著者
山口 功 石田 智一 木戸屋 栄次 東村 享治 鈴木 正行
出版者
公益社団法人日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術學會雜誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.260-267, 2005-02-20
被引用文献数
7

A strict determination of scan timing is needed for dynamic multi-phase scanning and 3D-CT angiography (3D-CTA) by multi-detector row CT (MDCT). In the present study, contrast media arrival time (T_<AR>) was measured in the abdominal aorta at the bifurcation of the celiac artery for confirmation of circulatory differences in patients. In addition, we analyzed the process of formation of the time-density curve (TDC) and examined factors that affect the time to peak aortic enhancement (T_<PA>). Mean T_<AR> was 15.57±3.75 s. TDCs were plotted for each duration of injection. The rising portions of TDCs were superimposed on one another. TDCs with longer injection durations were piled up upon one another. Rise angle was approximately constant in response to each flow rate. Rise time (T_R) showed a good correlation with injection duration (T_<ID>). T_R was 1.01T_<ID> (R^2=0.994) in the phantom study and 0.94T_<ID>-0.60 (R^2=0.988) in the clinical study. In conclusion, for the selection of optimal scan timing it is useful to determine T_R at a given point and to determine the time from T_<AR>.
著者
横堀 武夫 皆川 七郎 渥美 光 小野寺 真作 大内田 久 大路 清嗣 岡村 弘之 大塚 昭夫 川崎 正 木村 宏 国尾 武 鈴木 正彦 田中 吉之助 田中 栄 高瀬 恭二 高橋 賢司 玉手 統 宮本 博 村木 潤次郎
出版者
一般社団法人日本機械学会
雑誌
日本機械学會誌 (ISSN:00214728)
巻号頁・発行日
vol.74, no.630, pp.830-831, 1971-07
被引用文献数
1

材料の強さと破壊の問題は, きわめて複雑であって, 従来, 固体物理学, 確率統計論, や金および金属組織学, 弾塑性力学などの連続体力学, 材料試験などの異なる立場から, それぞれ独立に研究が進められていた. これら各分野の研究の相互の関連を究明し, 情報を交換し, 知識の交流をはかること, 特に微視的立場と巨視的研究との結びつきを重視し, 問題の解明に資することを目的として, 境界領域としての材料強度研究会が, 昭和42年7月に, 主査以下19名の委員をもって発足し, 昭和44年6月に予定の2年の会期を経過したが, さらに1年の会期延長を認められて, 昭和45年6月末に満3年の会期を終了して解散した.
著者
吉田 泉 駒田 敬則 森 穂波 安藤 勝信 安藤 康宏 草野 英二 大河原 晋 鈴木 正幸 古谷 裕章 飯村 修 小原 功裕 高田 大輔 梶谷 雅春 田部井 薫 NIKKNAVI研究会
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.43, no.11, pp.909-917, 2010-11-28
被引用文献数
1

われわれは,透析患者の除水による循環血液量の変化をモニターする機器(Blood Volume Monitoring system:BVM)を日機装社(静岡)と共同開発し,多施設共同研究において臨床的にドライウエイト(DW)が適正と判断された患者の循環血液量の変化(BV%)の予想範囲を設定し,すでに報告した(Ther. Apher. Dial. in press).本論文では,その予想範囲が適正な除水量設定に有用か否かを検討した.維持透析を行っている9施設の144名を対象とし,採血日を含む3回の透析日に,BVM搭載装置を用いて透析を行った.DWが適正と判断された患者のBV%予想範囲は,上限ライン:BV%/BW%後=-0.437t-0.005 下限ライン:BV%/BW%後=-0.245ln(t)-0.645t-0.810.BV%は循環血液量変化率,BW%後は透析による除水量の前体重に対する比率,tは透析時間(h).今回の検討では,DW適正の可否を問わずに144例を抽出し,430データを集積した.プロトコール違反の94データを除外した336データを解析対象症例とした.各施設の判断によりDW適正と判断された230データで,BVMでも適正と判断された適正合致率は167データ(72.6%)であった.臨床的にDWを上げる必要があると判断された45データで,BVMでもDWを上げる必要があると判断されたのは10データ,逆に臨床的にDWを下げる必要があると判断された61データで,BVMでも下げる必要があると判断されたのは37データであった.その結果,BVMによる判定と臨床的判定の適合率は63.7%であった.不適合の原因としては,バスキュラーアクセスの再循環率(VARR),体位変換,体重増加量が1.0kg以下などであった.PWI(Plasma water index)による判定との適正合致率は71.6%で,適合率は58.0%であった.hANPによる判定との適正合致率は68.8%で,適合率は48.7%であった.循環血液量のモニターは,透析患者の除水設定管理の一助になり,われわれが設定したBV%予想範囲は臨床的にも妥当性が高いと考えられた.
著者
牧 隆史 鈴木 正人
雑誌
研究報告ソフトウェア工学(SE)
巻号頁・発行日
vol.2012-SE-175, no.22, pp.1-8, 2012-03-08

