著者
中本 敦 佐藤 亜希子 金城 和三 伊澤 雅子
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.53-60, 2009 (Released:2009-07-16)
参考文献数
32
被引用文献数
2

沖縄諸島におけるオリイオオコウモリPteropus dasymallus inopinatusの分布と生息数に関する調査を2005年8月から11月と2006年4月から5月に行った.調査した25島のうち,新たに8島[伊是名島,屋我地島,奥武島(名護市),瀬底島,藪地島,奥武島(南城市),瀬長島,阿嘉島]でオオコウモリの生息を確認し,これまで生息が記録された島と合わせて19島となった.沖縄島の周辺各島で見られる個体群は,沖縄島の個体群サイズに対して,数頭から数十頭と非常に小さいものであった.また,その個体数は沖縄島から遠い距離にある島ほど小さくなる傾向が認められ,50 km以上離れた島では生息が確認できなかった.このような分布パターンから沖縄諸島で見られる個体は沖縄島からランダム分散した個体であると思われた.
著者
久保 中央 金子 明雄 山本 和喜
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.45-54, 2015-06-01 (Released:2015-07-03)
参考文献数
43
被引用文献数
1 1

ハス(Genus Nelumbo)はアジア系のハス(N. nucifera)とアメリカ原産のキバナハス(N. lutea)に大別される.観賞用ハス品種は花蓮と呼ばれ,国内に約1000品種知られているが,それらの類縁関係はほとんど解明されていない.特に,京都府南部の巨椋池およびその干拓地から採取された巨椋池系品種は,来歴や品種間の類縁関係の多くが不明である.本研究では,巨椋池系品種94系統を含む国内の代表的花蓮品種173系統の類縁関係を,ハスSimple Sequence Repeat(SSR)マーカー25遺伝子座の遺伝的変異に基づいて解析した.前報で解析した47系統のデータを加えた合計220系統についてSSRの遺伝子型を基に近隣接合樹を作成した結果,供試系統は5つのグループ(I:キバナハス品種グループ,II:キバナハスとの種間雑種グループ,III:斑蓮を含むグループ,IV:古代蓮を多く含むグループ,V:その他のグループ)に分類された.巨椋池系品種はグループIII~Vに分布し,この品種群が遺伝的に多様な系統を含むことが示された.一方,巨椋池系品種どうしが一つのクラスターを形成する場合もあり,これらの品種は巨椋池にかつて自生していた遺伝的に近縁な集団に由来すると推察される.本研究のデータは,花蓮品種の類縁関係を整理する際の指標として,特に巨椋池系品種の花蓮品種全体における関係を示す有用な情報となり得る.
著者
金子 哲夫 山脇 奈見子
出版者
一般社団法人 日本微量元素学会
雑誌
Biomedical Research on Trace Elements (ISSN:0916717X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.235-242, 2004 (Released:2005-04-08)
参考文献数
28

In Japan, Recommend Dietary Allowance (RDA) and Dietary Reference Intake (DRI) of trace elements were first specified in 1999. More than 4, 000 human milk samples were collected during 1998 and 1999 from Japanese lactating women at different postpartum and were individually analyzed for composition of nutrients including trace minerals. The latest data on zinc, copper, and selenium concentrations was summarized. The daily intake status of the trace elements by breast- and bottle-fed infants was investigated in reference to the 6th edition of RDA and DRI for Japanese nation.
著者
金子 真理子
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.72, pp.107-128, 2003-05-25 (Released:2011-03-18)
参考文献数
20
被引用文献数
3 1

