著者
丹羽 健市 浅井 武 長井 健二 大貫 義人 笹瀬 雅史 竹田 隆一 曽 広新 李 宏玉 修 傳風 揚 振東
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

これは平成9年度〜平成11年度の3年間にわたって山形大学教育学部と中国・吉林師範学院体育分院の共同で行われた「日中東北地域におけるスポーツ科学の比較研究」の報告書である。近年、スポーツ科学の発展はめざましく、その国際化と多彩な分野の総合化は急務な課題となっている。そこで山形大学と吉林師範学院の体育・スポーツ研究者が、同じ東北地方に位置するという地理的条件などを考慮し、上記テーマを設定し、共同研究を通じて学術交流をすすめることになった。3年間にわたり、両大学の研究者が2名ずつ相互に訪問し、共同研究を実施した。この報告書には共同研究で得られた成果をもとに発表された論文・資料等を掲載した。また、共同研究会での発表の要旨も収録した。そこであきらかなように、この研究はバイオメカニクス、運動生理学、体育科教育、武道論、体育社会学などスポーツ科学がカバーする広範な分野に及んでいる。ここには、丹羽健市による運動時の水分摂取と体温調節の生理学的研究、大貫義人による低体温者の運動に関するスポーツ医科学研究、浅井武によるサッカーのバイオメカニクス研究。長井健二の体育科教育研究、曽広新の太極拳の運動生理学研究、竹田隆一、宮煥生の武道教育研究、笹瀬雅史の体育社会学的考察、などがまとめられている。また日本および中国の東北部という冬季寒冷な地城におけるスポーツ活動やスポーツ科学的トレーニングに関する知見の交流、さらに学佼やスポーツ施設などの実地見聞も共同研究をすすめるうえで有益であった。資料収集と情報交換は継続して行われた。こうして、同じように東北地方に位置し、教員養成系大学である山形大学と吉林師範学院の体育・スポーツ研究者の共同研究ならびに学術交流は一定の成果をあげたものである。今後は、この基礎作業を土台として、さらに共同研究を継続していくことが必要である。なお、この共同研究の実施と報告書の刊行は、「科学研究費補助金基盤研究(B)(2)」を得て行われたものである。
著者
金子 勇 高野 和良 園部 雅久 森岡 清志
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

高齢化の研究では、高齢者の所得、健康、職業、定年退職などが主な分野として焦点を受けてきた。加えて、日常生活におけるQOL(生活の質)の重要性とコミュニケーション能力の荒廃についての解決策が問題になる。ミクロ社会学に強く志向してきた高齢化研究に、私たちはマクロ社会学のパラダイムを導入する時期だと考えて、それを実践した。現代日本には6種類の「高齢者神話恐怖症」があるように思われる。すなわちそれらは、(1)65歳以上はすべて老人である。(2)大部分の高齢者は健康を損ねている。(3)高齢者は若い人々に比べると理解がのろい。(4)高齢者は非生産的な存在である。(5)高齢者は魅力に欠け、性的な関係に乏しい。(6)すべての高齢者はほぼ同じである。しかしながら、これらの「神話」は私たちの具体的な調査結果では否定されている。ライフコース理論の観点からは、縮小する活動や相対的な責任の喪失に伴って高齢者の役割が僅かなものになることは否定されるわけではない。私たちの調査研究の諸データによれば、高齢者の主観的な生きがい満足感は、ほとんどが高齢者自身の集団選択に依存している。要するに、高齢者が友人、知り合い、諸集団への関係をもてばもつほど、60歳以降に惚けることはほとんどないのである。換言すれば、人間関係面への先行投資や社会システムそのものに参加することは、高齢者にとって健康という利息を確かなものにする。適切な関係を保つことは当然に重要であり、高齢者の健康を促進するためにも、毎日の生活において、ラジオ体操をしたり、ウオーキングやジョギングやカラオケで歌ったりしつつ、社会システムとの多方面での関連をもつように努力することが重要なのである。
著者
松下 道雄
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

