著者
関 伸一 安田 雅俊
出版者
特定非営利活動法人バードリサーチ
雑誌
Bird Research (ISSN:18801587)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.S1-S8, 2021 (Released:2021-03-22)
参考文献数
19

瀬戸内海の南縁にあたる豊予海峡の高島(大分県)でオオミズナギドリ Calonectris leucomelas の新たな集団繁殖地を発見した.内部に土砂の堆積がなく過去数年以内に利用された可能性のある巣穴の確認数は122個,既知の巣穴の分布範囲の面積は0.28haであった.北側には瀬戸内海唯一の繁殖地である宇和島,南側の豊後水道には沖黒島,小地島がいずれもほぼ等距離に位置しており,高島はこの地域の小規模繁殖地の存続と遺伝子流動において重要となるかもしれない.繁殖地に設置した自動撮影カメラでは巣穴に出入りするオオミズナギドリとともに,捕食者となる可能性のあるクマネズミ属の種 Rattus sp.,特定外来生物であるクリハラリス Callosciurus erythraeus,ハシブトガラス Corvus macrorhynchos が撮影された.高島のクリハラリスは継続的な捕獲により個体数が減少傾向にあるが,その影響でクリハラリスと食物の一部が競合するクマネズミ属の種が増加する可能性があり,今後の経過をモニタリングする必要があるだろう.
著者
宮下 敦 村上 浩康 藤田 渉 力田 正一 市川 孝 関谷 友彦
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-07-04

群馬県下仁田町の中小坂鉱山は,明治初期に製鉄が行われた近代産業遺産であるとともに,高品位の磁鉄鉱鉱石を産する下仁田ジオパークのジオサイトであるが,その鉱床学的成因は不明であった. この磁鉄鉱鉱床は,中央構造線に比定されている大北野-岩山線の北側にあり,ジュラ紀付加体であるとされる南蛇井層と70 Maの領家帯平滑花崗岩中に胚胎される,小規模だが高品位の鉄鉱床である.磁鉄鉱鉱石は,アクチノ閃石もしくは加水黒雲母+緑泥石からなり炭酸塩鉱物脈を伴う変質帯中に,レンズ状から脈状の鉱体として産する.磁鉄鉱は3 wt.%に達するケイ素を含み,塩素を含む自形の燐灰石の微粒をしばしば包有している(Fig. 1).磁鉄鉱鉱石に伴う硫化物はごくわずかで,主に磁硫鉄鉱からなり,低硫黄分圧を示唆している,また,しばしば砒鉄鉱と硫砒鉄鉱の複合粒を伴い,その場合硫砒鉄鉱中の砒素量は約36 mol.%と高い.また,磁鉄鉱に伴う蛍石細脈中の初生流体包有物充填温度は500℃以上と,熱水鉱床としては高い生成温度を示す.磁鉄鉱に伴うアクチノ閃石,加水黒雲母,緑泥石も最大1 wt.%の塩素を含むことが特徴である.また,変質帯中にはミョウバン石やカオリナイトなどの酸性を特徴づける変質鉱物は伴わない. 大規模な構造線に近い地質体中に,500℃を超える高温の中性~アルカリ性変質帯があり,その中に燐灰石を伴う高純度の磁鉄鉱が産する産状は,中小坂鉱山の磁鉄鉱鉱床が酸化鉄-燐灰石(IOAもしくはキルナ)型であることを強く示唆する.また,地質状況から見て形成年代は70Maより若く,磁鉄鉱-燐灰石(IOA)型としては世界的に見ても若い鉱床形成年代を持つ可能性がある.
著者
尾関 理恵 湯浅 奈絵 赤木 圭太 真野 泰成 根岸 健一 小茂田 昌代
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.88-96, 2019-02-10 (Released:2020-02-10)
参考文献数
12
被引用文献数
2

STROMECTOL® Tablets (ivermectin), an oral scabicide, is often administered to patients as a simple suspension via a feeding tube. However, other studies have reported that this method reduces the dose of ivermectin by 10-50% compared to that associated with oral administration. There are several devices used for administration via a feeding tube. This study proposes appropriate devices for such administration. First, we compared the recovery ratio of ivermectin by different 6 devices (a syringe, an oral dispenser, a small cup, kendakun, a suspension bottle and a quick bag). Among them, the results showed that the recovery ratio of the oral dispenser, suspension bottle, and quick bag was 100% after flush operation. Next, we conducted a questionnaire survey of 10 students to evaluate the usefulness of the six devices. The result showed that the suspension bottle or quick bag was easiest to use but the suspension bottle required attention regarding back flow. In addition, the cost of the suspension bottle was the lowest, the dispenser was the highest. The usefulness test is limited because it is targeted at students. When administering STROMECTOL® Tablets via a tube, the entire volume could be administered without any loss by flushing using a suspension bottle or a quick bag and setting the angle of administration directly underneath.
著者
関 雅樹 小長井 一男 村松 浩成 渡邊 康人 可知 隆 古関 潤一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F6(安全問題) (ISSN:21856621)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.1-18, 2013 (Released:2013-02-20)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

