著者
吉田 裕久 大槻 和夫 植山 俊宏 三浦 和尚 位藤 紀美子 山元 隆春 牧戸 章 吉田 裕久
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究では、3年間にわたって、説明的文章・文学作品・文章表現・音声表現の四つの領域班に分かれて、それぞれ予備調査・本研究を実施しつつ「国語能力の発達」に関する実証的な研究を進め、国語科教育改善への糸口を見出そうとした。本研究で得られた各領域班の研究から導かれた知見を一言で集約することはむずかしい。が、得られた成果を仮に集約してみると、次のようなことを言うことができる。1音声表現領域班が追究した対話能力の研究なかでの、「共同案」を組替えながら話し合いを行っていくことのできる力と、文学作品領域班の調査で得られた小・中学生の「続き物語」のなかに見られた、参加者的スタンスと観察者的スタンスをバランスよく選択していくことのできる力は、どこかでつながりあっているのではないだろうか。これは、文集表現領域班における調査結果についてもあてはまることである。さらに、説明的文章領域班の考察のなかで明らかになった、小学校6年以降の「メタ認知能力」の伸長の問題とも、これはリンクすると言えるのではないだろうか。2.対象や他者に同化・一体化していくということが可能になるかどうかというところに、少なくとも学童期初期の国語能力の発達の「峠」のようなものがあるように思われる。その同化・一体化が果たされた後、再び自己はことばを媒介としながら対象や他者とは異なる、自らの内部の何かを捉えることになる。それを意識しうるか否か、表現しうるか否か、ということがその次の「峠」なり「節目」なりになる。3.このような営みのなかで、その主体が関心を差し向ける「焦点」は移り動き、関心の幅と深さのようなものが、少しずつ少しずつその域を広げていくのではないか。対象や他者に同化・一体化しようとしたときとは異なった意味で、対象や他者をより広いパースペクティヴで捉えることができ、それを理解したり、その理解のもようを報告できるかどうかということが、その次の「節目」となるように思われる。4.対象や他者の包括的な理解と平行して、自己の内部の拡張もおこなわれるはずである。対象や他者の認識が構造化され、さらに自己の内部で追い育った独自な世界を、対象や他者に匹敵するものとして構築することができるか否かということが、おそらくその次にくる発達上の問題である。5.この科研の各領域班の調査研究で、とくに小学校高学年から中学生にかけて観察された、発達上の<停滞>や<ゆるみ>とも解釈される事象は、子どもの内面に目をやれば、そのような内部での葛藤が営まれているものであると考えることもできる。詳細な研究成果は、平成9年度末にまとめた中間報告書に続き、平成11年度末に刊行する最終報告書『国語科教育改善のための国語能力の発達に関する実証的・実践的研究II』(A4版160頁)に集約した。
著者
宇田川 拓雄 辰己 佳寿子 浜本 篤史 鈴木 紀 佐藤 寛 佐野 麻由子 黒川 清登 RAMPISELA Dorothea Agnes 鯉沼 葉子 島田 めぐみ 片山 浩樹 斎藤 文彦 佐藤 裕 KIM Tae Eun KIM So-young 多田 知幸 MULYO Sumedi Andorono 中嶋 浩介 RUSNADI Padjung YULASWATI Vivi
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

