著者
橋本 学 藤原 孝紀 鈴木 正昭 奥田 洋司 伊勢 淳治 塩谷 政典
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.133, no.9, pp.1770-1778, 2013-09-01 (Released:2013-09-01)
参考文献数
13

In this study, we propose an agent model based on SECI model by Nonaka for simulating knowledge propagation in organizations. In this model, complexity of knowledge is expressed as bit-tag, and worker-agent and knowledge manager agent are introduced. Some parametric studies is performed for bit-tag length, internalization rates and communication pattern of worker-agent, and evaluate acquirement of knowledge to verify the present simulation model. Furthermore, scenario simulation is implemented with respect to employment periods of worker-agent and the effectiveness of multi-agent model is shown from qualitative evaluation of knowledge variation corresponding to joining and leaving organization.
著者
鈴木 正貴 水谷 正一 後藤 章
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.163-177, 2001-12-27 (Released:2009-05-22)
参考文献数
26
被引用文献数
13 16

環境庁が1997年に発表した汽水・淡水魚レッドリストに,絶滅危惧II類としてメダカが掲載されて話題となった.メダカは,河川(恒久的水域)と一時的水域(水田や小水路)の間を移動して,これらの水域を効果的に利用している.また,ドジョウなども同様な生活史を持つ.これらの生息数が減少している理由の一つとして,圃場整備事業があげられる.圃場整備事業は,農業従事者に対して作業時間の短縮や省力化といった様々な恩恵を与えている.一方で冬水の流水停止,水尻や排水路末端の落差形成など水域ネットワークを分断して,魚類の生息環境の悪化を招いている.そこで,工学的な手法による淡水魚類への配慮が求められるようになった.本研究は,水域ネットワークの再構築の一手段として小規模水田魚道の試作と実験を行ったものである.魚道の試作にあたって,供試魚にドジョウ(底生魚)とメダカ(遊泳魚)を選び,ドジョウについてはあらかじめ遡上行動を観察した.その結果,ドジョウは遡上中に休憩し,遡上の際には引っかかりを利用することが分かった.この結果を参考にして魚道の試作を行い,供試魚を用いた予備実験を行った.そして,カスケードM型魚道と千鳥X型魚道と称する2つのタイプを開発した.また,この2つの魚道について設置勾配や流量を変えた遡上実験を実施し,以下の結果を得た,1)カスケードM型魚道は,ドジョウ(匍匐型,遊泳型)の遡上・降下行動を可能とする.2)千鳥X型魚道は,ドジョウ(遊泳型)とメダカの遡上・降下行動を可能とする.3)ドジヨウの遡上は,夜間に活発化する.4)メダカはドジョウに比べて正の走流性が強い.
著者
鈴木 正将
出版者
国立科学博物館
雑誌
国立科学博物館専報 (ISSN:00824755)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.37-44, 1972

1971年国立科学博物館が行なった北海道幌尻岳生物調査の採集品のうち, ザイウムシ類の標本を検討し, 3亜目・4科・7属・7種を同定し得た。その種名は次のとおりである。1) ツムガタアゴザトウムシNipponopsalis yezoensis (SUZUKI) 2) マキノアゴザトウムシSabacon makinoi SUZUKI 3) トゲザトウムシOligolophus asperus (KARSCH) 4) スジザトウムシMitopus morio (FABRICIUS) 5) ユミヒゲザトウムシLeiobunum curvipalpi ROEWER 6) ナミザトウムシ Nelima genufusca (KARSCH) 7) アカマタテヅメザトウムシ Peltonychia akamai SUZUKI, n. sp. これまで北海道(クナシリ, エトロフ島を除く)からは, 2亜目・3科・8属・9種が知られているが, 今回の採集品のうち, アカマタテヅメザトウムシ以外の6種はすべて, 北海道の他産地と共通である。アカマタテヅメザトウムシは, 北海道から初の有鉤類の発見である。同種は本州の山梨・群馬両県からも発見されたが, 北海道と本州間には, 交尾器はもとより, サイズや形態的にも僅少の差しか認められない。有鉤類は熱帯に饒産するが, タテヅメザトウムシ科は例外で, ヨーロッパや日本・韓国を含む東アジアのみから知られ, かく現在の分布は旧北区に限られている。それは本来東洋区的な要素であるが, その祖先は非常に古い地質時代にヨーロッパやアジアに進出し, そこで分化したと推察される。しかし, いまでは遺跡的動物として, 両地方の洞窟や地中にわずかに残存しているにすぎない。他の6種はいずれも典型的な旧(全)北区系要素であり, しかもすべてが本州と共通である。もっともツムガタアゴザトウムシとスジザトウムシは極度の寒地性の種で, 本州ではいまのところ日本アルプスの高所(1,500m以上)のみから発見されている。アカマタテヅメザトウムシは, 西日本産のニホンタテヅメザトウムシや韓国産の Peltonychia coreana から, 第3,4趺節の爪の分枝のもよう, および交尾器の構造などで明瞭に識別することができる。
著者
齊藤 正樹 井頭 政之 鈴木 正昭 関本 博 赤塚 洋 飯尾 俊二
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