生体内で働いているタンパク質には無数の準安定構造があり、絶えずその間を移り変わり、決して同じ姿に留まらない。こうしたタンパク質の構造の揺らぎがタンパク質の機能の制御に深く関わっていることは以前から指摘されていたが、構造揺らぎの詳細を知る手立てがなかった。そこで一分子観察によって個々のタンパク質の分子構造を直接分光測定しようというのが本研究の目的である。一分子の分光測定には最低でもミリ秒程度の時間が必要なために、室温での構造変化を追うことはできない。このため、測定が十分可能になるまで温度を下げて測定を行う。今回の研究で、一個のタンパク質の構造変化のダイナミクスを温度を変えながら測定することに成功した。同一のタンパク質を温度を変えながら分光測定したのは世界ではじめてである。解析の結果、温度に依存しないトンネリングと考えられる構造変化が見つかった[Oikawa, et. al.J.Am.Chem.Soc.130(2008)4850.]。低温での単一分子分光は、主に技術的な困難からもっぱら赤外領域に限られていた。このため、光合成細菌の光捕集複合体について豊富な構造情報をもたらしたが、生化学的に興味深い酵素は、フラビンタンパク質群に象徴されるように可視域に吸収を持つものが多い。単一タンパク質について、可視域での励起と蛍光検出が低温でできるよう、まず低温用反射対物レンズを開発し[Fujiyoshi,et al.Appl.Phys.Lett.91(2007)051125.]、これを使って単一のGFPを二光子励起し、その蛍光スペクトルは低温でのGFPの構造変化を如実に表わしていることを示した[Fujiyoshi,et al.Phys.Rev.Lett.100(2008)168101.]。
著者
大山 達雄 丹羽 冨士雄 諸星 穂積 伏見 正則 杉野 隆 吉井 邦恒 森地 茂
出版者
政策研究大学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

(1)わが国における過去20年間の鉄道事故を事業者、形態、原因という3つの観点から実証データをもとに統計的解析を行った。鉄道事故の推移を確率現象として捉えた上で、それらの形態を説明する数理モデルとして事故データを最も良く説明する確率モデルを提示し、特に踏切事故削減対策の効果分析を行った。(2)ネットワーク構造を有するライフラインシステムの頑健性の定量的評価のための基礎理論の構築と手法の開発を行った。その現実のシステムへの応用として、マニラ市(フィリピン共和国)と東京都における道路交通網を対象としたネットワークの連結強度解析に経路数え上げ法を適用し、両者の比較分析を行った。(3)都市交通・輸送、公共施設配置などの分野に対するOR手法の適用可能性に関する基礎研究として、わが国の主要な公共輸送システムとしての鉄道システムの軌道保守計画システムの構築、消防署等の公共施設最適配置のための数理計画最適化モデルの構築と検証、さらにはシステムモデル解の実用化を試みた。(4)わが国の危機管理対応策の一環として、食料安全保障問題を取り上げ、食料自給率向上のための最適戦略を求め、その効果分析を行うための最適化モデル構築を目的として、モデルの概念設計、データ収集、最適化計算を行った。(5)わが国における電力自由化問題を取り上げ、それに伴って増加が予想される各種分散型電源の望ましい普及形態を探る数理計画最適化モデルを構築し、供給者、需要家、そしてグローバルな観点という相互に異なる評価基準を有する主体にとって望ましい分散型電源の普及形態がどのようなものかを探った。(6)国内外における公共政策評価の理論と実際を整理するために、評価の現状、概要、事例紹介、経緯分析等からなる著書の編著を行った。本研究の最終報告書の作成を行った。
著者
夏目 長門 酒井 映子 山中 克己 大塚 隆信 千田 彰 中垣 晴男 小島 卓 服部 正巳 前田 初彦 森田 一三 井上 誠 吉田 和加
出版者
愛知学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

