著者
高橋 正浩 生天目 章
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.40, no.9, pp.3586-3595, 1999-09-15
被引用文献数
4

本論文では 個々の主体が選好を集団全体の選好を集約したマクロ情報と自らの選好を比較し自己修正する適応型合意形成モデルを提案する. 自己の選好に忠実であることは 個人合理性を追及することと同じであるが すべてのメンバが自己の合理性を追及することによって合意形成の困難性の問題が生じる. そこで 個々のメンバが無制限に自己の選好を主張するのではなく 集団の一員としての立場から自らの選好を集団全体の動向に逐次適応させる本合意形成モデルによって 集団全体として調和的な合意形成が可能になることを示す. また 異なる適応速度を内部属性として持つ主体によって構成される集団における合意形成上の特性について明らかにする. さらに 上位の意思決定者が存在する場合や 合意形成に時間的制約が存在する場合を考え それらが合意形成に及ぼす影響について シミュレーションによって明らかにする.In this research, we introduce a model of adaptive consensus formation by changing the preference of each individual. Being faithful to his own preference and pursuing individual rationality are the same thing. But, it is difficult to get harmonious consensus formation as a group when all member of group pursue the own individual rationality. We show that it is possible to get consensus formation by adapting each individual preference to group preference. We also show the characters of the consensus formation on a group of various type of members with the different speeds of adaption. We also consider the effects of the existance of the meta agent dicision-maker and the time constraint for the consensus formation, by some simulations.
著者
石川 裕 高橋 大介 朴 泰祐 佐藤 三久
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. HPC,[ハイパフォーマンスコンピューティング] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.92, pp.1-6, 2002-10-25
被引用文献数
1

4台の4 way Itanium(800MHz)プロセッサから構成されるクラスタ上にSCoreクラスタシステムソフトウエアを移植し、ItaniumによるSCoreクラスタの性能を測定する。Pentium-III(933MHz)プロセッサによるクラスタと比較した結果、姫野ベンチマークでは、単体性能でItaniumプロセッサはPentium IIIプロセッサの3倍の性能がある。NAS並列ベンチマークのCGの結果では、16プロセッサ構成までの比較で、ItaniumプロセッサはPentium IIIプロセッサの2.7倍〜1.3倍高速である。
著者
高橋 薫 村松 浩幸 椿本 弥生 金 隆子 金 俊次 村岡 明 堀田 龍也
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.97-100, 2009

本稿では,総合的な学習の時間にアントレプレナー教育(起業家教育)に取り組んでいる山形県米沢市立南原中学校の実践を,言語力育成の観点から評価した結果を報告する.同校の実践では,一連のビジネスのプロセスの中に,言語力育成に配慮した授業デザインがなされている.生徒の言語力の変容を,実践の前後に生徒が書いた意見文の質(客観的評価)と,実践後のアンケート(主観的評価)から評価した.その結果,実践後は産出する文章の質を向上させており,より高度な論証を行っていることが明らかになった.また,実践後のアンケートから,生徒は自らの言語力の伸張に自信を深めていることが確認された.以上のことから,客観的評価と主観的評価の双方から,言語力の伸張が確認され,授業デザインの効果が推察された.
著者
若濱 五郎 成瀬 廉二 庄子 仁 藤井 理行 中澤 高清 高橋 修平 前 晋爾
出版者
北海道大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1988

本研究は、南極クィ-ンモ-ドランド氷床、グリ-ンランド氷床、北極氷冠、およびアジア内陸地域の氷河等にて堀削し採取された氷コアの解析を行い、諸特性を相互に比較検討することを目的として進められた。特に、最終氷期以降の大気環境変動の過程ならびに氷床・氷河の変動におよぼす氷の動力学的特性を明らかにすることに重点をおいた。研究成果の概要を、以下の1〜4の大項目に分けて述べる。1,氷の物理的性質の解析:氷床氷中の氷板、気泡、クラスレ-ト水和物の生成過程、ならびに多結晶氷の変形機構や再結晶について新しい知見が得られるとともに、氷コアの構造解析の新手法が開発された。2,氷の含有化学物質の分析:氷床氷中の酸素同位体、トリチウム、二酸化炭素、メタン、固体微粒子、主要化学成分、火山灰等の分析結果から、最終氷期以降あるいは近年500年間の大気環境変動過程について多くの情報が集積された。特に、両極地の比較検討も行われた。3,雪の堆積環境に関する解析と数値実験:南極地域にて観測された気象・雪氷デ-タ等の解析、および数値シミュレ-ションを行うことにより、中・低緯度から極地氷床への物質・水蒸気の輸送過程ならびに雪の堆積・削はく現象と分布について研究された。4,氷河・氷床の流動と変動機構に関する解析と数値実験:南極東クィ-ンモ-ドランド氷床の平衡性、白瀬氷河の変動、山脈周辺の氷床の動力学的特性、深層氷の年令推定法などについて考察された。1990年9月、札幌において本総合研究の全体研究集会を開催し、各研究結果の総合的討論を行った。この成果は、総合報告書(B5版、312ペ-ジ)として1991年3月に出版された。同報告書では、将来の氷床コア研究の展望と諸課題も論じられている。
著者
高橋 正和 畔柳 功芳 末広 直樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ITS (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.695, pp.155-160, 2001-03-15

