著者
中村 覚 大和 裕幸 稗方 和夫 満行 泰河 鈴木 淳 吉田 ますみ
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.267-277, 2018-02-15

近年,デジタルアーカイブの普及にともない,インターネットを介した歴史資料(以下,史料)へのアクセスが容易となっている.一方,研究者が研究対象とする史料のすべてがインターネット上で公開されているとは限らず,また実証的な歴史研究が現存するすべての関係史料を検討することを基本にするため,実際に文書館や図書館に赴き,史料の収集を行う例も多い.本研究では史料収集や整理に多大な労力を要する歴史研究の支援を目的とし,複数の研究者の共同作業による史料収集・整理プロセスの効率化,および異なる専門知識を有する研究者の協調的な史料分析を支援するシステムを開発する.また,外交文書の送付先の決定過程に関する歴史研究を行い,開発したシステムの有用性を評価する.Digital archive has become popular recently, and this facilitates easy access to historical materials by the Internet. On the other hand, it is still common for researchers to gather materials by going to libraries and archives. This is because empirical historical research requires to examine all materials related to research objectives. In this study, the system is developed in order to gather and manage materials efficiently and support collaborative research with several researchers. This system manages materials on the Internet, and enables several researchers to accumulate and analyze materials collaboratively, which takes a great deal of effort individually. The effectiveness of the proposed system is evaluated by an experiment with several researchers to analyze the process of deciding addresses of diplomatic documents.
著者
平島 由美子 鈴木 淳史
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.65, no.10, pp.601-618, 2008 (Released:2008-10-24)
参考文献数
38

ヒドロゲルは水を含んで膨潤した希薄で複雑な三次元網目構造をもつ固体であり,それを構成する分子間に働く複雑な相互作用に起因して多様な物性を示す.さまざまな外的環境の無限小の変化によって,その体積を不連続にかつ可逆的に変化させることができる.30 年前にこの体積相転移が発見されてから多くの研究成果が報告されてきたが,水素結合が関与する系は複雑な相挙動を示し,その原理は現在でも十分に理解されているとは言えない.本報では,熱応答性のポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)ゲルの相転移を基礎にして,純水溶媒の繰返し交換によるヒドロゲル内での水素結合の形成と温度変化による体積相転移について,筆者らの最近の研究成果をまとめて考察する.
著者
菅 浩伸 浦田 健作 長尾 正之 堀 信行 大橋 倫也 中島 洋典 後藤 和久 横山 祐典 鈴木 淳
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2012, 2012

海底地形図や空中写真から沈水カルストの存在は指摘されていた。しかし,多くは陸上の露出部によって沈水カルストであると認識されており,海底の地形図は提示されていない。浅海域の地形を具体的に可視化することは難しく,地形の広がりについて議論されることは世界的にもなかった。本研究では石垣島名蔵湾中央部の1.85km&times;2.7kmの範囲でワイドバンドマルチビーム測深機R2 Sonic 2022を用いた三次元地形測量を行い,沈水カルスト地形を見いだした。本発表では測深によって作成した1mメッシュの詳細地形図を基に,潜水調査結果などをあわせて,大規模かつ多様な形態をもつ名蔵湾の沈水カルストについて報告する。<BR><br> 測深域では多数の閉じた等高線をもつ地形が可視化された。類似の地形はサンゴ礁地形など海面下で形成される地形になく,スケールもサンゴ礁の微地形より大きい。このため閉じた集水域より,地下水系によってつくられた地形,すなわちカルスト地形と判断できる。ここでは以下の5つのカルスト地形が認められ,これらがブロックごとに異なったカルスト発達過程を反映しているようである。 1) ドリーネカルスト,2) 複合ドリーネおよびメガドリーネ,3) コックピットカルスト,4) ポリゴナルカルスト,5) 河川カルストである。名蔵湾ではこれらのカルスト地形が現成の礁性堆積物によって覆われ,海底の被覆カルストを形成する。この過程で「カレン」のような規模の小さなカルスト地形は埋積されたとみられる。礁性堆積物の被覆により,水中の露頭で母岩を観察するには至っていない。名蔵湾でみられるような比高30mに達する凹凸の大きいカルスト地形は一般に透水性が低い石灰岩の弱線に沿って発達する。琉球石灰岩は透水性が高く,このようなカルスト地形を形成しにくい。名蔵湾の地形が頂部および旧谷底部に定高性をもつことから,母岩は陸棚で発達した第三紀宮良石灰岩ではないかと推定される。<BR><br> 本研究では名蔵湾の中央部で沈水カルスト地形が確認された。空中写真で視認できる沿岸域の地形とあわせて,名蔵湾のほぼ全域が沈水カルスト地形の可能性が高いといえる。名蔵湾は南北6km,東西5kmの広がりをもつ。この範囲は南大東島や平尾台とほぼ同じ大きさであり,日本最大の沈水カルスト地形の存在が示唆できる。
著者
鈴木 淳子 工藤 綾子 山口 瑞穂子 村上 みち子 服部 恵子 岩永 秀子
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医療短期大学紀要 (ISSN:09156933)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-16, 1994-03-25
被引用文献数
1