In 2002, cumulative guidance records in elementary and junior high schools were revised along with the new course of study, which was designed to develop a “zest for living” so that students can learn and think by themselves. The purpose of this paper is to clarify the implementation process of educational reform under the influence of social and political dynamics, by studying evaluation behaviors in junior high schools, which are now in a transition period, and to examine its consequences. The main data were gathered through interviews at elementary and junior high schools in Tokyo, from October to November 2002.The main point of the new records is that students are evaluated based on absolute evaluations instead of traditional relative ones. Before the revision, teachers evaluated their students with relative evaluations, based mainly on examination scores. Under the new system, however, they have to rate the abilities of their students with absolute evaluation from various viewpoints, and to submit a “comprehensive evaluation, ” aimed at “evaluating achievement of students more properly.”Before discussing whether the new system has enabled “more appropriate evaluations, ” it is necessary to understand the mechanisms preventing the idealistic realization of educational reform in schools and to study their social consequences from various aspects. By investigating the implementation process of the new evaluation system in junior high school, the following conclusions were made:(1) Students and their parents, who have been sensitive to school recommendations, demand teachers strict procedure for evaluations. In addition, local governments have tended to adopt a policy trend of “school evaluations” which asks schools for more accountability. Those have forced teachers to carry out “evaluations for accountability” to satisfy the gaze of “an unspecified number of the general public.” For this reason, teachers are spending much time scoring students' exam results and daily activities from a variety of points.(2) The above behavior by teachers holds the risk of pushing the development of action and ability of their students in the classroom in a certain direction. For example, many students tend to adopt a kind of “action standard, ” which is far from the development of understanding in each subject, such as submitting homework just to get higher evaluations, and not for the better understanding of subjects.(3) The introduction of absolute evaluation has caused differences in evaluation standard among schools, leading to an undermining of the reliability of school recommendations. As a result, “evaluations” in junior high schools have been decoupled with entrance examinations for high schools. Under this circumstance, the social function of schools is also changing.Lastly, I suggest that this attempt at reading the social and political dynamics in the process of implementing educational reform is an effective and vital measure for heightening reflectivity on the reform.
著者
伊藤 健二 渡部 浩栄 金沢 正浩 村田 智彦 松田 光正 鈴木 利保
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.136-139, 2004 (Released:2005-03-31)
参考文献数
7

術中に低血圧を伴う発作性心房細動(Paroxysmal atrial fibrillation : Paf)を発症した2症例に超短時間作用型β-ブロッカーであるランジオロールを投与した. いずれの症例も投与開始後5分で心拍数の減少を認め, 10分後には洞調律に回復し, 血圧も安定し, 以後心房細動は出現しなかった. 2症例とも術中術後の循環動態や呼吸状態は良好に経過し, 血液検査上も異常を認めなかった. ランジオロールはPafに有効であり, 安全に使用できる可能性が示唆された.
著者
宮田 裕光 田野 真那佳 金 法龍 董 子玉 ロア 万莉
出版者
日本マインドフルネス学会
雑誌
マインドフルネス研究 (ISSN:24360651)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.23-32, 2021 (Released:2022-02-22)
参考文献数
36

武道は歴史的戦闘技術を起源とする実践であり,マインドフルネスと共通の要素を持つことが指摘されている。しかしながら,日本における実践者を対象とした実証的知見は少ない。本研究では,剣術実践者1名および非実践者3名を対象に,マインドフルネス傾向,内受容感覚への気づき,および心理的健康度を検討した。内受容感覚への気づきの課題として,心理測定尺度に加え,心拍検出課題,および呼吸数計数の正確さを測定する独自の課題を用いた。その結果,実践者では,心拍検出課題の成績が非実践者よりも高かった。また,マインドフルネスの合計および複数の下位尺度の得点,内受容感覚への気づきの複数の因子の得点,および主観的幸福感の合計および複数の下位尺度の得点も,実践者のほうが高かった。武道の継続的実践がマインドフルネス,身体内部環境への鋭敏な気づき,および心理的健康度を高めているという見方を支持する予備的知見であると考えられる。
著者
岡崎 智鶴子 松枝 大治 金井 豊 三田 直樹 青木 正博 乙幡 康之
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.66, no.7-8, pp.169-178, 2015-11-18 (Released:2016-01-19)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

北海道の然別(しかりべつ)地域で採取されたオパール転石の鉱物学 的特性並びに化学組成を予察的に調査した.熱水活動を示唆する産状を明らかにするとともに,オパールが赤色・緑色・オレンジ色・黄色・青色などの鮮やかな蛍光色を呈すること,転石類に金,銀,水銀,ヒ素,アンチモン,テルルなどが地殻平均よりも高濃度に含まれる部分もあることなどを明らかにした.
著者
三宅 茂太 芦刈 圭一 加藤 真吾 高津 智弘 桑島 拓史 金子 裕明 永井 康貴 亘 育江 佐藤 高光 山岡 悠太郎 山本 哲哉 梁 明秀 前田 愼 中島 淳 日暮 琢磨
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.2533-2543, 2022 (Released:2022-12-20)
参考文献数
27

