著者
山本 将平 外山 大輔 杉下 友美子 金子 綾太 岡本 奈央子 小金澤 征也 藤田 祥央 秋山 康介 磯山 恵一
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.182-186, 2018 (Released:2018-07-31)
参考文献数
8

小児がん患者家族の会(以下家族の会)は,がんの子どもを持つ同じ境遇の家族からなる自助グループであり,各小児がん診療施設に存在している.医療者とは独立した組織であり,家族にとって心強い存在であるにも関わらず家族の会がない施設も多数みられる.家族の会の立ち上げ,運営を企画する有志の家族がいないことが理由として考えられている.我々は,医師の声かけによって家族の会を立ち上げた.医師から直接,数名の家族に家族の会の幹事をお願いする方法で幹事を決定した.家族の会立ち上げ準備会で会の詳細を決定し,発案から3か月で家族の会を開催することができた.会の立ち上げには医師が関わったが,その後の運営には医師,看護師などの医療者は関与していない.家族の会の定期的な開催には,開催場所の確保,対象家族への案内が必須であり医療者の理解と協力が必要である.家族の会の立ち上げが医療者の声かけによってなされることでお互いの良好な関係が構築できる利点がある.また,これにより,家族の会がピアサポーターとして患者家族と医療者の橋渡し的な存在となりうる.本方法による家族の会の立ち上げは,今後,家族の会の立ち上げを考えている施設のモデルケースとなりうるためここに報告する.
著者
吉田 光司 金澤 弓子 鈴木 貢次郎 根本 正之
出版者
日本雑草防除研究会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.63-70, 2009

ナガミヒナゲシが国内で急速に帰化している原因を,実験によって求めた種子発芽特性から考察した。野外の播種実験の結果,6月の種子散布後,散布当年の秋季と翌春に多くの出芽をみた。次に室内で,異なる温度と水分条件に貯蔵した種子を定期的に取り出す発芽試験を行った。その結果,(1)種子を湿潤・暖温条件に2∼3ヶ月間貯蔵してから5°Cで発芽させた場合,(2)湿潤・暖温条件に3ヶ月間貯蔵した後に湿潤・冷温条件に半月∼1ヶ月間貯蔵してから10∼20°Cで発芽させた場合,(3)30°C/10°Cの変温条件で発芽させた場合に高い発芽率を示した。これらの野外と室内の発芽実験の結果から,自然環境条件では夏季の暖温湿潤条件を経て地温が低くなる秋季と,冬季の冷温を経て地温が上昇する春季に多く発芽することが確かめられた。また,高温や室温の乾燥条件に約3年間貯蔵した種子や,暗条件ではほとんど発芽しなかったことから,土中では埋土種子となって長期間残ることが予測された。試験から得られたナガミヒナゲシの発芽条件から国内の分布を説明できた。また,同種が多く分布している国内外の地域の年平均気温と年間降水量は一致した。
著者
吉田 光司 金澤 弓子 鈴木 貢次郎 根本 正之
出版者
日本雑草防除研究会
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.63-70, 2009 (Released:2011-03-05)

ナガミヒナゲシが国内で急速に帰化している原因を、実験によって求めた種子発芽特性から考察した。野外の播種実験の結果、6月の種子散布後、散布当年の秋季と翌春に多くの出芽をみた。次に室内で、異なる温度と水分条件に貯蔵した種子を定期的に取り出す発芽試験を行った。その結果、(1)種子を湿潤・暖温条件に2〜3ヶ月間貯蔵してから5℃で発芽させた場合、(2)湿潤・暖温条件に3ヶ月間貯蔵した後に湿潤・冷温条件に半月〜1ヶ月間貯蔵してから10〜20℃で発芽させた場合、(3)30℃/10℃の変温条件で発芽させた場合に高い発芽率を示した。これらの野外と室内の発芽実験の結果から、自然環境条件では夏季の暖温湿潤条件を経て地温が低くなる秋季と、冬季の冷温を経て地温が上昇する春季に多く発芽することが確かめられた。また、高温や室温の乾燥条件に約3年間貯蔵した種子や、暗条件ではほとんど発芽しなかったことから、土中では埋土種子となって長期間残ることが予測された。試験から得られたナガミヒナゲシの発芽条件から国内の分布を説明できた。また、同種が多く分布している国内外の地域の年平均気温と年間降水量は一致した。
著者
小金澤 正昭 田村 宜格 奥田 圭 福井 えみ子
出版者
森林立地学会
雑誌
森林立地 (ISSN:03888673)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.99-104, 2013-12-25 (Released:2017-04-03)

