著者
芝崎 学 森本 恵子
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

熱中症対策のための機能性ウェアの提案という視点から研究プロジェクトを企画し,今回は赤外線・紫外線に対する温度感覚と皮膚血流反応および熱失神に関与する血流調節を検討するための4つの研究を計画し,実行した:①温度感覚スケールの改良,②皮膚温度感覚と皮膚血流変化,③紫外線による温度感覚変化,④暑熱曝露時の血流分布.①の成果を②と③で検証し,その有用性を確認した.今後の脳機能評価に関する研究アプローチへの応用が期待できる.また,④では機能性ウェア開発への生理的アプローチの指針を示すことができた.
著者
奥田 誠一 前田 忠信 松澤 康男 稲泉 三丸 福井 糧 菅原 邦生
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

1.環境保全型農業に関する研究:病害虫防除のための新技術開発のため,有用土壌微生物を利用した土壌病害の防除法を検討するとともに,害虫の生息種及び生態について比較研究した.在来家畜の飼養管理技術に関して,卵用の在来種である紹興鴨種畜場を調査した.飼料は専用の配合飼料と川に生えているホテイアオイなどを用い,排泄物は川に流すという粗放的であるが,立地条件を生かした飼養管理を行い,3人で8000羽を管理していた.現状では環境保全型農業に近い方式であるが,多数羽飼育が求められたときの対応は今後の課題である.2.遺伝資源の開発と利用に関する研究:イネの多収技術,高品質化に関わるハイブリツドライスについて,中国では既に作付の約50%がハイブリッド品種で占められており,籾収量で1t/10a以上のかなりの多収が予想される.採種のために,細胞質雄性不稔維持系統を4列,回復系統を1列の5列-1m幅で繰返し栽植され,種子収量は150〜300kg/10a程度であるので1/100〜1/200の採種圃場が必要と推定される.浙江省から安徽省にかけての河川沿いの中山間地〜山間地では,河川敷から緩やかな斜面における水田と山の裾野部の畑にトウモロコシ,大豆,サツマイモが栽培され,トウモロコシの後に麦を入れ3年4作の輸作体系が取られ,農家の自給食糧を持続的に確保し得る生産方式が認められた.その他,ゴマ,ヘチマ,小菊(薬用茶)などの作付もあり,茶は近年の輸出用茶の需要拡大に伴い新植園が多く,きつい斜面でも開墾されていた.
著者
武田 博清 東 純一
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

熱帯季節林における3年間の調査により得られた、熱帯季節林での細根の現存量、組成と土壌動物群集の構造(グループの構成)から、細根の組成は、土壌動物の種類構成に影響していることが明らかとなった。細根の現存量と土壌動物の個体数には高い相関性が見いだされた。さらに、細根と土壌動物の現存量の間にも相関性が認められた。土壌動物群集の維持における細根の重要性が明らかとなった
著者
バイアライン オリファ 里村 和秋 鈴木 伸一
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

私たちは、e-LearningソフトのMoodleをベースにして、初心者レベルにある日本の学生のために、「外国語としてのドイツ語」の独習コースをどの程度まで発展させることが可能なのかを調べました。私たちは、試験や観察を通して、特に次のことを見いだしました。つまり学生は、条件つきで独習コースを受講するということです。すなわち、学生にとって、自己学習は、教育的な器具としてのコンピュータとの接触に、あまり慣れていないということです。私たちの研究のもう一つの主要なポイントは、自学自習に適しているフィードバックの方法がどのようなものであるのかという研究でした。これに関して私たちは、仮定に反して、詳細なフィードバックは必ずしも必要ではなく、いくつかの練習形式では学生を混乱さえさせることがわかりました。さらに私たちは、Moodleをベースに会話練習する場合、どのような可能性があるのか研究しました。
著者
向川 均 黒田 友二 黒田 友二
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