本研究は,2004年10月の新潟県中越地震による上越新幹線の脱線事象を踏まえ,大規模地震発生時においても,列車の走行安全性を確保する対策工の具体化をテーマとしている.東海道新幹線では,長期不通防止を目的とした土木構造物の耐震補強は概ね完了する段階となったが,本研究の成果を踏まえた新たな地震対策として,地震時の土木構造物の変位を抑制したうえで,列車の脱線と逸脱による被害拡大の双方を極力防止する二重系の脱線・逸脱防止対策を実施している.ここでは,対策の核となる脱線防止ガードについて,a)耐震性能の評価,b)要求性能を満たす具体的な設計仕様,c)現行の鉄道システムへの適合の3点に関する評価手法と検討結果を示す.本研究の成果は,鉄道システム全体のさらなる安全性の向上に寄与するものである.

11 0 0 0 OA 装束図解 : 他一

著者
関根正直 著
出版者
林平書店
巻号頁・発行日
1932
著者
観山 正道 大関 真之
出版者
公益社団法人 日本表面真空学会
雑誌
表面と真空 (ISSN:24335835)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.104-111, 2020-03-10 (Released:2020-03-10)
参考文献数
16

We will review the principles and applications of recently developing quantum annealers represented by D-Wave machines, and discuss the applicability to material materials science.
著者
関口八重吉 著
出版者
弘道館
巻号頁・発行日
vol.第1編 上, 1914
著者
藤盛 啓成 大内 憲明 里見 進 土井 秀之 宮田 剛 関口 悟 大貫 幸二 宮崎 修吉
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

マジュロにて2006年2月20日〜3月22日の期間、自発的に受診希望した者1386名(女性888名、男性498名、平均年齢50.9±12.34才)を対象に問診、エコー検査を行い、結節性病変275名に細胞診を行った。全検診者中608名に検診既往があり、386名がBRAVO cohort、ブラボー事件時0〜5歳であった者は322名であった。全検診者中、エコーで悪性疑い36名2.6%であり、細胞診でPTC or PTC疑いが10名0.72%であった。目的とした対象(BRAVO cohort中ブラボー事件時0〜5歳)では4名1.2%であり、設定したcohort 1055名でみると、その時点で甲状腺癌と診断された9名を除いた1046名中4名(男1、女3)0.38%(3.82人/年/1万人)が甲状腺癌を新たに発症したと考えられた。甲状腺機能、抗体検査では採血した1186名中1153名で検査結果が得られた。以前の結果と異なり、甲状腺自己抗体陽性率は20%程度で特に低くはないと思われた。マーシャル諸島政府が保管するデータベースから、以前の検診者7162中の死亡者数、死亡原因を調査した。3714名のBRAVO cohort、のうち2003年12月31日までの死亡者は642名、死亡時平均年齢63.9才であった。BRAVO cohort中癌死は107名で、最も多かったのは肺癌(男23、女性9)であった。死亡時平均年齢は男性、女性それぞれ62.8才、71.2才であった。男性の死亡診断書には全員heavy smokerの記載があった。BRAVO cohort中乳癌の死亡例は、6名であった。甲状腺癌の死亡例は2名であった。その他、消化管、肝臓、膵臓、子宮の癌死が多かった。癌死以外の死亡は392名であった。肝硬変・肝不全、肺炎・肺気腫の呼吸不全、循環器障害、脳血管障害、腎不全、糖尿病・下肢壊疽・敗血症、自殺・事故が主なものであった。以上より、マーシャル諸島における癌発生、死亡の実態が把握され、BRAVO cohort中0-5才の間に被曝した集団のデータベースが完成した。肺癌については喫煙の影響が大きく、被曝の影響は少ない可能性が示唆された。今後このデータベースを基に解析を進め、甲状腺癌の発生と被曝の関係を明らかにすることが可能となった。
著者
入宇田 能弥 竹田 安孝 橘内 博哉 今井 実 辻 賢 若林 義規 石関 哉生 藤田 征弘 安孫子 亜津子 羽田 勝計
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.686-690, 2010 (Released:2010-10-15)
参考文献数
11

