著者
藤本 久司 FUJIMOTO Hisashi
出版者
三重大学人文学部文化学科
雑誌
人文論叢 : 三重大学人文学部文化学科研究紀要 (ISSN:02897253)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.145-155, 2011-03-30

世界の文化を類型化し対比する主要な研究から「コンテクスト」「時間感覚」「結論の位置」「視線」「対面距離」「身体接触」「あいづち」に視点をおいたものをとりあげる。また、コミュニケーションギャップの具体例をいくつか挙げ、上記研究及び他の複数の視点から考察を行うと、1つの例にも様々な文化背景の要因が関わっていることがわかる。われわれは現代社会の異文化間コミュニケーションにおける非言語の重要性を一層注視しなければならない。ネット社会の発展の中で、文化背景を軽視した言語だけのコミュニケーションが増えることで、不要な誤解や摩擦が増え、時に極端な情報が伝わっている。誤解や無理解はそのままにしておくと偏見に変わる。理由や文化背景を正しく知り、また、説明する努力が求められる。メッセージの送り手は、送る相手の文化スタイルに合わせないとメッセージの内容が正しく伝わらない、ということを再認識することが必要だ。そのため自文化を深く知り、異文化の相手に正確に説明することと、接触する相手の文化について事前の理解を深めた上でコミュニケーションすることが肝要である。

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著者
野村朱鱗洞著 藤本一幸編集
出版者
層雲社
巻号頁・発行日
1989
著者
浅井 英典 藤本 弘一郎 大柿 哲朗
出版者
日本生理人類学会
雑誌
日本生理人類学会誌 (ISSN:13423215)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.45-54, 2001-08-25 (Released:2017-07-28)
参考文献数
40

The effect of resistance training for five months was examined. Middle-aged and elderly women without an exercise habit were divided into a resistance training group (RT group), an aerobic training group (AE group), and a control group (CNT group). A questionnaire survey examined QOL, and physical characteristics, bone mineral density and physical fitness were measured before and after the intervention period. A significant improvement in the RT group was seen in regard to subjective health degree, everyday feeling, human relation and life satisfaction degree. The subjective health degree increased significantly in the AE group, while no change was seen in the CNT group in regard to all iteme. Knee extension strength, knee flexion strength, plantar flexion strength, and stepping improved significantly in the RT group. It was suggested that resistance training that could be carried out easily to allow the physical fitness of middle-aged and elderly women improve prartially, and that it an available method of improving psychological items such as subjective health and degree of life satisfaction.
著者
富山大学人文学部文化人類学研究室 藤本 武 野澤 豊一
出版者
富山大学人文学部文化人類学研究室
雑誌
地域社会の文化人類学的調査
巻号頁・発行日
vol.29, pp.1-198, 2020-02-28

はじめに(藤本武/野澤 豊一)地域概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 第1部 文化資源の創造 1.小矢部に根付くメルヘン : 建築から市の象徴へ(吉田彩夏)・・・・・・・・・・15 2.小矢部に息づく武将・木曽 義仲 (福原悠平)・・・・・・・・・・・・・・・・ 47 3.小矢部ブランドの現在 (小倉和裕)・・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・64 第2部 人が輝ける居場所 4.小矢部市における障害者支援 : 障害者が働くということ(林美奈)・・・・・・・81 5.末友における農業の変遷と新たな女性の役割 (高島加奈子)・・・・・・・・・・112 第3部 地域と社会に貢献する活動 6.北蟹谷地区で活動する団体 : 伝承部会に焦点を当てて(安達史弥)・・・・・・・130 7.小神集落における地域行事の移り変わり(高社華)・・・・・・・・・・・・・・149 8.変化する民間伝承の語り : 宮島で語られる民間伝承と現在の語り(飯井清隆)・・171
著者
藤本 雅子
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.44-53, 2014-08-30 (Released:2017-08-31)

Previous studies on sokuon, or Japanese geminate consonants, have mainly focused on the acoustic properties. Some studies claim that laryngeal characteristics also differ between sokuon and singletons. However, physiological studies on sokuon are not well explored. This study uses a high-speed digital video system and PGG to examine whether any laryngeal/glottal tension takes place in producing sokuon. The results showed that no apparent laryngeal constriction or glottal stop appeared during sokuon. However, the analysis of PGG and kymograph showed that the glottal opening tends to be suppressed during sokuon during the onset part, suggesting that some kind of tension of the vocal folds is involved in producing the phoneme.
著者
津田 哲也 中村 光 吉畑 博代 渡辺 眞澄 坊岡 峰子 藤本 憲正
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.394-400, 2014-12-31 (Released:2016-01-04)
参考文献数
27
被引用文献数
1 1