モンゴル国において3年間に5回にわたり調査を行うとともにモンゴル人スタッフに通年依頼して調査を行った。その結果、(1)モンゴル人口唇口蓋裂発現率は、0.07%であった。(日本人口唇口蓋裂0.2%)(2) 961名の妊婦の母体環境調査を行った。(3)モンゴル人の口唇口蓋裂遺伝子レポジトリーでは、1, 999名の試料を入手できた。
著者
植木 行宣 宮田 登 神野 善治 大島 暁雄 樋口 昭 福原 敏男 植木 行宣
出版者
京都学園大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本年度は3年計画の最終年度にあたり、昨年度実施した20道県の山車祭りを中心とする都市祭礼の実態調査の報告をデータベース化した。報告はA4サイズの用紙で2000枚を越える膨大な量に及びこれらを整理し、各研究分担者ならびに一般の研究者が共有化できるようにデータベース化し、これを報告書に収録した。あわせて分担者による共同実地調査を富山県城端町で実施するとともに、各分担者が秋田県、宮城県、福島県、茨城県、千葉県等で現地調査を実施した。平成11年5月には、共同調査を行った富山県城端町であわせて分担者会議、協力者会議を開き今年度の研究計画の方針、報告書のとりまとめについて検討した。また、前年度の実態調査報告書は副本を2部作成し、研究代表者の宮田と、文化庁、植木の3者に分けて保管し、利用の便をはかることとした。各分担者は、各研究協力者から提出された報告をもとに遂次現地調査実施し、都市祭礼の態様、山車等の実体についてデータの蓄積をすすめ、あわせて協力者に各地の事例についてまとめてもらい、分担者のまとめとあわせて後日印刷公開する予定である。本研究の成果としては、最終的にデータベースをCD-Rの形で作成し、各分担者、協力者等に配布した。また、最終年度にあたり、報告書を作成した。
著者
長谷川 聖修 衣笠 隆 木塚 朝博 本谷 聡 檜皮 貴子
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

