガイドの実践経験から,非体験者が過去の出来事とどのように出会うのかという体験の創出を重視した,伝えながら共に学ぶガイドのあり方について述べた。実川氏は,水俣展を開催した経験から,自由に足を運びやすい展覧会という場の可能性,聞く側の準備の必要性について述べた。ふたりの話題提供に対して,質的心理学の立場から,伊藤哲司氏,やまだようこ氏がコメントを行った。伊藤氏はベトナムやタイでのフィールドワークの経験から,あえて語らないことの意味についてコメントした。やまだ氏はナラティヴの立場から,2 氏の実践のあり方と語り手と聞き手の関係をむすぶメディエーターの役割を重視した協働の学びのトライアングルモデルとの関連について述べた。最後に,“語り継ぐ”ことについて,双方向性,メディエーターを通した個別の体験のむすび,語らないことの意味から考察した。
著者
野宮 治人 山川 博美 重永 英年 伊藤 哲 平田 令子 園田 清隆
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.101, no.4, pp.139-144, 2019-08-01 (Released:2019-10-24)
参考文献数
25
被引用文献数
4

シカ食害を潜在的に受けやすい高さの範囲と,それに与える斜面傾斜の影響を明らかにする目的で,苗高160 cmを超えるスギ大苗を植栽して1年間のシカによる枝葉採食の痕跡(食害痕)の高さを測定し,スギ植栽位置の斜面傾斜を5゜間隔で区分して比較した。斜面傾斜が急なほど食害率は低く食害痕数は少なくなる傾向がみられた。斜面傾斜が5゜以下の平坦地では高さ75~110 cmの範囲に食害痕の67.4%が集中し,食害高の中央値は96 cmであった。食害高は斜面傾斜が15゜を超えると高くなり始め,35゜を超えると食害高は平坦地に比べて40 cm以上高くなった。また,30゜を超える急傾斜地の食害痕は81~100%が樹冠の斜面上側に分布していた。以上の結果から,斜面傾斜の影響がない状態で食害痕が集中した1 m前後(75~110 cm)の高さは食害リスクが潜在的に高く,スギ樹高がこの高さより低い場合には主軸先端が最も食害を受けやすいと示唆された。スギ大苗の主軸先端への食害を回避するためには,緩傾斜地では110 cm以上の大苗,斜面傾斜が35゜を超えると少なくとも140 cm以上の大苗が必要だといえる。
著者
稲垣 昌代 山西 弘城 若林 源一郎 芳原 新也 伊藤 哲夫 白坂 憲章 種坂 英次 古川 道郎
出版者
一般社団法人 スマートプロセス学会 (旧高温学会)
雑誌
スマートプロセス学会誌 (ISSN:2186702X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.6, pp.275-279, 2015-11-20 (Released:2016-08-31)
参考文献数
8
被引用文献数
1

Large amount of radioactive cesium was emitted from the TEPCO Fukushima Dai-ichi nuclear power plant by the accident into atmospheric air, and a part of the radioactivity was brought to the ground by rain and snowfall. The Yamakiya district in Kawamata-machi, Fukushima is specified as the prepared evacuation zone. The authors collected wild mushrooms in this district as samples in 2012, 2013 and 2014. The concentration of radioactive cesium was measured by means of the hyperpure germanium semiconductor detector. The concentrations were ranged from 35 to 600,000 Bq/kg, and were different with points of sampling and kinds. The transfer coefficient of radioactive cesium to most wild mushrooms are lower than 0.5, although some mushroom species concentrate environmental radioactive cesium more than twice.
著者
松藤 哲義 島田 神生 高橋 寿
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.30, no.5, pp.433-445, 2015-11-25 (Released:2016-02-25)
参考文献数
15

抗肥満・抗糖尿病薬の標的であるbombesin receptor subtype-3(BRS-3)は中枢系のほか、末梢系の消化管にも発現している。Merck社の中枢系作用型BRS-3アゴニストはラットやイヌで抗肥満作用を示すものの、副作用として体温・血圧上昇、心拍数増加が見られた。そこで筆者らは消化管BRS-3へ選択的に作用する、より安全性の高い薬剤の開発を目指した。自社化合物とMerck社化合物の構造類似性から新規分子骨格をデザインし、極性基導入によって中枢移行性の低下を実現した。さらにごくわずかな中枢系曝露を回避するため、生体内代謝によって不活性化するアンテドラッグ5cを考案した。5cはマウス単回投与で摂食抑制作用を示すと共に、イヌ心血管系リスク評価では心拍数・血圧変動の減弱傾向を確認し、薬効と中枢系副作用回避の両立を達成した。
著者
望月 明義 伊藤 哲也 会田 仁 山本 和治 浅川 潔 太田 信行
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.141-144, 2016-12-22 (Released:2017-06-09)
参考文献数
10

長野県安曇野市の犀川で越冬する水鳥のうち,眼球突出を示した個体が2010年から5年間観察された。環形動物門ヒル綱に属するTheromyzon sp. がコハクチョウの腫大した眼部から採集されたが,血液が充満し,状態不良のため種は同定できなかった。水鳥がねぐらとする池において,ミズドリビル(T. tessulatum)の生息が確認されたことから,水鳥の眼球突出は本種ヒルの寄生によるものと考えられた。