項目間の意味的関連性を統制した非言語性意味判断課題を用いて, 失語症者の意味処理能力を検討した。対象は右利き失語症者 35 例 (平均 65.4 歳) および同年代の健常者 10 例 (統制群)。課題では提示された目標項目に対し, 対象者に 5 つの選択肢のなかから, 最も意味的関連性が強いと判断する 1 項目を指すよう求めた。選択肢は質的に異なる 2 つの意味的な関連性 (状況関連性と所属カテゴリー関連性) の有無を基準に設定した。例えば, 刺激項目が「犬」の場合, 状況と所属カテゴリーもどちらも関連する項目 SC (猫), 状況的関連のある項目 S (家), 所属カテゴリーが関連する項目 C (象), 生物・非生物のみ一致するが状況・カテゴリーの関連性はない項目 N1 (鯛), いずれも関連のない項目N2 (消しゴム) の線画を提示した。その結果, 統制群・失語群いずれも全反応中に占める比率は SC が最も多く, 次いで S または C の順で, N1・N2 は最も少ない反応であった。また, 失語重症度別・聴覚的理解力別での反応に有意な偏りを認め, 重度群・理解不良群は軽度群・理解良好群よりも全反応中の N1・N2 の比率が有意に高かった。失語症者において重症度・聴覚的理解力と非言語性意味処理には一定の関連があることが確認された。以上より, 多くの失語症者は非言語性意味判断において, 状況関連性やカテゴリー関連性という判断基準を利用できることが示された。
著者
中村 育夫 藤本 康弘 飯田 健二郎 末岡 英明 岡本 共弘 鳥口 寛 奥野 将之 岩間 英明 河端 悠介 多田 正晴
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.77-80, 2021-04-15 (Released:2022-05-15)
参考文献数
21

高齢者の手術増加に伴い, 高齢者にみられる術後認知機能障害 (postoperative cognitive dysfunction : POCD) や術後せん妄 (Postoperative delirium: POD) が問題となり, 周術期の予防と管理が重要である.  抑肝散と抑肝散加陳皮半夏は神経症, 不眠症, 小児夜泣き, 小児疳症 (神経過敏) が適応で, 消化器症状 (悪心, 嘔吐) を有する場合は抑肝散加陳皮半夏を選択する. 作用機序は, ①セロトニン神経系と②グルタミン酸神経系が関与している. 通常, 成人1日7.5gを2‐3回に分割し, 食前または食間に経口投与する. 術前5~7日前より服用し, 術後早期より再開し退院日まで服用させる. 重篤な副作用に低カリウム血症 (偽アルドステロン症) がある. POCDやPODを改善し, また入院中の睡眠導入剤や抗不安薬などの併用薬の使用を減少させる可能性がある.  本稿では, 抑肝散と抑肝散加陳皮半夏によるPOCDとPODの予防と管理について述べる.
著者
岡田 健太郎 藤本 昌志 藤原 紗衣子 渕 真輝
出版者
公益社団法人 日本航海学会
雑誌
日本航海学会論文集 (ISSN:03887405)
巻号頁・発行日
vol.132, pp.1-8, 2015 (Released:2015-07-01)
参考文献数
19
被引用文献数
4 1

It has become more difficult to voyage safely using human senses due to the upsizing and speeding up of ships. In order to help cope with the increasing difficulties, navigational instruments have been developed to support human senses. Above all, the advent of ECDIS has changed traditional watch duty on the bridge. The increased reliance on navigational instruments like ECDIS, has some negative consequences as well, and as a result marine accidents have occurred. Keeping this in mind, the purpose of this paper is ① to increase awareness of the appropriate uses of navigational equipment information, ② to investigate the relationship between the qualities of navigational equipment information and the operator, and ③ to discuss Marine Accident Inquiries with the goal of learning how to solve these problems. First, this paper will introduce occurrences of marine accidents using ECDIS. Next, the legal position of navigational equipment will be considered, and finally, conclusions will be drawn about the qualities of the appropriate uses and the operators in regards to navigational equipment.
著者
松村 将司 藤本 修平 栗原 靖
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.197-204, 2022 (Released:2022-04-20)
参考文献数
33

