著者
藤田 耕司 松本 マスミ 谷口 一美 児玉 一宏
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

中間動詞構文は、狭義の統語論・意味論の相関のみならず事態認知の有り様を反映した言語現象でありながら、これまで理論横断的な包括的研究はあまり行われてこなかった。本研究では、現代理論言語学の二大潮流である生成文法と認知言語学の双方の利点を組み入れた統合的なアプローチを採ることによって、この多様な側面を持つ現象のより優れた分析方法を提案するとともに、生成文法、認知言語学それぞれの問題点と今後の展望を浮き彫りにした。
著者
犬丸 啓 福岡 宏 山中 昭司
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,系を特徴づける分子レベル,ナノレベルあるいはそれ以上のレベルの階層同士が機能面で絡み合っている系を,「機能階層系」と定義し、これをキーワードにした材料の探索を、薄膜合成や超高圧合成などの特殊反応条件を活用し行った。酸化チタン粒子や金属Pd粒子をメソポーラスシリカで包含した複合体の(光)触媒作用、超伝導金属窒化物や反強磁性窒化物の高圧合成や薄膜合成などにより、特殊反応条件の特徴の現れた、あるいは界面における相互作用が物性に大きく影響を与える系が見出された。
著者
権藤 恭之 高橋 龍太郎 増井 幸恵 石崎 達郎 呉田 陽一 高山 緑
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、高齢期におけるサクセスフルエイジングを達成するためのモデルが加齢に伴って、機能維持方略から論理的心理的適応方略、そして非論理的超越方略へと移行するという仮説に基づき実証研究を行ったものである。70 歳、80 歳、90 歳の地域在住の高齢者 2245 名を対象に会場招待調査を実施しそれぞれ関連する指標を収集した。その結果、高い年齢群ほど身体機能、認知機能の低下が顕著である一方で、非論理的適応方略の指標である老年的超越の得点は上昇しており、高い年齢になるほどサクセスフルエイジング達成のために非論理的適応方略が有効であることが示唆された。
著者
坂田 完三 碓氷 泰市 渡邊 修治
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

1)烏龍茶のアルコール系香気生成機構の分子レベルでの解明:我々が確立したアルコール系香気前駆体検出法を用いて,烏龍茶水仙種および毛蟹種の殺青葉から,アルコール系香気前駆体を単離,構造決定し、これらのほとんどが2糖配糖体(β-primeverosides)であることを明らかにした.ついで,予備検討として,入手が容易な緑茶用品種やぶきた種新鮮葉からアルコール系香気生成酵素を精製し、本酵素がβ-primeverosidesを特異的に認識して加水分解し,アルコール系香気とprimeveroseを生成する酵素β-primeverosidaseであることを明らかにした.さらに,p-nitrophenyl β-primeveroside(pNP-Pri)を合成することができたので,これを用いて中国から入手した烏龍茶水仙種および日本産やぶきた種の新鮮葉中の香気生成酵素の精製を行い,これらがSDS-PAGEにて61KDaに単一バンドを示すほとんど同一の酵素であることを明らかにした以上のようにして,茶葉におけるアルコール系香気生成機構を分子レベルで明らかにすることができた.2)茉莉花の香気生成機構の分子レベルでの解明:ジャスミン茶の製造に用いられている茉莉花から,linaloolと2-phenylethanol,benzyl alcoholの2糖配糖体を香気前駆体として単離同定した.また茉莉花の開花直後の花から調製したアセトンパウダーの可溶化,カラムクロマトグラフィー等による部分的精製の結果,香気生成酵素は,グリコシダーゼで,本酵素は少なくとも3種類存在し,これらの酵素は2糖配糖体をアグリコンとグリコシド結合のみを加水分解して香気成分へと変換することを明らかにした.3)pNP-Priの酵素合成:香気生成酵素研究に不可欠な基質であるpNP-Priの酵素合成を行った.市販のpNP-β-D-glucophyranoside(pNP-Glc)を受容体基質,xylobioseを供与体基質として市販の酵素をスクリーニングしたところ,Pectinase Gに糖転移活性を認められた.部分精製した酵素を用いてpNP-Priの酵素合成が行えることを見いだした.この基質を手に入れることで,上記の研究は飛躍的に進展した.
著者
山下 隆男 塚本 修 大澤 輝夫 永井 晴康 間瀬 肇 小林 智尚
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では,地球温暖化による気候変動に伴い巨大化する台風,ハリケーン,サイクロンを対象として,わが国の主要湾(大阪湾,伊勢湾,有明海・八代海),メキシコ湾およびベンガル湾における,高潮,高波,強風,豪雨、洪水に関する災害外力の上限値を評価することを目的とする。このため,以下の3研究課題について,各々のサブテーマを分担課題として研究を進め,災害外力の上限値解析を行った。(1)スーパー台風(ハリケーン・サイクロン)の数値モデル(2)台風と海洋との相互作用(3)スーパー台風による災害外力の上限値解析。最終年度に得られた成果をまとめると、以下のようである。1.海水温の上昇により、熱帯性低気圧がどの程度巨大化するかを、地上風速、降雨量とについて数値的に検討した。海面水温の2度の上昇は海面風速(せん断応力)降水量(陸上および海上)に極めて甚大な影響を及ぼすことを示した。2.台風と海洋の相互作用では、台風による海水混合で台風が弱体化する機構を示した。さらに、海上の降水量、河川からの出水により海洋表層の淡水成分が増加すれば、成層構造が強化され、台風による海水の混合過程が弱まれば、台風が減衰しにくくなる可能性を示した。3.災害外力の評価では、沖縄県において台風の巨大化を考慮した高潮ハザードマップを作成し公表した。4.気候変動の捉え方として、地球の平均気温のように指数関数的に増加するトレンドとしての上昇以外にも、太平洋、大西洋、インド洋等の海洋振動の影響による数十年周期の変動(ゆらぎ)を、適応策において考慮することの重要性を指摘した。
著者
加藤 照之 松島 健 田部井 隆雄 中田 節也 小竹 美子 宮崎 真一
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