【目的】消化管内視鏡検査(Gastrointestinal endoscopy:GIE)は,多くの疾患の早期発見および治療に有用であるが,GIEはコロナウイルス病2019(COVID-19)大流行期における高リスク処置と考えられている.本研究は,医療スタッフが曝露される唾液,胃液および腸液における重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)陽性割合を明らかにすることを目的とした.【方法】本研究は単一施設における横断研究であり,2020年6月1日から7月31日まで,横浜市立大学附属病院でGIEを受けた患者を対象とした.すべての研究参加者は3mlの唾液を提出した.上部GIEの場合,10mlの胃液を内視鏡を通して採取し,下部GIEの場合,10mlの腸液を内視鏡を介して採取した.主要評価項目は唾液,胃液および腸液中のSARS-CoV-2の陽性率とした.また,SARS-CoV-2の血清特異的抗体や患者の背景情報についても検討した.【結果】合計783検体(上部GIE:560および下部GIE:223)を分析した.唾液検体のPCRでは,全例が陰性であった.一方で,消化管液検体においては2.0%(16/783)がSARS-CoV-2陽性であった.PCR陽性症例とPCR陰性症例の間では,年齢,性別,内視鏡検査の目的,投薬,抗体検査陽性率に有意差は認めなかった.【結論】無症候性の患者において,唾液中に検出可能なウイルスを持たない患者であっても,消化管にSARS-CoV-2を有していた.内視鏡検査の医療スタッフは処置を行う際に感染に留意する必要がある.本研究はUMIN 000040587として登録されている.

4 0 0 0 OA 判例について

著者
金築 誠志
出版者
中央ロー・ジャーナル編集委員会
雑誌
中央ロー・ジャーナル (ISSN:13496239)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.3-37, 2016-03-31

実定法上の判例の意義を念頭に置きながら、結論命題とともに一般的命題も主論となり得ることを明らかにしつつ、主論及び傍論の諸類型、決定方法等について論述する。
著者
金高 有里 小林 道 土肥 聡 荻原 重俊
出版者
一般社団法人 日本DOHaD学会
雑誌
DOHaD研究 (ISSN:21872562)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.69-75, 2021 (Released:2021-12-02)

【目的】我が国では、胎児の神経管閉鎖障害のリスク低減のために、妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性及び妊娠初期の妊婦は、通常の食品から摂取する葉酸以外に、サプリメントや食品中に添加される葉酸(狭義の葉酸)を400 ㎍/日摂取することが望ましいとされている。受胎期に重要な葉酸サプリメントの摂取が普及する一方で、海外において母親の葉酸過剰摂取による児の喘息発症のリスクが報告されている。そこで本研究では日本における妊娠期の葉酸サプリメントの摂取と児の喘息発症リスクとの関連を検討した。 【方法】2014年7月から8月に、北海道札幌市、石狩市の計17か所の保育所に通う児童の保護者589人を対象に、児の性別と月齢、児の喘息の有無と発作頻度、児のRSウイルス罹患状況、両親の喘息の有無と発作頻度、両親の喫煙歴、妊娠前および妊娠20週まで(妊娠前半期)と 21 週以降(妊娠後半期)のサプリメントによる葉酸摂取状況について自記式質問紙調査を行った。解析対象は、児の性別、児の月齢、喘息の有無、妊娠期の葉酸サプリメント摂取の有無について欠損が無かった305人(51.8%)とした。 【結果】多重ロジスティック回帰分析の結果、葉酸サプリメント非摂取群と比較した摂取群の喘息有症の調整オッズ比は、4.54(95%CI: 1.20-17.30)であった。 【考察】本研究では、妊娠期の葉酸サプリメント摂取と喘息の罹患に正の関連が見られた。妊娠期に葉酸サプリメント摂取が無かった群と比較して、葉酸サプリメントを摂取していた群で喘息の有症率が高かった。葉酸摂取を否定するものではないが、本研究の結果から、葉酸サプリメントの摂取は、児の喘息発症のリスクであることが示された。
著者
山本 裕子 Yuko Yamamoto 千里金蘭大学 看護学部
巻号頁・発行日
vol.11, pp.77-85,

