著者
平野 高司 文字 信貴 鱧谷 憲 町村 尚 高木 健太郎 岡田 啓嗣
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

北海道苫小牧市のカラマツ林を対象とし,現地での連続観測およびデータの解析を行なった。2001〜2003年の3年間の結果をまとめた結果,CO_2交換量の年積算値の平均(±標準偏差)は,純生態系生産量(NEP),総生態系生産量(GEP),生態系呼吸量(RE)でそれぞれ499±26,1595±65,1095±52gCm^<-2>y^<-1>と推定された。また,REがGEPに占める割合は67〜70%であった。このように,CO_2交換量の年積算値における年次差は比較的小さかったが,季節変化には大きな違いが認められた。特徴的なのは,2002年のGEPであった。この年は冬から春にかけて気温が高かったため,融雪と開葉が他の年より2週間ほど早く,光合成も早く始まった。しかし,2002年の夏期はP_<max>が小さく,PPFDも低かったため,GEPが他の年より小さくなった。結果として,成長期間が長いにもかかわらず,2002年のGEPは他の年より小さくなった。2002年におけるP_<max>低下の原因として,多雨による光合成酵素(Rubisco)の損失や早期の開葉による窒素利用効率の低下が考えられた。なお,2003年7月の気温は他の年より2〜3℃低かったが,GEPが減少することはなかった。低温は大気飽差を低下させ,結果としてGEPを増大させた。成長期間の土壌水分は0.2〜0.4m^3m^<-3>で推移したが,土壌水分の変化がGEPやREに大きな影響を与えることはなかった。カラマツ人工林は,北海道や世界の他の森林と比べて高い炭素固定能力を示した。これは,冷温・湿潤・多雨な気候により,カラマツの持つ高い生産能力が維持されるためであることが示唆された。
著者
野村 靖幸 大熊 康修 高橋 良輔 金子 雅幸 友部 浩二 篠塚 達雄 出雲 信夫 殿岡 啓子 浜名 洋
出版者
横浜薬科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

HRD1は小胞体の変性タンパク質の分解を促進し、アルツハイマー病の原因タンパク質アミロイドβの前駆体APPを基質とする。本研究では、アルツハイマー病患者脳においてHRD1が酸化ストレスにより不溶化することで減少する可能性を示した。また、HRD1と類似した新規の酵素について、Aβの産生に関与するものを新たに見出した。さらに、タンパク質の凝集を阻害することで、パーキンソン病に関連したタンパク質の蓄積を防ぐ薬物を作成した。
著者
一ノ瀬 俊明 白 迎玖 泉 岳樹 三上 岳彦
出版者
独立行政法人国立環境研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

2006年まで4年間の8月中旬に、復元河道近傍および河道より100m以内の5地点で、集中的な移動・定点観測による体感温熱指標SET^*の観測(温・湿度、風速、天空放射、地物表面温度)を行った。また、サーモカメラによる地物表面温度の観測、シンチロメーターによる上向き顕熱フラックスの観測、ソウル市政府が観測している大気汚染物質濃度の時系列解析などを行ってきた。CFDモデルによる数値シミュレーションからは、復元河道上を吹走する冷気が渦を巻きながら、河道に直交する街路へ南北同時に侵入する様子が計算された。2006年夏季に超音波風向・風速計などによる集中気象観測を行った結果では、河道上および河道南側80m付近で清渓川に沿った西風(海風)の強・弱に対応して、気温の下降・上昇が見られ、河川から周辺地域への冷却効果のプロセスが実証された。そこで2007年夏季の集中気象観測では、冷気の川面から周辺市街地へ輸送されるプロセスに関して、その発生源である河道内の気象学的なメカニズムを検証することを目的として、河川真中と南北川岸において、ポールを立て、鉛直(高さ別)に気温や湿度の測定を行った。清渓川の河川水による冷却効果については、川面に近い高度ほど気温が低く、水蒸気密度(絶対湿度)が大きい傾向が見られた。また、南側の鉛直分布に関しては、北側より相対的に気温が低い傾向が見られた。また地表面に近いほど気温が低くなっている傾向が見られた。一方、北側では日中地表面に近いほど気温が高くなっているのがしばしば観測されている。それらの要因としては南側沿道の地表面には植物が繁茂しているのに対し、北側の地表面はコンクリート面がむき出しになっていることが考えられる。以上の結果から南側河岸の方に冷気層が形成されている可能性が示唆された。
著者
倉渕 隆 長井 達夫 遠藤 智行 遠藤 智行
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

