著者
伊藤 眞 渡邊 欣雄 鄭 大均 高桑 史子 何 彬 綾部 真雄 渡邊 欣雄 鄭 大均 高桑 史子 何 彬 綾部 真雄
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

東アジア各国にも日本の老人クラブに似た組織がある。しかし、高齢者の多くは、そうした組織にあまり依存せず、主体的に人生を享受している。一方日本の老人クラブの活動には、概して受け身的な傾向が認められる。高齢者が多様化する現在、トップダウン型の組織化は不適切である。高齢者を高齢者として枠づけない考え方が重要である。本調査研究は、高齢者に自由な場を提供することこそが組織の持続化につながることを提言する。
著者
守倉 正博 田野 哲 梅原 大祐
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究により基礎的なスロット付きアロハ方式を用いたネットワークコーディング技術による多段中継システムについて,送信権に関して優先度をつけることにより,スループットが最適化される事を計算機シミュレーションおよび理論的に明らかにした.さらに,物理レイヤの熱雑音や電波干渉が無線中継システムに与える影響について理論的に明らかにした.また広く用いられているIEEE 802. 11規格による無線LANを用いた場合の宅内無線中継システムにおいて, CWmin制御やAIFSN制御を用いた新しい考案方式により,ネットワークコーディングを用いた場合のスループット特性の改善や,音声信号に対するQoS制御が可能であることを計算機シミュレーションにより示した.
著者
中野 俊郎 吉田 昭治 粟生田 忠雄
出版者
新潟大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

長辺50m、短辺40mの20aの水田に排水の能力差のある暗渠条件を長辺方向に2本設けて、暗渠の能力差による排水効果を測定した。一本の暗渠は小排水路に排水され暗渠の水頭差は田面下60cmである。他方の暗渠は田面下100cmに埋設された集水渠に接続したため大排水路の水位が集水渠より常時高く暗渠には約40cmのサクションが掛かる構造になった。その結果、取水時、間断潅水時および落水の水管理時には集水渠に接続した方のA暗渠の水位は常時田面下60cmを維持するようになり、土壌水分張力値もA暗渠の方が大きくなることがわかった。気象装置や土壌水分張力測定器を設置観測開始年の2年間は少雨高温の特異年であった。TDR土壌水分率測定結果も平行して測定した結果は、作土層と耕盤層の土壌水分は心土層より約1日遅れで圧力が伝達されて減少し始めることが分かった。お盆過ぎから刈取り期近くの間断灌漑は慣習的に5〜4日間隔で水管理されているが、耕盤層の水分張力の減衰が1日間観測されていることから、3日間隔の方が稲の生育生長および収量や地耐力の発現に好結果を期待することができると思われる。地耐力の測定にはコーン指数で判定する構造改善局基準があるが、側面摩擦抵抗や泥炭地水田では必ずしも適さない事例があり、ベーン試験と三軸試験機を用いた非排水条件の側圧一定試験から有効応力解析を行いベーン試験による沈下量とスリップ率から判定した。その結果、シルト質粘土地盤の作土層表面が極度に乾燥履歴を受けてシルトの噛合い成分が強くなり、刈取り期近くになると粘着力成分より摩擦力成分が卓越することが判明した。一方、植物遺骸が堆積した泥炭地水田の作土層の表面が乾燥すると植物遺骸の繊維質がメッシュ構造を生成して地耐力が増強されると判断した。
著者
大内 雅利 村山 研一
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

