著者
柘植 尚志 西村 正暘 大村 智 甲元 啓介 尾谷 浩
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.277-284, 1985

宿主特異的毒素を生成する<i>Alternaria alternata</i>群植物病原菌の病原性発現および分生胞子発芽時の毒素生成に及ぼす化学物質の効果について検討した。ナシ黒斑病菌分生胞子懸濁液に,抗生物質セルレニンまたはメチオニンをそれぞれ20ppm, 100ppm以上の濃度で添加すると,胞子の発芽,付着器形成などは殆んど影響されなかったが,胞子発芽時の宿主特異的毒素(AK-毒素)の生成・放出は著しく抑制された。また二十世紀ナシ葉に対する病原性の低下が観察された。さらに,これらの化学物質は,リンゴ斑点落葉病菌のAM-毒素生成およびイチゴ黒斑病菌のAF-毒素生成も阻害し,両菌の病原性低下を引き起こした。また,KH<sub>2</sub>PO<sub>4</sub>, NH<sub>4</sub>Cl,酵母エキスおよびシステインも,ナシ黒斑病菌の胞子発芽にはほとんど影響することなく胞子発芽時のAK-毒素生成能力および病原性を阻害した。しかし,これらの化学物質の効果は,セルレニンやメチオニンほど顕著ではなく,比較的高濃度処理によって,阻害効果が認められた。以上の結果から,<i>Alternaria alterrata</i>群病原菌の分生胞子懸濁液に,ある種の化学物質を添加することにより,胞子発芽時の宿主特異的毒素生成が阻害され,その結果,病原性の低下が引き起こされるものと考えられ,本群菌の病原性発現における胞子発芽時の宿主特異的毒素の重要性が示唆された。
著者
馬渕 一誠 細谷 浩史 沼田 治 浜口 幸久 田中 一馬 北山 仁志 渡辺 良雄 丸山 工作 石川 春律 木下 専
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
1998

収縮環の形成機構を様々な細胞を用いて解析した。分裂酵母においては収縮環は、核分裂の間に細胞中央部に蓄積するF-アクチンケーブルから形成されることが分かった。アフリカツメガエル卵で星状体微小管が分裂溝直下で連結することを見い出した。これまで細胞質分裂のシグナルに関連していると思われていたCaイオンについて、分裂後半あるいは分裂後にCa waveの発生はあるものの、分裂溝先端ではCa blip, Ca puffといった微小なシグナルでさえ見られなかった。ウニ胚第4卵割で、中心体から近い表層ではアクチンが少なく、遠い部位ではアクチンが増えて分裂することを確かめた。即ち不等分裂する植物極側割球では、赤道面に収縮環ができる前に、植物極の表層からアクチンが減少し表層が膨らんだ後分裂溝ができた。テトラヒメナのEF-1αが2量体を形成してアクチン繊維を束ね、Ca^<2+>/CaMはEF-1αを1量体にしてアクチン繊維束形成を阻害すること、フィンブリンのアクチン結合性やアクチン繊維束形成能はCa^<2+>非感受性であり、フィンブリンが収縮環と同様に分裂構でリングを作ることを明らかにした。HeLa細胞のRhoキナーゼが、アクチン結合タンパク質であるフィラミンAと結合したので両者は収縮環中で結合して存在する可能性がある。分裂シグナル伝達に関し分裂酵母の新規のRhoファミリータンパク質Rho3を見い出した。Rho3は細胞膜に局在した。Rho3とCdc42の下流に共通の標的として新規のフォルミンFor3があってアクチン細胞骨格と微小管を支配し、細胞形状や分裂位置の決定に関与することが分かった。出芽酵母のRhoファミリータンパク質Cdc42の標的であるCla4(PAK)とBnil(フォルミン)が協調的に働き分裂部位でのセプチンリング形成を制御すること、この過程にアクチンが重要な働きをすることを示唆した。
著者
神谷 浩夫
出版者
人文地理学会
雑誌
人文地理学会大会 研究発表要旨
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.67, 2009