2010年夏季にロシア上空で出現した長寿命のブロッキング高気圧の維持メカニズムと予測可能性について解析を行った。その結果、このブロッキング高気圧の維持には、次の2つの異なるメカニズムが重要であることが明らかになった。まず、ブロッキングの予測精度が明瞭に悪化した7月下旬では、ブロッキングの上流側に存在した気圧の谷に伴う対流圏上層での水平発散が最も重要であった。一方、8月初旬では、ユーラシア大陸西部の対流圏上層に存在する気候学的な水平収束場に高気圧性偏差が重畳することで生ずる渦度強制が重要であった。これらの2つの維持メカニズムは、このブロッキングに特有のものであることも示された。
著者
鈴木 和弘 鈴木 宏哉 中西 純 小磯 透 石井 好二郎 高木 誠一 中野 貴博 長野 敏晴 小山 浩 霜多 正子 溝口 洋樹 川村 徹 梅津 紀子
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究の目的は,幼児から中学生の子どもを対象にライフスタイル改善教育及び体力向上プログラムを幼児・学教教育に適用し,同一集団の子どもをそれぞれ縦断的に追跡しながら,その有効性を検証することであった.おもな成果は次の3点であった.1)体力向上プログラムに参加した幼児の体力は,小学校1年で極めて高く,体力A評価は50%を超え,持ち越し効果が確認された.2) 低学年児童を対象に基本的動作習得を目指した8時間の授業で,動作の改善と共に,50m走後半の疾走スピードに有意な改善が見られた.3) 中学校での3年間継続した体力向上への取り組みによって,生徒の遅刻回数や不定愁訴が有意に減少した.
著者
前沢 千早 西塚 哲 若林 剛 野中 孝昌
出版者
岩手医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

NACC1は多能性維持に関連する転写因子ネットワークの一員として認識され、その過剰発現は腫瘍の悪性形質と関連が指摘されている。本研究では、NACC1が細胞質内ヒストン脱アセチル化酵素HDAC6と結合し、細胞骨格関連分子(α-tubulin、cortactin)のアセチル化制御により腫瘍の浸潤・転移能の制御に関与していた。また、NACC1は乳癌のHSP90のアセチル化制御によりERBB2の発現の維持にも関与していた。核内ではSUMO化を受けたPML分子と結合し細胞増殖、アポトーシスに影響を与えていた。NACC1の過剰発現は腫瘍の悪性形質を誘導し、細胞運動・浸潤・増殖能に影響を与えており格好の治療法的分子となり得る可能性が示唆された。
著者
二又 政之 松田 直樹 清水 敏美 澤田 嗣朗 片山 建二
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1.表面増強ラマン散乱(SERS)を利用した単一分子分析法の確立:1)銀ナノ粒子接合部に1個の吸着分子が存在するとき、巨大な増強度が得られることを、ラマンスペクトルと弾性散乱スペクトルの時間相関及び3次元FDTD法により、明らかにした。2)DNA塩基の内アデニン、グアニンなどのプリン環と銀表面との電子移動相互作用が巨大な増強を与えることを見出した。3)巨大SERSと同時に観測される発光スペクトルが、吸着種の蛍光とともに、金属表面の励起電子が吸着種により非弾性散乱されることによることを初めて見出した。4)脂質ナノチューブに最適サイズを有する金ナノ粒子を導入し、その表面プラズモンを励起することで、カルボニル基のピーク波数のシフトや、糖分子のスペクトルパタンなど、バルク状態とは全く異なる脂質ナノチューブのラマンスペクトル測定に成功した。この結果は、この方法により、金属ナノ粒子近傍のスペクトルのみが大きく増強されて観測されることを示しており、今後の詳細な解析により有用な結果が与えられるものと考えられる。2.ATR-SNOM-Raman分光法:1)表面プラズモンの干渉及び多重散乱電場が、ラマンイメージ測定に影響しないことを初めて見出した。3.近接場赤外分光法:1)FT-IR分光器をベースにして、全反射型配置で、金コートプローブを配置したAFMとの複合により、ポリマー及びチオール系試料について、チップ増強赤外吸収測定に成功した。また、試料下地に金属ナノ粒子を配置することで、より効率的に増強が行えることを初めて見出した。4.スラブ光導波路(SOWG)分光法の確立:電気化学的に制御可能なSOWG分光法の高感度化を進め、ITO電極上に単分子層以下の量で吸着したヘプチルビオロゲンカチオンラジカルの吸着種の電位依存性とチトクロムcの電位変化に対する応答を明らかにした。
著者
恩田 裕一 辻村 真貴 松下 文経
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

