- 著者
-
神谷 浩夫
- 出版者
- The Association of Japanese Geographers
- 雑誌
- 日本地理学会発表要旨集
- 巻号頁・発行日
- pp.100198, 2012 (Released:2013-03-08)
1.本発表の目的 発表者はこれまで,海外で働く若い現地採用の日本人女性を中心に調査を実施してきた.1980年代初頭のバブル崩壊以降,国内労働市場は二極化が進展する一方,これまで以上に流動化が進んだ.それと同時に,海外で働くことが大きなブームとなった.こうしたブームを支えたのは,現地採用で雇用される未婚の女性であった.最近では,現地採用として海外で就職する日本人は女性だけでなく男性にも広がりつつある.そこで本研究では,シンガポール,サンフランシスコ,ホーチミンで実施したこれまでの調査をふまえながら,2011年2月にバングラデシュで行った現地で働く日本人若者の調査結果を報告する.2.バングラデシュの特徴 バングラデシュは世界の最貧国のひとつに数えられることが多く,海外からの民間投資額も多いわけではない.むしろODAなど政府関連の援助による投資が主流である.そのため2010年の外務省海外在留邦人数調査統計によれば,バングラデシュに住む日本人は569人,そのうち長期滞在者が504人,永住者が65人である.長期滞在者の内訳は,民間企業関係者が101人,同居家族が20人,政府関係職員が131人,同居家族が66人,その他が97人,同居家族が58人となっている.つまり民間企業関係者よりも政府関係職員の方が多い.近年日系企業の進出が活発化していると言われているが,その水準は低位に留まっている. 一方,シャプラニールやマザーハウスに代表されるように日本人によるNGOや社会的企業の活動がバングラデシュで活発に繰り広げられている.さらに,グラミン銀行やBRACなどマイクロクレジットが世界的に注目されるようになり,BOPビジネスも脚光を浴びるようになっている.2010年には,ユニクロがグラミン銀行と提携してソーシャルビジネスを開始し,安い賃金を生かした縫製産業が成長を遂げつつある.3.調査結果の概要 当該国において日本企業の進出が進むには,日本への送金が可能となる制度枠組みの整備が重要である.ダッカで実施した現地調査では,16人の男女から話を聞くことができた(表1).ヒアリング結果を要約すれば,①高学歴の人が多い,②未婚の男性が多い,NGOや社会的企業などの職に就いている人が多い,といった特徴が浮かび上がった.なお,その他の詳細な結果については,当日に報告する.