通風を効果的に利用できる窓の配置が設計段階で把握できることを目的として、住宅地を想定した実験とシミュレーションを行った結果、周りに建物が建っている場合でも、天窓を使うことで、涼しい外気を家の中により多く取り込めるようになることが明らかとなった。また、開ける窓の位置で室内の風の流れ方が変わり、特に天窓を風の出口に使用すると、室内に入った風が部屋全体で渦を巻き、より広い範囲で風が流れることで平均的な風速が高まることが明らかとなった。
著者
杉橋 陽一 長木 誠司 川中子 義勝 石光 泰夫 一條 麻美子 田中 純 中村 健之介
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

本研究からは芸術のメディア的戦略をめぐり、次のような成果が得られた。1.中世から近世への歴史的展開のなかで、文学や神学が印刷術などによるコミュニケーション上の組織化を通じて社会層や価値共同体の形成に寄与した実態が、実証的に究明された。2.身体表現を中心に複数の芸術が総合されて実現されたマルチ・メディア的な芸術の新しい情報伝達手法が、オペラやバレエ作品の実例に即し、歴史的に分析された。3.文学や文字メディアにおける俗語革命や出版の資本主義とその他のメディアによる情報流通のシステムの相互作用が、市民社会的共同体形成途上にあった近代のドイツにおける事例、および明治以降の近代日本における事例を相互比較しながら分析された。4.建築や音楽の言語性と象徴性が20世紀にかけて生じた機能性の増大と形態の抽象化等々の変動のなかで獲得した新たな意味論を、シェーンベルク以降の音楽および現代建築を対象として考究した。5.近代的な「イメージ」の成立機制を、19世紀に発明された写真というメディアをめぐる言説分析を通じて考察し、写真的<メディア戦略>のパラダイムの所在を追跡した。6.マクルーハン以降、現在のドゥブレによるメディオロジーやキットラーのメディア理論の批判的検討を行い、その理論的可能性を現代の舞踊・音楽などの芸術的実践の分析を通じて探究した。7.メディア・アートの領域において、芸術家同士、あるいは技術メディア自体のインタラクティヴな活動がはらむ新たな芸術形態の可能性を、現在の多様な創作状況に即して検証した。
著者
赤井 周司
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