北東アジア地域における土地の荒廃について、現地調査およびリモートセンシングによって調査を行った。土地荒廃の理由としては、伐採、リターの採取、プランテーション、過放牧と様々な土地改変が行われており、それによる表面被覆の低下による土壌の浸透能の低下が激しい土壌侵食を引き起こし、土地荒廃の直接的な引き金になっていると考えられる。一方で、中国においては、植林の進展につれて、浸透能の増加、および土壌侵食量の減少も報告されている。本研究においては、現地と協力した詳細な現地調査および、リモートセンシングによって、表面被覆が回復すると浸透能が増加し、土壌侵食量が減少したことがあきらかとなった。また、リモートセンシングによって、NDVIの解析により東アジア全体における荒廃度の変化について、MAPを作成することができた。
著者
二又 政之 松田 直樹 清水 敏美 増田 光俊
出版者
独立行政法人産業技術総合研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1.単一分子感度ラマン分光法の確立:(a)化学的増強メカニズムに関して,Agナノ粒子は,アモルファスカーボン等に覆われており,色素の第1層吸着が抑えられるために,大きなSERS増強度は得られない。(b)しかし,塩化物イオン等を添加すると,表面化学種が置換され,カチオン性色素が静電的に強く吸着できるようになる結果,銀粒子間のナノギャップに存在する色素が,巨大SERS信号を与える。このとき色素の発光スペクトルがバルク状態とは大きく変化し,銀ナノ粒子と色素間に電子移動相互作用が働いていることが判明した。(c)これに対して,シアン化物イオン等は排他的に吸着し,表面化学種と銀ナノ粒子を溶解する結果,SERSがクエンチされる。3次元時間領域差分法で,平均ナノギャップがハロゲン化物イオン添加前の1nmから2nmにわずかに開くことで,活性化の過程で測定されたLSPピークの短波長シフトが再現された。以上のように,SERSの化学的増強効果に関して,アニオンによるSERS活性化およびクエンチの微視的過程が,ここで初めて明らかになった。また,単一分子感度までは得られないが,通常の金属蒸着膜やコロイド集合体よりは2-3桁大きな増強度を再現性よく与える金属ナノ構造を,電子ビーム,ナノ粒子オーバレーヤなどのリソグラフィ技術を用いて形成し,生体分子への超高感度分析・定量分析性を確かめた。2.近接場振動分光法の確立:AFM型近接場ラマン分光を電極/溶液界面に適用するために,倒立型顕微鏡のX-Yステージを改良し,ITO電極を基板とする3電極式溶液セル,AFMや分光器を有する測定装置を構築した。この装置により,溶液中のナノ構造体のトポグラフィやその近接場イメージと,チップ増強ラマン信号の検出に成功した。感度と空間分解能改善のために,プローブへの金属ナノ構造形成を進めた。
著者
宮澤 三雄
出版者
近畿大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

日本伝統野菜・帰化植物・生薬等計21種の植物から香気物質(精油)を得、精油構成成分及び香気特性を解明した。AChE阻害活性については、モミジガサ及びヨブスマソウの精油が強い阻害活性を示した。β-セクレターゼ(BACE1)阻害活性については、数種の精油において阻害活性を有することを見出し、精油香気物質や生物変換生成物の一部にも有効な活性を有する物質があることを明らかにした。本研究成果から、認知機能賦活の生化学的要因に植物香気物質が有効である可能性を示唆した。
著者
亀田 達也 結城 雅樹 中島 晃 ウェア ポール
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

「人間の共感能力とは何か」という問いは、人文・社会科学の共通の根本問題であると同時に、進化生物学などの自然科学領域にもまたがる巨大な問いであり、社会的存在としての人間を理解する上で極めて重要である。本研究では、「原初的共感」という人間の基礎的な感情作用に着目することで、「高次の共感」、「感情の本質的社会性」といったより大きな問題群を考究可能にするための、概念的な整備を体系的に行った。3年間にわたる研究を通じて、二者間での感情の同期化に関する理論構築に力を注ぎ、表情模倣と呼ばれる現象の特定に成功した。表情模倣とは、ターゲットの感情的な表情表出を、受け手が自分の表情表出に引き受ける(再現する)現象を指す。この現象については、母子間の表情模倣に関する古典的な研究が存在するものの、非血縁の成人間の模倣については断片的な知見の蓄積に留まっており現象の再現性やその規定因はほとんど明らかにされていない。本研究では、表情模倣現象が相手の感情理解のための機能を有するという作業仮説を立て、顔筋の活動電位(EMG)を計測することで一連の検証実験を行った。実験の結果は、この仮説をおおむね支持するものであった。これらの知見は、「原初的な共感」のエンジンとしての表情模倣現象の重要性を示唆するもので、人間の共感能力の理論化に向けて有意義な出発点となる。
著者
高田 寛治 伊藤 由佳子
出版者
京都薬科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

