著者
遠藤 正樹 小川 智美 鈴木 正則 太田 恵 森島 健
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ge0071, 2012

【はじめに、目的】 理学療法養成課程の臨床実習は、理学療法士に必要な基礎的知識と基本的技能を実習指導者の指導・監督の下で実践し、専門職に必要な知識・技術・接遇を習得していく重要な教育の現場である。一方、近年の学生の特性として認められる学力・思考力の低下、ソーシャルスキルやコミュニケーションスキルの未熟さ、打たれ弱さなどは教育上無視できない状況にあり、総合評価で不可がつく学生も少なくない。経験豊富な教員であれば主観的にどのような学生が臨床実習でつまずくのか予測できるが、経験が浅い教員では予測することは難しく、実習前に効果的な対策を打つことができない。そこで、これまでの臨床実習における学生評価を利用して、どのような学生が実習でつまずいているのか予測できれば、早期に対策を打つことができ、学生も教員も臨床実習に備えることが可能になると考える。よって本研究の目的は、臨床実習評価の下位項目と総合評価の関係を明らかにし、学内教育での可能性を検討した。【方法】 対象は平成22年度、平成23年度の昼間部3年生、夜間部4年生とし、臨床実習評価を受けられた146名(男性100名、女性46名)を分析対象とした。臨床実習評価表は下位項目33及び総合評価、自由記載欄から成り、成績の段階付けは両者とも優・良・可・不可の4段階評価である。下位項目における評価内容は、1)専門職としての適性及び態度が10項目、2)理学療法の進め方1.理学療法を施行するための情報収集、検査測定が5項目、2.理学療法の治療計画の立案が4項目、3.理学療法の実施が4項目、4.担当症例に即した基礎知識が7項目、3)症例報告書の作成・提出・発表が3項目で構成されている。解析には成績の欠損が多かった3項目は除外し、30項目を使用した、統計解析は総合評価の合否を従属変数、下位項目を説明変数として多重ロジスティック回帰分析を行った。有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は倫理委員会設置しておらず、同等の権利を持つ教務委員会の承認を得て実施した。なお、個人を特定するようなデータは含まれていない。【結果】 総合成績合格者137名、不合格者9名であった。多重ロジスティック回帰の結果、有意な関連は認められなかった。【考察】 臨床実習体験者を対象とし、総合評価との関連を調査するために、下位項目を複数投入しロジスティック回帰分析を行った結果、下位項目と総合評価との関連は認められなかった。総合評価で不可がついた学生の下位項目を調べると、不可がついていないにも関わらず不合格がついているケースや、逆のケースもあり、評価の基準があいまいなことが確認できた。また、不合格者の自由記載欄を確認すると、責任感のなさや消極的、受動的、自分にあまいといった評価表にないキーワードが共通してみられる。その背景には学生自身の基礎学力の低さやコミュニケーションスキルの未熟さがあると考えられた。よって総合評価の決めてには学生の実習への取り組む姿勢が基準となっている可能性がある。今後は自由記載欄を詳細に調査し、質的分析や下位評価項目の改訂を含めて検討が必要と考えられた。【理学療法学研究としての意義】 入学当初から勉強への取り組み方やコミュニケーションスキル、生活態度等の質的評価を学内で確立し、臨床実習の具体的場面と結び付けて指導していく必要性がある。
著者
樋口 亮太 土屋 博紀 安田 秀喜 幸田 圭史 鈴木 正人 山崎 将人 手塚 徹 小杉 千弘 平野 敦史 植村 修一郎
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.647-653, 2010
被引用文献数
2

近年,画像診断の進歩により膵腫瘍が偶然に発見される機会が増加している.今回,我々は術前診断しえたものの嚢胞成分の悪性を否定できず縮小手術を行った膵内副脾の1例を経験したので報告する.症例は55歳の女性で,急性虫垂炎のため行った腹部CTで膵尾部に径約3 cm大のcysticな領域を伴う充実性腫瘤を認めた.EUSで腫瘤の充実性領域は脾臓と同程度のエコー像を呈し膵内副脾を疑った.腫瘤はSPIO MRIで脾と同様の信号低下を,99mTc-スズコロイドシンチグラフィーで集積増加を示した.膵内副脾と診断したが,cysticな成分もあり悪性が完全に否定できないことを説明したところ,外科治療を希望され手術となった.膵尾部背側に3 cm大の軟らかい赤褐色腫瘍を認め,脾温存膵尾部切除術を行い術中ゲフリールにて膵内副脾を確認した.経過は良好で術後16日目に退院した.術前診断しえた膵内副脾の報告は少なく貴重な症例と思われ若干の文献学的考察を加え報告する.
著者
中條 雅美 鈴木 正子
出版者
日本医学哲学・倫理学会
雑誌
医学哲学 医学倫理 (ISSN:02896427)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.102-112, 2000-12-15 (Released:2018-02-01)