開発援助では様々な社会調査が実施され評価に利用されている。参加型調査、民族誌作成、フォーカスグループディスカッションなど標準的な調査法以外の手法も使われている。JICAの評価システムは構造上、広汎な長期的インパクトの把握が難しい。また、質の高い調査データが必ずしも得られていないため、評価団がポジティブな現状追認型評価を行なった例も見られた。調査の倫理をしっかりと踏まえた評価調査法の開発と普及が望まれる。
著者
崎村 建司 夏目 里恵 阿部 学 山崎 真弥 渡辺 雅彦 狩野 方伸
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、グルタミン酸受容体の発現と安定性、さらにシナプスへの移行と除去が細胞の種類や脳部位により異なった様式で調節され、このことが単純な入力を多様な出力に変換し、複雑な神経機能発現の基礎課程となるという作業仮説を証明することである。この解析ために、4種類のAMPA型グルタミン酸受容体、4種類のNMDA型受容体はじめとして複数のfloxed型標的マウスを樹立した。また、GAD67-Creマウスなど幾つかのCreドライバーマウスを樹立した。これらのマウスを交配させ解析した結果、海馬CA3では、GluN2BがシナプスでのNMDA型受容体の機能発現に必須であることを明らかにした。また、小脳TARPγ-2とγ-7がAMPA型受容体の発現に必須であることを見出した。さらに発達期のシナプスにおいて、GluN2AとGluN2Bが異なった様式でAMPA型受容体を抑制することを単一神経細胞でのノックアウトを用いて示した。
著者
夏目 敦至 若林 俊彦 鈴木 正昭 古山 浩子 近藤 豊 竹内 一郎
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

我々はDNAのメチル化などのエピジェネティクスが癌精巣抗原(Cancer-testis antigens, CTAs)の発現調節にも関与していることを見出し、5-aza-deoxycytidineをグリオーマに作用させるとCTAsの発現が活性化することを認めた。そしてCTA特異的細胞傷害性T細胞によってHLA拘束性に傷害される。以上にDNAメチル化阻害剤と癌ワクチン療法の組み合わせで強力な免疫療法の開発の展望を示した。一方、HDAC阻害剤のうち、SAHA, MS-275, FK-288は米国において白血病における臨床試験が行われている。また、脳神経外科領域でなじみのある抗てんかん薬のバルプロ酸がHDAC阻害活性を有しているのも興味深い。DNAメチル化酵素やHDACとともにEZH2も分子標的となりうる。現在、エピジェネティクス異常を標的とする治療薬の開発が急速に進んできており、グリオーマにおいて適応になるのも近い将来可能になると期待される。
著者
姜 貞勲 山下 敦
出版者
独立行政法人国立循環器病研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

循環器疾患細胞に過剰発現しているGタンパク質共役受容体関連シグナルに応答するナノ分子システムの開発を目的とした。細胞内シグナルに選択的な新規ペプチドの探索に成功し、ペプチドを側鎖とし、水溶性高分子ポリマーを主鎖とするナノ分子システムを構築した。ナノ分子システムによる細胞内への遺伝子導入実験で、過剰発現している細胞内シグナルに応答して遺伝子が発現することを確認し、システムの有効性を明らかにした。
著者
和田 圭司
出版者
国立精神・神経センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

ボンベシンは多彩な生理作用を持つ生理活性ペプチドであり、その作用を介達する受容体については哺乳類でGRP受容体、NMB受容体、BRS-3の3種が知られている。ボンベシンシステムは内外分泌、代謝の調節や行動の制御などに関係することが示唆されているが各受容体の脳機能における生理的役割をより詳細に個体レベルで検討するためGRPおよびNMB受容体並びにBRS-3欠損マウスの作製を行った。これら遺伝子欠損マウスを用い研究期間中に行動科学的研究を推進し、GRP受容体欠損マウスが非攻撃性の社会相互作用の亢進及び活動期(夜間)の運動量の増加を示すこと、さらに、社会的探索行動の亢進を認め、それが嗅覚情報処理の障害から来る可能性の高いことを見いだした。また、BRS-3欠損マウスでは中枢性の肥満、高血圧、糖代謝障害を呈するとともに、野生型に比して甘味をより嗜好し苦味をより嫌悪する傾向にあって味覚学習も障害されていることを見い出した。さらに、社会的刺激の剥奪がBRS-3欠損マウスの体重増をより促進すること、同じく野生型で認められる社会的刺激の剥奪による自発運動量の亢進がBRS-3欠損マウスでは認められないことを見出した。これらの結果はBRS-3欠損マウスでは情動反応性、社会的反応性が障害されていることを示唆する。行動科学的解析を中心にした本研究は、ボンベシンシステムの脳機能における役割が情動の多面的調節であることが示すものである。なお、未知であるBRS-3の内在性リガンドの分子生物学的同定を試みたが候補となる分子の同定にはいたらなかった。
著者
佐藤 和秀 亀田 貴雄 石井 吉之 的場 澄人 高橋 一義 石坂 雅昭 竹内 由香 横山 宏太郎 小南 靖弘 川田 邦夫 渡辺 幸 飯田 俊彰 五十嵐 誠 竹内 望
出版者
長岡工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

