著者
辻本 実央
出版者
上智大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、9世紀後半から13世紀のクメール遺跡を飾る浮彫に描かれた人物彫刻の様式と遺跡等との関連性の変遷について明らかにし、クメール美術史全体をつらぬく大きなフレームワークとして人物彫刻を題材とした自律的な東南アジア美術史観を提示することである。本研究で具体的に明らかにしようとすることは次の2点である.各点について研究成果をまとめる。第一に、アンコール王朝が興隆したおよそ9世紀から13世紀までを網羅するクメール遺跡(計35)の建築装飾に用いられた人物彫刻の特徴的な様式、所属する建築物とそこにおける配置関係の歴史的展開を明らかにする、そのために全クメール史を網羅する人物像彫刻の独白データベースを構築したその分析から、2つの先行研究にない新たな事実を発見した。第一に、穏やかな表情をしたドゥバラパラ像を対で置く設置方法の出現である,第二に、中央祠堂における女性立像の専有が特定の遺跡でみられることである。第一の点については、壁面浮彫から憤怒相のドゥバラパラ像が切り離されたと考えられる。この間一貫してドゥバラパラ像の役割は守門神であったといえる、第二の点については、女性立像が2つの役割を果たしていると考えられる。第一に守門神としての役割、第二に建物自体を荘厳するための装飾的な要素としての機能である.サンスクリットでは前者は「ドヴァラパリカ」、後者は「スラスンダリ」に相当する。後者では、国家鎮護寺院として設置された建物が選択的に女性立像を中央祠堂に配置している。第二に、上記で明らかになった特徴的な様式とその展開が、クメール文明内で独自に起きた表現様式の模倣・拡大・変容といえるのか、域外文明からの影響によるものなのかを明らかにする。現段階では明示的な結果は得られていないが継続的に分析を続ける。
著者
倉辻 比呂志
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:05272997)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.227-232, 1987-06-20

この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。
著者
山村 則男 辻 宣行
出版者
佐賀医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

平成四年度では4つの保護形式、両親保護、オス保護、メス保護と無保護のいづれが純粋戦略になるかを、性比、両親保護と片親保護の場合の子供の数の比、片親保護と無保護の場合の子供の数の比の3つのパラメータで記述した。保護形式を決定する重要なパラメータは性比であることがわかった。また父性の不確かさがメス保護が多い理由のひとつであろうと思われた。オス保護とメス保護が重なったり、両親保護と無保護が重なったりする場合もある。どちらになるかは過去からの進化の歴史が決定する(3つのうちのどのパラメータが変化したか)。これらの結果はBehavioral Ecologyに掲載された。平成五年度は保護形式の多型に論点を移した。同一種内に複数の保育パターンが存在するもの(例えば地中海のクジャクベラ)、あるいは近縁種のグループ内に多種の保育パターンが存在するもの(例えば、一夫多妻の鳥、カエル類)等の実際の生物と、我々のモデルとの比較対応を行った。各分類の専門の生態学者からの情報をもとにして、モデルの予測と、その実際の保護形式を比較検討中である。また我々のモデルにおいては、実効性比が一番重要であったが、はたして性比が本当に一番影響が大きいのかを実際の生物で検討中である。また、保育行動の進化の統一的理論として遺伝的、生態的な総合的考察はその問題の大きさのために完了していない。一方、保育とは血縁関係のある親と子供の利益の対立である。保育することで親は繁殖の機会を失うが、子供は生存率が増す。即ち、親はできるならば保育はやりたくなく、子供は親にやらせたい。このような血縁のあるもの同士での利害の対立を、京都大学・阿部琢哉、東正彦らと共に数理モデルで検討した。この結果はEvolutionに掲載された。
著者
吉井 博明 松田 美佐 羽渕 一代 土橋 臣吾 石井 健一 辻 泉 三上 俊治
出版者
東京経済大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