2011年3月に起きた東京電力福島第一原子力発電所の爆発事故は,広範な地域に放射性核種を飛散させ,原発から約160 km離れた栃木県奥日光および足尾地域においても低線量ではあるが,放射性セシウムの飛散が確認された。そこで,今後,森林生態系における放射性セシウムの動態と野生動物に及ぼす影響を明らかにしていく上での基礎資料を得るため,両地域において2012年の2月と3月に個体数調整で捕獲された計80個体のニホンジカの筋肉,臓器類および消化管内容物等の計9試料と,各地域における冬季のシカの餌植物8種の放射性セシウム濃度を調べた。9試料のセシウム濃度は,両地域ともに直腸内容物が最も高く,次いで第一胃内容物,筋肉,腎臓,肝臓,心臓,肺,胎児,羊水の順となっていた。このことから,放射性セシウムは,シカの体内全体に蓄積していることが明らかとなった。また,奥日光と足尾における放射性セシウムのシカへの蓄積傾向には,明瞭な差異が認められた。これは,両地域における放射性セシウムの沈着量と冬季の餌資源の違いが反映した結果と考えられた。さらに,直腸内容物の放射性セシウム濃度は,第一胃内容物および餌植物8種よりも高濃度であった。このことから,シカは採食,消化,吸収を通じて,放射性セシウムの濃縮を招いていることが示唆された。
著者
小金澤 鋼一
出版者
早稲田大学
巻号頁・発行日
1987

博士論文
著者
竹中 賢治 小林 淳 金澤 綾子 足立 佐知 小田 奨 佐々木 眞悟
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第14回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.41-46, 2017 (Released:2017-11-01)
参考文献数
3

特許情報の分析結果から、商品開発戦略や知財戦略立案に役立つ情報を抽出する際に、「SWOT分析」は、複雑な作業を必要とせず実用性は高い。一方、これら戦略立案事例は、企業内で閉じられて紹介される機会は少なく、筆者らは、具体的な題材を扱い、SWOT分析の実践事例を重ね、その実用性を確認してきた。 そして、近年着目される技術の中から機能性塗料の分野で遮熱塗料について焦点をあて、遮熱塗料に関連して出願された特許情報をもとにSWOT分析を行い、商品開発戦略の創出作業を試みた。戦略創出の検証作業は「塗料」業界大手事業者のK社にあてはめて行った。 特許情報を分析し、「SWOT」情報を得ようとする際、「S(強み)」情報の抽出過程において難しさがあることがわかり、この点の打開策を思考し考察した。強み把握に対する提言をまとめるに至ったので報告する。
著者
金澤 太茂 小長谷 敏浩 今村 祐志 金山 範明 松永 昌宏 大平 英樹 福山 誠介 篠田 淳 野村 理朗 野木森 剛 金子 宏 各務 伸一
出版者
愛知医科大学
雑誌
愛知医科大学医学会雑誌 (ISSN:03010902)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.59-70, 2007-06

Background: Brain activation areas in relation to bowel stimuli have been reported using brain imaging techniques in patients with irritable bowel syndrome(IBS). However, the results are controversial. The aim of this study is to clarify responsible brain site(s) when stimulated by the rectal balloon distension-induced abdominal symptom in IBS in terms of braingut interactions. Methods: Seven healthy volunteers and five patients with diarrhea-predominant IBS based on the Rome II criteria were recruited. All were right-handed men. Rectal sensitivity was examined with balloon distension using a barostat device. Studies are performed with or without rectal distension(RD). Each task took 4 minutes. The subjects were assigned to have each twice task at the individual pain threshold level with 11 minute intervals. The changes in brain blood flow were evaluated using H_2 ^<15>O-water positron emission tomography. Subjects were asked rectal pain and stress level with visual analogue scale(VAS) before and soon after the respective task. Blood pressure, heart rate, and several serum stress-related substances were also investigated. Results: The threshold of pressure for rectal pain was significantly lower in the IBS patients(IBS=14.4mmHg, volunteers=26.3mmHg on average). The IBS patients showed a significant increase in blood flow in especially insula, and in thalamus at RD as compared with that in volunteers. Analyzing changes in VAS score before and after task, an increase of score about physical stress was significantly larger in the IBS patients in RD although no differences was noted in pain perceived score among all subjects in RD. A tendency of correlation was observed between the RD-induced increment in blood flow in insula and that in VAS score of stress-feeling. Conclusions: The IBS patients had a significantly lower pain threshold against RD. Under RD stress at an individual pain threshold, a significant objective activation in insula, subjective physical stress, and correlation between them were obtained, indicating the brain activation magnitude-correlated stress in IBS.
著者
金澤 裕治
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.2382-2391, 2016-11-15