使用済み燃料中に存在するプルトニウム以外の超ウラン元素は、現在、高レベル放射性廃棄物として長期間管理が求められているが、大きな中性子捕獲断面積を持つため、原子炉内に初期に装荷することにより、初期の余剰反応度を抑えつつ、中性子によって核変換し、新しい核分裂製物質に変換され、長期間原子炉内は核分裂を維持することが可能となる。本研究では、これらの超ウラン元素を適切に原子炉内に再装荷することにより、長期間新燃料補給の必要のない超長寿命原子炉(軽水炉・重水炉・高速炉)の成立性に関する研究を実施した。その結果、^<237>Npを軽水炉及び重水炉に装荷した場合、燃焼度150-200GWd/tを持つ長寿命炉心が成立すること、また、6種類の冷却材(軽水、重水、Heガス、CO_2ガス、ナトリウム、水蒸気)を選択し、長寿命特性及び炉心の安全特性に及ぼす中性子スペクトルの影響について系統的に検討を行った結果、黒鉛減速Heガス冷却の場合がその特性を良く発揮することがわかった。また、^<237>Npと同様な中性子工学的性質を有する^<241>Am等を軽水炉に装荷した場合、約100GWd/tの高燃焼度が達成できることを確認した。また、いずれの場合も使用済燃料中に^<238>Puが多く生成されるため、核拡散に対して高い抵抗性を持つPuが生成されていることがわかった。また、核燃料交換や反応度制御が一切不要となる可能性のある原子炉燃焼概念(核反応敵に活性な領域が自立的に移行する燃焼方式)について検討し、約400GWd/tの高燃焼度を持つ高速炉炉心の可能性を確認した。また、関連する解析コードの改良や核反応データベースの整備を行った。

1 0 0 0 OA 俚謡:相馬節

著者
鈴木 正夫
出版者
リーガル
巻号頁・発行日
1931-12
著者
鈴木 正子
出版者
日本幼稚園協会
雑誌
幼児の教育
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.38-38, 1962-08-01
著者
鈴木 正 長島 善次 内山 正昭
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林学会誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.180-183, 1959-05-25 (Released:2008-12-18)
参考文献数
9

(1)植付後12カ月経過のワサビ(品種ダルマ)を葉,葉柄,根茎,根の4部に分けて4~8までの月別の無機成分変化をしらべた。 (2)窒素含有率は特に葉に多く,葉柄が最も少なく,株全体として3.05%で時期別変化は少ない。しかし4月と7月の葉,葉柄の生長期には,この部分に多い。 (3)燐酸含有率は三要素中最も少なく,葉に最大で根は最小,株全体として0.60%で,6月が最も低く変化は少ない。 (4)加里含有率は窒素に次いで多いが,葉に最も多く根茎,根はほかの部分に比べて特に少ない。株全体として2.65%で,葉,葉柄における変化は特にワサビの生育と関係深く, 5月と8月に高く7月に低い起伏に富む曲線を示している。 (5)株全体の三要素含有率は,窒素>加里>燐酸の順で燐酸を1とすれば窒素5,加里4の割合となり,加里の時期別変化は葉,葉柄の含有率変化に影響される。(6)総じて葉の養分含有率は特に高い。 (7)三要素含有量は6>5>8>7>4の順に多い。 (8)三要素含有量は試料重量に,含有率は生育時期に深い関係がある。
著者
大野 希一 国方 まり 鈴木 正章 西村 裕一 長井 大輔 遠藤 邦彦 千葉 達朗 諸星 真帆
出版者
特定非営利活動法人日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.619-643, 2002-11-29
被引用文献数
4