日韓台の携帯電話及びインターネットの利用実態を調査した結果、日韓台ともにほぼ同じ頃に急速に普及したという点では同じであるが、その利用形態には大きな違いがみられることを実証することができた。また、これらの通信メディアの使い分けは、各国・地域のコミュニケーション文化を色濃く反映する「通信文化」と呼ぶべきものが存在し、それに強く規定されていることがわかった。たとえば、韓国では、携帯電話を通話に使うことが非常に多く、日本では通話よりメールがよく使われている。この背景には、親しい人への連絡手段の選択に際して、相手が置かれている状況への配慮をどの程度すべきかというコミュニケーション文化の違いがある。韓国の場合は、「ウリ」と呼ばれる親しい集団の間では、遠慮をすることがあってはならないという文化があり、通信手段の選択に関しても遠慮しないことが求められ、その結果、リッチネスが高いメディアである、通話が積極的に使われる。これに対して日本では、親しい人への連絡に際しても、相手への配慮を欠いてはいけないとする「抑制」のコミュニケーション文化があり、このためメールが多用されるのである。また、日台の携帯電話利用の比較をしてみると、もっとも大きな違いは、利用の効用として「家族とのコミュニケーションが増えた」ことをあげる人の割合が日本では少ないのに対して、台湾では非常に多いことがあげられる。携帯電話利用がその社会でもっとも親しい集団の凝集力を強化する働きがあるという点では共通しているが、それがどの集団化ということになると、台湾では家族であり、日本ではふだんよく会う友人集団、韓国では「ウリ」という仲間集団ということになるのである。以上述べたように、日韓台の比較調査により、それぞれの国や地域に固有な通信文化が存在し、それが携帯電話を含む通信メディアの使い分けを規定していることがわかった。
著者
辻 雄一郎
出版者
日本法政学会
雑誌
法政論叢 (ISSN:03865266)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.108-137, 2009-11-15

In the United States, the Brandenburg test has been applied to the incitement of the illegal action in the physical world. In this paper, the author asks whether this Brandenburg test is applicable in the internet. Cyberspace has several special factors which do not exist in the physical world. Everyone can be the speaker at a cheap price. The message is sent all over the world instantly. This convenient tool has dark sides such as email bombs, and intimidation homepages. In the internet age, we need to ask the question whether the Brandenburg test is modified or abolished totally in this information society because of these special features of the internet. There are various tools to send messages via internet such as e-mail, homepage, blog, newsletter, mailing list, etc. In this paper, the author focuses just on the expression opened to the public. The author believes that before seeing the internet problem, it is necessary for us to see the origin and applicability of the Brandenburg test in the physical world. The Brandenburg test is not a given. Its origin is clear and the present danger test shaped in common law. In the conclusion, the author suggests that the Brandenburg test has some future since it has been used to protect the opinion of the minority in the real world. However, this test was used mostly in the peaceful period. We need to be vigilant to see this test for internet society.
著者
辻 正二 中村 彰治 原田 規章 坪郷 英彦 松野 浩嗣 石田 成則 高野 和良 速水 聖子 鍋山 祥子 林 寛子 高橋 征仁
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

現在の高度産業社会には、これまで人類の歴史が経験したことのない新しい時間問題が生まれている。これまで人類は、進化の中で身につけた生命的時間と人間が自ら形成した社会的時間をうまく調和させてきたが、今日のグローバル化と情報通信技術の進展によって生じたハイスピード化社会は、社会的時間を大きく変化させて、人類の時間構造に歪みを増幅させて、生命的時間に慢性的時差ボケを生みつつある。今回の時間意識の調査研究ではハイスピード化によって社会的時間の変化が生じており、これが生命的時間との間でズレを生んでいることがある程度明らかになった。調査データの分析からは、ハイスピード化が生命的時間に負の影響をもたらし、青年や高齢者に身体の不調(疲労やイライラ度や不眠や生理不順など)や社会病理の原因を生んでいることが明らかになった。
著者
臼井 キミカ 上西 洋子 辻下 守弘 佐瀬 美恵子 白井 みどり 佐々木 八千代 兼田 美代 津村 智恵子 後藤 由美子 山本 美輪 山本 裕子 川井 太加子 鷹居 樹八子 柴田 幸子 杉山 百代 中村 里江 北沢 啓子 南部 純子 浅田 さゆり 才木 千恵 正田 美紀
出版者
大阪市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