厳密解を求めるのが困難でヒューリスティクスによって解かれている問題で,計算機が熟練者を上回ることが困難なものが存在する.そのような問題において,ヒューリスティクス手法を多数のパラメータで制御できるようにしておき,そのパラメータを機械学習によりチューニングすることで,熟練者の判断を再現できれば,解法の性能向上が期待できる.そのために解決しなければならない課題の1つが,教師データの不足である.本論文では,教師データが不足した環境で学習結果に含まれる誤りを改善する強化学習類似手法を提案する.提案手法を将棋プログラムBonanza 6.0の機械学習テーブル改善に適用し,1回の適用でイロレーティングが平均25程度,繰り返し適用することで,最終的には150程度向上した.
著者
森田 裕子 水村 亮介 橘 義貴 金澤 秀子
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 = Japan analyst (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.541-545, 2013-06-05
参考文献数
14
被引用文献数
2

Cation exchange resins (calcium polystyrene sulfonate, Ca-resin and sodium polystyrene sulfonate, Na-resin) have been used as agents to improve hyperkerlemia. For removing <sup>137</sup>Cs from the human body, the adsorption ability of the resin for <sup>137</sup>Cs was examined and evaluated. Resin (0.03 g) and <sup>137</sup>Cs (ca.1 kBq) were introduced into 3 mL of water, the Japanese Pharmacopoeia 1st fluid for a dissolution test (pH 1.2) and 2nd fluid (pH 6.8), respectively, and shaken. After 1-3 hours, the <sup>137</sup>Cs adsorption (%) of Na-resin was 99% in water, 60% in a pH 1.2 fluid and, 66% in a pH 6.8 fluid. By adding potassium, the <sup>137</sup>Cs adsorption (%) of Ca-resin was reduced. However, the <sup>137</sup>Cs adsorption (%) of Na-resin was almost unchanged. These results show that both resins have adsorption ability for <sup>137</sup>Cs in the stomach and the intestines. Therefore, the proposed method will be an effective means in the case of a radiological emergency due to <sup>137</sup>Cs.
著者
松本 拓哉 金澤 浩 大津 知昌 成尾 政一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0642, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】ストレッチングには,スタティックストレッチング(SS)やダイナミックストレッチング,バリスティックストレッチングなど,多様な方法がある。中でもSSは,伸張反射が起こりにくく,筋腱の損傷が少ない安全な方法であるとされている。筋の伸張性が筋力に及ぼす影響を調査した研究は多数行われているが,筋のストレッチングが拮抗筋へ与える影響を調査した報告は少ない。中島ら(2012)は,ハムストリングのSSを1週間継続した結果,膝関節伸展トルクの有意な増加が認められたと報告している。我々は,SS直後に拮抗筋の筋力が向上すれば,運動療法をより効果的に実施することが出来るのではないかと考えた。本研究の目的は,股関節内転筋群(AD)にSSを加え,拮抗筋である股関節外転筋群(AB)の筋出力が向上するかを確認することである。【方法】対象は,整形外科的疾患や神経学的疾患がない健康な成人男性50名(平均年齢25.1±2.5歳,身長171.1±4.5cm,体重65.5±9.1kg)とした。はじめに,右股関節外転角度を,角度計で他動的に計測し,疼痛の出現する直前の角度を記録した。続いて,右ABの最大随意等尺性収縮(MVC)を,サイベックスノルムCN77(CSMI社)を用い,肢位は「筋力測定装置CYBEX NORM User's Manual」に準じて側臥位とし,股関節外転のMVCを3回行った。その後,背臥位で,右ADに対するSSを,30秒間保持の4セット,疼痛の出現する直前の強度で実施した。SS後,股関節外転角度,及びMVCの測定を再度行い,ABのピークトルク,体重比(%BC)を算出し,SSの前後で比較した。股関節外転角度とABのピークトルク,%BCの差の比較には,Wilcoxonの符号付き順位和検定を用い,有意水準は5%とした。【結果】SS前後の股関節外転角度の平均は,SS前42.6°±4.4°,SS後47.2°±4.1°で,SS後の股関節外転角度の有意な増大を示した。ABのピークトルクの平均も,SS前87.5±26.8Nm,SS後は94.3±29.5Nmとなり,SS後が有意に増大した。ABの%BCの平均についても,SS前135.1±42.5,SS後145.8±46.6で,SS後は有意な増大が得られた。【考察】股関節外転角度はSSにより11%の有意な増大を示したことから,ADの伸張性は改善し,SSの効果は得られていたと考えられる。Siatrasら(2008)は,30秒以上のSSで関節可動性が有意に増大したと報告していることから,本研究のSSの実施時間は,ADの伸張性を改善させるには,十分であったといえる。対象筋に対するSSの効果を調査した報告は多く,濱田ら(2008)は筋パワーの低下をもたらすとし,Rubiniら(2007)は最大筋発揮やパフォーマンスを低下させると報告している。本研究ではADのSS後に,拮抗筋のABのピークトルクが7.7%,%BCは7.9%向上したことが確認され,SSは拮抗筋の筋出力の向上に即時的な効果があることが示された。筋力発揮に関わる因子は多く挙げられるが,その中でも効果的な筋力発揮を得るための相反神経支配の関与が重要視されている。通常,関節運動時には拮抗筋の活動は完全には抑制されず共収縮が生じており,本研究ではSSによってADの伸張性が増大した結果,ADの共収縮が低下し,拮抗筋であるABの筋出力が改善したことが一つの要因ではないかと考える。本研究の結果,筋力強化の対象筋が明確な場合,SSは拮抗筋の筋出力を即時的に改善させることから,SSを行うことで拮抗筋の筋力を効率よく発揮出来ることがわかった。【理学療法学研究としての意義】主動作筋の筋力増強運動を行う直前に拮抗筋のSSを行うことで,より効果の高い運動療法が実施出来ると考える。
著者
山本 嘉則 金澤 朋子 栗田 誠也 青木 茂男 関口 伸雄 板東 剛
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌
巻号頁・発行日
vol.1998, no.3, pp.181-186, 1998