北海道から本州の山形県,新潟県,富山県にいたる冬期の降積雪試料を採取し,主に酸性雪に関する化学特性の解析を行い,その実態の調査研究を実施した。報告例が少ない降積雪の過酸化水素濃度に関する多くの知見が得られた。より明確な因果関係の把握にはさらなる観測調査が必要であるが,大気汚染物質あるいは積雪の主要イオン濃度,過酸化水素濃度,pH,黄砂,雪氷藻類などの間にはいくつかの相関関係が見られ,融雪水のイオンの選択的溶出も観測された。
著者
池田 徹 宮崎 則幸 松本 龍介
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究では,まず,マイクロ構造物の接合強度評価パラメータを解析する数値解析手法の開発を行うことを目的とした.このために,前年度までに3次元異方性異種材界面き裂の応力拡大係数を解析する手法を開発していたが,これにグラフィック・ユーザー・インターフェースを整備して,一般ユーザーが'使用しやすいソフトウエアを完成させた.また,当該年度には,熱応力下の異方性異種材接合角部の応力拡大係数を解析する手法を完成させた.これにより,界面き裂のみでなく,さまざまな角度をもって接合した接合角部の特異性応力場の評価が可能となった.これまで,このような熱応力下の異方性異種材界面角部の応力拡大係数を解析する手法は無く,本手法はマイクロ構造物のみに限らず,あらゆる異種材接合角部の定量的な強度評価に道を開くものである.次の目的は,デジタル相関法を用いた々イクロ接合部のひずみ分布の直接測定手法の開発である.これについては,レーザー顕微鏡画像に対するレーザー走査時の位置ずれに起因する画像誤差を,異なる方向に走査した2枚の画像を使って補正する手法を開発し,デジタル画像相関法によるひずみ測定の精度を向上させた.さらにこの計測手法を用いて,部品内蔵基板中のひずみ分布を計測することにも成功した.以上の成果によって,マイクロ構造物中の破壊現象について,数値計算手法による解析結果を実測によって確認することが可能となったことから,強度評価の信頼性を高めることが期待できる.また,数値計算手法では解析が難しい,複雑な内部構造をもったマイクロ構造物内のひずみ分布や,構成部材の材料定数などを実測によって調べることが可能となった.
著者
北川 浩 尾方 成信 中谷 彰宏
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

原子レベル構造の動的変化の詳細を追跡できる分子動力学法を用いて、コンピュータ上で創製した長距離規則構造を持たないアモルファスにき裂を導入し、モードI型のき裂伝播の大規模シミュレーションを実施した.つぎの2つの解析モデル:(I)板厚方向に周期構造を仮定したモデルA(約109万原子),(II)厚さ方向に自由面を持つ薄膜状のモデルB(厚さ〜50nm,約224万原子)を対象として,き裂進展量とき裂先端開口変位,応力とひずみの分布,原子数密度の分布,動径分布関数などを評価することによりき裂進展のメカニズムに検討を加えた.(1)き裂先端の強変形域は、せん断帯と前縁部の等方引張り応力の高い部分よりなる。a)せん断帯内では、10^4(〜20原子(〜5nm)立方)原子集合程度の領域で、短い時間内に引張り方向に対して約±45゜方向を主軸とする局在化した単純せん断変形が頻繁に発生/消滅を繰り返し、巨視的なせん断帯が形成されていく。b)き裂前縁部では、顕著な密度低下を生じ、それが局所的な強度低下を引き起こす。(2)モデルAでは、き裂は先端の軟化域の原子流動により鈍化するのみで、ほとんど進展しない。き裂先端は高温(800K以上)となるが、再結晶することはない。全プロセスゾーンを通じて初期のアモルファス構造はほぼ保たれる。(3)モデルBのき裂伝播シミュレーションでは、き裂前縁は一旦V字形に尖った後、先端部にボイドを発生,その成長と共にき裂と合体して急激なき裂成長を引き起こすという変形サイクルを繰り返す.変形域はき裂の先端のごく狭い領域に限られる.
著者
安藤 広子 塚原 正人 溝口 満子 市川 尚 飯野 英親 浅沼 優子 横山 寛子 HEATHER Skirton KAREN E. Greco CYNTHIA A. Prows
出版者
岩手県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