研究目的は、重度認知症高齢者の基本的な生活支援技術を明らかにして、その研修プログラムを開発し、重度認知症高齢者のQOLの向上を図ることであり、目的達成のために重度認知症高齢者を対象とした2カ月間の小集団回想法、6カ月間の手織りプログラム、5週間の生活支援技術に関する介入、及び国内外の看護職等への面接調査を通じて重度認知症高齢者への日常生活支援技術研修プログラムを作成し、複数回の研修を実施しそのプログラムが有効であることを評価した。
著者
辻 絵理子
出版者
早稲田大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

科研を用いた海外調査では、申請書の計画通りブリティッシュ・ライブラリーの最重要写本のひとつである『テオドロス詩篇』、及びフランス国立図書館の『パリの74番』の実見調査が叶った。この二冊は11世紀ビザンティンの修道院写本工房を考える上で不可欠な写本であり、顔料の剥落の度合いや綴じの状態などを詳細に調査することができた意義は大きい。研究成果としては、まず美術史学会全国大会、美学会、比較文学研究会において計4回の口頭発表を行った。それぞれ、会の特質に合わせたテーマめ選定と研究手法を選んだことで、活発な質疑を行うことができた。本年度特に意識したことは西ヨーロッパとの関わりであり、両者に共通するモティーフを取り上げ分析することで、各方面の専門家からのご意見を伺うことができた。また、美学会では新しい余白挿絵詩篇の分析方法を提示し、方法論に優れた専門家からの意見を求めた。二度にわたる比較文学研究会の発表においては、比較文学的な観点からモティーフめ東西伝播を探り、あるいは美学会で示した新たな手法を実際に適用することで得られた知見を発表した。それらの口頭発表のうち2本を、今年度中に論文の形で発表することができた。ひとつでは西洋古代の写本から中世までのイメージの変遷を辿り、それがやがて日本近代に形を変えて受け入れられていく過程を指摘した。もうひとつでは、『ブリストル詩篇』のこれまで等閑視されていた頁に隠された意味と機能を、口頭発表でも示した手法を用いて分析・指摘した。
著者
中村 剛 野瀬 善明 高辻 俊宏
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究の最大の成果は、福岡市医師会との密接な協力関係のもと、「大型回遊魚の摂取⇒有害ミネラルの蓄積⇒乳幼児健康異常」といった仮説を検証し、臨床還元するためのプロジェクトが動き出したことである。九州大学医学部倫理委員会で承認され(代表者:野瀬善明教授)、既に親子約600組のコホート集団が構成されつつあり、毛髪の測定機器の準備も整いつつあるが、本研究の範囲を越えるので詳細は省く。以下において、項目ごとに研究成果のまとめを記す。1.多変量比例ハザード測定誤差モデル用FORTRANプログラムを作成しアップした。2.食習慣調査と遺伝要因調査:タッチパネルとパソコンを連動することにより、液晶画面にタッチして回答を入力するシステムを開発した。質問内容は(1)アトピー性皮膚炎診断のための5項目、(2)肉、野菜、魚の摂食割合、(3)よく食べる寿司ネタ、(4)大型回遊魚の摂食回数に関する3項目、からなる。3.長崎市保健センターにて実施した結果80%という期待通りの受診者が参加した。しかし、質問紙によるアンケートも実施し、回答率、信頼性を比較した結果、大勢を対象とした調査では、質問紙による方が優れていると結論された。4.約600名の分析結果として7%がアトピー、更に7%がアトピー疑い、とされた。5.ロジスティック回帰モデルによる解析の結果、(1)親族にアトピー、ぜんそく、アレルギー体質の方がいるとアトピーのリスクが高い。(2)女のほうが男よりアトピーのリスクが高い。(3)小型魚の割合が高いほどリスクが低い。(4)卵の回数が多いほどリスクが低い。特に0から2までのリスクの減少が大きい。結論:大型回遊魚との関連はみられなかったが、性別、遺伝要因の影響を修正したあとに、小型魚の摂食回数がリスクを減少するという新たな知見を得た。また卵の摂食回数が少ない程リスクが高いのは、家庭での料理の回数が少ないほどリスクが高いことを示唆していると推察される。
著者
利安 義雄 大辻 永 山本 勝博
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究では4本の柱を立て、「総合的な学習」への活用のカリキュラムを開発した。1.伝統的染色技術の教材化「水戸黒染め」の再現と簡便法を確立し、文部科学省のSPP事業の教員研修において実践を行った。一方,茨城の大洗海岸において採集した海藻(アオサ、カジメなど)を用いて海産物による染色法を開発し、地域のこども科学館で実践した。海藻からの色素の抽出について適正なpHを調べて、授業時間内に効果的に抽出できる条件を見つけた。2.茨城県の地震関連教材前年度開発した簡易水平動地震計で新潟中越地震および茨城県周辺の多くの地震を計測できた。今回は、地震が発生すると計測を始める簡易上下動地震計を開発した。作動するセンサーはカラクリ技術で作り、記録ドラム部分はオルゴールを使用し、、振動本体部分は木製にした。さらに、最近の茨城地方に発生した地震の各観測地点でのデータから振動開始時間と震度の分布マップを作った。3.茨城県の塩に関わる教材化。茨城県海岸地方の釜や塩に関連した地名と古代製塩との関係と、昔塩の内陸への輸送路になった「塩の道」の調査を行った。また塩の字名の多い大子町の湧水、鉱泉、温泉水の水質分析(イオン分析)を行った。ジュラ紀の八溝中生層は非常にきれいな水が多く、主要な溶存イオンは、重炭酸カルシウムである。一方、第3紀層に属する北田気・浅川層は、鉱泉・温泉群が多く分布して、溶存イオンは硫酸ナトリウム・塩化ナトリウムが多かった。また、水戸の名産梅干を作るときの梅酢より、正八面体の食塩を析出させる条件を見出した。4.山寺の水道の教材化永田茂衛門・勘衛門親子の江堰に関する文献調査をすすめた。一部の成果を、SPP事業中学校理科教員研修において実践を行い、自然と人間とがかかわった「総合学習的な学習」への地域教材の一例として提示した。
著者
恩田 裕一 辻村 真貴 松下 文経
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