北マリアナ諸島のテクトニックな運動を明らかにするためのGPS観測と2003年5月に噴火活動を開始したアナタハン島の地質学的な調査を実施した.GPS観測は2003年1月,同年7月及び2004年5-6月に実施,以前の観測データとあわせて解析を実施した.今回は,1回のみ観測が実施されていた北方の3島を中心とした観測を実施した.西マリアナ海盆の背弧拡大の影響が明瞭に見て取れるものの,北方3島については,繰り返し観測の期間が短いせいか,必ずしも明瞭な背弧拡大の影響は見られない.アナタハン島噴火の調査は2003年7月及び2004年1月に実施した.2003年7月の調査では,噴火はプリーニ式噴火から水蒸気爆発に移行し,一旦形成された溶岩ドームが破壊されたことが分かった.2004年1月調査で計測した噴火口は,直径400m,深さ約80mであり,火口底には周囲から流れ込んだ土砂が厚く堆積し,間欠泉状に土砂放出が起きていた.2003年7月には最高摂氏300度であった火口の温度が2004年1月には約150度と減少し高温域も縮小した.カルデラ縁や外斜面には水蒸気爆発堆積物が厚く一面に堆積しているものの,大規模噴火を示す軽石流堆積物層等は認められない.このため,アナタハン島の山頂カルデラの成因は地下あるいは海底へのマグマ移動であると推定される.この噴火についての地殻変動を調査するためにGPS観測を強化することとなった.火口の西北西約7kmに位置する観測点では,連続観測を開始したほか,2004年1月には島の北東部に新たな連続観測点を設置して観測を行っている.2003年1月と7月の観測データの比較では,水平成分がほとんど変化せず沈降約21cmが観測された.観測された地殻変動は主に噴火によるマグマ移動によって引き起こされたと考えられ,マグマ溜まりが噴火口の直下よりも島の西端にある可能性を示している.
著者
石川 裕彦 植田 洋匡 林 泰一
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