発表分野外研究、文化地理学概要北米には、和太鼓チームが300ほどあると言われている。戦後の経済成長に伴って日本国内で伝統音楽に対する再評価の機運が高まり、日系企業の対米進出が活発化するにつれて、北米の日系人コミュニティでも日本の伝統文化への再評価が進み、和太鼓演奏が日系人コミュニティの間に広く普及するようになっていった。本報告では、2008年8~9月に調査した実施した北米ベイエリアにおける和太鼓チームへの聞き取り調査に基づきながら、北米ベイエリアの日系人コミュニティにおいて和太鼓演奏が普及していったプロセスを明らかにし、その要因について検討を加える。
著者
武居 周 室谷 浩平 吉村 忍 金山 寛
出版者
Japan Society for Simulation Technology
雑誌
日本シミュレーション学会論文誌 (ISSN:18835031)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.81-95, 2012 (Released:2012-12-15)
参考文献数
27
被引用文献数
3

This paper describes a method of making mesh models for large-scale full-wave analysis of electromagnetic fields by the finite element method with an iterative domain decomposition method using numerical human body models. Numerical human body models by National Institute of Information and Communications Technology (NICT) composed by the voxel data with all sides of 2mm include skins, blood vessels, bones etc. and internal organs distinguishing with the material flag. The user can evaluate electromagnetic filed distribution inside the body using NICT numerical human models. A stationary vector wave equation for the 3D full-wave electromagnetic field analysis is solved taking an electric field as an unknown function. The mesh is efficiently divided by using the domain decomposition data structure when elements of 200 million or more are generated from the voxel data of NICT numerical human body models. The mesh generation method corresponds to a past 32-bit I/O library in the ADVENTURE System. Numerical analyses are done using torso models and whole body models. The results prove that our method can precisely predict the distribution of the electromagnetic field in human bodies inside.
著者
大谷 浩一
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

健常人を対象にし、幼少時期に受けた両親からの養育的要因が、人格特徴・対人関係敏感性に与える影響について検討した。健常日本人を対象に、幼少時期に受けた養育環境、人格特徴全般、対人関係敏感性をそれぞれParental Bonding Instrument(PBI)、Temperament Character Inventory (TCI)、Interpersonal Sensitivity Measure(IPSM)を用いて評価した。本研究より、幼少時期に両親から受けた非機能的な養育的要因は、性特異性を持って、うつ病と関連する人格特徴および対人関係敏感性に影響を与えることが示された。
著者
原島 秀吉 紙谷 浩之 山田 勇磨 畠山 浩人 馬場 嘉信 秋田 英万
出版者
北海道大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

我々が独自に開発したin vivoがん送達型多機能性エンベロープ型ナノ構造体(PPD-MEND)に、がん細胞で選択的に発現している遺伝子に対するsiRNAを搭載し、抗腫瘍効果を誘起することができ、かつ、安全性の高い人工遺伝子デリバリーシステムを開発し、がん治療へと応用することを最終目標とした。その結果、shGALA修飾PEG-MENDは、静脈内投与により腫瘍組織でmRNAをノックダウンし抗腫瘍効果を誘起できることがわかった。
著者
脇坂 真美 宋 一大 田ヶ谷 浩邦 藤田 朋恵 前田 実花 野村 今日子 小林 真美 山本 明子 坂本 泰理 田中 理英子 熊谷 雄治
出版者
一般社団法人 日本臨床薬理学会
雑誌
臨床薬理 (ISSN:03881601)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.243-248, 2015-09-30 (Released:2016-01-15)
参考文献数
15

