著者
佐藤 哲也
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.67, no.10, pp.495-505, 2018-10-15 (Released:2018-10-15)
参考文献数
33

原子番号が100を超える重い元素のひとつ,103番元素ローレンシウム(Lr)の第一イオン化エネルギー(IP1)の決定に初めて成功した。一度に原子一個の取扱いが求められるLrのIP1測定には,マクロ量を対象とした従来法とは異なる手法が要求される。本稿では,表面電離過程を応用した新しいIP1決定法について解説するとともに,Natureの表紙を飾ったLrのIP1測定結果と,その後の議論について紹介する。
著者
加藤 哲理
出版者
日本ディルタイ協会
雑誌
ディルタイ研究 (ISSN:09142983)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.25, pp.23-38, 2014 (Released:2022-02-01)

The aim of this article is to rethink the importance of hermeneutics in politics. To examine it, the paper traces the effective history of hermeneutics in the area and focuses on the original contribution of Gadamerʼs one to politics.
著者
溝口 拓朗 伊藤 哲 山岸 極 平田 令子
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.23-29, 2018-06-25 (Released:2018-07-21)
参考文献数
26

間伐方法の違いが表土侵食に与える影響を明らかにする目的で,49年生ヒノキ人工林で2015年6月に列状間伐および定性間伐を実施し,その後約9か月間の土砂移動レートを比較した。その結果,列状間伐直後には,伐採木の搬出時に形成される伐採列内の搬出跡で局所的に土砂移動レートが増大することが明らかとなった。これは,木材を搬出する際に繰り返し同一箇所を木材が通過することによって土壌の浸透能が低下し,表面流が発生したことによると考えられた。しかし,間伐後約3か月で,搬出跡の土砂移動レートは大幅に低下した。これは,間伐後の夏季の降水によって表層の不安定土砂のほとんどが流出したためと考えられた。一方,定性間伐後の土砂移動レートは間伐前と比較して有意に増加しておらず,また列状間伐の伐採列および搬出跡と比較しても低かった。これらのことから本調査地においては,定性間伐は列状間伐よりも表土撹乱の小さい間伐手法であると示唆された。したがって,急傾斜地や火山灰土壌のように特に侵食を受けやすい地質では列状間伐はできるだけ回避し,表土へのインパクトの小さな間伐種を選択することが望ましいと考えられた。
著者
井汲 一尋 横井 克典 安藤 哲朗
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.27-31, 2016 (Released:2016-01-29)
参考文献数
30

症例は72歳女性である.2型糖尿病で通院治療中であった.7年前に左肺多発結節影があり精査するも診断に至らず経過観察で縮小した.その後呼吸器症状もなく安定していたが,5ヶ月の経過で認知機能障害と歩行障害が進行し入院し,クリプトコッカス髄膜脳炎と診断された.両足趾右優位にアテトーシス様の不随意運動を認めた.不随意運動はpainful legs and moving toesに極めて類似していたが,疼痛は全くなかった.クリプトコッカス髄膜脳炎で認知機能障害,不随意運動の改善過程を観察した報告は稀であり,貴重な症例であると考えられたため報告する.
著者
若林 上総 加藤 哲文
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.71-82, 2012-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
3

本研究では発達障害のある高校生、および学級に在籍するその他の生徒によるグループ学習場面に介入し、課題達成行動の生起に対する非依存型、および相互依存型集団随伴性が与える影響、ならびに集団随伴性が仲間間の相互交渉へ与える影響について検討した。また、介入前後には介入実行者である教師の介入受容性(treatmentacceptability)を測定し、その変化も検証した。結果として、非依存型、および相互依存型集団随伴性の適用は、発達障害のある高校生を含めた学級全体の課題達成行動の生起に影響を与え、教師も高い介入受容性を示すことが明らかとなった。一方で、発達障害のある生徒とその仲間間の相互交渉に与えた影響は明らかにされず、ネガティブな副次的作用としてサボタージュ行動が生じることも明らかとなった。以上のことから、有効かつポジティブな副次的作用を発現する集団随伴性に必要な手続き上の課題を議論した。
著者
安藤 哲郎
出版者
一般社団法人 人文地理学会
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.41-54, 2008 (Released:2018-01-06)
参考文献数
37