2-アセチル-8-ヒドロキシキノリン-5-スルホン酸 (1) と2, 4-ジアセチル-8-ヒドロキシキノリン-5-スルポソ酸 (2) が新規に合成され, どちらもスルホン酸のナトリウム塩として単離された. 25℃ の水溶液中, 紫外・可視吸収スペクトルの測定により, その酸解離定数とCa (II), Mg (II) との錯形成を調べた. フェノール部分のpK<SUB>a</SUB> (イオン強度0.1) は1が7.81, 2は7.45であり, 環窒素のpK<SUB>a</SUB> (Hammettの酸度関数を使用) は1が-0.31, 2は-1.40であった. 1:1錯体の生成定数 (イオン強度0.1) の対数は1-Ca (II) は3.87, 1-Mg (II) は1.48, 2-Ca (II) は3.60, 2-Mg (II) は1.42であった. ここでCa (II) は1, 2の吸収極大波長の位置を明確に長波長側に移動させるのに対し, Mg (II) は全く移動させない. 以上から, Mg(II)-1, 2錯体は水溶液中キレート構造を形成していない; 1, 2はMgに対して弱い単座配位子として作用していると推定した.
著者
金澤 麻由子 Mayuko KANAZAWA
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
芸術工学2016
巻号頁・発行日
2016-11-25

本作「きみのいる家」は、2016年7月に出版した絵本『てんからのおくりもの』のメッセージ「花を贈る無償の愛」をコンセプトに、主人公の「てん」があたかも空中で巣から飛び出し、眼前にせまって花を贈るかのようなアートディスプレイであり、絵本の世界観を映像インスタレーション作品として制作したものである。空中結像技術を用いたディスプレイを使用することで、空中に浮遊し、観客に近づいては、はかなく消えゆく「てん」の映像アニメーションは、『てんからのおくりもの』のストーリーでありコンセプトである「無常観:もののあはれ」を表現している。2016年8月に銀座ステップスギャラリーにて開催した個展「絵本の時間」展での本作の展示風景とともに制作意図、制作方法などについて考察する。本作品はプロモーションウィンドウとして書店などでも展開した。
著者
金澤
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, 1949-04-30
著者
金澤 弘 吉岡 健二郎 古田 真一 羽生 清 木下 長宏 井上 明彦 並木 誠士 松原 哲哉 金澤 弘
出版者
京都造形芸術大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1996