加水分解酵素とバナジウム化合物を同時に用いることで,入手容易なラセミ体アリルアルコールを1つの鏡像体に変換する方法を開発した。この研究成果は医薬品開発などに不可欠な不斉合成技術に革新的な概念を提示するものである。また,酵素と金属バナジウムという共に高活性で異質な触媒が1つのフラスコ内で共存し,且つ機能を十分に発揮できるよう,メソポーラスシリカの細孔を利用して両触媒の作業空間を区分したことが特筆される。
著者
奥村 誠 杉恵 頼寧 塚井 誠人 小松 登志子 岡村 敏之 藤原 章正
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的は,交通工学,衛生工学,水資源工学などの立場からの知見を総合し,中小都市に即した緊急時の給水計画のあり方と,その立案の効率化のためのシステムの開発であり、基本的な分析ツールの開発を行った。第1に代替水源としての可能性の高い地下水利用を念頭におき,地震時の地上・地下構造物の破損により新たな汚染源が発生した場合の飲用可能性を検討するためのシミュレーション方法を開発するとともに,簡便水質測定法の精度の検討を行った。第2に緊急給水作業に対する道路ネットワーク,耐震配水池,井戸水での代替の効果を検討するため,給水車による飲料水の配送計画モデルを作成した。次いで,東広島市西条地区を対象に,収集した各種のデータを地理情報システム上に整理するとともに,それを用いた具体的な検討を進めた。まず,残存井戸における地下水位と流向流速調査に基づいて利用可能水量の検討を行った。つぎに汚染シミュレーションに基づく汚染拡散を踏まえた簡易水質検査井戸の選定方法の検討,人口と井戸の分布を踏まえた緊急給水点配置の計画モデルを加えて,緊急時の簡易水質測定体制,給水点の設置,給水車の配備を事前に立案する手順を整理した。いずれの問題も複雑な計算を内包するものであり,現時点でパソコン上の簡便な検討システムの構築は困難であることがわかった。具体的な知見は以下の通りである。第1に地下水の季節的な量的変動にかかわらず,緊急時に必要な水量はほぼ確保できる。第2に芸予地震時に断水した広島県島嶼部では,日常的に井戸水を用いている世帯を中心にかなりの井戸水が飲用に使われていた。第3に汚染シミュレーションを用いれば,井戸の汚染リスクが計算でき,その影響を最小にするような検査井戸が選定できる。第4に使用可能井戸を踏まえて緊急飲料水の配送を考えれば,一定のコスト削減が可能である。
著者
島田 淳子 中津川 研一 大橋 きょう子 小田 きく子
出版者
昭和女子大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

ジアシルグリセロール(DAG)の調理上の特徴を把握するために、脇方酸組成、トコフェロール含量等を可能な限り揃えたDAGとトリアシルグリセロール(TAG)を調製し、試料とした。試料油と脱イオン水を、(1)油相体積分率を変えて、(2)水相として各種塩類溶液を用いて、(3)HLB3から14までのポリグリセリン脂肪酸エステルを用いて、混合撹伴し、乳化の型および保存による安定性を評価した。その結果、DAGは乳化剤無添加でかなり安定なW/O型エマルションを形成すること、抱水性が大きいこと、および一般にO/Wエマルションになる条件でW/Oエマルションとなる条件あることが見出された。塩類はいずれもDAGの乳化安定性を高めた。次にマヨネーズを模した組成の濃厚エマルションを調整した。DAGから調製したエマルションの平均粒子径はTAGのそれより小さく、粘度は高かった。しかも平均粒子径をほぼ同じにしてもDAGエマルションの粘度はTAGのそれより高く、これよりDAGと卵黄成分の間に何らかの相互作用のある事が示唆された。食塩はDAGの粘度に大きく影響した。最後にDAGの自動酸化および熱酸化に対する安定性および揚げ加熱に対する安定性を検討した。試料油を紫外線照射有り・無しで、40℃で自動酸化および180℃で熱酸化させた。また、モデル揚げ材料として、アルブミン及びα-コーンスターチを用いて一定条件下で揚げ加熱を行い検討した。その結果,DAGの酸化安定性および家庭レベルにおける揚げ加熱に対する安定性はTAGとほぼ同等とみなせた。しかし強制フライ条件においては、AVの上昇および色差計による明度の低下が、DAGにおいてTAGより顕著であった揚げ加熱中にDAGの中に溶出した水分がTAGのそれより高かったことがその原因と考えられた。以上より、DAG調理上の特性は通常の食用油脂とほぼ同等と考えられる。
著者
坂野 達郎
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、住民が河川災害時にどのような行動を取るのか、その意思決定過程のプロトコルデータを収集し、プロトコルデータから状況の認識に用いた知識や推論の過程を事実推論ルールとして抽出し、状況認識から行動を決断する過程を行動ルールとして抽出し、抽出した推論ルールをもとにして、避難行動のシミュレーションを行うことを目的とする3ヵ年の継続研究である。まず、平成14年度に、ビデオを用いた水害疑似体験実験を行い、非難行動決定過程の発話プロトコルを収集し、同プロトコルから様相分離法で2270の命題を抽出した。平成15年度は、平成14年度に抽出した行為命題に対して、動詞とその動詞と共起する名詞句の格(特に「対象格」「随伴格」「目標格」「道具格」)に着目して分類を行った。その結果、動詞とその動詞と共起する名詞句に出現する名詞の辞書的意味から、プラグマティックな解釈を行わずに、行為の分類が可能であることを明らかにした。平成16年度は、状況認識に関する889命題を抽出し、(1)事象が生起している時間により、既定事実(過去の経験)、即時的状況(避難行動時間帯内で生じる現況及び予測)、恒常的属性・普遍的真理に分類でき、(2)避難行為動詞に伴う格の意味内容から記述対象が、水害原因、非難場所、避難経路、水害情報および同伴者に分類でき、(3)述語句の特徴から事実記述的な命題と評価命題に分類できることを明らかにした。最後に、行為命題と状況記述命題を組み合わせて、避難行動をシミュレートした。今回の実験では性別、住宅、居住地の地理的状況、家族の状況などの要因を厳密にコントロールしてデータが取得できていないため、個人個人の状況に応じたシミュレーションまではできなかったが、水害経験者、未経験者の行動の差異を再現することはできた。
著者
河田 惠昭 林 春男 柄谷 友香 寶 馨 中川 一 越村 俊一 佐藤 寛 渡辺 正幸 角田 宇子
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