西太平洋上で発生し日本付近まで北上してきた台風は、中緯度の大気の傾圧性の影響を受け、その構造が徐々に変化する。この過程で、さまざまなメソ擾乱が発生し、災害発生の原因となることが多い。本研究では、数値シミュレーションにより台風を再現し、その構造変化、メソ擾乱の発生、気象災害との関連を調べた。不知火海の高潮災害や豊橋の竜巻等の災害をもたらした1999年の台風18号は、日本海で一旦弱まった後再発達をとげたが、この様子を数値モデルで再現することに成功した。そして、再現結果を解析することにより、最盛期の台風の上層に形成される負渦位偏差が台風衰弱に重要であること、再発達期には対流圏上層のトラフにともなう正の渦位とのカップリングが生じ、これが再発達の要因となっていることを解明した。さらに、豊橋市付近で発生した竜巻に着目した数値計算を行い、竜巻発生場所の周辺で、対流潜在位置エネルギー(CAPE)とストーム相対ヘリシティ(SREH)との積であるエネルギーヘリシティ示数(EHI)が大きな値を持つことが示された。これは、将来、台風に伴う竜巻発生を予報できる可能性を示唆した者である。近畿地方、特に奈良盆地に大きな強風害をもたらした1998年の台風7号に関しては、消防署等も含むさまざまな期間から集めた気象観測データを解析し、台風に伴う地上風を詳細に調べた。これらの強風は、台風の背面で発生していること、強風域はバンド状のメソ降水系に対応していることを明らかにした。さらに、この強風域は台風の循環と中緯度の西風との号流域にから発生していることが数値実験で示された。秋に襲来する台風にともないしばしば観測される時間スケールの短い急激な気圧低下(pressure dip)に関しても、その発生頻度や性状を観測データからあきらかにするとともに、その発生メカニズムを数値シミュレーションで明らかにした。
著者
首藤 伸夫 今村 文彦 越村 俊一
出版者
岩手県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

大洋を伝播して沿岸部に来襲する遠地津波の予報精度向上を目指し,本研究グループは,(1)外洋から大陸棚に入射した遠地津波の多重反射と津波エネルギーの捕捉・減衰特性の解明,(2)リアルタイム観測情報を用いた津波波源域の推定,(3)津波伝播途上における波数分散効果の解明の3点について,研究を行った.(1)では,外洋から陸棚斜面に入射した津波の伝播・減衰特性を理論的に解析した.岸沖方向に有限な陸棚斜面を想定し,沖合からの任意の入射波形に対する斜面上の津波伝播を表す理論解を求め,さまざまな入射条件において得られた理論解を整理し,特に斜面上における津波の多重反射現象に着目し,津波の捕捉・増幅・減衰特性に関する知見を得た.(2)では,従来からの地震波解析から得られる震源過程の情報に加えて,観測される津波の波形から津波波源域の空間的な諸量をリアルタイムで推定する手法を開発した.地震波解析から即時的に得られる震源要素は,震央位置,震源深さ,マグニチュード,メカニズム解である.これらの情報に加え,津波の解析を行うためには断層面の空間的な広がりを知る必要があった.従来までは余震観測により断層面の空間スケールを決定していたが,これでは津波の量的な予報には間に合わない.断層の空間スケールが発生する津波の波形に反映されることに着目し,津波の観測波形から断層面の幅と長さをリアルタイムで推定することにより,最大でも20%以内の誤差で波源推定が可能であることを示した.(3)では,特に遠地津波の予測に重要な波数分散効果を,津波発生域から遡上までのすべての伝播過程において評価できる数値モデルを開発し,日本海中部地震津波の再現を試みた結果,従来では困難であったソリトン分裂による津波増幅を良好に再現できることが分かった.
著者
桑野 園子 難波 精一郎 FLORENTINE M FASTL Hugo SCHICK Augus
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

公共空間において,突発的な危険を知らせる警告信号音が具備すべき条件として,(1)種々の騒音下において検知されやすいこと,(2)高齢者など広い年齢層を対象にしても検知されやすいこと,(3)音が検知された場合,それが何らかの警報であることが容易に認知されること,(4)この音の認知は文化の相違を超えた普遍性があること,すなわち警報としての機能がある特定の文化圏に限定されないこと,などが挙げられる。これらの諸条件を考え,SD法による危機感を与える音の検討,連続判断実験による種々の背景条件下で特に判断時点を定めない場合の検知実験,さらにSD法に関してはドイツ(オルデンブルグとミュンヘン),アメリカ(ボストン)で実験を行った。また,日本における実験には海外からの研究者の参加を得て相互比較の信頼性を高めるべく努めた。これらの実験の結果,早い速度で周波数変化を反復する音が検知の面でも危機感の面でも警告信号音として適当であるとの結論が得られた。またこの結論は海外の実験でも確認された。この反復する周波数変化音は広い周波数範囲を含む音なので,高齢者のように高音部の聴力が低下している場合でも,低音部の成分が検知の手掛かりを与える。今後,国際会議などでもこの結果を紹介し,ISO(国際標準化機構)における警告信号音の標準化の資料としても貢献できるように努めたい。
著者
藤部 文昭 高橋 清利 釜堀 弘隆 石原 幸司 鬼頭 昭雄 上口 賢治 松本 淳 高橋 日出男 沖 大幹
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