複数製品の開発に用いられたソースコード上のコンパイルスイッチを解析することにより製品群の持つフィーチャーを抽出し、フィーチャーモデルをリバースエンジニアリング的に適用することを試みた。さらに、デザインパターンの適用によるリファクタリングの方向性についても検討した。
著者
篠川 賢 鈴木 正信
出版者
成城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

国造制と伴造制は七世紀以前における大和王権の地方支配の中核をなす制度であり、大和王権の権力構造および古代国家の成立過程を解明するために不可欠な研究テーマである。本研究では、「伴造関係史料集」および「伴造関係文献目録」の作成と、「国造・伴造研究支援データベース」構築のためのテキストデータの作成を行った。また、国造制と伴造制の関係性に関する研究を実施した。
著者
鈴木 正三 茂木 一重 細田 達雄
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.191-195, 1956 (Released:2008-03-10)
参考文献数
11

我々は山羊血液の型物質の血清化学的性状と血清型につき調査し次の事項を得た。1 山羊の特異的血液型物質は血球基質中の蛋白分屑こ存在する。2 山羊の血清中には,α',β'の凝集素が存在し,山羊血清型をα',β',α'β'及びO'の4型に分類する。両者の凝集価は一般に低く,8倍程度であるがα'はβ'より一般に高い。3 山羊の血清型の出現頻度はO'型が大部分で,α'β',β',α'の順序にして,α'は比較的少ない。而してこの血清型は家兎型である。4 山羊血清中には抗-O抗体,抗-C抗体の存在するものもあるが,一般に抗体価は低く,その出現頻度も低い。
著者
鈴木 正子
出版者
日本幼稚園協会
雑誌
幼児の教育
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.36-38, 1958-02-01
著者
藤根 久 遠藤 邦彦 鈴木 正章 吉本 充宏 鈴木 茂 中村 賢太郎 伊藤 茂 山形 秀樹 Lomtatidze Zaur 横田 彰宏 千葉 達朗 小杉 康
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.253-270, 2016-12-01 (Released:2017-01-12)
参考文献数
46
被引用文献数
3

有珠火山の南麓には善光寺岩屑なだれ堆積物(Zd)が多数の流れ山をなして分布する.Zdは従来,9kaから6kaに発生した有珠山外輪山の崩壊によるとされてきた.海岸の近くの岩屑なだれの流れ山に囲まれた標高約4.5mの低地においてボーリングコアを2本採取し,その層序,年代,堆積環境,植生変遷を検討した.両コアはほぼ岩相が同様で,標高+2~-6mにわたり連続的に泥炭層および有機質シルト・粘土層が見られた.AMS法による14C年代測定の結果,最下部の有機質シルト・粘土層から20calkaBP頃の年代が得られた.泥炭層下部には15calkaBP頃に濁川カルデラから飛来した濁川テフラ(Ng)が,泥炭層中部には駒ヶ岳から6.6calkaBPに飛来した駒ヶ岳gテフラ(Ko-g)が,同上部には白頭山苫小牧火山灰(B-Tm)などのテフラが認められた.コアの基底には洞爺火砕流堆積物(Toya(pfl))と同質の軽石に富む軽石質火山灰層が捉えられた.珪藻化石は,20~10calkaBPに湖沼~沼沢湿地が継続し,10calkaBP頃に沼沢湿地に移行し,以後0.4calkaBPまで継続したことを示し,先行研究で明らかにされている最終氷期から完新世にかけての北海道の植生変遷と矛盾しない.花粉化石は,20~15calkaBPに亜寒帯性針葉樹林が卓越し,15calkaBP頃からカバノキ属が増大する移行期を挟み,10calkaBP頃に温帯落葉広葉樹林へと推移したことを示した.以上から,2本のコアの泥炭層および有機質シルト・粘土層は,Zdの岩屑なだれで閉塞された凹地に形成された湖沼~沼沢湿地の堆積物で,岩屑なだれの発生は20calkaBPのLGM(最終氷期最寒冷期)の頃である可能性が極めて強い.また,有珠外輪山の活動は20calkaBPより以前に始まって山体を形成していたことになる.
著者
鈴木 正也 今井 順一 金子 正秀
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.34, no.10, pp.1-4, 2010-02-27