The volcanic activities of the Usu 2000 eruption were monitored and reported by many scientists and the mass media. Summarizing these observation results, most of relatively large explosion events occurred during March 31 to April 7, 2000. Around the Nishiyama and Kompira crater groups, the pyroclastic deposits with multi units can be divided into 19 layers on the basis of their visible color, grain size and sedimentary structure; from Layer A to Layer S in ascending order. The eruptive dates of each layer inferred from the wind directions, the eruptive sequence, and the distribution of deposits are summarized as follows; the Layer A, characterized as the light gray color ash fall deposit including in some pumice layers, was generated by March 31 phreatomagmatic explosions occurred at Nishiyama crater group. The Layer B, composed poorly sorted breccia and ash layer with gray color, was generated on March 31 p.m. at Nishiyama craters. The Layer C to the Layer G, dark brown-gray aggregate ash, were derived from the volcanic eruptions occurred on April 1 to 2 in Nishiyama and Kompira crater group. The Layer H to Layer M and Layer O, mainly consist with gray and reddish brown aggregate ash including in lithic fragments, were generated during April 3 and 4 in Kompira crater group. The Layer N, which distributes around N19 crater, generated on April 4. The Layer P, massive ash with gray color, was generated on April 6 in Kompira crater group. After April 7, the Layer S, characterized as light brown aggregate ash, has been generated from the recent minor activities around limited craters. The amount of Layer A fallen in the range from the source to Toyako Onsencho Town is estimated at 1.2×10^8 kg, and total amount of Layer A including in the distal area is 2.4×10^8 kg. On the other hand, amount of other deposits generated during April 1 to 6 (e.g. Layer B, N, and Q) is an order of 10^6-10^7 kg. Total amount of the pyroclastic deposits erupted from the Usu 2000 eruption is more than 6.4×10^8 kg.

1 0 0 0 OA 折り紙の数学

著者
鈴木 正樹
出版者
福島工業高等専門学校
雑誌
研究紀要 (ISSN:09166041)
巻号頁・発行日
vol.50, pp.175-180, 2009

Paper folding (=Origami) is an art and really does have many educational benefits. There are a number of recent very powerful results in paper folding mathematics. In this paper we introduce some topics that how do paper folding and mathematics relate to each other. In addition, we report on some contents of `research practice' done in Fnkushima National College of Technology at current year.
著者
鈴木 正昭 伊藤 誠二 松田 彰 渡辺 恭良 長野 哲雄 袖岡 幹子
出版者
岐阜大学
雑誌
創成的基礎研究費
巻号頁・発行日
2000