わが国の看護基礎教育において遺伝遺護教育を導入・発展させていくために、看護教員のための教育プログラムの開発にあたり、国内・外の遺伝看護教育の実態調査を行った。それによると、基礎教育全体に遺伝看護の要素が盛り込まれる傾向にあること、看護学以外のコースに「遺伝カンセラー養成」等の大学院修士レベルのコースが設置されつつあった。しかし、「遺伝看護教育」とはどのようなものであり、その教育展開はどうあったらよいかを知りたいというニーズが多かった教育プログラムの内容および展開方法については、海外の研究協力者と共に国際的な視野から検討を行い、実施した。そして、臨床遺伝学の基礎と主な疾病の事例展開を中心に、E-ラーニングと対面授業を行い、websiteでの調査とフォーカスグループ・インタビューによる評価を行った。学習モニターは、全国を8ブロックに分けて募集をした看護学教員30名であった。対面授業による学習者の情報交換および交流は、遺伝看護教育のあり方を検討する上で、有意義な反応がみられた。また、学習者の要請により、本研究において作成したE-ラーニング教育内容および「国際遺伝看護教育セミナー2007&2008」の講義内容を冊子体に編集をした
著者
尼岡 邦夫 矢部 衛
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

南半球のダルマガレイ科魚類の種の多様性とその分散の経路を明らかにする目的で、サンゴ海、オーストラリアやニュージーランド周辺海域から集められた約3,000個体の本科魚類を雌雄差、老幼差などを考慮して、コンピューターで分析し、分類学的研究を行い、次のような結果を得た。本海域には本科魚類はイトヒキガンゾウビラメTaeniopsetta属1種、ミツメダルマガレイGrammatobothus属1種、ホシダルマガレイBothus属2種、コウベダルマガレイGrossorhombus属1種、ヤリガレイLaeops属1種、ヒナダルマガレイJaponolaeops属1種、ヤツメダルマガレイTosarhombus属3種、ダルマガレイEngyprosopon属10種、イイジマダルマガレイPsettina属3種、ナガダルマガレイArnoglossus属10種、スミレガレイParabothus属3種およびセイテンビラメAsterorhombus属3種の12属39種分布している。そのうち、14種が未記載種であり、次の10種、Engyprosopon bellonaensis, E.septempes,E.rostratum,E.longipterum,E.raoulensis,Tosarhombus necaledonicus,T.longimanus,T.brevis,Parabothus filipesおよびArnoglossus micrommatusは新種として記載し公表された。他の未記載種は投稿中または投稿準備中である。Arnoglossus bleekeriおよびPsettina variegatusは原記載以後初めて記録され、T.ocellata,Bothus myriaster, C.kanekonis,L.kitaharae,J.dentatus,E.grandisquamus,E.xystrias,E.maldivensis,E.hureaui,Parabothus kiensis,P.coactatus,Psettina iijimae, P.variegatus,Arnoglossus macrolophusおよびA.tenuisの15種は南半球から初記録である。本研究で南半球の本科魚類相を初めて明らかにしたが、属レベルでは北半球のものと100%、種レベルでは約50%が共通し、本科魚類に関しては両半球間に明瞭な障壁は認められない。本科魚類は底生魚であるが、浮遊性仔魚によって分散することと関係している。
著者
沢田 知子 丸茂 みゆき 曽根 里子 谷口 久美子 渡邊 裕子 山下 哲郎 南 一誠 高井 宏之 西野 亜希子
出版者
工学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008-04-08