970年代まで行われていた区内観測による26都府県の日降水量データをディジタル化し, 高分解能かつ長期間の降水量データセットを作成した。このデータや既存の気象データを利用して著しい降水や高低温・強風の長期変化を解析し, その地域的・季節的特性等を見出した。また, 極値統計手法を様々な角度から検討し, 各方法の得失を見出した。さらに, 全球数値モデルを用いて, 降水極端現象の再現性に対するモデルの水平解像度の影響を調べ, 今後モデルと観測データを比較するための統計的手法の検討を行った。
著者
石原 孟 山口 敦 藤野 陽三
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

浮体式洋上風力発電システムを対象に、浮体と風車の連成振動を考慮した応答予測モデルを開発するとともに浮体の係留を含む構造物の大変形を考慮できる新しい解析モデルを提案し、風力発電設備用浮体の波浪応答予測システムを開発した。また、風車の回転と制御を考慮した風車応答予測システムを開発し、浮体の波浪予測モデルと合併させることにより、浮体式洋上風力発電設備の応答を求めることを可能にした。さらに、浮体式洋上風力発電所設計のために日本全国任意地点において設計波高および設計風速を求める手法を開発した。
著者
吉田 重光 石崎 明 土門 卓文 足利 雄一 井上 貴一朗 黒嶋 伸一郎 沢 禎彦
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

今回の研究では、口腔内および口腔以外のリンパ管を介した免疫機構を明らかにするため、免疫で重要な役割を果たす複数のタンパク質の研究を行いました。その結果、口腔内では部位によりリンパ管の果たす役割が異なる可能性を、また口腔以外では、いくつかのタンパク質が相互連携していることを明らかにしました。以上から、全身のリンパ管は、物質輸送だけではなく免疫機構にも関与することが分かりました。
著者
篠田 壽 竹山 禎章 荘司 佳奈子 島内 英俊
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

強力な骨吸収抑制薬として知られる一連のビスホスホネート(BP、BPs)系化合物の中から8種のBPsを選び、歯周病治療薬として、どのBPが最も高い可能性を有するかについて種々の検討を行った。その結果、(4-メチルチオフェニル)チオメタンビスホスホネート(TRK-530)に高い可能性が見出されたので、このBPを中心にその薬理作用、作用機序、安全性について検討し、概ね以下の結論を得た。1.TRK-530は、LPS, PGE2,IL-1等による骨吸収の促進を、用量依存的に抑制した。2.現在、骨粗髪症治療薬あるいは高カルシウム血症治療薬として最も広く使用されている窒素含有BPs(N-BPs)は、LPS刺激によるPGE2産生の増加を用量依存的に増強するのに対して、TRK-530はこれを用量依存的に抑制した(マウス頭蓋冠骨器官培養系)。その機序は、抗酸化作用に基づくCOX-2の発現抑制に基づくものと推測された。3.N-BPsは、骨芽細胞系のセルラインにおいて、アルカリホスフアターゼ活性を抑制するのに対して、TRK-30は、用量依存的に増加させた。4.ラットやウサギの歯槽骨に局所投与したTRK-530は、投与部位の骨密度と骨量を著明に上昇させた。5.全身的あるいは局所的に投与したTRK-530は、ラットの実験的歯周炎モデルにおいて用量依存的に歯槽骨の吸収を抑制し、歯周組織の破壊を抑制した。6.BPsの副作用の一つとして報告されている抜歯後の骨壊死に関して、ラット抜歯窩の修復に及ぼす効果を検討した。N-BPsの一つであるゾレドロネートの大量全身投与は、抜歯窩の修復を遅らせるのに対して、TRK-530にはそのような作用は認められず、むしろ修復を促進する傾向が見られた。以上、本研究により、TRK-530は、多くのBPsの中でも歯周病治療薬としての比較的優れた性質を有することが示唆された。
著者
長谷川 公一 青木 聡子 上田 耕介 本郷 正武
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