Informed Consent for medical treatment has been argued as being not only a doctors obligation but also patients' rights to obtain their desired "quality of life". Nowadays nurses are beginning to have a role in Informed Consent. We, nurses, expect that this role should exist to enhance the patients' rights. So we believe this role is needed. But especially in medical treatment, this responsibility of nurses remains ambiguous. So I expect the law should define clearly a nurses responsibility about medical treatments. Though much literature refers to the doctors obligation, there is little referring to the obligation of nurses. As a legal requirement of medicine, nurses as well as doctors must make an effort to explain the treatment appropriately and to gain the patients' understanding. But this dose not state the nurses' obligation clearly. The purpose of this paper is to define what the nurses' role in Informed Consent for medical treatments should be. So I tried to interpret the nurses' legal obligation in Informed Consent for medical treatments. And then, I tried to compare the role of legal interpretation with that of my own experienced. As a result, I found that the nurses' role does not have the responsibility for Informed Consent in principle. But if nurses practice only this legal role, they can't carry out the essential role of nursing, which is to assist so that patients can live a better life. I found that to be able to interpret the role has an obligation to pay attention to Informed Consent about medical treatments. According to this obligation, despite the legal interpretation, nurses would be able to carry out the essential role of nursing. This role would then be equal to a nurse's ethical position which is to bean, advocate of patients. Consequently, in my view, nurses must carry out the role of Informed Consent for medical treatments from an ethical position, while at the same time understanding the law in which they practice.
著者
田中 和樹 キム ビョンゴン 小林 嵩 ベッカリ アブデルモウラ 難波 忍 西村 公佐 キム フーン チャン ユン 鈴木 正敏
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J101-C, no.2, pp.107-118, 2018-02-01

現在の1000倍以上のトラヒックが見込まれる5G以降の無線通信システムでは,ミリ波等の高い周波数帯の小セル局を多数設置して大容量トラヒックを収容する必要がある.小セル一局あたりの通信速度は数十Gbpsと想定され,光アクセス回線の大容量化は喫緊の課題である.更に,既に商用展開が進んでいるC-RAN構成は5G以降も有望なアーキテクチャーと考えられるものの,従来の光アクセス回線の伝送方式は通信速度の十数倍の伝送容量を必要とするため,代替技術が望まれる.光を搬送波として無線信号をアナログ波形のまま伝送するアナログRoF (A-RoF)伝送方式は,伝送帯域を大幅に低減可能で,有望な技術の一つである.本論文では,最初にA-RoF技術の既存適用例として,CATV伝送システムに用いられているIF-over-Fiber (IFoF)伝送方式を紹介する.更に,IFoF・A-RoF方式を無線基地局収容光回線へ適用した場合のシステム構成例を示す.続いて,数値シミュレーションによりIFoF伝送方式が適用可能な伝送条件の範囲を明らかにする.商用のLTE無線基地局及び実フィールドに設置された光ファイバを用いた実験を行い,数値シミュレーション結果との比較を行うとともに,IFoF伝送方式の商用システムへの適用可能性を示す.
著者
鈴木 正成 小柳 達男
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
栄養と食糧 (ISSN:18838863)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.171-174, 1968 (Released:2009-11-16)
参考文献数
18

体重380g前後の雄ラットを1週間絶食させて各脂肪組織の組織重量, 脂質含量および副睾丸脂肪組織と腎周囲脂肪組織の脂肪酸組成におよぼす影響を検討し, つぎのような結果を得た。1週間の絶食で体重は平均65g減少した。 脂肪組織の減少は皮下および腎周囲脂肪組織でとくに著しく, 副睾丸脂肪組織がそれについだ。しかし, 腸間膜, 大網膜および肩甲骨間脂肪組織は有意の減少を示さなかった。各脂肪組織の脂質含量は1週間の絶食で減少したが, 皮下および腎周囲脂肪組織で著しい減少が認められ, ついで副睾丸脂肪組織で著しかった。しかし, 腸間膜, 大綱膜および肩甲骨間脂肪組織では明らかな減少は示されなかった。また, 副睾丸脂肪組織の減少は脂質の減少によるが, 脂質以外の組織成分の増加がみられる点で他の脂肪組織と異なった変動を示した。また, 副睾丸脂肪組織の脂質脂肪酸組成は絶食の影響を受けなかったが, 絶食による変動がより大きかった腎周囲脂肪組織で, オレイン酸が高度の有意性をもって増加するのが認められた。以上のような結果から, 絶食時における各脂肪組織の脂質代謝に差異があることが明らかにされた。
著者
鈴木 正寛 佐藤 崇 小宮 秀明
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.389-393, 2013 (Released:2013-07-16)
参考文献数
18
被引用文献数
3 1

