著者
今山 延洋 山下 晃功 橋本 孝之 糸山 景大 長谷川 雅康 永田 萬享 畑 俊明 竹野 英敏 尾崎 士郎 澤本 章 大橋 和正 余湖 静也 山口 晴久 土屋 英男 宮川 秀俊 安東 茂樹 安孫子 啓 田口 浩継 山本 勇 紅林 秀治 長澤 郁夫 吉田 誠
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

教師を目指す人に対して、技術科教員指導能力認定試験を創設し、3回実施した。日本で初めての試みである。試験は年1回実施され、教員養成で必要な修得基準に基づいて出題し、教員として身につけておくべきレベルの筆記・実技・模擬授業の能力を一次・二次試験によって判定した。3回の試験の実施の経験をもとに、今後の恒常的な実施の見通しを得るとともに、修得基準を見直した。
著者
荒井 茂夫 田村 慶子 加納 寛 福田 和展 田中 恭子 レオ スリヤディナタ 賢 強
出版者
三重大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

調査表回収率は全体で5割ほどであった。458部は十分とは言えないが、丁寧な聞き取り調査によって数値を補うことができた。インドシナ諸国華僑華人の移動は政治的混乱と戦争が最大の要因で新概念による分類が必要となった。従来は旧華僑・華人、新華僑の2分類であったが、難民華僑という分類である。彼らは受け入れ国、脱出国、中華文化の三者に濃淡差のあるアイデンティティを持つ点が他地域の華人と異なる点である。また欧米の難民華僑社会は民族・文化的共通の通信回路を持つエクスターナル・チャイナ的領域の拡大と見ることもでき、ワン・ガンウの理論は合致するが、移動に関して華僑大衆は生活次第で定住する傾向があり、難民華僑成功者も受け入れ国に資産を置きながらだ出国に帰国投資するもので、一族挙げて戻ることはない。この点ワン氏の理論は問題はあるが、都市間の移動という点では当てはまる。
著者
有賀 哲也 奥山 弘
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

固体表面上に形成された低次元金属においては、電子と電子の間の相互作用、電子と格子の間相互作用、あるいはラシュバ型スピン軌道相互作用によって、さまざまな興味深い低次元物性が発現する。本研究では、将来の半導体スピントロニクスの基盤となる半導体表面上低次元金属において、さまざまなタイプのラシュバ型スピン偏極状態を発見した。また、ケイ素表面上の低次元インジウム単原子層における金属-絶縁体相転移が擬一次相転移であることを明らかにした。
著者
松岡 正子 謝 茘 袁 暁文 李 錦 耿 静 蔡 清
出版者
愛知大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、2008年の.川大地震で被災したチャン族を対象として、復旧復興の現状と問題点を国家とチャン族の視点から分析し、民族文化創出のメカニズムについて考察した。被災地は、政府主導の「中国式復興モデル」によって急速に復旧し、街は近代化され、一部の農村は民族観光村に一変した。しかしそれらは外部者の政府側が主導し、住民は参画しなかったため、従来の自然と共生したチャン文化とは異なる文化が創出された。
著者
金 憲経 鈴木 隆雄 吉田 英世 島田 裕之 齋藤 京子 古名 丈人 大渕 修一
出版者
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所)
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