本研究は、近年の長寿命住宅への要請を踏まえ、官民の供給事例を対象に、体系的・経年的調査を実施し、「長寿命住宅(ハード)に対応する住まい方像(ソフト)」を明らかにすることを目的とした。調査(3種)として、「フリープラン賃貸住宅」の居住過程調査、「公的賃貸住宅(KSI含む)のライフスタイル調査、「住まいのリフォームコンクール」入賞作に関する調査を実施。その成果物として、日本建築学会査読論文3編、「長寿命住宅に対応する住まい方事例集」報告書等を作成した。また、100年超を視野に入れた長寿命化を図る「リフォーム計画論」として、現存住宅の所有者更新に力点をおいた「計画技術」を蓄積する必要性を示唆した。
著者
鮎京 正訓 宇田川 幸則 姜 東局
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

「郷約(きょうやく。村のおきて)」とは、中国に起源をもち、朝鮮半島、ベトナムに伝播した、村落共同体における冠婚葬祭、近隣紛争、軽微な犯罪の処罰などに関する成文化された規範を指します。本研究は、1980年代末以降のベトナムにおける郷約(きょうやく。村のおきて)の復活という現象に注目し、それを、東アジア、特に中国と韓国との比較によって、法治と村のおきて(郷約)という二元化状況を視野の中心に据え、アジアにおける伝統法の再生のプロセスを明らかにすることを目標としました。
著者
大住 晃 大瀬 長門 澤田 祐一 井嶋 博
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は,超高層ビルの不規則外乱(地震動や風など)による振動の抑制に対するアクティブ制御問題について,高層ビルに加えた入力とその出力である振動データに基づいてアクティブ制御方式を確立することを目的としている.制御対象となる構造物のダイナミクスのモデリングは本研究代表者がすでに確立している連続時間部分空間システム同定法を用い,また制御法としては,すでに確立している地震動と風外乱それぞれを分離して制御する機能分担(Functionally Assigned Control)方式を用いた.縮尺1/200の実験模型を製作し,実験を実施してモデリングと制御が理論どおりに行なわれていることを確認した.(i)平成16年度:入出力データを用いてモデリングを行う部分空間システム同定アルゴリズムの構築と,アクティブ制御方式(FAC制御方式)のコンピュータアルゴリズムの確立およびコンピュータシミュレーションによる確認を行なった.またスケールモデルとして地上200m,50階建て,一辺が40mの高層ビルを想定し,その1/200の模型を製作し実験を実施した.(ii)平成17年度:カルマンゲインを含めたシステムの部分空間同定アルゴリズムを構築し,初年度に製作した実験モデルを用いて制御実験を実施した.(iii)平成18年度:FAC制御方式を予測制御アルゴリズムに組み込み,構造物の縮尺モデルでは偏心によるねじりを考慮し,x, y-2軸のアクチュエータにより制御が可能であることを確認した.
著者
御子柴 道夫 長縄 光夫 松原 広志 白倉 克文 清水 昭雄 大矢 温 加藤 史朗 清水 俊行 下里 俊行 根村 亮 坂本 博
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