〔目的〕小学生バドミントン選手の傷害実態を調査し,疫学的な特徴として学年や性別に応じた疼痛の有無,傷害部位の特性を検証すること.〔対象と方法〕無記名による自己記入式質問紙に回答した男子143名,女子187名に対して,学年や性別に応じた疼痛の有無,傷害部位の関連性を検討した.〔結果〕今現在,疼痛を有しているのは男子24名,女子34名であり,過去に疼痛を経験したのは男子59名,女子79名であった.学年と疼痛の関連について,過去の疼痛経験は高学年が有意に多かった.学年と疼痛部位の関連については,過去の疼痛経験は「足首」が高学年で有意に多かった.〔結語〕小学生バドミントン選手は,足関節に傷害が多く,高学年では傷害を経験する割合が多いことがわかった.
著者
笠原 貴仁 吉武 博美 石井 浩一郎 藤本 拓司 伊東 隆利 伊東 隆三
出版者
特定非営利活動法人 日本顎変形症学会
雑誌
日本顎変形症学会雑誌 (ISSN:09167048)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.230-235, 2008-08-15 (Released:2011-02-09)
参考文献数
10
被引用文献数
1

Schizophrenia is an inherent disease that causes disruption of thinking patterns, sensing, self-esteem, will and emotions, resulting in mental disorder involving hallucinations and other mental symptoms.The major complaint of this 21-year-old female patient with skeletal mandibular protrusion was thought to be pain of the temporomandibular region. However, upon careful analysis based on Narrative Based Medicine, the primary concern was the mandibular protrusion with asymmetry inducing multiple psychological symptoms. Combined ortho-surgical intervention was performed to resolve this patient's problem. Although increased antidepressant intake was noted prior to the surgery, once the treatment had been performed, resulting in major improvements of the profile and appearance, dramatic mental and psychological changes for the better were noted, allowing this patient's return to a healthy and normal social life along with decreased dependency on anti-depressant drugs.
著者
藤本 幸子 井上 基浩 中島 美和 糸井 恵
出版者
公益社団法人 全日本鍼灸学会
雑誌
全日本鍼灸学会雑誌 (ISSN:02859955)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.208-217, 2011 (Released:2011-12-09)
参考文献数
19

【目的】腰痛に対する、 より効果的な鍼治療方法の検索を目的に、 同一部位における鍼の刺入深度の違いによる治療効果の相違をランダム化比較試験により検討した。 【方法】対象:罹病期間が3ヵ月以上の腰痛を有する患者32名をコンピュータープログラム (Sample Size 2.0) を用いてランダムに、 鍼を表在へのみ刺入する浅刺群と深部まで刺入する深刺群の2群に割り付けた。 介入:施術部位は両群ともに腰部の自覚的最大痛み部位3~12ヵ所を選択した。 浅刺群 (n=16) は切皮のみ (約5mm)、 深刺群 (n=16) は約20mm刺入し、 両群とも約1mm幅での雀啄術を20秒間行い、 その後に抜鍼した。 これらの治療を計4回 (1回/週) 行った。 評価:初回治療前後、 各回の治療前、 治療終了4週経過後に痛みのVisual Analogue Scale (VAS) を記録し、 併せて、 初回治療前、 治療終了時、 治療終了4週経過後にはRoland-Morris Disability Questionnaire (RDQ)、 Pain Disability Assessment Scale (PDAS) を用いて評価した。 なお、 評価は治療内容を知らない鍼灸師が行った。 【結果】VAS、 RDQ、 PDASの経時的変化パターンに関して両群間に交互作用を認め、 深刺群で有意に良好な結果を示した (VAS:p<0.05、 RDQ:p<0.001、 PDAS:p<0.05)。 また、 初回直後、 治療終了時、 治療終了4週経過後の各時点における初回治療前に対する変化量においても、 全ての評価項目において、 深刺群は浅刺群と比較して良好な結果を示した 「(初回直後 VAS:p<0.01)、 (治療終了時 VAS:p=0.13、 RDQ:p<0.05、 PDAS:p<0.01)、 (治療終了4週経過後 VAS:p<0.05、 RDQ:p<0.01、 PDAS:p<0.05)」。 【考察】全ての評価項目において、 浅刺群と比較して深刺群では良好な結果を示した。 このことから、 腰痛に対する自覚的痛み部位への鍼治療は、 筋の存在する深部まで刺入した方がより有効性が高いと考えた。 効果の相違が出現した理由に関しては、 浅刺群と深刺群それぞれの刺激を受容する組織の違いが関与し、 局所における痛覚閾値や筋血流、 あるいは筋緊張緩和に異なった影響を与えた可能性を考えた。
著者
藤本 憲正 中村 光 福永 真哉 京林 由季子
出版者
日本音声言語医学会
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.201-207, 2016 (Released:2016-05-20)
参考文献数
18