This paper gives a synoptic view of the distribution of places mentioned in the setsuwa stories compiled in the late Heian and early Kamakura periods (the 12th and first half of the 13th centuries). The author deals with places that were described as the staging areas for various events occurring during the Heian period, in and around Heian-kyo (present-day Kyoto).The author presents a geographical analysis of classical Japanese literature. Existing studies of the field have tended to focus on individual works or authors. In this paper, various stories including similar contents from different compilations are classified and analyzed in temporal and spatial dimensions.The category of setsuwa literature consists of many stories that include miracles and reasoning based on Buddhist teachings. Those stories were collected and resulted in several compilations (setsuwa-shu) in the late Heian and early Kamakura periods. The events told in the stories were distinguished ‘desirable’ from ‘undesirable’ for the people described. Then the locations of the events were plotted on maps of different times during the Heian period.By examining such maps, we can see that the locations of those events were familiar to the inhabitants of Heian-kyo. We can also see that residences and Buddhist temples related to the ruling people of the time were mentioned frequently. This suggests that the events in the stories were told as occurring in reality, reflecting the nature of setsuwa literature.In analyzing the contents of the stories, we can see that undesirable events often occur within the city boundary, whereas desirable events tend to happen in the peripheral zone. This peripheral zone can be associated with Buddhist temples and Shinto shrines which were religious foci for people of that time. Several events were described as having occurred just outside the city boundary, suggesting that the city area was not clearly circumscribed.The author concludes that the locational nature of events mentioned in the setsuwa literature can be considered to reflect the spatial structure of the metropolis of the Heian period. Further research should analyze factual records in diaries written by noblemen for comparative studies with literary materials.
著者
遠藤 哲也
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.160-163, 2009 (Released:2019-06-17)
参考文献数
4

核兵器廃絶論は,古くから唯一の被爆国である日本,非同盟諸国,北欧,カナダ,豪,ニュージーランド等の非核兵器国から主張されてきたが,近年,米国から,それもかつて米国の核戦略に直接関与した元政府高官から主張されるようになったことは注目に値する。その議論は以前の核廃絶論が,一般的,情緒的であったのに比べ,冷戦終えん,9.11事件後の安全保障環境の変化を踏まえた核戦略論に基づくもので,かつ廃絶に至る具体的な道筋を提案している。それとともに,廃絶への過程に横たわる多くの政治的,技術的困難を指摘している。世界が核廃絶の途に踏み出すには,まずは米国の決断が必要なこと,核なき世界が米国にとっても世界の安全保障にとっても望ましいことを強論している。この軍縮会議はそういった議論の流れの一つである。
著者
大北 喜基 荒木 俊光 近藤 哲 奧川 喜永 藤川 裕之 廣 純一郎 問山 裕二 大井 正貴 内田 恵一 楠 正人
出版者
一般社団法人 日本外科感染症学会
雑誌
日本外科感染症学会雑誌 (ISSN:13495755)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.655-659, 2018-12-31 (Released:2019-04-20)
参考文献数
21

近年の炎症性腸疾患に対する内科的治療は,従来から使用されてきたステロイドとともに免疫調節薬,生物学的製剤などの新しい内科的治療が開発され,治療薬の選択は多様化している。内科的治療は進歩したものの,治療抵抗や腸管合併症などの理由で手術を余儀なくされる症例は存在し,手術症例においては内科的治療が周術期管理に影響を与える可能性がある。長期ステロイド投与患者では,急性副腎不全に対する予防としてステロイドカバーが行われるが,従来の侵襲の大きさにかかわらず一律に高用量ステロイドを投与する方法から,近年では侵襲の程度に応じて投与量を決定する方法が推奨されている。炎症性腸疾患に対する手術は,内科的治療による免疫抑制のみならず,低栄養,慢性炎症などが原因で術後合併症,とくに感染性合併症の発生頻度が高いと考えられている。これまで多くの報告で術前ステロイド高用量投与が術後合併症のリスクとなることが示されており,ステロイドの投与量は手術タイミングと術式の選定,周術期管理を行ううえで重要な情報となる。
著者
柳原 恵梨 杉本 達哉 佐藤 哲観
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.1-5, 2022 (Released:2022-01-13)
参考文献数
18