インスリンをペプチド薬の代表として取り上げ、その経皮吸収を可能とする新規のDDSであるマイクロニードルの製剤としての可能性について研究を行った。インスリン含有マイクロニードルを調製し、-80、20および40℃で1および3ヶ月間インキュベートしたが、いずれの条件下においても約99%の残存率を示した。ヘアレスラットの皮膚にEvans Blueで着色を施したインスリン・マイクロニードルを投与した後、組織学的観察を行ったが、皮膚への障害は認められなかった。また、in vivoにおける溶出性について検討を行ったところ、低水分環境下にあるにもかかわらず投与3時間後にはほぼ溶出が完了していた。吸収率を求める目的でエリスロポエチンEPO・マイクロニードルを調製し、マウス皮膚に投与を行い、その後24時間にわたり血漿中EPO濃度を測定し、薬物動態学的解析を行ったところ、約80%のバイオアベイラビリティBA(吸収率)が得られた。他の蛋白薬への適用の可能性を探索する目的でインターフェロンおよび成長ホルモンを含有するマイクロニードルを調製してラットを用いてin vivoにおける吸収実験を行った。その結果として得られたBA値は、インターフェロンで100%超、成長ホルモンで87%という値が得られた。さらに多糖類の代表である低分子ヘパリンについてもラットにて可能性試験を行ったところ、約80%のBAが得られた。以上の薬物動態試験に引き続いて、インスリン・マイクロニードルからのインスリンの薬効薬理実験をビーグル犬を用いて行った。1頭あたりインスリンの1.0および2.0単位をマイクロニードルとして投与した後、血糖降下率を8時間にわたり測定したところ、同量のインスリン皮下注射時と同等の血糖降下率が得られた。EPOについてもラットを用いて薬効薬理試験を行ったところ、1000および2300IU/kgの投与量時に有意な循環血液中赤血球数の上昇が認められた。以上より、マイクロニードルは新規の経皮吸収DDSとして極めて有望であるとの結論に達した。
著者
遠西 昭壽 川上 昭吾 大高 泉 吉田 淳 平野 俊英 楠山 研 森本 弘一 磯崎 哲夫 橋本 健夫 劉 卿美 遠西 昭壽
出版者
愛知教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

アジアの中で発展が急な韓国、中国、台湾、シンガポール4ヶ国、中国については教育特区の北京、上海、香港の理科教育の実態を調査した。アジア各国は例外なく理科教育の充実に努めている。特に、韓国では英才教育院、科学英才教育院において英才教育が進められていること、シンガポールでは2007年に「シンガポール大学附属理数高校」(National University of Singapore High School of Math and Science)、理数教育に特化した高校が開校していることが特記すべきことである。コンピュータ教育の充実も盛んに行われている。特に、シンガポールでは国が力を入れ、コンピュータはインターネット、電子黒板等多面的に利用されている。いじめがあるのは日本で、韓国では問題になりつつある。その他の国ではこの問題はない。3年間の本研究で、韓国、中国(北京、上海、香港)、台湾、シンガポールの研究者との交流を深めることができ、国際シンポジウムを開催することもできて、今後の研究交流の基盤が整備されたことは、大きな成果であった。
著者
山中 龍彦 乗松 孝好
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

本研究はレーザー核融合炉用燃料ペレットインジェクション装置を開発する上で必要な基礎技術、即ち、ペレットの正確な加速と加速されたペレットの速度、方向を正確にに評価するトレース技術の開発を目的としたものである。将来のレーザー核融合炉では直径6mm、壁厚200μm程度のプラスチック中空球に燃料である重水素、三重水素混合ガスを均一な厚さになるように容器の内面に固化したターゲットを数Hzの周期で投入し、レーザー照射し、核融合反応に導く。投入したレーザーのエネルギーと核融合で生成されたエネルギーの比、ターゲットゲインはレーザーの照射精度に大きく依存し、レーザー集光位置と照射時のターゲット位置とのずれはターゲット直径の1/100、即ち、50μm程度でなければならないと言われている。レーザー核融合炉の半径は5mm、インジェクション速度は300m/s程度と言われているので、これは方向精度において10μrad、速度において0.1μsの精度で測定・制御が必要であることを示している。試作したコイルガン方式のインクジェクション装置を用いた加速実験ではペレットインジェクション速度に対する初期位置の影響を中心に調べ、最適位置から100μmずれても出射速度は10^<-6>程度しか影響しないことが分かった。これはレーザー照射タイミングの調整範囲であるので、初期位置の精度は技術的には問題ないと言える。現時点では摩擦の影響の方がはるかに大きい。Z型に配置された3本の平らなレーザービームと、3個の検出器からなる位置、速度検出システムを考案し、ペレットの通過時間に関しては約10ns、通過位置に関しては0.01mmの精度で測定ができる可能性があることが分かった。このユニットをXY軸に対して各1セット、進行方向のZ軸に対して3セット用いれば、将来のインジェクションシステムに必要な十分な精度と応答速度をもっているといえる。
著者
瀧川 雄一
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