研究の目的は、JPクッション・ソフトジム・Gボール・バランスボードなど、動的なバランス運動「遊び」に関するブログラムを開発し、高齢者の動的バランス能力や不安定な環境時の身体動作の改善を目指すことであった。高齢女性26名を対象に6ヶ月間にわたる転倒予防教室を実施した。各種体力測定を実施した結果、動的なバランス能力に改善が認められた。また、アンバランスな状態からの回避動作に改善傾向が示唆された。
著者
本城 凡夫 島田 秀昭 大嶋 雄治
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究では、有明海の有機スズ(TBT)等化学物質の汚染、および二枚貝の繁殖に及ぼすTBTの影響について実施した結果、以下の点が明らかとなり、化学物質が貝類の激減に関与していることが示唆された。1)有明海の化学物質汚染:1998年と2001年に有明海で採取した二枚貝のサンプルについてTBT濃度を調べたところ,すべての試料からTBTが検出され,アサリでは1998年が0.062-0.125μg/gおよび2001年が0.008-0.033μg/gであった。さらにタイラギでは2001年採取分が0.009-0.095μg/gであった。本研究よりTBTの使用規制後も,沿岸域においてTBT汚染が続いていることが明らかになった。また、重金属(水銀、銅、カドミウム)については顕著な汚染は認められなかったが、農薬については2003年8月に有明海筑後川河口3地点より海水を採取して,567種農薬の一斉分析を行った結果、3地点から計12種類の農薬が検出され、有明海の生物に影響を与えている可能性が考えられた。2)二枚貝繁殖試験:TBTをアコヤガイおよびアサリの親貝に暴露し、繁殖への影響を調べた結果、アコヤガイでは、生殖腺のTBT濃度が0.088μg/gで次世代の初期発生が阻害され、アサリでは体内TBT濃度が0.099μg/gで卵の発生が20%阻害されることが明らかになった。よって、有明海における貝類激減の原因のひとつとしてTBTの関与が推定された。また、本研究室で単離した付着珪藻(Cylindrotheca closterium)-海産自由生活性線虫(Prochromadorella sp.1)のバイオアッセイ系に対してTBTを暴露した結果、3.26μg/Lの濃度では線虫の成長が若干阻害され、32.6μg/Lで付着珪藻および線虫が斃死した。
著者
浅田 匡 野嶋 栄一郎 魚崎 祐子 佐古 秀一 淵上 克義 佐古 秀一 淵上 克義
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、次の4つのアプローチを行なった。教師の認知に関する研究に関しては、教師の認知と子どもの認知とのズレは学習方略、思考内容・思考過程などにおいて大きいことが明らかになった。単元開発に関する研究に関しては、単元開発の進め方(相互作用)によって教師の学びに差があることが示された。校内・園内研修に関する研究に関しては、校内研究は必ずしも教師の成長・発達におよびカリキュラム開発に関する知識創造が生起していないことが示された。また、校内研究が十全に機能するためには、継続的な記録、互いが心理的に支え合う文化(風土)、プライマリーグループの存在、組織へのコミットメントが関連することが示唆された。メンタリングに関しては、徒弟的関係に基づくメンタリングが行われ、心理社会的機能が重視されていることが明らかになった。
著者
三友 仁志 鬼木 甫 樋口 清秀 太田 耕史郎 実積 寿也 田尻 信行
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、わが国企業の情報化投資が当該企業あるいは産業のみならず、市場メカニズムを通じて消費者に対して及ぼす影響を理論的に解明し、併せて実証的統計的に分析することにある。平成17年度~19年度の研究期間を通じて、内外の研究動向の把握、専門家との意見交換、分析のための仮説モデルの構築、実証分析に用いるためのデータ収集、実証分析による仮説の検証、実証研究からのインプリケーションの抽出を遂行した。研究の遂行に当たっては、具体的には以下のようなテーマを取り上げた。(1)情報化が企業に与える便益のメカニズムの解明に関する研究の総括(2)情報化が消費者に与える便益のメカニズムの解明に関する実証研究(3)情報化と消費者保護に関する研究(4)通信と放送の融合にともなう市場メカニズムの変化に関する研究(1)については、企業部門における情報化投資メカニズムに関する研究の成果のまとめと総括を行い、情報化が消費者に与える影響の研究との関連を明らかにした。(2)については、情報化が消費者に与える便益のメカニズムの解明について、特に行動経済学から得られる知見を用いてこれまでの伝統的なミクロ経済学では分析しえなかった消費者行動(たとえば定額料金制度に対する選好など)に関する分析を行った。(3)については、情報化時代における消費者保護の問題について、主として個人情報保護法下における情報通信技術の活用とセキュリティ対策について研究を行った。(4)については、2011年に実施されるアナログ放送の停波とそれに伴うデジタルテレビへの移行に関して、企業並びに消費者に与える影響について研究を行った。
著者
田中 開 大澤 裕 川出 敏裕 寺崎 嘉博 井上 正仁 佐藤 隆之
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究において、我々は、近時問題化している銃器犯罪に関する諸問題につき、実地調査、資料収集、研究会などを行い、その成果のいくつかを公表した。研究した項目は、(1)少年犯罪と銃器、(2)銃器犯罪と民間ボランティア活動、(3)銃器犯罪について今後導入・活用されるべき捜査手法(4)情報提供者や証人の保護、(5)被害者や被害関係者の保護、(6)警察官による銃の使用、(7)諸外国における銃器情勢、であった。とりわけ、少年犯罪と銃器という問題を研究したきっかけは、本研究を開始した1999年4月に、アメリカ、コロラド州にあるコロンバイン・ハイスクールにおいて、少年が銃を乱射して多数の生徒や教師を殺傷するという事件が発生したことであった。少年による銃器を使用した凶悪犯罪は、近年における銃器の一般人への拡散傾向に照らすと、わが国においても、将来的には起こりうる重大な問題である。また、研究の過程で、(a)銃器犯罪の撲滅に向けて、民間ボランティア活動などの各種防犯・啓発活動との連携などによる銃器犯罪対策を考えていくべきこと、(b)おとり捜査、コントロールド・デリバリー、通信傍受をはじめとする捜査手法の活用や工夫が重要であること(捜査手法のなかには、とりわけ薬物犯罪と共通するものが少なくない。外国の例においても、薬物の不法取引と銃器は密接な関連を有している)、(c)情報提供者や証人の保護が肝要であること、(d)被害者・被害関係者の保護を進めるべきこと、(e)警察官による銃の使用の許否・限界につき再検討すべきこと、などの課題が認識された。また、諸外国における銃器情勢については、従来研究していなかったドイツの銃器情勢について調査研究ができたことが、一つの成果である。
著者
安江 恒 藤原 健 大山 幹成 桃井 尊央 武津 英太郎 古賀 信也 田村 明 織部 雄一朗 内海 泰弘 米延 仁志 中田 了五 中塚 武
出版者
信州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