本研究プログラムでは、低分子有機化合物により生体機能の制御を実現する「分子プローブ概念」のもと、機能発現機構の分子レベルでの研究から個体レベルへの応用をめざし、有機合成化学者とin vivo指向型生物系研究者の連携による化学/生物学融合型新学際的連携プロジェクトを展開するための基盤を構築することを目的とした。関連諸分野の専門家を結集し、異分野の研究者間の綿密かつ有機的な情報交換のため、2回の研究準備会議を行うとともに、外部研究者らを交えて総合シンポジウムを開催した(平成12年11月30日、参加者110人)。研究状況については冊子として取りまとめ、本研究分担者のみならず関連研究者に配付し、その情報を公開した。これらの活動を通じて研究分担者同士および関連研究者との間での有意義な意見の交換、相互評価が行われ、次の学祭研究へと展開する準備が整った。なお、以下に設定された課題についてのこれまでの主な具体的成果を箇条書きにした。(1)高次脳機能の解析と制御法について: 設計したグルタミン酸トランスポーターブロッカーを基にアフィニティカラム担体およびシナプス伝達解析のための光感受性caged-TBOAを創製(島本)。ノシスタチンがノシセプチンやPGなどによる痛覚反応に鎮痛効果を示すことを証明(伊藤)。神経細胞におけるSCG10関連分子の微小管との結合ドメインを同定、崩御制御に重要なリン酸化制御部位を決定(森)。神経保護作用を示す新規PGI_2受容体リガンド15R-TICのC-11核ラベル体の創製とその活用によるヒト脳内IP2受容体のイメージングに成功(鈴木、渡辺)。15R-TICの10倍の活性を持つ15-deoxy-TICを創製(鈴木)。(2)脳機能の保護と可塑性促進研究について: PG受容体EP3の細胞内情報伝達系を解析し、神経突起の退縮や神経伝達物質の遊離の阻害、神経可塑性や神経伝達の調節などに関与していることを証明(根岸)。ラット脳組織切片を用いたポジトロンイメージングシステムを確立し、神経細胞における障害発生機序の解明と治療法開発に有用な情報を獲得(米倉)。神経突起伸展促進作用および神経細胞死抑制作用を示す新規化合物NEPP10とNEPP11を創製し、PET研究に向けた分子設計を開始(古田、鈴木、渡辺)。(3)細胞増殖・分化制御機構の解明と細胞周期制御理論について: 核内
著者
大場 孝宏 末永 光 一松 時生 羽田野 雄大 満生 慎二 鈴木 正柯
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 = Journal of the Brewing Society of Japan (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.12, pp.949-953, 2008-12-15
被引用文献数
5

(1)K9系酵母使用の清酒もろみから親株より2〜3倍のリンゴ酸生産性を示す9株を取得した。アルコールの生成、ボーメの切れは親株と同等であり、9株ともに親株よりリンゴ酸を2〜3倍生産し、酢酸の生産量は半分以下である。(2)K901使用のもろみからは、高頻度でリンゴ酸高生産株が得られた。(3)得られたリンゴ酸高生産株について、シクロヘキシミドヘの耐性及びジメチルコハク酸への耐性、またマルトース資化性及びグリセロール資化性を調べた結果、既に報告されている菌株と異なる性質を持っていると考えられる。(4)分離したリンゴ酸高生産株すべてが親株より酢酸生産量が低下していることから、分離したリンゴ酸高生産株では酢酸から生成したアセチル-CoAとグリオキシル酸からリンゴ酸を生成する経路が活性化されるような変異がおきているため、リンゴ酸高生産性を獲得したのではないかと推察される。
著者
鈴木 正
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:07272997)
巻号頁・発行日
vol.90, no.4, pp.598-676, 2008-07-20

この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。
著者
鈴木 正康
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

蛍光センサ色素や生体由来の分子識別素子を複数回重ねてマイクロコンタクトプリンティングすることで、一つのチップ上に複数種の極微小オプティカルバイオケミカルセンサを構築すると共に、作製したオプティカルバイオケミカルセンサを用いて化学物質の2次元的な分布の経時変化を画像化することに成功した。
著者
小川 昭之 石和 俊 鈴木 正義 中下 誠郎
出版者
大分医科大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1985