フィリッピンのイロコス・ノルテ州を流れるラオアグ川を対象として,発展途上国の開発と防災戦略の事例研究を実施した.この州とラオアグ市にとってはコンクリート製の連続堤防はいくつかの点で歓迎すべき構造物である.それは,台風のたびに発生していた洪水や浸水から開放されること,第二に旧河道や氾濫原において氾濫を」前提としない開発が可能になること,第三に頻繁な維持管理を必要としない構造物は,行政の維持管理能力の低さを補うことができることである.しかし,異常な想定外の外力が働いた場合,氾濫を前提としない開発や生活が被災し,未曾有になる恐れがある.援助側の技術者は,非構造物対策,すなわち,1)構造物を長期にわたって維持管理するための対策,2)住民の防災意識を高めるための対策,3)気象情報の収集と伝達,危険地域の把握,避難勧告など被害抑止のための対策,4)救援活動など被害軽減のための対策が含まれることを知らなければならない.すべての対策において,援助が何らかの役割を果たすためには,まず行政や住民の災害への対応の現状と過去を知る必要がある.調査期間中,台風が来襲し,堤防が決壊し被害が発生した.その原因としては,堤防建設技術の未熟さが指摘でき,防災構造物建設のための必要な知識や技術の取得と移転,実際の建設時における遵守など,構造物を根付かせるための対策も援助側は考えなければならないことがわかった.援助側の技術者は,非構造物対策を考慮に入れた上で,どのような構造物が地域に根付くかを計画する必要がある.そのためには社会を研究している専門家の参加を得て,地域の履歴を知ることは開発援助ではとくに重要である.それは,1)記憶の蓄積と共有化,2)被災者像,3)防災意識の向上の過程,4)防災対策の有無,5)被災者の生活・生計を誰が助けたのか,6)復旧における住民の労働力提供の有無を調べることは価値がある.
著者
玉城 政美 赤嶺 政信 高橋 俊三 狩俣 繁久 大胡 太郎 久万田 晋
出版者
琉球大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、宮古諸島で伝承されている儀礼歌謡を良質な映像と音声で記録し、恒久的に保存することを第一の目的として、来間島、池間島、伊良部島、多良間島などで実践した。記録方式としてデジタルビデオ、デジタル録音テープなどの機器を使用した。次に、活字化された歌謡資料や現地で収集した映像・音声資料から歌詞を翻字し「歌詞データベース」を作成した。あわせて、既存の文献に収録されている歌詞を翻字して「歌詞データベース」に加えた。デジタルテキスト化したことで今後の研究に大いに貢献するであろう。次に、「宮古歌謡語辞典」の基盤を整備した。この辞典は「見出し語」「漢字」「語釈」「用例」などが主要な項目を構成する。宮古歌謡語は、方言と同様に各地域で著しく差がある。そのため発音通りの見出し語では、同じ語を同じ項目にまとめることが不可能となる。見出し語を琉球祖語で表記することによってこの問題は解決できる。こうすることで既刊の『沖縄古語大辞典』と比較検討することが可能となった。つまり、他の諸島の歌謡語と同じ次元で比較検討することが可能となったので、研究の飛躍的な進歩が期待できるようになった。だが、祖語に復元できない未詳語が数多く存在する。宮古歌謡語の研究はこの辞典が土台になるのであるから、やむを得ない面もある。研究の出発点を提示して今後多くの研究者のアクセスをまつことにしたい。なお「語釈」においては『宮古島の歌』に記録された注釈が大いに参考になった。次に、明治期に記録された田島利三郎の『宮古島の歌』を翻刻した。この文献は、原本であり、かつ、宮古歌謡研究の嚆矢というべきものであるにもかかわらず、これまで無視されてきた。従来は、原本ではなく、これの写本が尊重されてきたが、文献学的には非常識な扱いであった。今度の翻刻によって、今後はこの原本が活用されるであろう。
著者
高江洲 頼子 狩俣 繁久
出版者
沖縄大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