将来予想される気候変動下での国産主要4樹種の肥大成長量や密度変化の予測を目的とし,年輪年代学的手法による気候応答解析を行った。スギ,ヒノキ,カラマツ,ブナのクロノロジーネットワークを構築し,気候データとの相関解析を行った。スギとヒノキについては,ほとんどの生育地において冬~春の気温が年輪幅変動に対して促進的に影響していた。ブナにおいては,比較的寒冷な生育地では,夏季の気温が年輪幅に促進的に影響しており,一方温暖な生育地では気温が制限要因となっていないことが示唆された。カラマツについては,生育地によって年輪幅や密度と相関を示す気候要素が大きく異なっていた。
著者
宇根 ユミ
出版者
麻布大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、外来/野生動物に流行する感染症および病原体のリスクプロファイリングを行い、その対策を確立して、我が国の生態系および生物多様性の保全に貢献しようとするものである。カエルツボカビは国内に広く、高率に分布し、国内の両生類は海外とは異なる多くのハプロタイプを有していることを明らかにし、併せて非侵襲的検査法と除菌法を確立した。ラナウイルスによる大量死事例の確認と感染実験により本ウイルスの高い病原性を明らかにした。また、国内でラナウイルスが分布を広げ、かつ保有率が急上昇していることを示した。これらの研究活動の成果を公表し、実務的な流行阻止・防除システムの構築に、有用な情報を提供した。
著者
遊佐 典昭 小泉 政利 那須川 訓也 金 情浩 ニール スネイプ
出版者
宮城学院女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

(1)第二言語の熟達度における個人差を、脳活動の変化としてとらえることが可能である。(2)敏感期以降の日本人英語学習者でも、統語論においては経験以上の知識を得ることが可能であり、外国語環境でも母語で機能する生物学的制約が機能している。(3)統語論の基本原理(構造依存性)に関しては、敏感期以降でも機能する。(4)冠詞、時制の誤りはランダムではなく体系性があり、普遍文法と素性の再構成という観点から、原理的な説明が可能である。(5)明示的教授は少なくとも、言語運用面においては効果がある。(6)本研究の結果は、学習文法の改善に役立つ。
著者
前野 隆司 昆陽 雅司
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

粗さ感・摩擦感・硬軟感を含む複数の触覚因子を統合したマスタ・スレーブ型触感伝達システムを開発した.このシステムでは,スレーブ側の触覚センサで,状態をリアルタイムに推定し,マスタ側に伝達する.その結果,複数の布素材やエンボス紙をほぼ識別できること,因子数を増やすほど識別率が向上することを確認した.また,触覚遠隔伝達のニーズ調査を行った結果,一般には触りにくいものを触るというニーズが大きいことを明らかにした.
著者
久野 覚 高橋 晋也 古賀 一男 辻 敬一郎 原田 昌幸 齋藤 輝幸 岩田 利枝
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