北東アジア地域における土地の荒廃について、現地調査およびリモートセンシングによって調査を行った。土地荒廃の理由としては、伐採、リターの採取、プランテーション、過放牧と様々な土地改変が行われており、それによる表面被覆の低下による土壌の浸透能の低下が激しい土壌侵食を引き起こし、土地荒廃の直接的な引き金になっていると考えられる。一方で、中国においては、植林の進展につれて、浸透能の増加、および土壌侵食量の減少も報告されている。本研究においては、現地と協力した詳細な現地調査および、リモートセンシングによって、表面被覆が回復すると浸透能が増加し、土壌侵食量が減少したことがあきらかとなった。また、リモートセンシングによって、NDVIの解析により東アジア全体における荒廃度の変化について、MAPを作成することができた。
著者
中辻 史好 林 美樹 橋本 雅善 丸山 良夫 馬場谷 勝廣 平尾 佳彦 岡島 英五郎
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.76, no.12, pp.1914-1918, 1985-12-20

膀胱原発のMalignant fibrous histiocytoma(以下MFHと略す)は極めてまれであり,本邦では現在までに1例のみ報告されているにすぎない.本症例は排尿困難を主訴として1982年6月4日当科を受診し,膀胱鏡にて頂部右側に直径約2cmの表面平滑な腫瘍と三角部に小豆大の乳頭状腫瘍を認めた.入院時諸検査に異常を認めなかった.膀胱二重造影,膀胱エコー,膀胱CT及び骨盤動脈造影にて頂部の腫瘍は臨床的深達度T_3a,三角部の腫瘍は臨床的深達度T_1の診断のもとに7月28日TURBtを施行した.病理組織学的に頂部の腫瘍はMFH,三角部の腫瘍はInverted papillomaと診断され,頂部の腫瘍に対しては8月10日膀胱部分切除術を施行した.術後vincristine 1mg,peplomycin 10mg,adriamycin 30mgによる多剤併用化学療法を3コース施行し,liniac 4,200radを照射した.術後28カ月現在,再発転移を認めず,経過観察中である.
著者
竹内 洋一郎 石田 良平 辻 正利
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會論文集. A編 (ISSN:03875008)
巻号頁・発行日
vol.48, no.430, pp.747-757, 1982-06-28
被引用文献数
2