この研究は、琉球語諸方言のなかから個別の方言を選び、それぞれ担当者が文法について調査・研究することを目的とした。調査地点はこの研究期間をとおして、文法調査が可能な方言話者の存在、これまで文法の記述がされていない方言という条件等から最終的に、沖縄県渡名喜島方言、沖縄県宮古市城辺字保良方言、鹿児島県大島郡大和村方言、鹿児島県徳之島伊仙町方言、沖縄県今帰仁村謝名方言、名護市幸喜方言にしぼりこまれた。実際の調査においては、方言話者の減少、方言の使用場面の減少、方言の急速な変化が、難しい丈法の記述をさらに困難にした。被調査者の理解と協力によって、体系的な形態論の記述をすることができ、研究報告としてまとめることができた。調査の内容は、動詞、形容詞について活用の全体のシステム、各文法形式の作り方、文法的な意味・用法を、用例とともに記述することである。とくに形態論的なカテゴリーの中核をになう動詞を中心に調査・研究をすすめた。研究のおくれている文法の分野において、消滅の危機に瀕している方言のうち、6地点について文法の体系的な記述をすることができた。形容詞については、今回はまとまった調査資料の収集が可能な方言について、報告することとした。琉球語の研究は、今後、ますます調査が困難になり、資料が得られなくなると予想される。この研究では、用例をできるだけ収集し、今後の研究にも提供するものでありたいと考えた。また、当初、収集した資料のデータベース化と公開について考えていたが、これについては今後の課題としたい。
著者
大湾 秀雄 川口 大司 都留 康 都留 康 鈴木 勘一郎
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

内部労働市場の機能や人事制度の効果を計測するために、従業員個人レベルの生産性/評価、報酬などが利用できる人事データのアーカイブ構築を目指した。大手企業向けERPパッケージの開発・販売会社ワークスアプリケーションズと(独)経済産業研究所との間の産学官連携プロジェクトとしてスタートし、平成25年度までに、製造業2社の人事データを用いた分析を進めた。(1)組織内で男女賃金格差が生じている背景として、出産後のキャリアの中断、および男女の労働時間格差がある、(2)就職氷河期に同期入社人数の減少を経験した世代は、長期的には昇進確率の改善により将来の報酬にプラスの影響がでる、等新たな知見を明らかにした。
著者
中島 求
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究ではまず,全身駆動型スイマーロボットを開発した.本ロボットは実際の競泳選手の1/2サイズのヒューマノイドロボットであり,全身に20個のサーボモータを内蔵し,人間の泳動作を忠実に再現することができる.本ロボットを回流水槽に設置し,クロールの泳動作を行わせ,ロボット全体に作用する非定常流体力を測定する実験を行った.その結果,手が水をかく瞬間における推進力発揮が実験的に確認された.
著者
菊池 眞夫 高垣 美智子 倉内 伸幸 南雲 不二男 丸山 敦史 丸山 敦史
出版者
千葉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