症例は65歳,男性.2008年6月21日,関節痛に対して近医でプレドニゾロンを処方された.その後口渇,多飲,多尿が出現.8月10日に意識レベルの低下あり当院受診.JCSI-2,血糖値1023 mg/dl,尿ケトン体(4+),血中ケトン体高値,血液ガス分析でpH 7.269, Base Excess -20 mmol/lであり,糖尿病ケトアシドーシス(DKA)の診断で即日入院となった.輸液とインスリン持続静注でアシドーシス,高血糖は改善.翌日に血清アミラーゼ,リパーゼ値の上昇を認めた.腹部CTで急性膵炎,腹部大動脈血栓,右腎梗塞の所見.膵炎に対して絶飲食としメシル酸ガベキサートを投与,血栓・腎梗塞に対してヘパリン,アルガトロバン,ワーファリンを投与し軽快した.経過中腹痛は認めなかった.退院約9ヵ月後に施行した75gOGTTは正常型であった.
著者
野村 亮太 関根 和生
雑誌
第84回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2022, no.1, pp.33-34, 2022-02-17

フリースタイルラップバトルは争覇的な協調場面であり、その歌詞には複雑な引用関係が観察される。本研究では、日本語の頭韻および脚韻がそれぞれ子音および母音の共通性により実現されていることに着目し、編集距離から歌詞の韻を同定した。まず、ラップバトルの歌詞テキストの句読点を削除したうえで形態素分析を行い、自立語と付属語の組み合わせとして句を作った。その後、読み仮名をローマ字に変換し、句のペアごとに標準化Levenstein距離を求めた。その結果、トップレベルのラップバトルにおいては、個人内だけではなく個人間で韻を踏むことで引用関係が生じていることが可視化された。韻の統計量は、観客の盛り上がりとの相関分析にも応用できる。
著者
大谷 清孝 松本 典子 藤本 まゆ 稲垣 瞳 横関 祐一郎 橘田 一輝 開田 美保 狐﨑 雅子 中村 信也 横田 行史
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.798-807, 2016-01-30 (Released:2016-03-16)
参考文献数
18

本邦では同時接種の有害事象および安全性に関する報告が散見されるが, 乳児期のみの検討は不十分である。そこで, 乳児に対する不活化ワクチンの同時接種の有害事象を解明するために検討した。2012年7月から2013年6月の期間において, 不活化ワクチンの皮下接種を施行した生後2か月以上の乳児を対象とした。その対象の保護者に対して, 調査票を配布し, 接種後1週間の有害事象の有無を調査した。対象を接種本数から単独接種群と同時接種群に群分けした。主要検討項目として, 入院を要する重篤な有害事象の有無とし, その他の検討項目として接種児背景, 全身症状と局所症状の有害事象の有無を比較検討した。対象は合計66名, のべ162回であった。調査票の有効回答率は91% (88/97) であり, うち単独接種群は46名で, 同時接種群は42名であった。同時接種の内訳はインフルエンザ菌b型ワクチン (Hib) +7価肺炎球菌結合型ワクチン (PCV7) が14名 (32%) で最も多く, 次いでHib+PCV7+三種混合ワクチンが12名 (27%) であった。全例で入院を要する重篤な全身症状の有害事象は認めなかった。熱型推移では, 単独接種群と比較して同時接種群の方が接種後2日目の体温が有意に高かった (p=0.049)。その他の全身症状および局所症状では, 両群間において有意な差を認めなかった。乳児への不活化ワクチンの同時接種において, 接種2日目に発熱を認めることが有意に多いが, 入院を要する重篤な全身症状の有害事象を認めなかった。
著者
河村 麻果 入江 智也 竹林 由武 関口 真有 岩野 卓 本谷 亮 坂野 雄二
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.191-202, 2020-09-30 (Released:2020-12-23)
参考文献数
29
被引用文献数
1

セラピストが認知行動療法を効果的に実施するためには、クライエントとの良い治療的関係が必要である。そのなかでも特にアライアンスの質の向上が重要視されている。WAI-SRは、アライアンスを測定するうえで適切な心理測定的ツールであることが明らかとなっているが、その日本語版は作成されていない。そこで本研究では、WAI-SRの日本語版(J-WAI-SR)を作成し、その信頼性と妥当性を検討した。その結果、J-WAI-SRは3因子構造と捉えることが妥当であると判断した。収束的妥当性については、日本語版セッション評価尺度との間に想定されたとおりの強い正の相関があった。信頼性については、内的整合性(α=.93, .96)について十分な値が得られ、再検査信頼性についても、許容範囲内の値が得られた(ICCagreement=.75)。以上のことから、J-WAI-SRは一部の信頼性と妥当性が確認された。