温暖化防止活動推進員に対する郵送調査によって、推進員は、高学歴者の割合が高く、定年後あるいは定年を目前にした男性と活動的な専業主婦が主力であり、男性では、これまでの経験を活かし社会的に有意義な活動に貢献したいという意欲が高く、女性では婦人会役員などが行政の勧誘によって推進員になっている場合が多いことなど、男女別の相違点が明らかになった。3年間の各都道府県代表の全国大会応募申請書をもとにデータベース化を行い、関係主体間の連携と環境学習を重視し、地域資源を活用したすぐれた実践が多いことが明らかになった。
著者
中沢 文子 高橋 淳子 盛田 明子
出版者
共立女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1.第一大臼歯が欠損している被験者に圧力素子を埋めた義歯を装着して、被験者を束縛することなく自然な状態で種々のテクスチャーの食物の咀嚼し,その過程を計測した.食物を摂取してから飲み込むまでの咀嚼中の第一大臼歯に生じる噛む力パルスと,その臼歯の上下,左右,前後の3次元的な動きを同時測定した.咀嚼1噛み目の力のパルスと,臼歯の上下の動きから,摂食した食物の口腔内における力-変位曲線を求めることが出来た.機器による力-変位曲線と比較すると,機器による80%までの圧縮で最大値は2500Nにも達したが,臼歯で噛むときの最大咀嚼力は自然に食べるときには最大でも200N以下であり大きな違いがあった.1噛み目の最大咀嚼力が小さい,すなわち噛み切る力が小さい食物類が老人に好まれる食物類と一致した.2.微生物多糖のジェランのゲルを食べたときの口蓋圧を測定した.舌と硬口蓋で押しつぶして食べる咀嚼から,歯で噛む咀嚼に移行するゲルの機器測定による硬さは30kPa程度であり,寒天,ゼラチン,カラギーナンの潰して食べる限界破断破断応力とほぼ一致した.個人差はあるが,人が自然に食べるとき,舌で潰して咀嚼する限界の応力ははゲルの種類によらず,30kPa程度であることが示された。ジェランは,0.5%以下の濃度で3桁に及ぶG',G"の変化があり,周波数依存性がなく,天然のゲル化剤としての有効な特性を持つことが示唆された.3.6MHzの超音波パルスドップラー法により水および濃度の異なるゲルを嚥下したときの喉頭蓋直前を通過する嚥下物の流動速度分布を測定した.平均流速の平均値はゲルの濃度によらず0.1m/s程度であり,他方,最大流速の平均値は,水では0.5m/sであり平均流速との差は大きく分布が広がり,早く流れる水の存在が示された.
著者
飯田 順一郎 藤森 修 井上 農夫男 佐藤 嘉晃 金子 知生
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1、機械的刺激に対する微小血管の即時的な応答性、特に血管内皮細胞と白血球との相互作用における加齢変化の解明。若齢、老齢のゴールデンハムスター頬袋の微小血管(毛細血管後細静脈)を生態顕微鏡下で上皮の上から加工した微小ガラス棒で刺激し観察した。すなわち持続的および間歇的(10分毎)な圧迫刺激を加え、生態顕微鏡下で白血球の血管外遊走の出現様相を経時的に評価すると同時に、組織定量学的に白血球の種類を同定した。その結果、若齢において持続的刺激において刺激部位直後の部位に多形核白血球、単球の血管内皮への接触・接着が有意に増加した。2、機械的刺激に対する微小血管の長期的な形態変化の加齢による変化の解明。マウス背部皮下の微小血管床を用いたdorsal skin chamber法を用い、若齢、老齢のハムスターの背部皮下組織に、持続的および間歇的(12時間毎)な圧迫刺激を加え、顕微鏡下で刺激開始から7日間、血管透過性亢進反応、毛細血管の太さの変化、および血管新生の様相を定量的に計測した。若齢においては持続的刺激において持続的に血管透過性が亢進した。間歇的刺激の5から7日後に血管新生が同一動物で観察され新たな血流が生じた。さらに毛細血管の直径は徐々に増加し7日目に2倍以上の太さに変化していることが観察された。3、口腔周囲組織の機能に関する加齢変化の基礎データの収集咬みしめることが全身の筋機能(握力)に与える影響をとりあげ基礎的なデータ収集を行った。その結果成人においては最大握力を発揮する場合に咬みしめる者(A)と歯を接触させないもの(B)の2群に分類できること、またAの方が筋力が高い傾向にあること、さらにAは咬みしめた時、Bは歯を接触させない時の方が高い筋力を発生することが明らかとなった。
著者
浅井 武 瀬尾 和哉 藤井 範久 高木 英樹 小池 関也 藤澤 延行
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究では,先端的スポーツ流体科学・工学の基盤創生と展開研究の一環として,実際にキックされたナックルボールに対して,高速度ビデオカメラと発煙物質を用いて可視化し,渦放出の動態について検討した.その結果,飛翔するボールに働く横力と揚力の周波数と,大規模渦構造における渦振動の周波数に高い相関がみられた(r=0.94,p<0.01).これらのことから,大規模渦構造における渦振動がナックルボールの不規則な変化を引き起こす大きな原因の一つになっていると考えられた.
著者
福林 徹 鳥居 俊 柳沢 修 倉持 梨恵子 井田 博史 奥脇 透 赤居 正美 赤居 正美
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