都市部在住後期高齢者におけるサルコペニア有症率は22.1%であった。サルコペニア高齢者の特徴を調べるために、サルコペニアと判定された304名とサルコペニアと判定されなかった正常者1,073 名の調査項目を比較した。その結果、サルコペニア群は正常群に比べて、年齢が高く、下腿三頭筋周囲、骨密度、BMI、筋肉量は有意に低値を、健康度自己評価で健康だと回答した者の割合、定期的な運動習慣を持っている者の割合は低かったが、外出頻度が少ない者の割合は高値を示した。既往歴においては、高血圧症、高脂血症は正常群より低い割合を示したが、骨粗鬆症の既往はサルコペニア群38.2%、正常群30.7%、60歳以降の骨折歴はサルコペニア群28.6%、正常群22.9%、過去1年間の転倒率はサルコペニア群26.5%、正常群16.4%といずれの項目においてもサルコペニア群が有意に高い割合を示した。以上のことから、サルコペニア高齢者は、転倒のみならず骨粗鬆症に伴う骨折危険性が高いことが示唆され、その予防策の早期確立が重要なポイントであることが強く示唆された。サルコペニアの早期予防を目的とした運動、栄養補充の効果を調べるために、介入参加者155名をRCTにより運動+栄養群38名、運動群39名、栄養群39名、対照群39名に分け、運動群には週2回、1回当たり60分間の筋力強化と歩行機能の改善を目的とした包括的運動指導を、栄養群にはロイシン高配合の必須アミノ酸3gを1日2回補充する指導を、3ヶ月間実施した。その結果、四肢の骨格筋量および通常歩行速度は運動群、栄養群、運動+栄養群の3群で有意な増加が観察された。しかし、下肢筋力を評価する膝伸展力は運動+栄養群のみで有意な向上が観察された。これらの結果より、サルコペニア予防のためには、運動指導に必須アミノ酸を含んだ栄養を補充する複合介入がより効果的であることを検証した。
著者
小川 和夫 良永 知義
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

単生類Neoheterobothrium hirameは、1990年代半ばに突然新種として日本近海のヒラメに出現した寄生虫である。天然ヒラメの貧血症の原因寄生虫であり、ヒラメ資源への影響が懸念されている。本研究では、本虫の起源を明らかにする目的で、アメリカ合衆国大西洋岸のサザンフラウンダー、サマーフラウンダー、チリ産ヒラメ1種からNeoheterobothrium属虫体を採集し、ヒラメのN.hirameと形態学的・分子生物学的に比較した。サザンフラウンダーから得られた虫体は、ヒラメに寄生するN.hirameと形態学的に差が認められず、また、18S rRNA領域、ITS1-5.8S RNA-ITS2領域、ミトコンドリアのCOI領域のいずれにおいても、塩基配列に大きな差は認められなかった。この結果から、サザンフラウンダーに寄生する虫体はN.hirameであり、本種が近年日本近海に侵入し、ヒラメを宿主として定着したものと結論付けられた。従来、サザンフラウンダーにはサマーフラウンダーを宿主とするN.affineが寄生するという報告があった。そのため、N.hirameがN.affineと同種である可能性も残っていた。そこで、本研究いおいて、サマーフラウンダーから得られたN.affine2虫体について、形態学的再記載とITS1領域の塩基配列の配列決定を行い、N.hirameと比較した。その結果、この2種は別種であることが強く示唆された。ただし、今回は得られたN.affineの数が少なく、今後に検討の余地が残された。チリ産のヒラメ類Hippoglossina macropsから得られたN.chilensisの形態ならびにITS1と28S rRNAの部分領域の塩基配列を決定した。その結果、本虫はN.hirame・N.affineと大きく異なり、これらとは別属である可能性が示唆された。
著者
吉田 久美 前島 正義 近藤 忠雄
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