【緒言】悪夢は緩和ケアの臨床において珍しくない症状の一つだが,がん患者における研究は乏しい.今回われわれは,一般的な不眠治療で緩和されない悪夢による苦痛に対し柴胡加竜骨牡蛎湯が有効だった症例を経験した.【症例】82歳,男性.悪性リンパ腫による疼痛,倦怠感と悪夢を伴う不眠を認めた.身体症状はステロイドで改善したが,悪夢と不眠は持続し,一般的な不眠治療には不応であった.柴胡加竜骨牡蛎湯を投与したところ速やかに悪夢と不眠が改善した.【考察】柴胡加竜骨牡蛎湯は,他の睡眠剤や抗不安薬などに比べて有害事象の懸念が少なく,がん患者の悪夢の治療に安全かつ有効に使用できる可能性がある.【結語】柴胡加竜骨牡蛎湯が進行がん患者の悪夢を改善した.
著者
遠藤 哲郎 大石 基之
出版者
日経BP社
雑誌
日経エレクトロニクス (ISSN:03851680)
巻号頁・発行日
no.1174, pp.97-101, 2016-12

これは、今回、東京エレクトロンさん、キーサイト・テクノロジーさんと連名で受賞した理由に直結します。次世代メモリーである磁気メモリー(MRAM)のうち、我々CIESが手掛けるSTT-MRAMに関しては、まだ本格的な量産が始まっていないため、STT-MRAM自身は評価対象で…
著者
伊藤 哲郎 茅沼 秀樹 斑目 広郎
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.e14-e17, 2022 (Released:2022-01-15)
参考文献数
7

16歳齢,去勢雄の雑種猫が食欲不振,体重減少を主訴として来院し,頸部腹側に2cm大の皮下腫瘤が触知された.血液検査において総カルシウム及びイオン化カルシウムの高値を認めた.症例のintact上皮小体ホルモン(parathyroid hormone:PTH)は基準範囲内であったが,実験的に高カルシウム血症を誘発した健常猫において報告されたintact PTHと比較すると高い値であり,血清イオン化カルシウム濃度に対応したPTH抑制調節の破綻が推測された.画像検査により頸部腫瘤は腫大した上皮小体であることが疑われた.外科切除した腫瘤は病理組織検査において上皮小体腺腫と診断された.術後に総カルシウム値及びイオン化カルシウム値は速やかに正常化し,2年間の観察期間に再発は認められなかった.
著者
新藤 哲也 牛山 博文 観 公子 安田 和男 斉藤 和夫
出版者
[日本食品衛生学会]
雑誌
食品衛生学雑誌 = Journal of the Food Hygienics Society of Japan (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.277-282, 2004-10-25
被引用文献数
1 8

5種の市販ジャガイモ(メークイン,男爵,ワセシロ,レッド,パープル)中のα-ソラニンとα-チャコニンを衛生試験法に基づいて抽出,固相抽出カラムによるクリーンアップを行い,C<sub>18</sub>カラムを用いてHPLCにより分析を行った.回収率はα-ソラニンおよびα-チャコニンともに 96% と良好であり,本法における定量限界は試料1 g当たりいずれも2μgであった.ジャガイモの皮層部中のα-ソラニンとα-チャコニンはすべての試料で検出され,それらの含有量はメークイン,男爵,レッド,パープル,ワセシロの順で多かった.ジャガイモの髄質部中のα-ソラニンとα-チャコニンはメークインおよび男爵のみから検出され,その含有量はいずれも皮層部の1/10以下であった.ジャガイモを90日間室温暗所で貯蔵した場合のα-ソラニンとα-チャコニン含有量は多少の増減はあったものの5種のジャガイモのいずれの部位においても顕著な増加傾向は見られなかった.
著者
中村 恵子 鱒見 進一 安東 俊介 竹内 敏洋 久保 雅晴 安元 和雄 金藤 哲明
出版者
九州歯科学会
雑誌
九州歯科学会雑誌 (ISSN:03686833)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2.3, pp.77-81, 2007 (Released:2008-09-16)
参考文献数
12
被引用文献数
3 2

下顎隆起は骨性の隆起で,原因としては,遺伝,咀嚼圧,パラファンクションなどが挙げられるが,明確なことは分かっていない.今回,下顎隆起と咬合力およびパラファンクションとの関係を検討するために,当科受診の患者に対し,デンタルプレスケールを用いて最大咬合力,咬合接触面積を測定するとともに,パラファンクションに関するアンケートを実施した結果,下顎隆起の有無と最大咬合力との間には統計学的有意差が認められた.また,下顎隆起の有無と咬合接触面積との間にも統計学的有意差が認められた.アンケートの結果より,パラファンクションの中でもくいしばりおよび硬性食品嗜好と下顎隆起との間に統計学的有意差が認められたものの,歯ぎしりや筋痛およびストレスについては関連性は認められなかった.
著者
安藤 哲也 小牧 元
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.47-56, 2009
参考文献数
31
被引用文献数
1

