著者
高木 明
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.460-468, 2002-12-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
5
被引用文献数
5

中等度感音難聴者を対象に純音聴力, 最高語音明瞭度, 時間分解能, 周波数選択性を測定し, 特に語音明瞭度との関連を検討した。純音聴力域値と語音明瞭度とは必ずしも相関しないことを示すとともに, 時間分解能が語音聴取と関連があることを示した。また, 人工内耳装用者についても直接の電気刺激による時間分解能を計測し, 子音の聴取と時間分解能の関連を示した。そして時間分解能は残存聴神経の数に依存すると考案した。最後に補聴器の開発を考える際, 純音聴力図からのみ検討するのは蝸牛のダイナミックな機能が考慮されないため, 一定の効果を得ることが難しいことに言及した。
著者
遠藤 友彦 高木 俊 菊地 玲央 小寺 祐二
出版者
「野生生物と社会」学会
雑誌
野生生物と社会 (ISSN:24240877)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.65-71, 2023 (Released:2023-10-04)
参考文献数
30

Recently, the wild boar (Sus scrofa) population in Japan has been controlled using leg snare traps. However, little is known about the operating characteristics of leg snare traps and the weight and age class of the captured wild boars. As the first step in our analysis, we measured the starting load of the leg snare trap. Further, we compared it with the wild boar weights. To examine the operating characteristics, we estimated the operating probability for each sex and age class from the measured starting load value and wild boar weight data. The average leg snare starting load was 14.8 kgf, and the starting load of the compression coil spring was stable. The operating probability increased with age class and was > 0.9 for both sexes over 1 yr-old. Our results showed that the leg snare trap was an effective method to capture female wild boars over 1 yr-old, which are reportedly highly fertile.
著者
原 翔子 永崎 研宣 高木 聡一郎 大向 一輝
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.e45-e51, 2023 (Released:2023-11-01)
参考文献数
12

本稿では、同一テーマの下で企画された複数の展覧会の構成を共起ネットワークによって可視化し、その比較によって、キュレーションが鑑賞者に異なる視点を与えることを明らかにした。具体的には、河鍋暁斎をテーマとする3つの展覧会を対象とした。分析対象となった日本画や浮世絵は、描かれているモチーフが作品名に反映されているため、計量テキスト分析が可能である。実地での鑑賞を検討する際の情報収集や、鑑賞後に展覧会を振り返る際に、本稿の手法は有用である。また、全体像として共起図を提示しておくことで、さらに多角的な鑑賞視点が期待できる。本稿の成果はキュレーション機能を持つデジタルコレクションに対して大いに有用であると期待される。
著者
永田 純子 亘 悠哉 高木 俊人 立澤 史郎 兼子 伸吾
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.109-117, 2023 (Released:2023-02-09)
参考文献数
57
被引用文献数
1

鹿児島県奄美群島の喜界島には,2002年ごろに鹿児島県本土の養鹿場から人が持ち込んだ15頭ほどのニホンジカ(Cervus nippon)に由来する個体群が国内外来種として野外に定着している.本研究では,これまで不明であった喜界島に定着するニホンジカの起源を明らかにするため,喜界島の野外で採集した糞と駆除個体の肉片サンプルを利用し,ミトコンドリアDNAのコントロール領域における塩基配列998 bpを決定した.そして,他地域のニホンジカの遺伝情報も整理し,遺伝的データに基づいて起源を推定した.一連のデータセットから19ハプロタイプが判別され,喜界島産のハプロタイプは馬毛島産固有のHap1と同一であった.本研究の結果と先行研究の情報なども考慮すると,喜界島のニホンジカは馬毛島を起源とする可能性が高い.喜界島へのニホンジカの移入の問題は,シカの移入と飼育個体の逸出が近年になっても繰り返されていることを示している.シカの移動および逸出が外来生物問題を引き起こすリスクを有することを踏まえた,飼育シカ類の移動と飼育に関する厳格な管理制度の構築が求められる.また,喜界島では,定着したシカによる自然植生への影響も懸念される.できる限り早い段階で,適切な個体群管理を遂行できる体制の構築が望まれる.
著者
高木 絢加 武田 一彦 御堂 直樹 駒居 南保 山口 光枝 永井 成美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.49-58, 2013 (Released:2013-05-23)
参考文献数
32
被引用文献数
4 3