花色発現には種々さまざまな液胞膜輸送が重要な役割を果たしている。そこで、この観点から、花色の解明を目指した。1)アサガオの開花に伴う花色変化の機構と液胞膜輸送開花時に液胞pHが上昇するのは、表層の着色細胞だけであることから、花弁の短時間の酵素処理により着色プロトプラストだけを調製し、これから、着色細胞だけの液胞膜を単離した。これを用いて、pH制御に関わると推測される輸送タンパク質の解析を行った。開花に向けてV-ATPse、V-PPaseの活性が協奏的に上昇した。ナトリウムープロトン交換輸送体(NHX1)は、開花最終ステージで劇的に発現量が上昇し、活性が上がった。同時に、PM-ATPaseの発現量と活性も上昇することがわかった。以上より、これらプロトンポンプ類およびNHX1の働きが、花色の青色化(即ち液胞pH上昇)をもたらすことを明らかにした。さらに、開花にともないアサガオの花弁の表層細胞の体積は数倍に増加し、この現象と花色の青色化、およびK^+量の増加同調していることがわかった。即ち、アサガオ開花時の液胞膜上のプロトンポンプ、NHX1および細胞膜上のプロトンポンプの発現量の増加と活性上昇は、液胞内へK^+を輸送して細胞を伸長生長させるために必須の装置ではないかと考えられる。2)その他の花の花色発現機構アジサイ、ファセリア、チューリップなどの液胞内成分を明らかにし、青色発色機構の化学的な解明を行った。
著者
姫野 龍太郎 藤野 清次 阿部 邦美 小野 謙二 伊藤 祥司 岡本 吉史 今村 俊幸 片桐 孝洋 伊藤 利佳 中田 真秀
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

電磁界問題,量子化学計算,数値流体計算の大規模数値シミュレーションに向けて,大規模行列計算に向けた高速化,高精度化,安定化を実現し,従来手法では解きにくい問題に対する新たな求解アルゴリズムを提案した.さらに,そのようなシミュレーションを支援するために,応用問題の特性に応じたデータ構造を決定する自動チューニング技術,ジョブスケジューラによる最適な計算機資源割当て方式,任意高精度線形代数演算パッケージも開発した.
著者
市瀬 孝道 西川 雅高 今井 透 吉田 成一 定金 香里 岸川 禮子 世良 暢之 世良 暢之
出版者
大分県立看護科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は日本に風送された汚染黄砂の呼吸器系への影響を、実験動物を用いて明らかにすると共に黄砂現象中の健康被害を、呼吸器系を中心とした疫学調査によって明らかにすることを目的する。我々は動物実験で風送黄砂が卵白アルブミンによって誘発される気管支喘息様病態やスギ花粉による鼻炎を悪化させることを明らかにした。また我々は北九州地域における疫学調査おいて、黄砂が花粉症や目の症状を悪化させることを明らかにした。
著者
久世 均 齋藤 陽子 松本 香奈
出版者
岐阜女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

学習教材を多方向から同時に撮影し、学習者の目的に応じた多視点映像として教材化すると共に、その多視点映像教材の教育利用について研究した.
著者
松原 斎樹 藏澄 美仁 澤島 智明 合掌 顕 大和 義昭 飛田 国人 松原 小夜子 柴田 祥江 福坂 誠 吉岡 むつみ 宮川 鮎子 叢 志超 馬 豫 岩垣 裕紀 桑野 朝子 山崎 彩乃 高見 初音 大塚 弘樹
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

ライフスタイルの変更による省エネルギー策の一つとして,視覚・聴覚要因を活用することに注目して,アンケート調査,被験者実験,熱負荷シミュレーション等を行った。視覚・聴覚要因による省エネルギーの可能性は実験室実験だけでなく,実態調査・アンケート調査でも可能性が示唆され,行動が変容できれば,暖冷房エネルギーは約7~8%削減され,また設定温度の変更を想定するとより大きな削減が予想できた。
著者
福嶋 正巳 倉光 英樹 長尾 誠也
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

鉄ポルフィリン触媒による臭素系難燃剤テトラブロモビスフェノールA(TBBPA)の酸化分解に及ぼす腐植酸の影響について検討を行った。これまで研究を行ってきた塩素化フェノール類とは異なり、TBBPAは鉄ポルフィリン触媒による脱ハロゲン化が起こりにくく、主としてオリゴマーが生成する酸化重合が優先的に起こることがわかった。したがって、腐植酸を共存させたときには、TBBPAやBPsの酸化生成物と腐植酸とのカップリング化合物が生成し、その転化率は50-60%程度であった。また、藻類(P.subcapitata)成長阻害試験によりTBBPAのみを酸化した場合と腐植酸を共存させた場合に関する毒性評価を行ったが、腐植酸の共存によりTBBPAの毒性が低減することを明らかにした。
著者
丸中 良典 新里 直美 中島 謙一 楠崎 克之 芦原 英司 細木 誠之 宮崎 裕明 山田 敏樹
出版者
京都府立医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