快適性には、不快がないという消極的(negative)な快適性と、面白い・楽しい・気持ちいいという積極的(positive)な快適性の2種類がある。後者の快適性はプレザントネス(pleasantness)とも呼ばれている。現在の技術の下で、建築環境工学的諸問題の多くが解決され、ほぼ不快のない空間の達成がなされていると言っていい。しかし、このような状態では、暖かいとか涼しいといったプレザントネスはない。本研究の目的は、オフィス環境における温熱環境と照明視環境を中心にプレザントネス理論を応用した新たな環境調整法を検討し、その評価手法を確立することである。得られた成果は以下の通りである。1)温熱環境:被験者実験により、低湿度空調のプレザントネス効果および屋外から室内への移動(環境変化)に伴う生理心理反応とプレザントネス性の関係について明らかにした。さらに、パーソナルコントロールが可能な天井吹き出しユニットを用いた空調方式のプレザントネス効果について研究を行った。他の研究者によって行われている研究との違いは、アンビエントつまり周囲気温を中立温度ではなく不快側に設定する点である。2)視環境:・高輝度窓面をシミュレートする調光可能な光源装置を作成し、オフィス環境実験室でアクセプタブル・グレアの実験を行った。高輝度面に対する被験者の向き、机上面照度、高輝度面の立体角のの影響などについて明らかにした。また、視覚刺激生成器(VSG)を用いた色知覚の研究、光とヒトの生体リズムの研究を行った。3)以上の結果をもとに、オフィス環境におけるプレザントネスについて総括した。
著者
澁谷 啓 加藤 正司 鳥居 宣之 河井 克之 川口 貴之 齋藤 雅彦
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

中越地震や能登半島地震で発生した地盤災害は, 地下水位の高い盛土に集中していた. 一方, 豪雨による盛土崩壊も後を絶たない. 兵庫県で発生した台風による補強土壁の崩壊事例では, 雨水の浸入により盛土本体が弱体化したことに加えて, 盛土背部で水位が急激に上昇し, 補強土壁盛土全体が押し流された. この種の地盤災害軽減のためには, 盛土内および周辺への雨水の浸入を決して許さないことが肝心である. 本論文では, 盛土を囲むようにジオシンセティックス排水材をL型に配置し, 鉛直に設置した排水材で受けた浸透水を盛土底部に水平に設置した排水材に流すことにより盛土外へ速やかに排水させる方法であるジオシンセティックスを用いたL型排水盛土防水工を新たに提案した.
著者
一井 太郎 張 成年 望岡 典隆 酒井 光夫 吉村 拓 山田 陽巳 本多 仁
出版者
独立行政法人水産総合研究センター
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

胃内容物の検討にはそのホスト生物の種判別も重要であることからDNAを用いた重要水産動物稚仔の種同定についても継続した。イカ類の種判別に基づいた研究成果を利用し、系群及びイカ類の資源変動やイカ類を利用する魚類資源の動態についての研究を行った。また、まぐろ類については新規核遺伝子マーカーを用いた系統類縁関係についても検討した.イカ類幼生、ウナギ類幼生及びイセエビ類幼生について胃内容物ゲノム解析を継続するとともに、結果の取り纏めを行った。イカ類(アカイカ)とウナギ類(ウナギ、ハモ、アナゴ)については真菌類と微細真核生物に一致するDNAが多く検出されるとともに、ホスト自体の変異型も多く検出されたが、餌生物由来と考えられるDNA分子は検出できなかった。イセエビ科(Palinuridae)、セミエビ科(Scyllaridae)幼生からも同様な生物群とホスト変異型が検出されたが、尾索動物や刺胞動物といったゼラチナスプランクトンのDNAが共通して検出され、これらが餌生物として利用されていることが示された。イセエビ(Panulius japonicus)の近縁種であるカノコイセエビ(Panulirus longipes bispinosus)と大西洋の種(Panulirus echinatus)は秋季に採集された標本であり、これらのゼラチナスプランクトンが検出されたが、春季に採集されたイセエビからはこれらの生物が検出されず、硬骨魚類のDNAが検出された。この違いが季節や海域、あるいは種によるものかどうかは今後の検討課題である。
著者
貴島 正秋 井ノ口 淳三 太田 光一 相馬 伸一 藤田 輝夫
出版者
神戸芸術工科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