【目的】温かい飲食物摂取後の,「体の温かさ」や体温の変化を検討した報告は少ない。本研究の目的は,温度の異なるスープをサンプルとして,飲食物の温度が摂食者の主観的温度感覚と深部・末梢体温に及ぼす影響を調べることである。【方法】前夜から絶食した若年女性20名に,異なる日の朝9時に,65°Cスープ摂取,対照として 37°Cスープ摂取,スープ摂取なし(ブランク)の3試行をランダムな順序で実施した。26°Cの実験室で検査衣を着用した安静状態の被検者の,サンプル摂取10分前から摂取65分後までの主観的温度感覚,深部体温(鼓膜温),末梢体温(手先温,足先温),心拍数を測定した。スープ摂取後には嗜好調査を実施した(大変おいしい[10点]~大変まずい[0点])。【結果】嗜好得点は,65°Cスープでは37°Cスープより有意に高かった。摂取後の鼓膜温,足先温,心拍数の変化量は,65°Cスープ, 37°Cスープ,ブランクの順に高値で経時変化した(Sample effect, Sample×Timeとも有意)。各測定時点の多重比較からは,65°Cスープでは,主観的温度感覚は摂取直後で 37°Cスープやブランクと比べて有意に高値であること,鼓膜温は摂取20分後まで,足先温は摂取15分後まで 37°Cスープと比べて有意に高値であることが示された。【結論】37°Cスープとの比較から,65°Cスープ摂取後の鼓膜温や足先温の上昇はスープの温度の影響を受けていると考えられた。3試行の結果から,飲食物に含まれるエネルギー基質や美味しさなどの要因に加え,飲食物の温度自体も主観的温度感覚や体温に影響を及ぼすことが示唆された。
著者
清水 渉 大江 透 金子 敬子 高木 洋 相原 直彦 鎌倉 史郎 松久 茂久雄 佐藤 磐男 下村 克朗
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.8, no.6, pp.773-778, 1988-11-30 (Released:2010-09-09)
参考文献数
17
被引用文献数
3 1

同一心電図上でデルタ波の出現と消失を認める間歇性WPW症候群35例の臨床電気生理学的特徴を検討した.心房早期刺激法による房室伝導曲線パターンは一様でなく, 顕在性WPW症候群に類似するもの (I群) , 基本周期でデルタ波を認め, 早期刺激で一旦デルタ波が消失するが, さらに短くすると再び出現し, 最後に再び消失するもの (II群) , 潜在性WPW症候群に類似するもの (III群) , 基本周期でデルタ波を認めないが, 早期刺激でデルタ波が出現し, 最後に再び消失するもの (IV群) の4群に分類された.顕在性WPW症候群類似のI群や, いわゆるsupernormal conductionを認めたII, IV群の副伝導路順行性の有効不応期は長かった.III群は電気生理学的検査後にデルタ波の出現と消失を認めた症例もあり, 潜在性WPW症候群との関連については今後の検討が必要と思われた.以上の電気生理学的特徴がどのように臨床上のデルタ波の出現と消失に関与するかは今後さらに検討を要する問題である.
著者
高木 駿
出版者
一橋大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2019-08-30

近代まで美の欠如と見なされてきた「醜」は、現代に入り美しくない芸術作品の登場とともに、作品を構成する一つの要素として積極的意義を担わされるようになった。現代美学は、醜に崇高さを惹起する効果があることを解明したが、これにより、すべての種類の醜さが明らかにされたわけでも、ましてや醜の体系的理解が得られたわけでもない。そこで、本研究は、「醜の美学」の体系化に向け、第一に、醜さを類型化し、第二に、別種の醜さの体系性を明らかにする。そのために、18世紀ドイツの哲学者I・カントの美学を用いる。というのも、カント美学では、不快の感情に基づいて、種々の醜さを分類し、それらの体系性を考察できるからである。
著者
高木 潤野 梶 正義
出版者
長野大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