実生活空間において人間と共存するロボットには,歩行者が存在する動的な環境を認識し,衝突することなく自律移動をする能力が求められる.本論文では,このような動的環境において安全に移動可能なロボットを提案する.ロボットはレーザレンジファインダにより周囲の距離情報を取得し,あらかじめ用意した環境地図と比較することで自己位置推定および歩行者検出を行う.次に,カルマンフィルタにより次時刻における歩行者位置を予測する.また,斥力場の算出に歩行者速度を考慮したポテンシャル場法を用い,ロボットの移動経路を決定する.これにより,ロボットは歩行者の移動方向を認識し,早期に経路変更を行うことが可能となる.実験の結果,提案ロボットが歩行者と衝突することなく目的地まで移動できることを確認した.
著者
岡田 一義 今田 聰雄 海津 嘉蔵 川西 秀樹 菅原 剛太郎 鈴木 正司 石川 勲 佐中 孜 奈倉 勇爾 松本 紘一 高橋 進
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析医学会雑誌 = Journal of Japanese Society for Dialysis Therapy (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.36, no.8, pp.1315-1326, 2003-08-28
被引用文献数
5 7

本邦では, 透析患者の終末期において, 血液透析 (HD) が安定して施行できている患者の自己決定を尊重し, HDを中止することについての生命倫理学的研究は殆どない. 今回, われわれは, 透析医 (552名) を対象として, 安定したHDを受けている悪性腫瘍終末期症例を提示し, いくつかのシナリオに対して, HDを中止するか, 継続するかの意識調査と, advance directives (AD), 尊厳死, 尊厳生についてどのように考えているかの意識調査を全国的規模で行った.<br>434名 (78.6%) から回答が得られたが, 有効回答は427名 (77.4%) であった. ADおよび尊厳死が法的に認められていない現状において, ADの有無で比較すると, (1) 家族がHD中止を申し出た場合, (2) 家族がHD継続を申し出た場合とも, ADがあるとHDを中止する回答は有意に増加した ((1) 48.0%→78.9%, (2) 0.2%→2.6%). さらに延命療法を中止しても法的責任は問われないと仮定すると, ADがあるとさらにHDを中止する回答は増加した ((1) 90.9%, (2) 11.9%). ADと尊厳死を必要であると回答した透析医はそれぞれ74.0%, 83.1%であったが, 法制化も必要と回答した透析医は56.4%, 63.7%に減少した. 尊厳死と尊厳生の比較では, 尊厳生を支持する透析医は, 尊厳死を支持する透析医よりも多かった (47.1%, 15.9%).<br>今回の結果は, 現状でも, 透析医および家族が患者の自己決定を尊重すると, ADによる尊厳死が行われる可能性があることを示唆し, 多くの透析医がADや尊厳死を必要と考えている. 一方, 尊厳生は人間にとって非常に大切なことであり, 尊厳死よりもこの言葉を支持する透析医が多かったと考える. すべての国民は個人として生きる権利を認められており, 本邦では, 終末期にも自分が考える尊厳ある生き方を貫くということから始め, 家族および社会が納得する範囲で, 先ず尊厳生によるADが自己決定のために重要であると認識させる努力をすべきである.
著者
横瀬 宏美 鈴木 正泰 金野 倫子 高橋 栄 石原 金由 土井 由利子 内山 真
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.310-321, 2015