本研究は,基礎看護技術を教授するうえで必要な科学的裏付けを明らかにする研究の一環として行っているものである。今回は,バイタルサインの測定技術の教授に必要な知識がどの程度実証されているか,過去10年間の看護関係の文献から明らかにした。検索した文献を(1)血圧測定,(2)体温測定,(3)脈拍測定,(4)心拍測定に整理し,考察した。呼吸測定については該当する研究がなかった。その結果,血圧測定時には測定器具の特徴を考慮すること,測定者による誤差を少なくする為に最小血圧を読む時の減圧をゆっくりしたほうがよいとの結果を得た。清潔援助や体位が血圧に及ぼす影響については,仰臥位による測定が妥当とされた。血圧測定方法に関しては,測定部位と心臓を同じ高さにする必要性や,上腕の太さが測定値に影響を与えることが検証された。体温測定に関しては,体温計の特徴を理解して使用することが必要とされた。体温測定時の変動因子については,身体の露出,腋窩検温では皮下脂肪の厚さが測定値に影響を与えること,入浴後60分後に入浴前の体温に戻ることがわかった。測定方法については,水銀体温計での腋窩検温の測定時間は10〜15分間必要であること,測定部位を一定にする必要性が明らかになった。また,口腔温よりも腋窩温の方が高いとは一概に言えないとの報告,老人のオムツ内検温の有用性の検証など,対象者の状態を考慮した測定部位の選択の必要性が示唆された。脈拍,心拍測定については,運動,入浴などの影響を考慮し,1分間測定することが必要であることが実証された。
著者
小川 妙子 湯浅 美千代 石塚 敦子 鈴木 淳子 内村 順子 本田 淳子 本間 ヨシミ
出版者
順天堂大学
雑誌
医療看護研究 (ISSN:13498630)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.66-72, 2006-03
被引用文献数
1

高齢者専門病院における長期入院患者の入院長期化の要因を患者,家族,医療,看護要因の4つの視点から事例分析し,看護職者の退院支援の課題を検討した。首都圏の高齢者専門病院の4つの一般病棟に21日以上入院し,研究協力に承諾した33名を対象とした。文献検討により35項目の調査票を自作し,約2ヵ月の調査期間に看護記録と診療記録から患者,家族,看護,医療に関する要因のデータを収集した。その結果,入院長期化の患者要因では,転倒リスクが高く介護認定を受けていない人が過半数であった。家族要因では,約半数が退院意向が不明であった。看護要因では,退院カンファレンスや家族指導の情報記載が少なかった。医療要因ではリハビリテーションの継続が最も多く,医師からの退院理由,時期,退院先の説明に関する記録は20%の事例に限定されていた。要因間の関連から検討した入院長期化のタイプは,【I.家族要因脆弱】【II.要因間調整円滑】【III.退院予測不明医療優先】【IV.医療・家族意向未調整】【V.療養環境退院阻害】の5つが明らかになった。看護職者は,患者の入院長期化の各要因の問題に応じて適切な退院支援をする必要があることが示唆された。
著者
鈴木 淳 大平 通泰
出版者
一般社団法人 日本繊維機械学会
雑誌
繊維機械学会誌 (ISSN:03710580)
巻号頁・発行日
vol.26, no.12, pp.T217-T224, 1973
被引用文献数
1