『日本コメニウス』において貴島が「コメニウスの『汎知学校の輪郭』における理想的な学校構想」藤田が「コメニウスの『汎知学の序曲』の翻訳」,太田が「Acta Comeniana,14-17について」,相馬が「J. A.コメニウス文献のデジタル化について」,藤田が「J. Aコメニウス『青少年』に使用させるために集めた『作法』の『規則』の翻訳」,井ノロが「コメニウスの関係文献目録2002-2005」,Comenius-Jahrbuch(Band9-10)に,相馬が「Kyoiku Sisou to Dekaruto retsugaku」,世界新教育学会に貴島が「ユネスコの礎えを築いたJ. A. Comeniusの精神」「コメニウスと世界平和」,日本教育学会で貴島が「初期コメニウス思想=迷宮からの脱出」,相馬が「ユートピア思想史から見た『地上の迷宮と心の楽園』」,太田が「藤田輝夫のコメニウス研究(1973-2004)」発表,『日本のコメニウス』第15号は2004年9月21日死去した藤田の追悼号にしてメンバーその他関係者が故人を偲んだ。
著者
服部 英雄 稲葉 継陽 春田 直紀 榎原 雅治
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

文献資料のみに依拠してきた従来型の歴史学の隘路を切り開くべく、地名を史料(歴史資料)として科学的に活用する方法を確立した。地名を網羅収集する作業を進め、文字化されていない未記録地名を収集し、地図に記録し印刷した(主として佐賀県および熊本県阿蘇郡)。地名を史料として利用するため、電算化による検索を九州各県および滋賀県で進めた。研究上の環境整備を進めるいっぽうで、地名の歴史史料としての学問的有効性を確認し、拡大する作業を行った。交通に関わる地名、タンガ(旦過)、武家社会を考える地名イヌノババ(犬の馬場)、対外交渉史を考える地名トウボウ(唐房)をはじめ、条里関係、荘園関係、祭祀関係などの地名の分布調査、および現地調査を進めていった。地名の活用によって、研究視野が拡大される例。唐房地名は中世チャイナタウンを示す。従来の研究は対外交渉の窓口は博多のみであると強調してきたが、唐房は九州北部(福岡県、佐賀県、長崎県)、九州南部(鹿児島県)にみられる。一つの港津にトウボウ(当方)のほか、イマトウボウ(今東方)もあって、複数のチャイナタウンがあった。綱首とよばれる中国人貿易商の間に利害の対立があったことを示唆する。福岡・博多は新河口を開削して(御笠川や樋井川、名柄川)、干潟内湖を陸化し、平野の開発を進めた。それ以前には多くの内湖があって、それに面して箱崎、博多、鳥飼、姪浜、今津の港があった。自然環境・立地は類似する。博多のみが卓越していたわけではない。貿易商社たる綱首は一枚岩ではなく、競合した。それぞれが幕府、朝廷(大宰府)、院・摂関家と結びつく。地元では相互が対立する寺社と結びついた。チャイナタウンは多数あって、カンパニー・ブランチを形成した。これは考古学上の成果(箱崎遺跡で中国独自の瓦検出)とも一致する。従来の研究にはなかった視点を獲得した。