完全相補系列パイロット支援型CDMAは、多重化データ信号から干渉を受けないパイロット信号伝送技術による、ほぼ理想的な伝送路推定を用いる方式である。しかしながら、その受信性能は伝送路の状態と雑音に影響されるパイロット応答行列の特異値に依存する。模造パイロット応答挿入によりパイロット応答行列の性質を改善できることが報告されている。本稿では、完全相補系列パイロット支援型CDMAに対し上記の原理を適用し、パイロット応答行列の特異値と誤り率特性の関係を明らかにする。さらに、フェージング環境下の伝送特性を検討することにより、周波数利用効率の向上が可能であることを示す。
著者
谷川 忍 植竹 敦子 土谷 智子 高橋 絵理子 阿部 聖子 林 明子
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.21-28, 2002-02-05

函館市立柏野小学校では,4月に「たんぽぽ」「ひまわり」の知的障害児学級2学級に加えて,新たに情緒障害児学級「なのはな」が開設され,児童数12名,スタッフ5名という数字的には大変恵まれた体制となった。本学級では本紀要19号20号で報告してきたように,保護者そして児童のニーズに応えるべくIEP ・ TEACCHの手法に学んだ実践により,ようやく学級のカラーが出来上がってきたと自負していたところであったが,今年度はなかなか思うように進まず,自閉症センター「あおいそら」のアドバイスも得ながら,子どもたちへの対応を見直してきた。また保護者へのインフォームドコンセントとアカウンタビリティーの充実を図るために,IEPについても見直しを図ってきた。 IEP・TEACCHに学んで,子どもたちの指導の最適化を目指した学級づくりも3年がたとうとしている。日々試行錯誤の毎日であるが,少しずつ子どもたちも落ち着き,変容が見られてきた。
著者
高橋 弘
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.p141-150, 1993-12

下垂する花を持つキイジョウロウホトトギスとスルガジョウロウホトトギスの花部生態学的研究を, 直立する花を持つ他のホトトギス属植物のそれと比較しつつ行った。これらの花は同調的に開花せず, キイジョウロウホトトギスは約5日間, スルガジョウロウホトトギスは約4日間咲いている。両種とも雄性先熟で, 葯は花被が開く前に裂開している。開花の後半に, 柱頭が成熟して雌性期となる。ポリネーターはトラマルハナバチだけで, 下方の花被片の内面に止まって, そのまま這い上がり, 外花被片の基部にある短距に分泌される花蜜な吸う。その際, 雄性期の花では葯のみに, 雌性期の花では柱頭と葯に背面が触れる。トラマルハナバチは, 通常, そのままの姿勢で頭部のみを動かして3つの蜜腺から吸蜜してから後ずさりをして出て来るので, 上方にある葯や柱頭には触れない。従って, 雌性期になっても上方の葯に大量の花粉が残っていることが多い。しかし, これらの種では, 直立する花のように花柱枝の二叉部が雌性期に葯に接近することはないので, 自動的同花受粉は起きない。これらの花では上方にある葯の大量の花粉が無駄になるが, これは花粉/胚珠の比率が高いことと, 花粉がほとんど盗まれないことにより, その影響が少ないように思える。また, 花は長命のため, 長い受粉可能期間がある。少なくともキイジョウロウホトトギスは4日間, スルガジョウロウホトトキスは3日間一様に花蜜を出すように見える。これは他花受粉型のキバナノホトトギス等が2日間しか咲いていないのと, 対照的である。Primack(1985)のモデルは, ポリネーターの訪花率が低く新しい花を作る相対コストが高いときに, 長命の花が生ずることを予測している。ジョウロウホトトギス節の植物はトラマルハナバチの訪花頻度が比較的低く, また大きな花を着けるので, この予測に合致する。花柱枝が二裂するというホトトギス属植物の特質は, 直立型の花では, 雌性期に外輪雄蕊の葯を跨いで柱頭が下方に来るという形態により, 大型ハナバチ受粉に適応しているように見える。下垂型の花ではそれと同様な意義を見い出せないが, 上方にある柱頭がほとんど受粉しないので, 柱頭面積を広く確保するという意味があるのかも知れない。直立型の花は丁字着の葯が外向裂開して, 大型のハナバチが乱暴に動いても葯はほとんど痛めつけられずに, ハチの背面に裂開面をうまく当てることができる。下垂型の花ではハチはほとんど下方の葯にしか触れないので, もし外向裂開であればその直下を通過したときにだけ効率よく花粉を受け取られるであろうが, 側裂開で葯の向きを自由に変えられる丁字着のため, 側方の葯からも花粉を拭き取られるようである。直立型の花では, 蜜腺が内花被片基部の左右の張り出しにより覆い隠されているが, ジョウロウホトトギス節の花では隠されていない。これは盗蜜者がいないこと, 下垂するため雨水が入る恐れがないことなどと関係があると思われる。以上のような花部生態学的特性から見ると, ホトトギス属では, 下垂する花は直立する型から由来したと考えるのが自然のように思える。
著者
山科 健一郎 高橋 正義
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.655-666, 1984-01-14