18世紀後半から19世紀前半までのロシア思想史を、従来の社会思想史、政治思想史に偏る研究視点から脱し、それらを踏まえたうえで、狭義の哲学思想、宗教思想、文学思想、芸術思想の多岐にわたる面で多面的に研究してきた。その結果、従来わが国ではもっぱら思想家としてしか扱われてこなかったレオンチェフの小説にスポット・ライトが当てられ、逆に小説家としてしか論じてこられなかったプラトーノブやチェーホラが思想面からアプローチされた。またロシア正教会内の一事件としてわが国ではほとんど手つかずだった賛名派の騒動が思想ないし哲学面から解釈された。さらに象徴派の画家やアヴァンギャルド画家が哲学あるいは社会思想史の視点からの考察の対象となった。と同時に、これらの作業の結果、ロシアでは文学、芸術、宗教儀礼、あるいは社会的事件さえもが思想と有機的に密接に結びついているのではないかとの以前からの感触が具体的に実証されることとなった。また、文化のあらゆる領域を思想の問題としてとらえた結果、当該時期のロシア思想史をほとんど遺漏なく網羅することが可能になった。この基本作業をふまえて、いくつかのテーマ--近代化の問題、ナショナリズムとグローバリズムないしユニヴァーサリズムの問題、認識論や存在論の問題などが浮上してきた。分担者、協力者各自の研究の中で当然それらのテーマは咀嚼され発展させられてきたが、今後はこれらのテーマを核に、この4年間で蓄積された膨大な素材を通史的に整理し止揚する作業を継続してゆき、書籍として刊行して世に問うことを目指す。
著者
伊藤 誠二 裏出 良博 松村 伸治 芦高 恵美子
出版者
関西医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

痛みは生体にとって警告反応どなる生理的な痛みだけでなく、炎症や手術後の痛み、癌末期の疼痛、神経の損傷による神経因性疼痛(ニューロパシックペイン)と様々な原因で起こり、自発痛、侵害性刺激による痛覚過敏反応、本来痛みを誘発しない非侵害性刺激による痛み(アロディニア)とさまざまな病態をとる。末梢組織で活性化された侵害受容器のシグナルは一次求心性線維を介して脊髄後角に伝えられる。我々は、脊髄髄腔内にプロスタグランジン(PG)E_2あるいはPGF_<2α>を投与するとアロディニアを生じ、PGD_2がアロディニアの発症を修飾すること、これらのアロディニアの発症はカプサイシン感受性と非感受性の異なる2つの伝達経路を介すること、脊髄での中枢性感作には、PG→グルタミン酸→NMDA受容体→一酸化窒素合成酵素(NOS)の活性化という生化学的カスケードを介することを明らかにしてきた。今年度は、アロディニアの発症機構におけるこれらの生体因子の役割をノックアウトマウスで明らかにするために、まずマウスの坐骨神経結紮モデルを確立し、検討した。1)アロディニアは坐骨神経結紮後、1週間で生じたが、COX-2のノックアウトマウスは、アロディニアの発生には関与しなかった。2)坐骨神経結紮モデルの痛覚反応はCOX-1の選択的阻害薬で抑制されたが、COX-2の選択的阻害薬では影響されなかった。3)誘導型NOSのノックアウトマウスでもアロディニア反応は抑制されなかった。4)NMDA受容体ノックアウトマウスではアロディニア反応の出現が抑制された。これらの結果は、アロディニアの発症にグルタミン酸による興奮性神経伝達が重要な役割をしていることを示唆するものである。今後、我々が進めてきた髄腔内PG投与によるアロディニアモデルと比較検討してアロディニアの発症機構を解明したいと考えている。
著者
杉原 興浩 岡本 尚道 小松 京嗣 戒能 俊邦 白井 宏政 芦高 秀知 江上 力 秋月 隆昌
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