脳波, 心臓拍動, 姿勢などの制御系の揺らぎ現象に自己回帰解析を施し, 発育しつつある生体に潜む動的活動の年齢特性を明らかにすることを目的として, 昭和60年より62年に至る3年間に次の実績をえた.1 脳波解析による正常小児脳活動の発達現象に関する定量的研究未熟児より15歳に至る健康小児の覚醒・睡眠脳波に自己回帰・要素波解析を施すと, 複雑な脳波活動を構成する要素波の周波数, パワー, 減衰時間持続性, 情報活動量などの諸特性を求めることができる. そこで, 新生児から学童に至る小児の各脳部位導出脳波の要素波特性の発達に伴う変化を明らかにした(昭60). さらに, 自己回帰モデルを応用した脳波の2次元表示の手法を開発し, 互に有意差のない脳波群からなるいくつかの2次元脳電図の平均パターンを図示する方法や, 2つの2次元脳電図を比較して推計学的に有意差のある部分を図示する方法を開発し(昭61), 未熟児や学童の発達に伴う2次元脳電図の定量的変化を明らかにした(昭62).2 直立姿勢調節制御活動の解析と, その発達特性に関する研究健康幼児・学童の前後・左右の揺らぎ曲線に自己回帰解析を施し, 構成要素波を求める手法を開発し(昭60), 5歳から12歳に至る正常児の直立姿勢の揺らぎの発達を求め(昭61), さらにパターン識別によって発達過程の定量的変化を明らかにした(昭62).3 心拍変動の揺らぎの解析と, その発達特性に関する研究任意の時刻の心拍変動はそれ以前の過去の刻々の拍動状態の歴史に確率的に関連する面としない面とがあるので, 拍動周期の時系列も自己回帰性を示す. そこで, R-R間隔時系列の自己回帰解析システムを開発し(昭60), それを用いて新生児の心拍変動を生直後より解析し(昭61), さらに静・動睡眠期での発達特性を明らかにした(昭62).
著者
大泰司 紀之 呉 家炎 (W5 J) 余 王群 高 耀亭 揚 慶紅 (Y .′ Y .′ Y O) 彭 基泰 (T%.′ J) 鈴木 正嗣 武田 雅哉 小泉 透 梶 光一 常田 邦彦 高槻 成紀 三浦 慎悟 庄武 孝義 YANG Qing-hong PENG Ji-tai GAO Yao-ting WU Jia-yan YU Yu-qun
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1988

《1.形態・系統学的研究》 年齢群別に標本の記載・検討を行う目的で年齢鑑定に関する研究を行い、第1切歯および第1大臼歯のセメント質組織標本により、正確な年齢鑑定ができること、および歯の萌出・交換・磨耗等によって、およその年齢鑑定ができることが判明した。体重は、2.5カ月〜3.5カ月の子鹿7例の平均の43kg、雄の場合1.5歳約70kg、2.5歳約180kg、7〜13歳の成獣は約205kg 、雌の6〜14歳では約124kgであった。胴長の平均は、成獣雄123.8cm、肩高はそれぞれ121.5、117.3cmであった。これまでに報告のない特微として、出生直後の子鹿にはニホンジカと同様の白班があり、生後2カ月、7月中旬頃には消失するることが挙げらでる。頭骨は他のCervus属の鹿に比べて鼻部顔面の幅が広く、眼下線窩が大きく深い。これは乾燥・寒冷地への適応、草原におけるcommunicationとの関係を推測させる。大臼歯のparasrastyle、mesostyleが発達していることは、固い草本を食べる食性に適応した結果と考え得る。角は車較伏の枝分かれをし、1歳で2〜3尖、2歳で3〜4尖、3歳以上で5〜7尖になるものと推定される。以上の結果などから、クチジロジカはアカシカに似るが、ルサジカより進化したものと考えられる。《2.地理的分布および生息環境》 チベット高原東部の海抜3000mから5000mにかけての高山荒漠・高山草甸草原・高山潅木草原に分布している。分布域は北緯29〜40度、東経92〜102度の範囲で、甘粛省中央部の南部、青海省東部、四川省西部、チベット自治区東北部および雲南省北部にまたがる。分布域の年降水量は200〜700mm、年平均気温は-5〜5℃、1月の平均気温は-20〜0℃、7月の平均気温は7〜20℃の間にある。森林限界は3500〜4000m、その上は高山草原であるが、4000〜4500m付近まではヤナギ類などの潅木がまばらに生えている。《3.生態と行動など》 主要な食物は草本類(カヤツリング科・禾本科・豆科)であり、冬期にはヤナギ類などの潅木の芽も食べる。胃内容や糞分析の結果では、クチジロジカはJarmanーBellの原理によると草食(Grazer)である。出産期は5月下旬から6月で、1産1子。初産は2歳または3歳で、毎年また隔年に通常12〜14歳まで出産する。最高寿命は、自然条件下では雄で12歳前後、雌はそれより長いものと推定される。群れは最大で200頭、平均35頭。雌と子および1歳の雄も加った雌群、雄群、および発情期にみられる雌雄の混群の3つの類型に分けられる。性比は2.2、100雌当りの子の数は29頭であった。夏期は標高い高山草原で過ごし、冬期は積雪の多い高山草原を避けて潅木林へ移動する。交尾期の最盛期は10月で、11月中旬に再び雄群・雌群に分かれる。妊娠期間は220〜230日と推定される。交尾期の社会組織はハレム型と交尾群型の2つがあり、ハレム型は雌が25頭以下の時にみられ、大きな角を持つ成獣雄が1頭だけ優位雄となって加わる。雌の個体数がそれより多くなると、複数の優位雄が参加する交尾群となる。音声行動には、うなり声と優位の雄が出す咆哮とがあり、特に咆哮は4〜5音節から構成される連続声で、クチジロジカ独特のものである。《4.保護管理について》 チベット高原のクチジロジカは、ヤク・ヒツジ牧業が同高原へもたらされた2000〜3000年前から、人類の影響を受け、「チベット解放」後は、家畜と人口が増えたこと、自動車道路が発達したこと、兵站が各地に出来て、銃が多数持ち込まれたことなどの直接・間接的な影響によって、分布域・生息数ともに大きく減少した。今後は、有蹄類の保護管理に従って、地域毎の適正頭数(密度)を算定したうえで、その頭数になるまでは哺護を禁止し、一定の密度に保つ必要がある。そのような体制の出来るまでの間は、各地に保護区を設定して減少傾向を止めることが最も現実的と考えられる。
著者
梶 光一 高橋 裕史 吉田 剛司 宮木 雅美 鈴木 正嗣 齊藤 隆 松田 裕之 伊吾田 宏正 松浦 由紀子 上野 真由美 及川 真里亜 竹田 千尋 池田 敬 三ツ矢 綾子 竹下 和貴 吉澤 遼 石崎 真理 上原 裕世 東谷 宗光 今野 建志郎
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