The aim of the present trial was to compare the sedative effects of second generation antihistamines in healthy adult male volunteers. This randomized, double-blind, cross-over clinical trial compared the effects of single doses of olopatadine 5 mg, ketotifen fumarate 1.38 mg, fexofenadine 60 mg, and placebo on psychomotor function in 15 healthy male subjects who gave written informed consent for participation in the study. For each sedative, sleep latency time was measured using the multiple sleep latency test (MSLT); and psychomotor function was measured by thresholds of critical flicker fusion (CFF), the digit symbol substitution test (DSST), and a Straight line Analog Rating Scale (LARS). Measurements were performed before and 2, 5, and 8h after drug administration. The differences between the drugs and placebo were analyzed by repeated analysis of variance (ANOVA) and paired t-tests as appropriate. Intergroup differences in baseline values of all parameters were not significant. Ketotifen induced the shortest sleep latency at 2h (p=0.03 vs. fexofenadine, p=0.03 vs. olopatadine) and 5h (p=0.04 vs. fexofenadine) after administration. Ketotifen also showed the most prolonged recognition (CFF down) at 2h (p<0.001 vs. fexofenadine, p=0.03 vs. olopatadine) and 8h (p=0.01 vs. fexofenadine). Olopatadine showed a more prolonged recognition than fexofenadine at 2h (p=0.03). Ketotifen induced the greatest decline in concentration and cognitive function at 8h (p=0.03) according to DSST. The drugs affected objective psychomotor function without causing subjective symptoms as shown by no significant differences in LARS score. The study indicates that the extent of impaired performance, an important adverse drug reaction, may differ even among second generation antihistamines.
著者
小林 宏行 押谷 浩 高村 光子 河野 浩太
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.57, no.10, pp.871-881, 1983-10-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
8

急性肺炎による呼吸不全を伴った症例 (15例) を対象に, 肺炎の早期治癒および呼吸不全の早期離脱を目的に広域抗生剤とステロイド剤の併用を行った.また家兎実験的肺炎を対象とし肺炎時呼吸不全発生のメカニズムおよびこれに対するステロイド剤の有用性について検討した.その結果, 肺炎発症後少なくとも4日以内にステロイドが併用されれば, 肺炎陰影の早期消失 (平均4.4日±1.7) およびPac2値の早期回復 (平均3.5日±1.4) が得られた.また, ステロイド併用によりその効果がみられなかった例は5例にみられ, これら症例のうち3例は高齢者高度進展肺炎で心不全併発による死亡例, 他の2例は肺炎治癒までに15日間を要した例であった. これら不成功例に共通することはステロイド併用開始時期の遅れ (平均7.6日±2.3) であった.肺炎時Pao2の低下は, 肺胞壁の著明な腫脹および肺胞腔内への滲出物充満等による肺内true shunt率増加にもとずくものとみられ, ステロイド剤はこれら肺胞壁の薄壁化あるいは滲出物を抑制しその結果呼吸不全の早期離脱を促進するものとみなされた.臨床的には以下の基準でステロイド併用が施行されることが望ましい. (1) 発病後4日以内, (2) Pao260mmHg以下, (3) 広域抗生剤の併用, (4) 使用期間は7日間以内.
著者
水谷 浩之
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織学会大会論文集 (ISSN:21868530)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.20-25, 2014-08-25 (Released:2014-08-28)
参考文献数
16

With the increase of decentralization, local governments are left to solve their own policy problems more than ever. Existing research focused on the decision making process of local government are scarce and fails to consider both organizational hierarchy and many participants. Based on these point, the purpose of this article is to investigate the decision making process of local government by expanding upon the Garbage Can Model of Cohen et al. (1972). I did both interviews and questionnaires targeted at staff in the Affairs Department of local government X. I found postponement of problems that the Section did not tackle problems and interruption that the decision making process went back former stage. This postponement had an effect to tackle important problems to be solved in the short term inside of the Section. In addition, in the situations where decision making process was in progress, postponement was to develop decision making process related to other important problems, and to solve these problems. Interruption had an effect to tackle important problems that the Section overlooked. The result shows that postponement of problems and interruption played an important role in the decision making process of local government X.
著者
三保谷 浩輝
出版者
時評社
雑誌
時評
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.160-163, 2010-02
著者
大江 将悟 渡邉 真也 塩谷 浩之
雑誌
研究報告数理モデル化と問題解決(MPS)
巻号頁・発行日
vol.2011-MPS-85, no.14, pp.1-6, 2011-09-08