膝前十字靱帯損傷のメカニズム解明, およびその予防法の構築を行った. メカニズムの解明においては, Point Cluster法を用いた三次元動作解析法により着地動作や切り返し動作を計測し, こうした動作時の脛骨の内旋および膝外反の強制が,そのメカニズムに関連していると考えられた.予防法については,バスケットボール,サッカー,スキー,テニスの各競技において外傷予防プログラムを作成し,各団体において普及,推進を行った.また,その効果検証を行った.
著者
河野 一郎 秋本 崇之 赤間 高雄 河野 一郎 福林 徹
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

簡易型SIgA測定キットの開発本年度はまず市販のSIgA特異的なモノクローナル抗体を用いて,比濁法による測定を行ったが,おそらく抗体自体の力価のあるいは抗体のエピトープの問題により良好な測定系を構築できなかった.そこで,比濁法に適応可能なモノクローナル抗体の作製を試みた.現在,クローンを選別しているところであり,本補助期間にはキットの開発までにはいたらなかった.しかし,キットの開発に必要となる基礎的なデータは得ることができ,今後の展開に利するところは大と考えられた.SIgAレベルと感染症の関係昨年度,2ヶ月に渡って30名の被験者から唾液を採取し,SIgAと上気道感染症の関係を調査し,SIgAの低下と,上気道感染症の発現に一定の関係があることを見出した.本研究成果は臨床スポーツ医学に掲載された.また,高強度トレーニング(試合期)のSIgAの変化と,心理的・肉体的ストレスに関する成果についてまとめ,論文としてアメリカスポーツ医学会の機関紙(Med Sci Sports Exerci)に掲載された.本研究の結果,SIgAと上気道感染症罹患リスクには一定の関係があることが明らかとなり,今後SIgAを上気道感染症リスク把握の手段として応用することが可能であることが本研究の結果により示されたと考える.また,SIgAの測定は非侵襲的であり,その応用範囲は大と考えられた.本研究の成果により論文発表5件(国内誌3件,国際誌2件),学会発表7件を公表することができ,基礎研究としては十分な研究成果が得られたと考える.
著者
宗像 恒次 橋本 佐由理 橋本 佐由理
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

がん生存者の効果的なストレスマネジメントのために、Webを用いた電子学習プログラムを開発することを目的とした。研究1で、DVDを用いた電子学習プログラムを開発し、実施前、後、1週間後において、ストレス対処力が有意に高まり、ストレス蓄積性の高い行動特性や抑うつが低下し、免疫力の向上が見られた。研究2では、筑波大学にサーバーを置き、Webで無料配信するeプログラムを構築し、効果を分析した結果、ストレス蓄積性の高い行動特性が有意な低下を示した。がん生存者が自らの感情を過度に抑えず、素直に自分を表現し、必要時に周りに救援を求められる行動特性への変容が考えられ、DVDと同じようなストレスマネジメント効果が確認できた。