比喩文の理解課題を作成し,健常高齢者(統制群),コミュニケーション障害を認めない右半球損傷者(右なし群),それを認める右半球損傷者(右あり群),左半球損傷の失語症者(失語群),それぞれ15名に実施した.比喩文は一般的になじみの低い直喩文30題とし(例:道は,血管のようだ),検者がそれを読み上げた後,その意味に最も合う文を4つの選択肢から選ぶよう求めた.さらに同じ比喩の口頭説明課題とトークンテスト(TT)を実施した.結果は,統制群と比較し,右なし群では比喩理解課題,TTともに同等の得点であり,右あり群では特に比喩理解課題で有意な低下を示し,失語群では比喩理解課題,TTともに有意な低下を示した.比喩理解課題と比喩説明課題の得点には有意な相関関係が認められた.右半球損傷における比喩理解障害を議論する際は,コミュニケーション障害の有無を考慮する必要があると考えた.
著者
藤本 俊明 隈上 秀伯
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.131-133, 1971 (Released:2013-05-10)
参考文献数
7

The authors reported a case of facial paralysis associated with hypertension. The patient was 12 years old female who presented with a right facial nerve paralysis and complained disturbance of vision. Her blood pressure was 216/138 mmHg. A pediatrist diagnosed her as hypertension associated with nephritis. Ophthalmologic diagnosis was neuroretinopathia angiospastica. The findings were spasm of the retinal artery, papilloedema and bleeding in the retina. She was admitted to our clinic for investigation of facial nerve paralysis. According to our investigation the facial nerve of this patient was affected at the level of the infrachordal part of the facial canal. We assumed that the pressure induced by bleeding in the facial canal pressed the nerve and the paralysis occurred. The bleeding was suspected as a similar phenomenon to bleeding in the retina.
著者
橋本 亮太 大井 一高 山森 英長 安田 由華 福本 素由己 藤本 美智子 梅田 知美 武田 雅俊
出版者
日本生物学的精神医学会
雑誌
日本生物学的精神医学会誌 (ISSN:21866619)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.63-67, 2013 (Released:2017-02-16)
参考文献数
4

遺伝要因が強い統合失調症ではリスク遺伝子を発見するための研究が盛んになされているが,主観的な診断基準や遺伝的な多様性があるため,それを見出すことは困難な状態にある。そこで,中間表現型という概念が統合失調症のリスク遺伝子を見出し,その病態メカニズムを同定するための手法として注目されている。筆者は,統合失調症をはじめ,気分障害,発達障害,健常者のゲノムサンプル付きの中間表現型データベースを構築しており,これらを用いた研究を推進している。本研究においては,免疫応答における主要な転写因子NFκβの構成因子であるRELA遺伝子と統合失調症の関連を検討した。RELA遺伝子の3つのSNPが統合失調症と関連し,特に男性において強いが認められた。最も関連の強いSNP は RELA遺伝子のプロモーター領域のアンドロゲン受容体の結合モチーフを欠如させるものであり,この統合失調症のリスクSNP が RELA遺伝子の発現の低さと関連した。その上このリスクSNPは統合失調症患者におけるプレパルス抑制障害(PPI)とも関連した。これらの結果は,RELA遺伝子の機能的なSNPをリスク多型として同定したため,病態解明に向けて大きな意義があると思われる。このような臨床研究によって精神疾患の分子病態に迫ることは,生物学的精神医学の1つの方向性として,重要であると考えられる。
著者
藤本 雅子 北村 達也 船津 誠也 Masako FUJIMOTO Tatsuya KITAMURA Seiya FUNATSU
出版者
甲南大学
雑誌
甲南大学紀要. 知能情報学編 = Memoirs of Konan University. Intelligence & Informatics Series (ISSN:18830161)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.103-113, 2022-02-01