洞爺湖中島のエゾシカ個体群は、2度の爆発的増加と崩壊を繰り返して、植生に不可逆的な変化をもたらせた。その後落葉に周年依存するようになり、2008-2012年の間、高い生息密度(45~59頭/km^2)を維持していた。落葉はかつての主要な餌であったササよりも栄養価は低いが、生命・体重の維持を可能とする代替餌として重要であり、栄養学的環境収容力の観点から高密度を維持することが可能な餌資源であることが明らかになった。
著者
山本 さつき 鈴木 馨 松浦 友紀子 伊吾田 宏正 日野 貴文 高橋 裕史 東谷 宗光 池田 敬 吉田 剛司 鈴木 正嗣 梶 光一
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.321-329, 2013 (Released:2014-01-31)
参考文献数
35

銃器捕殺の勢子による追い込み狙撃法(n=4),大型囲いワナ(銃)(n=6),出会いがしらに狙撃するストーキング(n=9),シャープシューティング(n=14),および麻酔薬を用いた不動化捕獲の移動式囲いワナのアルパインキャプチャー(n=14),大型囲いワナ(麻)(n=8),待ち伏せ狙撃するフリーレンジ(n=10)を用いてニホンジカ(Cervus nippon)を捕獲した.肉体的ストレスの指標として測定したクレアチンキナーゼは,追い込み狙撃法(2,057±1,178 IU/L)がシャープシューティング以外の全ての捕獲方法より,また交感神経興奮の影響を反映するアドレナリン,ノルアドレナリンは,追い込み狙撃法(アドレナリン:16.500±4.655 ng/ml,ノルアドレナリン:20.375±8.097 ng/ml)が他の全ての捕獲方法より有意に高かった(P<0.05).精神的ストレスの指標として測定したコルチゾルは,囲いワナ(アルパインキャプチャー:2.63±1.90 mg/dl),大型囲いワナ(銃:1.38±0.50 mg/dl)および大型囲いワナ(麻:3.10±1.79 mg/dl)が他の捕獲方法より高い傾向が見られたが,これらは全てGaspar-Lópezほか(2010)により報告されたアカシカ(Cervus elaphus)の正常変動範囲内(1.30~6.49 mg/dl)であった.以上の結果から,追い込み狙撃法は身体的負荷が大きいこと,囲いワナは他の方法に比較して著しいストレス反応を伴う捕獲方法ではないことが明らかになった.よって,大量捕獲が可能な囲いワナで生息密度を低下させることは,アニマルウェルフェアに配慮した適切な個体数管理の手法になりうると考えられた.