本論文は、皮膚に関する新しい知見を概観するとともに、看護実践の場において看護職者が対象者の皮膚を媒体とした触れるケアが、疼痛緩和や不安の軽減、リラクゼーションにつながり快の感情を引き出す効果があることについて看護の視点から述べる。加えて、触れるケアは、副交感神経を優位にする効果がありエビデンスのある看護技術の一つであることを示唆し、看護教育への導入を提言するものである。
著者
金原 由紀子 Yukiko KANEHARA 尚美学園大学総合政策学部
出版者
尚美学園大学総合政策学部
雑誌
尚美学園大学総合政策研究紀要 = Bulletin of policy and management, Shobi University (ISSN:13463802)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.61-75, 2009-03-31

本研究は、中部イタリア・トスカーナ地方の共和制都市国家において、聖人の聖遺物がどのように収集され、教会側とコムーネ政府側によっていかに利用されたかを解明するものである。その一例として、5世紀頃から14世紀のピストイア大聖堂を取り上げ、聖堂の守護聖人、祭壇の捧げられた聖人、移葬された聖遺物について現存史料より再構成を試みる。そして、同聖堂の最も重要な聖遺物である使徒大ヤコブの聖遺物に注目し、この聖遺物が12世紀初頭にコンポステーラ大司教ディエゴ・ヘルミレスからピストイア司教アットに分与された経緯とその意図について論じた。当時のピストイアでは、コムーネ政府の誕生により司教の特権が脅かされ、政府高官コンソリと司教の関係が極度に悪化していた。そこで司教アットは、両者の関係改善のために聖遺物の入手を試みたと考えられる。共和制都市国家が発展した時期の聖遺物収集には、教会とコムーネ政府の複雑に絡まり合った政治的意図が反映されているのである。This paper aims to analyze how the relics of saints were obtained and used by the Church and the government in the Tuscan city-states in central Italy. I took up the case of the cathedral of Pistoia from the fifth to the fourteenth century and examined the transition of its titulus, the altars dedicated to saints and the translatio of the relics by analyzing the related documentations. In particular, I noted the relic of St. James the Great, the most important relic in the cathedral: I discussed the purpose for which St. Atto, the bishop of Pistoia, requested the archbishop of Compostela, Diego Gelmirez, to donate this relic in the early twelfth century, and the process involved therein. In Pistoia during this period, the bishop's privileges were threatened by the rise of an autonomous government and the relationship between the government officials (consoli) and the bishop deteriorated. It seems, therefore, that the Bishop Atto strived to acquire this relic to improve this strained relationship. During the development of the city-states, the intricate political relationship between the Church and the government was reflected in the collection of relics.
著者
金 蘭九
出版者
九州看護福祉大学
雑誌
九州看護福祉大学紀要 (ISSN:13447505)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.37-48, 2018

障害者施策の史的展開は、社会福祉の動向と決して無関係ではない。とくに、日本における社会福祉の動向は、第二次世界大戦の前と後に分けて考えることができる。 本稿の目的は、戦後日本における障害者施策の時期別動向の概略を考察することである。本稿の内容は、Ⅰ 戦前の障害者福祉、Ⅱ 戦後の障害者福祉 1 障害者施策の生成期、2 障害者施策の発展期、3 障害者施策の調整期、4 障害者施策の転換期、回顧と展望などである。ただし、2014年以降の障害者施策に関しては、考察の対象外とした。日本の障害者政策は、成立当時の社会的状況に根拠していることと、その中でも、社会生活を営む上でのハンディの大きい重度障害者に焦点を当てた政策の実現が最大の課題であることなどが理解できる。 The historical development of policies for people with disabilities runs parallel to the trends of social welfare. In fact, the development of social welfare in Japan may be clearly distinguished into two periods that evince clear tendencies: before and after the Second World War. After providing an overview of the pre-war circumstances pertaining to welfare policies for people with disabilities, this paper discusses the temporal trend shifts in such policies in postwar Japan. To this end, the paper is structured into the following sections: the embryonic stage; the development stage; the adjustment stage; and the turning point. This ultimate stage denotes the time of retrospection and of the development of a clear stance with regard to the institution of policies for people with disabilities. Finally, the paper discusses policies for people with disabilities instituted in Japan before 2014. The study discovered that Japan's disability policy is based on the social circumstances that prevail at the time of its formation. In addition, Japan's biggest challenge is the realization of policies pertaining to the social assimilation of people who have severe disabilities.