標準語話者の有声,無声の破裂音/g/,/k/の調音と音声の特徴を/agise/,/akise/の検査語を用いて検討した.音声では閉鎖区間,formant onset time (FOT),子音区間は/k/が/g/より長く,先行母音と後続母音は/g/に隣接する場合に/k/に隣接する場合より長かった.先に報告した同じ話者の調音上の特徴に,閉鎖区間が/k/が/g/より長いこと,閉鎖のタイミングが/k/が/g/より早いことがあった.これらはそれぞれ音声上の閉鎖区間が/k/が/g/より長かったこと,/g/に先行する母音が/k/に先行する場合より長かったことに対応する.MRIの/g/,/k/の最大閉鎖フレームのトレース画を用いた計測では,/k/は/g/に比べ正中面上の閉鎖の範囲が長い傾向が見られたが,咽頭面積は個人差が大きく/g/と/k/で一定の傾向が確認できなかった.
著者
高尾 哲也 藤本 清彦 中山 榮子 佐々木 央 永井 寛 桃原 郁夫
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.71, no.12, pp.757-765, 2020 (Released:2020-12-19)
参考文献数
19

木製まな板およびエンボス加工されたプラスチック製まな板について, 新品および使用済みのまな板をそれぞれ3枚入手し, 模擬的な調理後の洗浄, 次亜塩素酸消毒処理, 自然乾燥の各工程における一般生菌数および大腸菌群数を測定した. また, まな板の表面粗さの定量的な検討を行い, 粗さと生菌数等との関係を検討した. 模擬的な調理を行った後の, 洗浄, 消毒, 乾燥工程後の一般生菌数及び大腸菌群数は木製新品まな板, 木製使用済みまな板, プラスチック製使用済みまな板間で有意な差はなかった. 一方, 未使用および使用済みまな板双方で表面粗さは, まな板によって差があるものの, 全体としては木製まな板の方がプラスチック製まな板と比べて小さかった. 数年間使用したことにより平滑性が低下した木製まな板でも, 粗さはエンボス加工されたプラスチック製まな板と同等かそれ以下であった. まな板の表面粗さと微生物の残存性との関係を検討した結果, 凹凸の平均粗さ (Pa) が乾燥時の一般生菌数と大腸菌数で正の相関を, 凹凸差を示す最大高さ (Pz) が洗浄後と消毒後の一般生菌数と大腸菌数とに対して正の相関を示した. 一方, 最大深さ (Pv) はこれらと相関を示さなかった. これらの事から木製まな板においては, Pa及びPzがエンボス加工されたプラスチック製まな板と同等かそれ以下であり, 「大量調理施設衛生管理マニュアル」が定める洗浄, 消毒, 乾燥工程を経れば, 木製まな板とエンボス加工された使用済みプラスチック製まな板との間で, 洗浄性や消毒性, 微生物の生残性にも有意な差は無く, 両者を同様に使用でき, 衛生性の差も大きくないと考えられた.
著者
石川 琢也 池田 裕一 布山 正貴 小川 玲 藤本 陽子
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.6, pp.564-570, 2022 (Released:2022-03-23)
参考文献数
22

ヒトの腸管内には多くの細菌が生息しており腸内細菌叢を形成している.近年,腸内細菌叢の変化とさまざまな疾患との関係性が報告されている.今回,われわれは機能性便秘症を伴う下部尿路障害の児における腸内細菌叢の分布を調査することとした.機能性便秘症を伴う下部尿路障害の児10名(男児8例女児2例,平均年齢8.1歳)と健常児10名(男児10名,平均年齢7.1歳)の腸内細菌を検索した.検索は培養法で行い,4菌種を評価項目とした.その結果,機能性便秘症を伴う下部尿路障害の児ではClostridium属とLactobacillus属が有意に増加しており(p<0.05),その他の菌種や総菌数では有意差は認めなかった.腸内細菌叢の変化が排尿排便機能に何らかの影響を及ぼしている可能性が示唆され,プロバイオティクスによって基礎疾患とともに下部尿路障害の改善に期待がもたれる.