背景:月経前不快気分障害(premenstrual dysphoric disorder:以下PMDD)は,黄体期後期に抑うつ症状が出現し,仕事や学業,対人関係などにおける生活上の問題をきたす病態である.PMDDは月経のある女性の3〜8%にみられ,様々な研究が行われてきたが詳細な病態生理学的機序については不明な点が多い.方法:一女子大学において,ある年度に心理学の講義を履修した学生に研究参加を呼びかけ,833名(有効回答率93%)からデータを得た.調査は自記式で行い,調査用紙には 1)月経前不快気分障害診断に関する項目,2)生活習慣,睡眠習慣,朝型・夜型の時間特性などに関する要因,3)月経の状態,婦人科受診歴などの婦人科的要因,4)精神科受診歴および家族歴,性格特性,季節性特徴などの精神医学的要因,5)最近1年間のライフイベント,ストレス対処行動などストレス関連要因,という内容を含めた.PMDDの診断は,精神疾患の診断・統計マニュアル新訂版(DSM-IV-TR)に基づいて行い,PMDDと個々の要因との関連について統計学的に検討した.結果:PMDDは833名中45名(5.4%)にみられた.PMDDの有無を従属変数とし,合計30の要因との間で単変量ロジスティック回帰分析を行ったところ,合計16の有意な関連要因がみいだされた.これら有意な関連要因間の交絡関係を調整するため多変量ロジスティック回帰分析を行ったところ,神経質,身体的不調への過敏,家族との問題,ストレス対処行動としての飲酒がPMDDと有意な正の関連を示した.結語:今回の調査で得られたPMDDの有病率は5.4%と,先行研究における有病率とほぼ同等であった.本研究の結果から,PMDDにはうつ病と共通する性格素因や心理的ストレスなど,精神医学的および心理的要因が強く関与していることが示唆された.
著者
中川 圭 鈴木 正徳 海野 倫明 遠藤 公人 片寄 友 松野 正紀
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.41, no.12, pp.823-828, 2000-12-01
被引用文献数
2 4

著者らは骨髄異形成症候群 (myelodysplastic syndrome: MDS) による続発性造血性ヘモクロマトーシス (erythropoietic hemochromatosis) を基礎疾患とした肝細胞癌の1切除例を経験した.<BR>症例は平成元年より肝機能異常・貧血を指摘され, 平成9年肝硬変・糖尿病の診断. 平成10年胆嚢摘出術の術前精査で骨髄異形成症候群 (MDS-RA (reactory anemia) 型) の診断を受け, 平成12年経過観察中にS5, 8境界領域の高-中分化型肝細胞癌を認め手術施行した. 術後のペルシアンブルー染色でKupffer細胞が強く染色されるとともに肝細胞に鉄顆粒が認められ, 本症例が続発性ヘモクロマトーシスであることを示唆していた. MDSでは無効造血で鉄が余剰となるため合併症として本症のごときヘモクロマトーシスを発生しうる. 本症例はヘモクロマトーシスに肝癌を併発し切除されたもので, 本邦報告例としてはきわめて稀な症例である.
著者
鈴木 正夫
出版者
関東学院大学[文学部]人文学会
雑誌
関東学院大学文学部紀要 (ISSN:02861216)
巻号頁・発行日
no.116, pp.61-93, 2009

太平洋戦争勃発によって、上海は全面的に日本軍の支配下に入った。柯霊はあえてここに止まり、演劇活動や雑誌の編集活動に携わりながら、抗日的姿勢を崩さなかった。そのために抗日戦勝利までに2度、日本の憲兵隊に逮捕された。2度目は死線をさまようほどの苛酷な拷問を受けた。戦後間もなく、彼はその憲兵の蛮行を8首の打油詩にしたため、「獄中詩記」として発表し暴露した。李健吾も同じ憲兵隊に逮捕され、これまた残酷な拷問を加えられた。李健吾は戦後、3篇の文を書いて、これを訴えている。戦時中、人気作家になった張愛玲は、柯霊がその育成に与ったところがある。柯霊の最初の逮捕時、拷問に会わなかったのは、張愛玲の夫で漢奸の名高い胡蘭成の働きかけがあったことを柯霊が知って、複雑な感情を抱くとともに、張愛玲に感謝するのは、戦後長くたってからである。抗日戦勝利前後の柯霊を中心に、これらの状況を考察した。
著者
大沼 学 鈴木 正嗣 大泰司 紀之
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.293-297, 2001-03-25
被引用文献数
3 17