情報通信分野における急速な情報量の増加により、光導波路を用いたモジュール間あるいはボード間の光インターコネクションの研究が活発に展開されている。本研究では、高耐熱性・優れた透明性を備えた樹脂を開発し、それを用いて光導波路デバイスを作製・評価することを目的とする。材料として高いガラス転移温度を有するポリアリレート樹脂を開発し、現行樹脂の欠点を克服し、これまでにない優れた光学特性を有する材料を得る。また該樹脂を光導波路デバイスに応用し、ポリアリレート高分子光導波路作製において、光インターコネクションや宅内・車載LANに応用できる低損失マルチモード光導波路(コア径:30〜100μm)を実現する。従来のポリアリレートは、200℃以上の耐熱性を有していたが、その構造にC-H結合を多く有するため、赤外域での吸収損失が無視できなかった。そこで、C-H結合の一部をC-F結合に置換したフッ素化ポリアリレートを開発し、その材料としての特性を評価した。その結果、ガラス転移温度は基本的なポリアリレートであるU-100と比べて30℃上昇し、耐熱性が向上していることが明らかとなった。また、可視〜赤外の広い領域でU-100と比較して透明性が向上しており、光導波路コア材として適していることも明らかとなった。このフッ素化ポリアリレートを用いて、フォトリソグラフィ及び反応性イオンエッチング法でコア径90μm及び30μmのマルチモード光導波路を作製した。また、ポリアリレートは、電子線直接描画と熱現像により微細加工できるが、フッ素化ポリアリレートにおいては、微細加工に必要な電子線照射量がU-100の1/20で良いことがわかり、材料の電子線感度が大幅に向上することが新たに発見された。
著者
中坊 徹次 山本 圭介 堀川 博史 中山 耕至
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1)日本近海の魚類相の分析;東シナ海及びその隣接海域の魚類の分類学的研究の基礎として、日本近海の魚類相の特徴が17型に分けられることを明らかにした。2)メバル属魚類の分類学的研究;浅海岩礁での漁業対象種であるメバルは従来から3つの色彩変異型が知られていたが、それらの生物学的な意味は未研究であった。これらのメバル3色彩型を形態学と分子遺伝学を用いて分析した結果、それぞれが生物学的に独立した種であることが判明した。メバル属ではやや深海に棲むウケクチメバルの2色彩型についても、メバル3色彩型と同様に研究を行った結果、それぞれが生物学的に独立した種であることが判明した。3)マエソ属魚類の分類学的研究;大陸棚砂泥底に生息するマエソ属魚類は漁業対象でありながら、種の分類が混乱していた。これらのうちマエソと呼ばれる種の分類が特に混乱していた。マエソ属魚類はインド・西太平洋域に広く分布しているので、日本近海を含むこれらの海域から得られた標本を入手し、形態を比較し、過去の文献を渉猟して分類学的研究を行った。その結果、マエソと呼ばれる種は2種であり、ひとつは新種であることが判明した。この論文は現在、学術雑誌に投稿中である。4)カマス属魚類の分類学的研究;カマス属のうち、アカカマスと呼ばれる種は最も美味であるが、分類が混乱し、複数種が含まれていることが示唆されていた。これらを詳細に検討した結果、3種であることがわかり、そのうち1種は新種であることが判明した。これも投稿中である。5)その他の魚類の分類学的研究;上の他、アオメエソ類、メジナ類、エボシダイ類、ウマズラハギ類、トラギス類について、分類学的研究を行った。これらは3編の論文が公表され、2編が投稿中である。
著者
信國 好俊 堂前 純子 烏帽子田 彰 藤本 成明
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

大規模ジーントラップ挿入変異細胞ライブラリーを用いたゲノム機能遺伝学的方法で、細胞内コレステロール代謝輸送、そして高脂血症に関与する可能性のある候補遺伝子を探索し、既知あるいは機能未同定の遺伝子を複数明らかにすることに成功した。これまでに188の変異細胞の解析から、細胞内コレステロール代謝輸送関連(候補)遺伝子として49の既知遺伝子と32の機能未同定遺伝子の解明に成功した。
著者
鎌田 東二 梅原 賢一郎 河合 俊雄 島薗 進 黒住 真 船曳 建夫 原田 憲一 藤井 秀雪 中村 利則 小林 昌廣 尾関 幸
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

日本語の「モノ」には物質的次元、人間的次元、精神的・霊的次元が含意されているという問題認識に基づき、日本文明の創造力の基底をなすその三層一体的な非二元論的思考の持つ創造性と可能性、またその諸技術と表現と世界観をさまざまな角度から学際的に探究し、その研究成果を4冊の研究誌「モノ学・感覚価値研究第1号~第4号」(毎年3月に研究成果報告書として刊行)と論文集『モノ学の冒険』(鎌田東二編、創元社、2009年11月)にまとめて社会発信した。また最終年度には、「物からモノへ~科学・宗教・芸術が切り結ぶモノの気配の生態学展」(京都大学総合博物館)と、モノ学と感覚価値に関する3つの国際ンポジウムを開催した。