植物病原細菌の主要な発病機構であるIII型分泌機構は多くの細菌で見つかっているが、それによらない植物病原細菌の探索と新たな発病機構の解明を試みた所、Pantoea ananatisが該当することを見いだし、系統により植物ホルモン合成遺伝子が主要な病原因子であることを解明し、それを利用した検出システムも構築した。また、イネ、ネギを侵す系統がタバコに過敏感反応様の反応を引き起こすことも明らかにし、機能解析のための変異株の作出に成功した。Rhizobacter dauciやPseudomonas fuscovaginaeにおいてもIII型非依存であることを示し、特異な発病機構の一端を解明した。
著者
生水 真紀夫 井上 正樹 小池 浩司 瀬川 智也 村上 弘一
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究の成果は、以下の5点に集約される。1.子宮筋腫組織ではアロマターゼ発現が亢進しており、この亢進はGnRH analogueの投与により消失することを明らかにした。GnRH analogue投与は卵巣でのエストロゲン合成を低下させるが、今回の研究により子宮筋腫組織内でのエストロゲン(in situt estrogen)の合成を同時に低下させることを初めて明らかにした。GnRHanalogue投与では自然閉経に比較して子宮筋腫の縮小は急激かつ高度であるが、in situ estrogenの低下はこの理由を説明する可能性がある。2.子宮筋腫培養細胞にエストロゲン合成基質であるアンドロステンジオンを添加するとその増殖が促進される。この増殖促進効果はアロマターゼ阻害剤の添加により阻止することができる。3.ラットを用いた動物実験では、アロマターゼ阻害剤投与により無排卵状態が惹起されるが、投与中止により速やかに排卵周期が回復する。性周期回復後、妊孕性も速やかに回復しアロマターゼ阻害剤には長期効果はないことが確認された。4.学内倫理委員会の承認を得て、アロマターゼ阻害剤投与による子宮筋腫治療の臨床治験を開始した。閉経期に近いと考えられた患者では、子宮筋腫が著明に縮小して臨床症状が速やかに改善した。5.子宮内膜症細胞のアロマターゼは、転写因子SF-1/AD4BPにより局所的に発現が制御されているものと考えられた。その発現プロモーターPIIに結合するトランスエレメントは、顆粒膜細胞のそれとは異なるものであった。また、IL-1βにより制御される点で顆粒膜細胞における発現制御と異なっていた。Non steroidal anti-inframatory drugs(NSAIDs)やNF-kB阻害剤などによるプロモーター特異的発現抑制治療の可能性が示された。
著者
出口 清孝 陣内 秀信 高村 雅彦 森田 喬 安藤 直見 古川 修文 朴 賛弼
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は,気候風土や歴史的背景・民族的背景・宗教など,世界各国,とりわけ東南アジアおよび中近東を中心に,ヴァナキュラー建築(風土建築)について,その温熱・空気環境に関して実測やシミュレーション手法を用いての解明し,さらには関連分野との連携により幅広く検討を進めることにあり,次の地域や多様な住居を対象に実地調査を進めた。1.東南アジアの伝統的「高床式」住居の温熱・風環境2.イランの採風塔のある伝統的住居の温熱・風環境ならびに採風塔の通風効果3.モンゴルにおける移動型テント住居「ゲル」の温熱・風環境と換気特性4.チュニジアの砂漠地域マトマタにおける地下住居の温熱・空気環境5.トルコ・カッパドキアの岩窟型住居の温熱・空気環境6.南イタリアの港町ガリッポリにおける住居の温熱・風環境および屋外の温熱・風環境これらの研究成果により,これまで主に歴史学的・民俗学的に調べられてきた風土建築が自然の建材を適切に利用した住居であると言え,気候風土に適応するような住まい方の工夫を行い,さらには,自然エネルギーを高度に利用した環境に低負荷,省エネルギーを実践する住居であると,環境工学的な検証を行ったことに意確がある。そして,その手法を現代に応用すれば,地球環境保全を意図し,持続可能な建築・都市環境の創造に寄与するものと期待できる。
著者
田代 順孝 木下 剛 赤坂 信 小林 達明 柳井 重人 古谷 勝則
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