摂食障害への罹患しやすさには遺伝的要因が大きく関与している.これまで候補遺伝子法による相関解析ではセロトニン2A受容体遺伝子,セロトニントランスポーター遺伝子,脳由来神経栄養因子遺伝子多型と神経性食欲不振症との関連が,メタアナリシスで示された.罹患同胞対連鎖解析では第1,第2,第13染色体上に神経性食欲不振症との連鎖が,第10染色体上に神経性過食症と連鎖する領域が報告された.グレリンは主に胃から産生され,成長ホルモンの分泌を刺激し摂食と体重増加を促進するペプチドである.筆者らはグレリン遺伝子多型およびハプロタイプが神経性過食症に関連すること,同じ多型が若年女性の体重や体格指数,体脂肪量,腹囲,皮脂厚などの身体計測値,「やせ願望」と「身体への不満」という心理因子,空腹時の血中グレリン濃度と関連することを示した.さらにグレリン遺伝子多型が制限型のANの病型変化のしやすさにも関連していた.マイクロサテライトマーカーを用いたゲノムワイド相関解析により,神経細胞接着関連分子遺伝子領域(11q22)と脳関連遺伝子クラスター(1p41)領域で感受性SNPが検出された.近年,生活習慣病,多因子疾患の疾患関連遺伝子の同定に成果を上げているゲノム全体を網羅するSNPマーカーを用いたゲノムワイド相関解析の実施を摂食障害においても目指すべきである.摂食障害に関する臨床研究,疫学研究での評価項目に遺伝子解析を入れておくことが,発見された摂食障害関連遺伝子の意義を決めるのに重要である.
著者
楠 比呂志 長谷 隆司 佐藤 哲也 土井 守 奥田 和男 上田 かおる 大江 智子 林 輝昭 伊藤 修 川上 茂久 齋藤 恵理子 福岡 敏夫
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.25-30, 2006
参考文献数
29
被引用文献数
3 3

国内の3施設で飼育されていた18頭の成熟雄チーターから,経直腸電気射精法で採取した31サンプルの精液の性状を分析した。なお18頭中13頭は,繁殖歴がなかった。18頭の雄の精液の性状は,精液量が0.91±0.11ml,精液pHが8.1±0.1,総精子数が32.6±5.4百万,生存精子率が84.9±1.9%,精子運動指数が53.7±3.8,形態異常精子率が66.1±3.4%,正常先体精子率が68.5±5.1%で,これらの値は,他のチーターにおける報告値の範囲内であった。繁殖歴がある雄とない雄の精液を比較したところ,先体正常精子率以外のパラメーターについては,両者間で有意な差はみられず,繁殖歴がない雄の正常先体精子率(59.8%)も致命的なほど低くはなかった。以上の結果から,飼育下の雄チーターにおける低受胎の主因が,精液性状の低さである可能性は少ないと考えられた。
著者
山野井 貴浩 伊藤 哲章
出版者
一般社団法人 日本環境教育学会
雑誌
環境教育 (ISSN:09172866)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.1_33-39, 2021 (Released:2021-08-24)
参考文献数
24
被引用文献数
1

To understand the level of Entomophobia in nursery teachers, we undertook a questionnaire survey of nursery teachers, students taking a nursery teacher-training course, and ordinary women. Results indicated that nursery teachers tend to like arthropods and can look at photographs and illustrations of them more comfortably when compared to the students and ordinary women. An age-based analysis showed that nursery teachers in their 20s–50s were able to view photographs and illustrations of arthropods with less resistance than students and ordinary women of the same generation. There was no significant difference between participants in the 20–40 age range, but nursery teachers in their 50s showed greater preference to arthropods than university students and ordinary women. As the degree of preference for arthropods had a stronger influence on their confidence in arthropod-related childcare rather than the degree to which they could look at arthropods, it is necessary to develop training to encourage nursery teachers to like arthropods through experiences of seeing, touching, collecting and rearing such creatures.