投影方向の限定されたコンピュータトモグラフィ (Computed Tomography, CT) である少数投影 CT は逆問題の 1 種であり,欠損情報を推定することにより内部画像の再構成を行う.本研究では,この問題に対して GS アルゴリズム (Gerchberg-Saxton algorithm) と進化型多目的最適化手法 (Evolutionary Multi-criterion Optimization, EMO) を組み合わせた新たな手法を提案する.これは解の一意性が保証されず,実空間・逆空間の双方の空間において拘束条件が存在する少数投影 CT に対して,多点に基づく多目的の枠組みで最適化を行う EMO が親和的に機能すると考えられるからである.本研究では,上記の提案手法を用いて性質と解像度の異なる 3 種類の画像に対して数値実験を行ない,その有効性を検証した.
著者
金森 一紀 魚谷 浩平 高倉 文嗣 西岡 真二 越野 健 藤村 政樹 中積 泰人 岡藤 和博 松田 保 上尾 友美恵 柴山 正美 川井 清
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.24, no.9, pp.970-976, 1986-09-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
24

健常者および非発作期の気管支喘息患者を対象に深吸気の影響を検討した. Maximum expiratory flow-volume curve のV25をMEF25, これと同一肺気量における partial expiratory flow-volume curve のVをPEF25とし, Deep Inspimtion (DI) Index=(PEF25-MEF25)/PEF25を求めた. 健常者では若年者の DI Index は負となり深呼吸による気道拡張効果が認められたが, この効果は加齢とともに減弱し, 50歳以上では DI Index は正の値になった. 抗コリン剤吸入後には DI Index は有意に増加して正の値となり年齢差は認められなくなったことから, 若年者では迷走神経の緊張が強く気道の resting tone が収縮性に保たれていることが推測された. 気管支喘息のうち40歳未満で%FEV1.0≧70%の患者では DI Index は負となり, 抗コリン剤吸入後には有意に増加して年の値となったことから, 気管支喘息でも深呼吸の気道拡張効果は存在し迷走神経が関与していると考えられた.
著者
柳内 延也 塩谷 茂信 水野 雅之 鍋谷 浩志 中嶋 光敏
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.87-91, 2004-02-15
参考文献数
10
被引用文献数
1 2

動物エキス中に存在するアンセリンとカルノシンをヒスチジン含有ジペプチド(HCDP)総量として測定する迅速・簡便な定量法について検討した.熱水抽出した各種動物エキス(牛肉,豚肉,鶏肉及びマグロ煮汁)をTSKG-2500PWXlカラムへ注入し,0.1%トリフルオロ酢酸含有45%アセトニトニトリルを溶媒として流速0.5mL/minで展開し,波長210nmの検出器で検出した.動物エキス中のアンセリンとカルノシンは同じ単一ピークとして溶出され,他の蛋白質,ペプチド及びアミノ酸と分離された.アンセリンとカルノシンで構成される単一ピークにはリジンとアルギニンが微量混在していたが,これらのアミノ酸は波長210nmに吸収を持たないものなので,アンセリン又はカルノシンと同一の溶出位置に検出されたピークはHCDPピークと見なすことが可能であった.本法ではアンセリンとカルノシンの個別定量は出来ないが,各種動物エキス中のHCDP含量を1検体あたりわずか30分で定量が可能であり,この測定値はアミノ酸自動分析計で測定されるアンセリン-カルノシンの合計値と良く一致する結果であった.