目的 布のぬれやすさ, すなわち汗の接触移動による布のふきとり能力が「べたつき」ないしは「まとわりっき」に及ぼす効果を液滴吸収ならびにすべり抵抗の同時測定から物理的に検討する.結果 ふきとり能力が大きい比較的太番手で撚りもある密度の小さい親水性試料ほど「べたつき」ないしは「まとわりつき」への効果が小さく, ふきとり能力が小さい細番手で撚りも少ない密度が大きい薄地の疎水性試料ほど「べたつき」ないしは「まとわりつき」への効果が大きい.たとえば, 「べたつき」ないしは「まとわりつき」の指標として定義したS'の値は綿プロード40sを1とすると綿ブロード200/2sでは20, ポリエステル/綿混紡プロード40sでは, 4, ポリエステルタフタでは100~500の値を示した.また, すべり抵抗の作用機構をモデル的に検討し実験式としてF=2 (T/g) sin (θ+α) ・ (lN), R=μ・F・Sを提案した.
著者
伊藤 泰広 今井 和憲 鈴木 淳一郎 西田 卓 加藤 隆士 安田 武司
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.275-278, 2011 (Released:2011-04-19)
参考文献数
20
被引用文献数
1

症例は29歳の男性である.左眼周囲の間欠的な頭痛で発症し,当初は自律神経症状がなく三叉神経痛と診断したが,6日後に流涙,結膜充血といった自律神経症状が出現し,結膜充血と流涙をともなう短時間持続性片側神経痛様頭痛発作(SUNCT)と診断した.ガバペンチンを開始し,800mg/日に増量したところ,頭痛発作と自律神経症状はすみやかに消退した.3カ月後に400mg/日に減量した時点で,僅かに頭痛発作が生じた.SUNCTでは頭痛が自律神経症状に先行して出現するばあいがあることが示唆された.SUNCTの長期経過や治療は未解決な点が多く,本邦での症例の蓄積と治療方針の確立が望まれる.
著者
香西 克之 山木戸 隆子 鈴木 淳司 長坂 信夫
出版者
一般社団法人 日本小児歯科学会
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.751-755, 1994

歯口清掃の重要性は,近年ますます大きくなっているが歯口清掃器具の管理については,十分な指導がなされていないように思われる.今回我々は,歯口清掃器具の使用後の汚染を細菌学的に調査する目的で,本学小児歯科に来院した3-12歳までの45名の小児に対して,歯口清掃後の歯ブラシを任意に洗浄してもらい,その歯ブラシに残存している付着細菌数を測定し,以下の結果を得た.<BR>1.洗浄後の付着細菌数は歯ブラシ1本当たり,最少で3.5×103コロニー,最多で3.7×106コロニー,平均4.8×105コロニーと非常に多くの付着細菌が検出された.<BR>2.歯ブラシの洗浄方法によって付着細菌数は大きな差を生じたが,流水中での歯ブラシ洗浄が有意に少なかった.<BR>3.さらに聞き取り調査も行った結果,家庭における歯口清掃器具の洗浄や管理には不十分な点が多く,これらについての指導の必要性が指摘された.
著者
高田 宜武 阿部 寧 長尾 正之 鈴木 淳 小林 都 大井 理恵 橋本 和正 渋野 拓郎
出版者
The Japanese Coral Reef Society
雑誌
日本サンゴ礁学会誌 (ISSN:13451421)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.7, pp.37-48, 2005
被引用文献数
5

サンゴ礁生態系は世界的に劣化しつつあるといわれており、陸域から流入する「赤土」等の懸濁物粒子による海水濁度の上昇が、その要因の一つとして挙げられている。そこで、サンゴ礁池における海水濁度の変動レベルとその要因を知るために、石垣島浦底湾において2年間の採水観測を行った。岸近くの突堤表層では、濁度は2.26NTUを中央値とするが、変動幅が大きく、最高値92.9NTUを記録した。サンゴの生育している湾奥 (150m沖) と湾中央部 (370m沖) では、0.58NTUと0.36NTU (それぞれ表層の中央値) となった。海水濁度の変動要因として、降雨と風向の影響を解析したところ、降雨量と濁度の相関は弱いが、北西風により濁度が上昇する傾向があった。冬期に濁度が高くなるのは、冬期に多い北よりの風の影響だといえる。浦底湾のように、河川流入の影響が小さい礁池では、風波によって底質に沈殿していた粒子が再懸濁することと、表層に発達する高濁度かつ低塩分水の吹送が、礁池内の海水濁度に大きく影響すると考えられた。
著者
古瀬 蔵 相田 満 青田 寿美 鈴木 淳 大内 英範 山田 太造 五島 敏芳 後藤 真
出版者
国文学研究資料館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