本研究は「場面緘黙」を対象とした大規模な実証的研究である。場面緘黙は話す力があるにも関わらず学校等で話せなくなってしまう状態である。適切な治療によって症状の改善が可能であるが、学校や医療現場において認知度が低く適切な対応が得られていないケースが多い。本研究では、縦断的調査によって場面緘黙の実態を解明し効果的な介入手法を確立することを目的とする。幼児期から中学生までの場面緘黙児200名を対象に、心理検査及び半構造化面接によって不安症や発達障害の併存、学校への適応状態、発症要因等を評価する。また5年間の縦断研究により心理療法等の介入の効果を比較することで、より効果的な介入方法を明らかにする。
著者
高木 基宏 藤井 寛 清水 淳
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会冬季大会講演予稿集 2012 (ISSN:13434357)
巻号頁・発行日
pp.4-5-1, 2012-12-18 (Released:2017-06-05)

We proposed a new subjective video quality estimation method. Our method does not need to encode video except that a few videos encoding to estimate a relationship between bitrate and quantization parameter.
著者
柴田 丸 山竹 美和 坂本 満夫 金森 政人 高木 敬次郎 岡部 進
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.481-490, 1975-07-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
26
被引用文献数
32 34

クマ笹Sasa albomarginata MAKINO etSHIBATAの乾燥葉の熱水可溶分画 (Folin) の急性毒性ならびに抗炎症, 抗潰瘍作用を検討し次の結果を得た.Folinのマウス経口投与によるLD50 (72時間) は109/kg以上であり, また0.2%Folin溶液の連続25日間自由摂取実験より, 症状, 体重変化ともに著変なく本分画の毒性はきわめて弱かった.圧刺激法によりFolin投与後2時間して有意の疼痛閾値の上昇がみられたが, 酢酸法では軽度の抑制がみられたにすぎなかった.また著明な正常体温下降, dextran足蹠浮腫抑制作用, carrageenin足蹠浮腫抑制作用を示し, とくにdextran足蹠浮腫実験において, Folinは局所適用によっても明らかな抑制を示した.しかし綿球法においてはなんらの乾燥肉芽重量の減少もみられなかった.Folinの十二指腸内投与で著明な胃液分泌量の抑制とpHの上昇がみられるとともに, Ulcer indexの減少傾向がみとめられた.幽門結紮-aspirin潰瘍および幽門結紮-caffeine潰瘍に対し, Folinの経口投与はそれらのUlcer indexの減少傾向を示した.FolinはBaSO4の腸管内移動に対しては著しい影響を与えなかった.
著者
下門 洋文 中田 由夫 富川 理充 高木 英樹 征矢 英昭
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.181-194, 2013 (Released:2013-06-08)
参考文献数
34
被引用文献数
4 3

The purpose of this study was to examine trends in the body mass index (BMI) and physical fitness of Japanese university students over a period of 26 years and the association between these parameters. We retrospectively collected data on 17,514 students aged 18-19 years attending a university in the years 1984, 1986, 1990, 1991, 1996, 1997, and 2004-2010. The subjects were classified into three body types on the basis of calculated BMI: underweight (BMI<18.5), normal (18.5≤BMI<25), and overweight (BMI≥25). We also calculated the physical fitness score on the basis of 4 fitness-test results (hand-grip power, handball throwing distance, 50-m running time, and 20-m shuttle run count). The time of assessment was categorized into three periods: 1980s (1984 and 1986), 1990s (1990, 1991, 1996, and 1997), and 2000s (2004-2010). The association of physical fitness with body type and period was analyzed using 2-factorial analysis of variance. Descriptive statistics showed that over the 26-year period, moderately increases in the prevalence of underweight and overweight individuals were observed, and the fitness score decreased for both sexes and all body types. A significant interaction between body type and period on physical fitness was observed in boys (P<0.05); underweight and overweight boys showed a greater decrease in physical fitness than normal-weight boys from the 1990s to the 2000s. These long-term data suggest that over 26 years, an increase in the prevalence of underweight and overweight individuals among university students resulted in a decrease in fitness levels to a greater extent in boys.
著者
佃 和憲 平井 隆二 村岡 孝幸 高木 章司 池田 英二 辻 尚志
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.26, no.7, pp.863-865, 2006-11-30 (Released:2010-09-24)
参考文献数
7