有限円柱の一つの端面に偏心円形熱源のある問題は,平面熱応力問題として解決できない厚肉円板の,一方の平たん部の境界面に偏心円形熱源の問題ともなり,工業上有用性が多い.この問題は完全ないわゆる三次元熱応力問題による解析によらねばならない.本研究は熱弾性変位ポテンシャル,ミッチェルおよびブシネの関数の三者に関する熱弾性基礎方程式を解いて,非定常熱応力分布を求めた.
著者
辻 高明
出版者
一般社団法人国際P2M学会
雑誌
国際プロジェクト・プログラムマネジメント学会誌
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.159-168, 2009-10-30

フィールド情報学とは、フィールドで生じる諸問題に対して、情報学の視点からその解決法を提案することを目的とした新しい学問領域である。本論文では、フィールド情報学の特徴を、それを構成する9つの手法の紹介を通して解説する。次に、フィールド情報学はどのような情報学として捉えられるのか、また、どのような点が文理融合として捉えられるのかについて分析することで、領域横断的な新しい分野としてのフィールド情報学の姿を提起する。最後に、フィールド情報学の方法論がP2Mにどのように寄与し得るのかについて考察する。
著者
吉沢 滋 中條 秀彦 秋庭 直樹 辻村 健一 長島 均 丸藤 貴史 木下 裕一郎 黒木 佳史 種市 修浩 千葉 豊治 坪井 則昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1995, no.2, 1995-03-27
被引用文献数
4

デジタル磁気記録読出し波形を数ビット(bと略)毎に切出し、ニューラルネット(NNと略)に学習、認識させるニューロ弁別(この様に略)はNNの学習能力により、干渉波形を学習させる事で高密度弁別が可能となり、NNの未学習入力も認識する汎化能力により、記録密度変動にも強い特徴を持つ。この二つの特徴とその実現可能性はシミュレーションですでに示した。また、この方法は従来の1b波形中の1点の振幅或は位相で判断するのではなく、数bの波形全体で判断するいわば波形弁別なので、高周波正弦波雑音や、幅の狭いパルス雑音に強い特徴的な雑音弁別特性をも持つ。ニューロ弁別の学習は高密度波形と低密度波形の二つを学習させると、NNの汎化能力により、その中間及び、付近の範囲外も認識できる。しかし、高密度学習波形の記録密度、振幅の選び方は難しく、弁別限界(どこまで高密度波形を弁別できるか)に大きく影響する。アナログニューロ弁別で学習波形の振幅と密度を組合せた学習法を試み、従来を上回る弁別限界が得られたので、報告する。
著者
中森 茂 高木 博史 高橋 正和 辻本 和久
出版者
福井県立大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

絹タンパク質、セリシンにはSer、Thrなどの親水性アミノ酸残基に富む38残基の特徴的なアミノ酸配列が含まれている。本研究ではこれまでにセリシンの加水分解物や、上記38残基が2回連続したペプチドが昆虫細胞Sf9の血清中での細胞死に対して抑制活性があることを示してきたが、本年度の研究で以下のような新しい発見があった。1)38残基ペプチドの細胞死抑制効果の活性中心が10残基のペプチドSP3にあることを示した。この配列はSGGSSTYGYSである。2)SP3のC末端-YGYSをWGWSに変えても活性に差はないが、-AGASに変えると活性がなくなった。この事実からTyr, Trpなどの芳香族アミノ酸が活性に重要な役割を果たしていることが示された。3)NおよびC末端のSを削除したペプチドでは活性が大幅に低下した。このことからSerも重要な役割を持つことが示された。4)昆虫細胞Sf9の16時間培養後のDNAの電気泳動の解析によって明瞭なヌクレオソーム単位毎の特異的な切断が観察され、この細胞の死がアポトーシスによること、セリシンの加水分解物の添加がアポトーシスを抑制することが示された。