本研究は、農村と農家の社会変動を、それらを構成する最小単位である個人のライフコースからみようとした。それは諸ライフコース間の協調・対立・妥協、さらには新しい制度形成によって説明されよう。第1に、特に顕著な対立は昭和ヒトケタ男性と女性の間にある。前者は現在70歳前後で戦後農業の担い手であり、今は農協組合長などの役職につき農村権力構造の頂点にいる。女性の地位向上と対立する世代である。第2に、背後にあるのは農家女性のライフコースの変化である。女性のライフコースは結婚に大きく左右される。近年は非農家出身・農業経験なし・農外就業・恋愛結婚というライフコースが多い。これは昭和ヒトケタ世代の農家出身・農業手伝い・見合結婚というライフコースとは著しく異なる。家制度と農業の外へと出た経験をもたない。第3に、非農的な体験を積み重ねた農家女性はこれまでの世代と異なり、直売店を持つなど積極的に外に出るようになった。第4に、親のライフコースは子のライフコースのモデルとならなくなった。むしろ子のライフコースが親のライフコースに影響するという、ライフコースの相互規定的な現象がみられる。第5に、合い異なるライフコース間の諸対立を社会的に調停する一つの試みが家族経営協定である。これは行政の主導によって、宮崎県高城町に多くみられた。第6に、現代の農村においてもっとも異質なライフコースは非農家出身の新規就農者であろう。新規就農者のライフコースは未だ安定していない。なかには自然農法のグループもいる。このように現代の農村は、ジェンダー・世代・出身などによって多様なライフコースの持ち主が構成する社会となり、それらの間の対立と共同によって変動している。
著者
桑田 耕太郎 松嶋 登 高橋 勅徳 山田 仁一郎 水越 康介 山口 みどり 入江 信一郎
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究テーマである「制度的起業」とは、単に制度的環境を与件としてそれに組織が適応するとする議論を越えて、企業が既存の制度に埋め込まれながら新たな制度を創造する側面を持っていることに注目した概念枠組みである。本研究では、こうしたダイナミックな制度的実践の側面に注目しつつ、制度変革のマネジメントについて明らかにした。
著者
桑田 耕太郎 松嶋 登 高橋 勅徳 長瀬 勝彦
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、科学ないし技術的な知識基盤に支えられたベンチャー企業(以下、技術系ベンチャー企業)が、特定の科学および技術コミュニティにおける科学的・技術的知識を、それとは異なったコミュニティ(ビジネス・コミュニティ)へと移転し、ひいては経済活動を通じて社会変革を導くメカニズムを理論的ないし経験的に明らかにすることを目的として取り組んできた。まず、本研究では、技術系ベンチャー企業をめぐる理論的基盤の整備が行われた。ベンチャー企業論は、1970年代から欧米において研究が着手され、経済学、経営学、心理学、社会学、人類学等の領域を横断するカタチで無秩序に拡散・増大してきた。80年代末より独自の体系を持つ研究領域として体系化が進められ、近年は新制度学派社会学の知見を取り入れた理論的・方法論的基盤の整備について議論が交わされるようになった。こうした理論的基盤の整備の下、本研究では、ハイテクのなかでも、とりわけ近年勃興しているネット系のベンチャー企業の行動原理に基づいたビジネスモデルの形成過程について考察を行ってきた。そしてさらに、ハイテクベンチャーをめぐる理論的課題を検討する中で、本研究が新たに注目した論点として、ハイテクベンチャーをめぐる制度的環境の重要性を見出すにいたった。従来まで予見とされてきた制度的環境は、実は、ベンチャー企業にとっての設計対象であることに、その要点がある。なお、本研究で取り上げた事例の一部は、社団法人ニュービジネス協議会の協力を得て、近年にニュービジネス大賞を受賞した企業の中からリサーチサイトとなりうる技術系ベンチャー企業を理論的な観点から選定を行い、現実の経済界とのつながりを重視してきた。また、具体的な調査方法としても、ライフヒストリーの編集や、参与観察、GFA(グループ・フィードバック分析)など、さまざまな方法論・手法を用いて綿密に行われた。
著者
木林 和彦
出版者
佐賀大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では熱中症における脳神経障害に着目し,熱中症の脳内病態を形態学と分子生物学の両方の観点から捉え,熱中症患者の救命に寄与することを目的とする.また,熱中症に特異的な形態学的・生化学的変化を明らかし,法医鑑定の実務への貢献も目的としている.飲酒酌酊は熱中症の一要因であるので,本研究では,熱中症の形態的変化を捉えるために,熱中症とアルコール投与を組み合わせた実験系を検討した.マウスを熱中症マウス,エタノールを腹腔内投与(2g/kg)した熱中症マウス,エタノールを腹腔内投与したマウス及び食塩水を腹腔内投与したマウスの4群に分け,各群5匹とした.熱中症マウスとエタノールを腹腔内投与した熱中症マウスを全身麻酔し,40℃のインキュベータ中に45分間置いて直腸温を42℃とし,続けて37℃のインキュベータ中に15分間置いて直腸温を40℃以上とした.各群のマウスについて,血圧,直腸温度,血液ガス分圧,血液電解質及び血糖を経時的に測定した.各群のマウスを全身麻酔し,リン酸緩衝化パラホルムアルデヒドで灌流固定した.脳組織について多種類の一次抗体を用いたホールマウント免疫組織化学,通常の免疫組織化学,TUNEL法によるアポトーシスの検出を行って脳内細胞の変化の有無を調べた.熱中症マウスは,直腸温が40.6±0.2℃であり,代謝性アシドーシスと呼吸性アルカローシスとなった.エタノール投与した熱中症マウスは,直腸温が41.2±0.2℃であり,代謝性アシドーシスと呼吸不全となった.熱中症マウスは,脳の扁桃体中心核に神経細胞の活性化を示すc-fos陽性神経細胞が増加した.エタノール投与した熱中症マウスは,扁桃体中心核のc-fos陽性神経細胞がさらに増加した.本研究により,熱中症では脳の扁桃体中心核が活性化されることが判明した.また,エタノールは熱中症による扁桃体中心核の活性化を増強することも判った.扁桃体中心核には発熱を促進する役割があり,その活性化は熱中症における高体温と致死の機序に関与していると考えられた.扁桃体中心核の活性化は熱中症の剖検診断での指標となる可能性が示唆された.
著者
森杉 雅史 大野 栄治 宮田 譲 根本 二郎 大西 暁生 金 広文
出版者
名城大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究課題は、近年のメコン川流域諸国の急激な経済発展に起因する水資源に関わる諸問題を、経済と環境の二つの視点に即し、統計整備と幾つかの解析を試みるものである。具体的には得られた地域内間表のサーベイと、諸国の経済状況、並びに、誘発環境負荷分析の下で諸地域の相互依存状況を見ていく。また現地調査により水質悪化に伴う疾病対策の評価も行っている。また一方で目下流域諸国の中では情報整備が抜きんでている中国を対象とし、河川流域の水資源に関する需給モデルを展開する。また、費用関数やフロンティア分析の応用などによって、水資源の農産物に対する生産性、課徴金制度の効果なども吟味している。
著者
福岡 義隆 後藤 真太郎
出版者
立正大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