サブサハラにおける「低投入環境保全型」農業モデルを提唱するため、ウガンダにおいて農家調査、栽培試験、パピルス湿地開田試験、関連2次資料収集を行った。これら基礎データの分析により、陸稲作・水稲作の普及により稲作生産を飛躍的に拡大するポテンシャルは極めて大きく、サブサハラにおいて、環境に負荷を与えることなく「緑の革命」を達成する条件は整っており、それを達成することが農村の貧困解消にも貢献することが明らかとなった。
著者
津田 健治 寺内 正己
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

われわれが独自に開発してきた収束電子回折法による結晶構造解析法をベースとして, 試料のナノメーター領域から静電ポテンシャル分布を求める手法を新たに開発することに成功した. この方法をLiNbO_3等の強誘電体に適用して静電ポテンシャルを決定して強誘電分極を検出した. また, この方法を応用して強相関電子系物質の3d電子軌道の秩序の可視化にも成功した.
著者
石本 淳 大平 勝秀
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

従来型電子冷却システムの限界を打破するため, 本研究では, 超高熱流束冷却が可能な高機能性冷媒としてマイクロスラッシュ二相流利用型超高熱流束電子冷却システムを提案する.マイクロスラッシュ噴霧の有する超高熱流束効果に関し, PIA粒子計測・非定常冷却熱流束のデータベース化とCFD計算条件取り込みによる融合計算を用いた総合的アプローチを行った.その結果, マイクロスラッシュ噴霧は液体窒素噴霧と比較して, 1. 5倍程度の限界冷却熱流束を得ることが可能であり, 新型電子冷却法開発の基盤となる成果を得た.
著者
稲垣 恭子 竹内 洋 佐藤 卓己 植村 和秀 福間 良明 井上 義和
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

1920〜30年代におけるアカデミズムとジャーナリズムを中心とする「知識人的公共圏」について、2ヶ月に1度のペースで研究会を開催し、それぞれのテーマについて報告した。そのなかで各自の研究成果の土台をつくると同時に、共同研究としての共通の方向性と知見を集約していった。その成果は『日本主義的教養の時代』(柏書房2006年)として刊行している。また、本研究グループと京都大学社会学環との共同開催による公開シンポジウム、および各自の研究論文、著書として発表している。シンポジウム、各自の著書は以下の通りである*公開シンポジウム「大学批判の古層-『日本主義的教養の時代』から」(平成17年6月21日京都大学時計台記念館)竹内洋『大学という病-東大紛擾と教授群像』中公文庫2007年佐藤卓己『テレビ的教養-一億総博知化への系譜』NTT出版2008年稲垣恭子『女学校と女学生』中公新書2007年佐藤八寿子『ミッション・スクール』中公新書2006年福間良明『殉国と反逆-「特攻」の語りの戦後吏』青弓社2007年植村和秀『「日本」への問いをめぐる闘争-京都学派と原理日本社』柏書房2007年石田あゆう『ミッチーブーム』文春新書2006年井上義和他(解題)『日本主義的学生思想運動資料集成I雑誌篇(全9巻)』柏書房2007
著者
平岡 昌和 古川 哲史 平野 裕司
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