1982年5月に伊豆半島北東部の川奈崎付近で起きた群発地震活動(M=2.0)について,現地で臨時観測を行った.観測期間は活動の最盛期を過ぎた5月12~14日で,2観測点は固定し,他の1観測点を次々に移動する方式をとった.川奈崎付近に集中して発生した一群の地震(ここではa型と呼ぶ)があり,計5ケ所のP時刻から平均的な震源の位置と観測点補正を求めた.今回のような移動多点観測も,ある場合には役に立つものと思われる.一方,川奈崎付近の活動は5月13日の朝に急速に低下したが,ちょうどその前に,約30km南方で群発活動が起きている.活動の低下はまずa型の地震群に現われ,数時間遅れて周辺も静かになった.A tail of the swarm activity (M=2.0) near Kawana-zaki in the northeastern part of the Izu Peninsula in May, 1982, was observed by a temporary microseismic network installed close to the epicentral region. During the observations on May 12-14th, two seismometers were fixed at the respective places and another was moved from place to place. Station corrections and the average location of the events which occurred within a small area near Kawana-zaki (they are called "a-type" in this paper) were obtained from P arrivals of the two fixed and three tentative stations, suggesting the utility of the moving installation of instruments in some cases. The observation also shows a distinct decrease in activity near Kawana-zaki in the morning of May 13th, following the earthquake swarm which occurred about 30km to the south. The decrease in activity occurred at fast in the hypocentral region of the a-type events, and in the adjacent areas several hours later.
著者
井上 武 朝倉 浩志 佐藤 浩史 高橋 紀之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.458, pp.191-196, 2009-02-24
参考文献数
17
被引用文献数
2

現在のWebアーキテクチャは,RESTと呼ばれるアーキテクチャスタイル(設計指針)に基づいて設計された.しかし,RESTには,サービスのパーソナライズに欠かせない「セッション」についての設計指針がない.このため,セッションに関連する技術は指針なく開発され,整合性を欠いたまま利用されている.本稿は,RESTにセッションのための設計指針を追加し,サービスのパーソナライズに必要な特性を導く.この指針に従って設計されたアーキテクチャは,パーソナライズの基礎であるユーザの区別から,柔軟な認証手続きやサービスの連携までを実現する特性を備える.設計指針により現在のセッション実装の課題を明らかにするとともに,今後の開発の方向性を示す.
著者
千葉 直子 藤村 明子 高橋 克巳
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.20, pp.115-120, 2009-02-26

インターネット上の違法有害情報問題に関して、そのなかでも特に社会問題化や国際動向により、喫緊の対策が求められている分野を取り上げる。具体的には、出会い系サイト、自殺誘引サイト、児童ポルノ、ネットいじめ、ネット上の犯行予告について、近年の状況や対策動向をとりまとめ、今後の方向性について述べる。Recently, illegal and harmful information on the Internet has become one of the important social problems in terms of public policy and child protection. In this paper, we focus on some problems requiring the urgent countermeasures because of international trend and social environment, such as dating sites, suicide sites, child porno distribution, cyber bullying and notice of crime on the Internet. We survey the recent circumstance, the trend of countermeasures and the future trend.
著者
戸田 賢二 西田 健次 高橋 栄一 Nick Michell 山口 喜教
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.1619-1629, 1995-07-15
被引用文献数
13