近代国家は自国民のアイデンティティ確保の体系を整えていったが、これは自己目的的な有機体としての国家のイデオロギーを創出することであった。有機体の概念は芸術制度に対しても適用されたが、実のところそれは元来芸術作品を範型として考えられたものである。この本来的な両義性が、近代国家における芸術の制度化に際して二つの側面をもたらした。一つは芸術を積極的に社会組織に同化させようとするものであり、もう一つは芸術を国家道徳から乖離させるものである。日本においては、近代化が国家主義的な反動を一八八〇年代に引き起こした。たとえば、岡倉天心によって押し進められた日本画の特権化である。しかし、これは実際には一種の西欧的芸術概念、すなわち国家の自己主張を表明するものとしての芸術という考えを導入したものである。他方、一つの典型的に日本的な(そして中国的ではない)伝統があって、それによれば芸術の世界は社会的政治的生からの対蹠物としてみなされる。それが芸術家、とりわけ小説家や文人画家の何人かをして、みずからの芸術を西欧化に対し均衡を保つためのものとして考えさせることになった。夏目漱石の場合はそれである。文化的アイデンティティとしての芸術は、こうして二つの方向にその機能を分岐させた。国民国家の有機体モデルと、生来の(これもまた人為的な)自己なるものへの参照物である。しかしまさにこの時、芸術に対する歴史的な態度が普及していき、その近代的な考え方にもう一つの観点を付け加えることになった。それによれば芸術はもはや自分以外の何者の有機体のモニュメントでもなくなり、芸術についての自律的学問に博物館学的資料を提供する領域となる。またそれと同時に、国家的アイデンティティの方も、芸術の領域以外のところ、とりわけマス・コミュニケーションのうちに次第に有効性を見出していったのである。
著者
上野 満雄 中桐 伸五 谷口 隆 有沢 豊武 三野 善央 小寺 良成 金澤 右 雄山 浩一 小河 孝則 太田 武夫 青山 英康
出版者
公益社団法人日本産業衛生学会
雑誌
産業医学 (ISSN:00471879)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.483-491, 1984-11
被引用文献数
1

日本国有鉄道の新幹線は,早朝から深夜まで過密ダイヤのもとで,高速度を出して走行している.したがって,新幹線車両の清掃労働者は主に,深夜労働に従事することを余儀なくされ,頻回な夜間勤務を行っている.本研究は,新幹線車両清掃労働者の健康に及ぼす夜間勤務の影響を検討したものであり,特に,連続夜勤の回数と健康障害の関係について評価を行った.本研究は二つの調査研究から成っている.最初の研究では,勤務実態と健康実態を明らかにするため,1か月間の夜勤の頻度,連続夜勤の回数,自覚症状を調査した,調査は,大阪駅で働く246人の男性清掃労働者に対して,日本産業衛生学会交代勤務委員会作成の質問用紙を配布する方法を用いて,1981年に実施した.調査結果は,勤務形態別に3グループに分けて比較検討を行った,グループAは,夜勤専従者であり,勤務編成は,週に5回の連続夜勤を基本とする102人のグループである.グループBは,一昼夜交代で週3回勤務をする124人のグループである.グループCは,週6回勤務の日勤者20人である.これら勤務の形態別比較の結果,グループAにおける胃腸障害,全身疲労感の訴え率が最も高く現われていた.最初の研究結果にもとづいて,2番目の研究では,連続夜勤の回数と健康障害の関係について検討を行うため,ケース・コントロールスタディを行った.研究対象は,最初の研究で対象とした夜勤労働者の中から60人を5歳階層ごとに無作為抽出し,3グループに分け各グループ20人ずつとし,方法は,産業衛生学会疲労研究会作成の疲労自覚症状を勤務の前後で1労働週にわたって自記させた.3グループは,グループA20人,グループB20人,グループD20人である.グループAとBは,最初の研究の同じ勤務形態であるが,グループDは,グループAのコントロールとして,夜勤3日目を非番日に変えた勤務に従事させた.調査の結果,グループAとBでは最後の勤務後に疲労自覚症状の訴え数が第1日目の勤務前と比べて有意に増加していたが,コントロールのグループDでは訴え数の有意な増加は認められなかった.これら二つの研究結果から,夜間勤務の形態と労働者の健康状態の間に密接な関連があり,5連続夜勤の3日目を非番日にすることは,労働負担を軽減するうえで効果的であることが明らかとなった.したがって,5回以上の連続夜勤に就労する新幹線清掃労働者の職業的健康障害を防止するためには,連続夜勤回数の頻度や労働時間に関する勤務条件の改善がなされるべきであると考えられた.