最終年度である平成18年度は,地区スケールの緑の配置計画の可能性について検討を行うとともに,これまでの研究成果をとりまとめて研究の総括とした。住宅地と街路空間を対象として放射エネルギー分布図を作成することにより,夏季の高温化を促進する土地被覆と冷却効果を持つ土地被覆を特定し,その効果を定量的に把握することができた。さらに,放射エネルギー分布図を利用して,温熱環境(または温熱景)制御のために,緑の配置によって蓄熱する景観要素をコントロールすることの可能性についての知見が得られた。中高木を植栽して緑陰を確保するとともに,土地被覆を芝生や裸地とすることで,地中への蓄熱を軽減することが予測された。また,表面温度と周囲の気温との温度差が大きく,放射熱伝達が大きい場合は発生源(各要素)から出る放射エネルギーに対して,適切な緑を配することで軽減できることが明らかとなった。さらに,熱帯地方における日影変化・樹木形態(樹種や植栽密度の違いによる)・緑陰効果からみた緑陰地の特性について検証し,温熱景制御に資する緑の配置パターン(植栽デザイン)について明らかにした。具体的には,緑陰エリアは日中,樹冠と同程度の最小限の日影をつくり出すことから,人々の活動をサポートするための緑陰空間は日中において特に考慮されるべきである。緑陰地の空間形態は樹木のサイズ(樹高と樹冠により中規模,大規模,極大規模)によって規定される。全緑陰(Full Shade)は密植(暗い緑陰と樹冠の重層)により形成され,非全緑陰(Not Full Shade)は疎林(やや暗い緑陰と樹冠の接触)によって形成される。また,分離植栽は緑陰を形成しない(樹冠が離れており地表は明るい)。葉と枝張りの密度の濃い緑陰樹は緑陰地のデザインにおいて特に適している。緑陰空間の特性は,熱帯地方の特に日中,太陽が南中した際に重要な役割を果たす日影に重要な影響を及ぼす。日影の継続は人々の活動に高い快適性をもたらすことができた。以上の結果から,温熱景制御に資する地区スケールでの緑の計画の在り方について有用な知見を得た。
著者
伊藤 正敏 田代 学 藤本 敏彦 井戸 達雄
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

中等度強度の運動によって脳内ドーパミン分泌が生じているか否かを明らかにする目的で[^<11>C】Raclopride-PETを用いて脳内ドーパミンD2濃度の定量を行った。8人の健康な男性(年齢は21.4±2.0歳)の協力を得て、一回は安静状態で、もう一回はエルゴメータ運動を行いながらPET撮影を行った.エルゴメータ運動は強度VO2Max35〜60%で50分間行い、運動開始後20分で[^<11>C]racloprideを静脈投与した.運動に随伴する頭の位置のずれを最小にするために、Plastic face maskによって強固に頭を固定すると共に、数学的動き補正を行った.ソフトウエアは、Welcome Institute開発のSPM5を使用した.次に、この加算画像を用いて脳標準画像に対して形態的標準化を行った.この画像に対して関心領域(ROI)を左右の尾状核、被殻および小脳にとって[^<11>C]raclopride集積の時間変化曲線(TAC)を得、小脳を参照領域として、D_2受容体結合能(BP)、をSimplified Reference Tissue Model(SRTM)、Logan NonInvasive Method(Logan)、Ichise Multilinear Reference Tissue Model(MRTM2)を使って計算した.解析ソフトはPMODを使用した.解析の結果、左右の尾状核および被殻における[^<11>C]racloprideのドーパミンD_2受容体への結合が運動中、一様に減少し手いるのが判明した.その減少の程度は-12.9〜17.0%(P<0.01)であった.運動に際しての[^<11>C]racloprideのD_2受容体への結合の減少は、脳内ドーパミンが分泌されたことを強く示唆するもので、運動に際しての爽快感などの情動感覚と関係すると考えられる。