アルドステロンが、管腔側膜結合型プロテアーゼ発現・活性を亢進させることにより、ENaCの管腔側膜上滞在時間を増大させることを明らかにした。1)アルドステロンの投与の有無により管腔側膜結合型プロテアーゼ(channel activating protease : CAP)の発現が促進されることをウエスタンブロッティング法を用いて確認した。この結果、アルドステロン投与により、CAPの発現および活性とも、増大することが明らかにした。2)上記の結果、アルドステロン投与によりENaCのクリベッジが促進され、リサイクル効率を増大させることを明らかにした。
著者
菅原 一幸 北川 裕之 山田 修平 三上 雅久 浅野 雅秀 BAO Xingfeng LI Fuchuan
出版者
神戸薬科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

(1)ヒトの先天性脊椎・骨端異形成症(spondyloepiphyseal dysplasia, SED)がコンドロイチン6-O硫酸基転移酵素-1(C6ST-1)の変異によって発症することを証明した。(2)コンドロイチンの基本骨格の生合成に関わるコンドロイチン重合化酵素(ChPF)の線虫のオルソログPAR2.4をクローニングし、その機能低下により、線虫の胚発生初期の細胞質分裂が異常になることが分かった。(3)サメ皮膚のCS/デルマタン硫酸(DS)ハイブリッド糖鎖の種々の生物活性を証明し、治療薬への応用の可能性を示した。(4)ブタ胎児脳のCS/DS鎖の神経突起伸長促進作用が増殖因子プレイオトロフィンとの結合を介することを証明し、さらに機能ドメインである硫酸化十糖を単離し、配列を決定した。(5)海産ホヤの果肉から海馬ニューロンの突起伸長促進活性をもつ高硫酸化デルマタン硫酸を精製し、これでマウスを免疫し、抗デルマタン硫酸単クローン抗体を調製した。この抗体は海馬ニューロンを染色し、免疫源であるデルマタン硫酸の神経突起伸長促進活性を阻害した。(6)ヘルペス単純ウイルス(HSV-1、HSV-2)は細胞表面のヘパラン硫酸への結合を介して感染するとされてきたが、今回我々は、感染細胞のコンドロイチン硫酸のE構造を認識して感染しうることを証明した。
著者
相場 芳憲 戸田 浩人 小池 孝良 生原 喜久雄
出版者
東京農工大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

本研究は大きく次の3つの課題について調査した。1. 降水の移動に伴う溶存元素の垂直的変化森林にインプットされた林外雨は樹冠に遮断されるために、土壌へ到達する水量は林外雨量の80%に減少し、水質も大きく変化することを、スギ・ヒノキの壮齢林、ミズナラおよびコナラの優占する落葉広葉樹林で調査した。また、下層植生による影響も大きいことを明らかにした。樹冠を通過することによる濃度増加の要因を樹体に付着した物質からの(乾性沈着)の洗脱と樹体からの溶脱の割合から解析した。2. 土壌水の水質形成土壌系での水質変化を明らかにするため、イオン交換樹脂を用いて、水溶性塩基の移動量を調査した。また、土壌中の窒素無機化が土壌水質に及ぼす影響を調査した。3. 渓流の水質形成渓流の水質形成のメカニズムを明らかにするため、枝打ちや間伐が渓流水の水質形成に及ぼす影響を調査した。また、降水量と渓流水の水質の関係を調査した。森林生態系での主に流出経路としての渓流水質は、土壌層および母材を通過する過程で、溶存物質の吸着や溶出によって物理化学的な平衡状態になる。森林は降雨量の変化にかかわらず水質を一定に保つ機能があることを明らかにした。
著者
小峯 和明 渡辺 憲司 金 文京 増尾 伸一郎
出版者
立教大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