〔目的〕本研究は局所筋群に運動を負荷し,運動後の骨格筋の硬化と筋肉痛との関係について検討を行った.〔対象〕健康な男子学生9名を対象とした.〔方法〕腕エルゴ装置を用いて運動負荷試験を実施し,安静時と運動終了後3日間の皮下脂肪厚,筋厚,上腕周径囲,筋硬度,筋肉痛,MVCを測定した.〔結果〕筋硬度,腫脹は運動終了直後から急激な変化を認め,その後2,3日をかけて回復する傾向を確認した.筋肉痛は,運動終了1日後及び2日後に有意な増加を示した.〔結語〕筋硬度,筋厚及び上腕周径囲の増加の要因として組織水の貯留といった循環機能の低下が示唆された.また,運動終了1日後及び2日後のパフォーマンス低下には筋肉痛を主とする知覚神経の影響が推察された.
著者
中村 幸子 岡野 司 吉田 洋 松本 歩 村瀬 豊 加藤 春喜 小松 武志 淺野 玄 鈴木 正嗣 杉山 誠 坪田 敏男
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.15-20, 2008-03
被引用文献数
2

Bioelectrical impedance analysis(BIA)によるニホンツキノワグマ(Ursus thibetanus japonicus)(以下,クマ)の体脂肪量FM測定法確立を試みた。クマを横臥位にし,前肢および後肢間の電気抵抗値を測定した。その値をアメリカクロクマに対する換算式に当てはめ,クマのFMを求めた。2005年9月から翌年の1月までの間,飼育下クマを用いて体重BMおよびFMを測定したところ,BMとFMの変動は高い相関(r=0.89)を示した。よって,秋のBM増加はFM増加を反映していること,ならびにBIAがクマのFM測定に応用可能であることが示された。飼育クマの体脂肪率FRは,9月初旬で最も低く(29.3±3.3%),12月に最も高い値(41.6±3.0%)を示した。彼らの冬眠開始期までの脂肪蓄積量(36.6kg)は約252,000kcalに相当し,冬眠中に1,900kcal/日消費していることが示唆された。一方,2006年6月から11月までの岐阜県および山梨県における野生個体13頭の体脂肪率は,6.9〜31.7%であった。野生個体のFRは飼育個体に比較して低かった。BIAを用いて,ニホンツキノワグマの栄養状態が評価でき,この方法は今後彼らの環境評価指標のツールとしても有用であると思われる。
著者
鈴木 正崇
出版者
儀礼文化学会
雑誌
儀礼文化 (ISSN:02884666)
巻号頁・発行日
no.37, pp.59-78, 2006-03
著者
浅原 有揮 余郷 麻希子 宮川 晋治 鈴木 正彦
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001396, (Released:2020-09-05)
参考文献数
23

早期ステロイド・パルス治療後,後療法なしで1年間再発のなかったchronic lymphocytic inflammation with pontine perivascular enhancement responsive to steroids(CLIPPERS)の37歳男性例を報告する.左半身表在覚低下,失調性歩行障害で来院し,橋のT2高信号病変と多発点状造影効果を認めた.第20病日からステロイド・パルス治療を行い寛解後,1年間再発を認めなかった.CLIPPERSは後療法なしでは再発する報告が多く慎重な経過観察を要するが,貴重な症例と考えられ報告した.
著者
松浦 友紀子 伊吾田 宏正 寺田 千里 鈴木 正嗣
出版者
「野生生物と社会」学会
雑誌
野生生物と社会 (ISSN:24240877)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.1-8, 2015-07-01 (Released:2017-06-16)

We carefully evaluated hunting incidents to identify risk factors and develop preventive measures. We analyzed 1,471 cases that were reported to the Japanese Hunting Association as fraternal insurance between 2007 and 2011. Most hunters responsible for the incidents were in their sixties and were veterans. Although these cases were treated as "hunting" incidents, the number of incidents associated with firearms was low. Only 144 (9.8%) of all "hunting" incidents were related to firearms, and 18.6% of the cases resulted in death. The most frequent factor responsible for firearm-related incidents was improper handling of firearms. In cases where the victim was mistaken for game, at least 61.5% of the victims were wearing fluorescent orange clothing. It was clear that the main cause of firearm-related incidents was violation of basic hunting rules. Therefore, a new qualification system is required for hunters and managers so that they can demonstrate their understanding of basic hunting principles.