日本文学分野およびその隣接領域のデータベースについて、情報連携の仕組みを導入することと、オープンデータ化の環境を整備することである。データベース単位だけでなく、データベースの中の個々のレコード単位で情報を連携させ、異分野を含む様々なデータベースとの相互運用を実現し、日本文学研究者に限らず多くのインターネット利用者に、日本文学の情報を知らせ利用してもらう環境作りを行うために、案内型検索を中心に日本文学関連のデータベースの情報アクセスの研究を行った。今年度は、情報収集型検索での情報アクセス支援の検討を重点的に行っていくために、まず当初の目的の情報に到達することを目指すことに加えて、検索結果が利用者にとって予期しない探しているものとは別の価値ある情報を提供し、気付きや発見へ遭遇する機会となるセレンディピティの発現を重視し、研究活動に於いて、その関連する情報を提示する情報連携により、様々なデータベースでの情報空間で連続的に探索を行え、セレンディピティをもたらし知識を広げていくことの活動の様相を重点的に記録してもらった。また、人間文化研究機構の100以上の人文学データベースを検索対象とする統合検索システムnihuINTでも、歴史学や日本文学の一部のデータベースなどを題材に、データベースの情報をRDF(Resource Description Framework)という知識表現形式で表わして、データベース横断での情報連携を実現する試みが始められ、本研究でも、データベースの情報をRDF化して情報連携の仕組みを構築するための開発をおこなった。
著者
千葉 正博 土岐 彰 川野 晋也 中神 智和 鈴木 淳一 杉山 彰英 菅沼 理江 中山 智理 小嶌 智美 大澤 俊亮 磯山 恵一 外山 大輔 松野 良介 塚田 大樹 真田 裕
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.45-52, 2013 (Released:2013-06-07)
参考文献数
18

予定した,がん化学療法を完遂するためには,化学療法に伴うさまざまな有害事象を早期に発見し対応することが重要である.しかし,有害事象の発生と血漿遊離アミノ酸の変化との関係を検討した論文は少ない.今回我々は,小児急性リンパ性白血病患児10例の化学療法前後の血漿遊離アミノ酸濃度の変化と有害事象の発生とを比較検討したので報告する.  化学療法後の有害事象として,臨床症状でグレード3 以上は見られなかった.血液生化学検査では,グレード3 以上の発症は白血球減少が9 例,顆粒球減少が10 例,Hb 低下が5 例,血小板減少が4 例,AST 上昇が3 例,ALT 上昇が4 例に認められた.化学療法前後で血漿遊離アミノ酸濃度を比較すると,タウリン,グルタミン,シトルリン,メチオニン,イソロイシン,アルギニンが化学療法後低下する傾向が見られた.これらのうち,アルギニン,メチオニンの低下はAST の上昇と相関が見られた.
著者
鈴木 淳 北條 久男 小林 太吉
出版者
The Vacuum Society of Japan
雑誌
Journal of the Vacuum Society of Japan (ISSN:18822398)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.177-180, 2015
被引用文献数
1

A novel quartz oscillator that has a temperature-stable output was investigated for outdoor hydrogen sensing. The output from the quartz oscillator remained almost constant for temperatures in the range of 15 to 50℃. Fluctuations of the output of the quartz oscillator in this temperature range were 0.3% at constant relative humidity of 0%RH, which corresponds to the change in the output when 0.3 vol% of hydrogen leaked in air. This change is thus sufficiently lower than the necessary minimum detection level of 1 vol% hydrogen concentration using the novel quartz oscillator's output during outdoor hydrogen sensing.<br>
著者
鈴木 淳 北條 久男 小林 太吉
出版者
一般社団法人 日本真空学会
雑誌
真空技術 (ISSN:18822398)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.177-180, 2015
被引用文献数
1

&nbsp;&nbsp;A novel quartz oscillator that has a temperature-stable output was investigated for outdoor hydrogen sensing. The output from the quartz oscillator remained almost constant for temperatures in the range of 15 to 50℃. Fluctuations of the output of the quartz oscillator in this temperature range were 0.3% at constant relative humidity of 0%RH, which corresponds to the change in the output when 0.3 vol% of hydrogen leaked in air. This change is thus sufficiently lower than the necessary minimum detection level of 1 vol% hydrogen concentration using the novel quartz oscillator's output during outdoor hydrogen sensing.<br>