日本中世の物語類を中心に、<予言文学>に関わる表現やモチーフの資料集を作成し、さらに予言書、未来記、託宣書、夢記、起請文、遺言、遺訓などの文書類のリストを作成、資料集としてまとめた。東アジアに関しては、北京、ソウル、ハノイ、パリ、ロンドン、ボストンなどで資料調査を行い、貴重な資料を収集した。それらの成果をもとに、北京、ハノイ、パリで<予言文学>をめぐる国際学会や研究会を主催し、論文集としてまとめた。
著者
西村 一朗 畠山 絹江 中山 徹 小城 勝相 水野 弘之 小野木 禎彦 阿部 登茂子
出版者
奈良女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

3年間の個々の研究を総括し、以下のような内容から、高齢者の状況、生活各側面での要求、問題点、将来への課題等についてまとめた。(1)食物関係高齢者は加齢に伴い、確実に骨密度の低下が進行していた。低骨密度、骨粗鬆症の高齢者が骨折を起こさないための環境づくり、支援が課題である。買い物、調理の楽しみを持続させ、高齢者の希望に叶った配食サービスなどの生活支援体制を整える必要がある。(2)衣服関係高齢者の体型分布の幅の広さから、高齢者用既製服の衣服サイズ、デザインが乏しいことが指摘される。高齢者の体型と既製服サイズの適正化について更なる研究が必要である。また、高齢者向けの衣服の売り場展開の検討も必要である。(3)住居関係マンションの共用部分において、手すり、エレベーターの設置が少なく、今後改善が望まれる。高齢期にはできるだけ住み慣れた自宅で過ごしたいと考える高齢者が多かったが、身体が不自由になったとき、看護・介護・ひとりで生活できないこと・体力に不安を感じていることがわかった。持ち家一戸建住宅において、居住者の高齢化に伴う家族人数の減少により、相対的に広い住宅の空洞化が進んでいる。高齢者の住環境への要求には、高齢期を反映した独特の住環境要求があるが、それらの要求と住空間との間に乖離が進展する中、それを取り除いていくことが重要である。
著者
田口 正樹 石川 武 山田 欣吾 石部 雅亮 村上 淳一 石井 紫郎
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、西洋と日本の歴史の中で法が有した統合作用を、そのさまざまな側面について検討した。その際、法そのものの持つ内実よりも、法が表出される様式、広い意味での法の「かたち」に注目するという視角を採用し、史料論および文化史の手法を参照しつつ、研究を進めた。史料論との関係では、古代末期・中世初期イタリアの文書史料、ドイツ中世中期の法書史料、西洋中世中期から初期近代(近世)にかけての法学文献とその体系、日本中世の日記を取り上げて、文字記録が支配と統合にとって有した意味、法書の国制像におけるラント法とレーン法の関係、lnstitutiones体系による法素材の整理と統合、京都を舞台とした「政治」の諸相などを解明した。文化史的研究に対しては、中世ドイツ人の国家像、中世中期ドイツの国王裁判、中世後期ドイツの貴族の実力行使(フェーデ)を考察対象として応接し、ローマ帝国を最終帝国とする歴史神学的世界観の意義、貴族間の紛争解決ルールの変容、フェーデにおける名誉や公衆の意義、などの問題が論じられた。更に転換期における法の「かたち」を、古代末期ローマ帝国の贈与に関する皇帝勅答、近世ドイツ都市における法類型、近世ドイツの大学における法学教育などを取り上げて検討し、皇帝政府による勅答を通じた諸利害の調整、中間権力と雑多な法を組み込んだ領邦君主の支配体制、近世の法学入門文献による法学諸分野の関連づけと歴史法学によるその改変などを明らかにした。最後に、「統合」そのものが現代世界において持つ意味と、日本の歴史上現れる「統合」の特徴的なパターンを、ドイツの社会学者ニクラス・ルーマンの後期の思考と日本古代から近代に至るまでの、公的ないし半公的な歴史叙述を対象として考察し、統合が構造的に生み出す排斥や、中心権力に奉仕する者たちの由緒の歴史という統合パターンを論じた。
著者
今泉 敏 横田 則夫 出口 利定 細井 裕司 新美 成二
出版者
広島県立保健福祉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