HERG Kチャネルは心筋の再分極に重要な役割を果たすIkr電流をコードし、また最近QT延長症候群の一つ・LQT2の原因遺伝子であることが判明した。さらに、多くの薬物によっても抑制されることから薬物誘発性QT延長の原因ともなりやすい。そこで、我が国のLQT2家系に認められたHERG Kチャネル遺伝子の機能解析を中心にその抑制機序を検討した。T474I(I-II linker),A614V,V630L(チャネル外孔部)について卵母細胞にて発現実験を行うと、変異種単独では電流を発現せず、野生型との共発現でその機能を抑制するdominant negative suppression(DNS)を認め、A614VとV630Lではさらに不活性化の促進から強い電流抑制を呈した。電位センサーに位置するS4のR534C変異では、単独では小さな電流しか発現しなかったが、野生型との共発現ではDNSを示さなかった。発現電流では活性化曲線のシフトが見られ、S4が電位センサーとして働くことを始めて明らかにした。この変位での電流抑制機序は脱活性化の促進のみでQT延長を来す十分な説明とはならず、未知の抑制機序の関与が考えられたが、調節因子との会合不全を示す所見は得られなかった。HERGのC端側のS818L変異は、単独では電流を発現せず、野生型と変異型cRNAを1:1で混合注入による共発現では電流を発現し、しかもDNSを示さなかった。ところが、変異種を増量した割合で共発現させると、明らかなをDNSが見られ、電流活性化曲線はマイナス側にシフトし、活性化・脱活性化が促進された。これらの結果から、S818L変異は野生型と会合して膜に到達して機能的なチャネルを形成すること、HERGのC端側が一部電流の活性化にも関与しうることが示唆された。このようにHERGの変異部位によって異なる電流抑制機序を発揮し、それはこのチャネルの機能-構造相関にも有意義な情報をもたらした。これいがいに、アシドージスやエストロゲン、抗不整脈薬のシベンゾリンによるこのチャネル抑制機序を明らかにした。
著者
平井 肇 天野 郡寿 佐川 哲也 深澤 宏 金 恵子 松田 恵示 沢田 和明
出版者
滋賀大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究では、スポーツのグローバル化の流れが、アジアの諸国においてどのように受容され、その結果、社会・経済システムや文化形態全体にどのような形で波及し、影響を及ぼしているのかについて分析・考察することを主たる目的として調査研究を行ってきた。「個別の地域研究」(平成11年度)と「特定のスポーツ社会制度に関する比較研究」(平成12年度)に関して、各自がサブテーマをそれぞれ担当して、研究調査を行ってきた。最終年度は、研究成果の統合化を図ると同時に、成果を広く公表して、本研究に関心のある研究者の国内外のネットワークづくりに努めた。研究分担者が取り上げた調査研究テーマは、「子ども労働とスポーツ」、「フィリピンのプロスポーツ興行」、「中国の少数民族政策と体育」、「中国の近代化と体育政策」、「韓日の高校野球組織の比較」、「スポーツ労働者の移動」、「タイの近代化と子どもの遊び」、「シンガポールの華人社会とスポーツ」、「日本植民地下の朝鮮半島のスポーツ」、「米占領下のフィリピンのスポーツ」などである。グループとしては、フィリピン、タイ、中国へ赴き、それぞれの国におけるスポーツとそれを取り巻く社会環境について調査研究を実施した。また、アジアのスポーツ研究者と交流を深めるべく、タイ・チェンマイ大学とチュラロンコーン大学、フィリピン・デラサール大学、韓国・梨花女子大学、中国・河北大学で研究会を実施し、現地の研究者と情報の交換を行うと同時に、今後の共同研究の可能性やネットワークづくりについて協議を行った。これらの結果は、各自が書籍や雑誌、学会などで公表すると同時に、『スポーツで読むアジア』(世界思想社2000年)としてまとめた。また、研究グループのホームページ(http://www.yone.ac.jp/asia-sports/)を開設し、研究成果の公開を行っている。