例は33歳, 男性。作業場でふざけていてエアコンプレッサーを作業着の上から肛門部に押し当てた状態で, 空気を噴射され受傷した。激しい腹痛と腹部膨満のため当院に搬送された。胸腹部単純X線検査にて腹腔内に大量の遊離ガス像を認めたため, 腸管穿孔と診断し緊急手術を施行した。S状結腸から直腸にかけて25cmにわたり腸間膜対側の結腸紐の裂創が存在した。損傷範囲の大腸部分切除および人工肛門造設術を行った。切除腸管の粘膜面には縦方向の裂創が全周性に10本以上存在していた。術後経過は良好であった。圧搾空気による腸管破裂は特異な病態を示し, 漿膜面からの観察からでは粘膜面の損傷を完全には推測できず, 手術方法に注意を要すると思われた。
著者
高木 康
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.97, no.12, pp.2892-2896, 2008 (Released:2012-08-02)
参考文献数
5
被引用文献数
1

臨床検査値は,検査時ばかりでなく,検体サンプリング(1)検体採取のタイミング,(2)検体採取時の条件,(3)検体保存,などにより大きく変動する.検査値の些細な変動を観察する特定診断ばかりでなく,日常診療でも診断を左右する場合も少なくない.感染症診断での偽陰性は患者の予後を左右することもある.臨床検査の検査前変動を正しく理解することが,誤診を防ぐ上で重要である.
著者
高木 邦子
出版者
日本グループ・ダイナミックス学会
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.22-35, 2003 (Released:2004-02-17)
参考文献数
39
被引用文献数
1 1

本研究は,否定的対人感情の形成における「認知経路」と「情動経路」の影響力を比較し,「認知経路」において否定的対人感情の形成に影響を及ぼす責任帰属要因を示すことを目的とする。 研究1では,クラスメイトとの葛藤状況を描写した3つの仮想場面を238名の高校生に提示し,各場面における不快情動,責任帰属,相手への否定的対人感情への評定を求めた。階層的重回帰分析の結果,否定的対人感情形成における「情動経路」と「認知経路」の両経路の存在が示唆され,特に,回避場面と支配場面において「認知経路」の影響力が強いことも示された。責任帰属の影響については「意図的―正当」と「無意図的―回避不能」への帰属が,「意図的―不当」と「無意図的―回避可能」への帰属よりも否定的対人感情の形成に促進的に影響を及ぼすことが示された。 研究2では,244名の高校生に,研究1で「認知経路」の影響力が強かった回避場面と支配場面を提示した。その後,「意図的―不当」「意図的―正当」「無意図的―回避可能」「無意図的―回避不能」から任意の帰属情報を提示し,否定的対人感情の評定を求めた。帰属群間での一元配置分散分析の結果,「意図的―正当」と「無意図的―回避不能」への帰属情報を与えた際に,形成される否定的対人感情が低いことが確認された。 以上の結果から,「認知経路」が否定的対人感情の形成に及ぼす影響が強い場合は,否定的対人感情の形成に「意図的―不当」と「無意図的―回避可能」への帰属が促進的に,また「意図的―正当」と「無意図的―回避不能」への帰属が抑制的に作用することが示唆された。
著者
仲井 槙吾 釜本 宗史 高木 純一郎 宮田 勝
出版者
日本口腔顎顔面外傷学会
雑誌
口腔顎顔面外傷 : 日本口腔顎顔面外傷学会誌 (ISSN:13479903)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.27-32, 2021 (Released:2021-11-30)
参考文献数
37

Oral penetrating traumas with a toothbrush are often encountered in clinical oral surgery. Most cases are minor injuries, but some require surgery or hospitalization due to complications. We report an overview of three cases of oral penetrating injuries caused by toothbrushes. The first case was a 4-year-old girl whose toothbrush had penetrated her palatoglossus muscle, leading into her parapharyngeal space. The second case was a 2-year-old boy who was transported by ambulance with a toothbrush stuck in the buccal mucosa. In the third case, the buccal fat pad of a 1-year 6-months-old boy was incarcerated after penetration of the buccal mucosa with a toothbrush. After admission, he needed a reduction of the buccal fat pad under general anesthesia. The clinical symptoms of an oropharyngeal penetrating injury vary depending on the condition of the toothbrush that caused the injury, the site of the injury, and the degree of injury. Even if the wound is small, it can cause severe damage to deep tissues. Therefore, it is necessary to make an accurate initial diagnosis, predict the subsequent risks, and decide on appropriate treatment. Additionally, literature reviews have shown several characteristics of these injuries and the risk of serious complications.