話し相手の心を理解するコミュニケーション機能を支える脳機構とその発達を研究した。まず、話し言葉から話し相手の心を理解するテスト(音声課題)を作成し、小、中学生、成人合計339名を対象にその能力の発達を調査した。文章による比喩・皮肉文理解課題(文章課題)も行った。その結果、言語的意味と話者の感情とが一致しない皮肉音声やからかい音声に対して、他者の心を理解する能力が小学生から中学生に掛けて有意に上昇し発達するものの、中学生になってもなお成人の成績には達しないことが分かった。特に、からかい音声から話者の発話意図を理解する能力は中学生でも成人より有意に低いものだった。低年齢児の能力を評価するためには音声課題の方が文章課題より適していることが示された。さらに、健常成人24名(男性12名,女性12名)を対象に,感情(「喜び」と「憎しみ」)を込めた音声から,話者の気持ちを判断する場合(感情課題)と語の言語的意味を判断する場合(言語課題)の脳活動をfMRIで解析した。その結果,女性に比較して男性の反応時間は有意に長く、正答率も低かった。脳の賦活パターンには両課題とも性による違いが観測された。感情課題では,心の理論や社会的・倫理的推論で重要な役割を果たす前頭内側部(FMC)が男性でのみ有意に賦活した。左右上側頭回や左下前頭回の賦活も男性のほうが高かった。話し言葉から相手の心を理解する脳機能には性差があり,男性では推論作業が重要であることが示唆された。以上の結果に基づいて、音声から話し相手の心を理解するコミュニケーション脳機能を計測する装置を開発した。この装置によって、言語理解障害、感情認知障害、心の理解障害と、それらの機能の発達障害を検査できることが示された。
著者
吉井 博明 松田 美佐 羽渕 一代 土橋 臣吾 石井 健一 辻 泉 三上 俊治
出版者
東京経済大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

日韓台の携帯電話及びインターネットの利用実態を調査した結果、日韓台ともにほぼ同じ頃に急速に普及したという点では同じであるが、その利用形態には大きな違いがみられることを実証することができた。また、これらの通信メディアの使い分けは、各国・地域のコミュニケーション文化を色濃く反映する「通信文化」と呼ぶべきものが存在し、それに強く規定されていることがわかった。たとえば、韓国では、携帯電話を通話に使うことが非常に多く、日本では通話よりメールがよく使われている。この背景には、親しい人への連絡手段の選択に際して、相手が置かれている状況への配慮をどの程度すべきかというコミュニケーション文化の違いがある。韓国の場合は、「ウリ」と呼ばれる親しい集団の間では、遠慮をすることがあってはならないという文化があり、通信手段の選択に関しても遠慮しないことが求められ、その結果、リッチネスが高いメディアである、通話が積極的に使われる。これに対して日本では、親しい人への連絡に際しても、相手への配慮を欠いてはいけないとする「抑制」のコミュニケーション文化があり、このためメールが多用されるのである。また、日台の携帯電話利用の比較をしてみると、もっとも大きな違いは、利用の効用として「家族とのコミュニケーションが増えた」ことをあげる人の割合が日本では少ないのに対して、台湾では非常に多いことがあげられる。携帯電話利用がその社会でもっとも親しい集団の凝集力を強化する働きがあるという点では共通しているが、それがどの集団化ということになると、台湾では家族であり、日本ではふだんよく会う友人集団、韓国では「ウリ」という仲間集団ということになるのである。以上述べたように、日韓台の比較調査により、それぞれの国や地域に固有な通信文化が存在し、それが携帯電話を含む通信メディアの使い分けを規定していることがわかった。