マレイシア国サラワク州に位置するセメンゴ野生動物リハビリテーションセンターにおいて, 単独飼育されていたマレーグマ(Helarctos malayanus)雌2頭の泌乳が観察された.これらのマレーグマは受入後1年以上経過しており, その間1度も雄と同居させたことはなかった.そのため, マレーグマにおいて偽妊娠が起こる可能性が示唆され, 卵巣周期の観察が必要であると考えられた.そこで, 広く応用されるようになった糞中プロジェステロンの定量を継続的に1年間, 単独飼育の雌3頭を対象にして実施した.その結果プロジェステロン値の動態は3頭の雌で差がなく, 本調査地で雨季にあたる時期にプロジェステロン値のピークが観察された.また, 泌乳の有無を不動化後に確認した結果3頭すべてで泌乳が確認された.以上の結果からサラワク州内に分布するマレーグマは, 雨季に同調した繁殖期がある可能性が示唆された.また, 単独飼育状態でプロジェステロン値が上昇し, 泌乳が見られたことから, マレーグマは自然排卵動物で偽妊娠が起こることが確認された.
著者
大沼 学 鈴木 正嗣 内田 英二 新山 雅美 大泰司 紀之
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.s・vii, 309-313, 2002-04-25
被引用文献数
1 12

1998年8月から1999年7月にかけて,3頭の非妊娠,雌マレーグマ(Helarctos malayanus)を対象に糞中から検出されるエストラジオールの定量を,マレイシア国サラワク州において実施した.また,それに加えて膣粘液中に見出される細胞の観察を1998年8月と1999年3月にマレーグマ1頭を対象に行った.3頭の糞中エストラジオール濃度は,1998年8月または9月にピークが観察された.また,膣粘液中に観察される角化上皮細胞の出現割合は,1998年8月の数値が1999年3月のものより高かった.これらのことからマレイシア国サラワク州において,マレーグマはエストラジオールの濃度がピークをむかえる8月から9月ごろに発情している可能性が示唆された.
著者
山本 宏子 徳丸 吉彦 鈴木 正崇 垣内 幸夫 細井 尚子
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、日本および周辺アジア地域の太鼓文化を対象に、そのリズムパターンを収集し、それぞれの伝統的伝承システムである口唱歌(口太鼓)に基づく記録方法でデータバンクを構築することを通して、アジアの太鼓文化の相互関係を明らかにし、また、各地域の口唱歌システムを比較分析することによって、日本人のもつ音楽性を浮き彫りにすることを目的とするものである。さらにはアジアの伝統的太鼓文化の保存と発展に資する資料を提示し、理論的・方法論的に問題提起をすることをも、その目的としている。中国・ベトナム・インドネシア・インド・日本で調査をおこない、資料を収集した。1、実際のコンテクストの中でおこなわれた祭・儀礼・芸能を参与観察し、関係者の許可が得られたものは、写真やVTRで記録作成をおこなうことができた。2、芸能の芸態つまりテクストそのものの分析に資する資料として、上演を依頼し、舞踊劇や人形劇・舞踊などを収録した。3、太鼓をそれぞれの伝承者から習い、口唱歌と伝承方法についてのインタビューでデータを集積した。これらの調査から、口唱歌には、「インド系単音オノマトペ型」と「中国系重音オノマトペ型」の2つの化圏があることが分かってきた。また、単に太鼓の音を真似て歌う「単純口唱歌」と、それを体系化した「システム口唱歌」の2つのレベルの文化圏があることも分かってきた。両要素は必ずしも連動してなくて、それらの重なり具合は複雑な様相を呈している。さらに、それらを比較すると、「聞き做し」のオノマトペが、発展し体系化し、伝承システムとして構築されるには、太鼓というテクストだけではなく、太鼓を取り囲むさまざまなコンテクストが影響を及ぼしていることが明らかになった。