実時間並列計算機用相互結合網の構成要素として用いるルータチップの設計およびその性能について報告する。本ルータはパケット交換型で4入力4出力であり、多段網における優先度逆転現象の発生を抑える方式として我々の提案した「優先度先送り方式」を採用している。優先度は32ビット、入力ポートごとに8パケットの優先度キューを持ち、データ転送レートはポート当たり190メガバイト/秒、パイプラインは25ナノ秒ピッチの2段構成である。この性能は優先度制御を行わない通常の方式のルータと比較し遜色のないものである。
著者
片山 徹朗 高橋 寿一
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.154-161, 2008-02-15

近年,エンジニアの言う「タイミング依存のバグ」が現場では多くなっているのではないか.昨今の大きなシステム障害を見ると,「あるまれなタイミングと,あるまれなタイミングが同時に起こると障害が発生する」という記事をよく見かける.また,その障害に対する記者会見では「単独製品としては起こりえない」,もしくは,「弊社製品単独の機能としては問題ないのだが,他社製品と統合した場合に問題が発生する」という言葉をよく聞く.現代のソフトウェアやシステムは,単独機能として大きな問題を起こすことは少なくなってきている.それは各社の品質保証システムや部門が成熟した成果であろう.しかし,そのソフトウェアやシステムの堅牢性を維持するために多重化したり,あるいは,高速な処理性能を求めるために並列化することによる起こるバグについては,逆に増える傾向がある.本稿では,前述したような並列に処理されるプログラムやシステムについて,テストの難しさの原因とテスト手法について述べる.また,並列プログラムの特性と誤りの分類について述べ,その中から特に,デッドロックの検出手法と競合状態のテスト手法について述べる.
著者
べユンジョン 高橋 裕樹 中嶋 正之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告グラフィクスとCAD(CG) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.77, pp.55-60, 2002-08-08

近年CGアニメーション制作において作業効率を上げるために様々な研究が行われている.しかしながら,伝統的なセルアニメーションの制作は相変わらず多大な時間と労力を必要としている.本稿では既存のセルアニメーションにおけるキャラクタの動作を分析してデータベースを構築し,その動きデータを再利用することによって,セルアニメーション制作をより効率的に行える事を目的とする.本稿では,キャラクタの動きを分類するための第1段階として第1報で提案したセルアニメーションのショット変化検出手法,Pixel間比較とHistogram比較の2つの手法を統合することによって,それぞれの結果より良い結果を期待する.その上,今まで手動で決めていたショット変化検出のパラメータをGAを用いて自動的に決める手法について提案する.In recent years, a lot of research has been conducted, aimed at raising the efficiency of producing the CG animation. However, producing the traditional cel animation is still very time consuming and requires a lot of manual work. In this research, by analysing the existing cel animation, we create the database of character movements, with the objective to make the character movement data reusable and thus improve the efficiency of producing the cell animation. In our previous work, we have proposed two shot change detection methods, as a first stage of analysing the character movements. In this work, we integrate the proposed two methods, in order to improve the shot change detection performance. Furthermore, we propose a GA-based method for automatically setting the parameters of the proposed integrated method, which had to be done manually in the original two methods.
著者
高橋 純子
出版者
筑波大学留学生センター
雑誌
筑波大学留学生センタ-日本語教育論集 (ISSN:13481363)
巻号頁・発行日
no.17, pp.115-125, 2002

これは、筑波大学留学生センター補講「会話4」(日本語中級後半レベル)クラスにおいて実施したビデオドラマ制作活動についての報告である。発話には2つの種類がある。それは、1)公の場でのスピーチなど、あらかじめ準備された発話、2)討論や友人との日常会話など状況によって刻々と変化していく状況依存型の発話である。日本人学生との共同作業によるドラマ制作活動は、身振りや態度など非言語コミュニケーションとともに、この2つの発話能力を高めることができるであろうと考えた。さらに、このレベルの学習者の発音やイントネーションなど音声面での矯正を行うのはなかなか難しいものであるが、よい作品を創るという目的のためには、学習者は発音やイントネーションに気を配って、何度も台詞を練習するはずだ。実際、撮影中ある場面を扱い、効果的に学習者の間違いを指摘し、説明し、指導することができた。本稿では、ドラマ制作過程の観察と学習者と活動に協力してくれた日本人学生の意見・感想から何が学べるのかをさぐっていく。そして、ビデオドラマ制作活動の意図とその実際の成果、留意点、改善点について述べる。ビデオの使い方として、1)テレビドラマなどからのモデル会話場面を見せる。2)日本語の進歩の様子を知るため、または、習慣化されてしまっている間違いに気づくため、学習者の演じているところを撮影し見せる、という2つを併用することが効果的であろう。相手や場によって話し方を変える待遇表現を学ぶ場を提供するという点でドラマ制作は有効だと言える。