この研究は3つのサブプロジェクトからなる。第1のプロジェクトでは、都市の温暖化の実態と影響についてまとめた。具体的には埼玉県熊谷市を対象として研究を進め、温暖化による熱中症と植物季節の異常を明らかにした。熱中症に関しては気温が30℃超えると発生し始め35℃以上では急増すること、男女・年齢・生活内容・時間・季節によって異なることなどが明らかになった。また、植物季節に関しては温暖化で桜の開花は早まり紅葉は遅れることなどが解明された。第2のサブプロジェクトでは、屋上緑化によるヒートアイランド緩和を調査し、その緩和効果は屋上緑化の規模によることを解明した。すなわち、スポットタイプの屋上緑化よりはガーデンタイプの方が体感温度(WBGT値など)を下げる効果が大きく、ガーデンタイプよりもフォーレストタイプの方が効果が大きいことが分かった。心理効果についてはアンケート調査である程度まで把握できた。最後の第3のサブプロジェクトでは、立正大学構内に設置した特殊舗装面での熱収支観測により、透水性(セラック)と保水性(エコプレート)の舗装面がアスファルトやコンクリート面に比べて温熱緩和効果が大であり、より芝生面に近いことを見出した。歩道や駐車場などに適用でき温暖化緩和に役立つものとの確信を得た。
著者
櫻井 義秀 土屋 博 櫻井 治男 稲場 圭信 黒崎 浩行 濱田 陽 石川 明人
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

社会貢献活動を行う宗教団体・宗教文化の特徴を比較宗教・比較社会論的視点から明らかにする調査活動を実施し、共生・思いやり・社会的互恵性・公共性の諸理念を形成することに宗教の果たす役割があることを明らかにした。その成果の一部は稲場圭信・櫻井義秀編『社会貢献する宗教』世界思想社、2009年で明らかにされ、分担・協力研究者たちの研究により、宗教と社会貢献の関連を研究する研究分野を宗教社会学に確立した。
著者
笹谷 努 高井 伸雄 鏡味 洋史 笠原 稔 安藤 文彦 早川 福利
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

都市部での地震観測において,そこでの人工ノイズを避けるためにボアホール地震観測が必要なことは広く認識されている.しかし,大きな問題は,その設置にはボーリング掘削等に多額の費用を要することである.本研究は,その問題を回避するために,既存の深層井戸(500m以深)を利用したボアホール地震観測システムの開発とその実用化を目指したものである.平成12年度の研究においては,ボアホール地震計を鉛直に設置するために,以下の開発を行なった:(1)二重ケーシングと井戸孔底の特別仕上げ方法,(2)ケーシングを伝わる地表からのノイズの除去方法(免震機能),(3)それに対応した地震計の開発.二重ケーシング構造は,井戸本来の目的を損なうことなく地震観測を行なうために考案された.また,地震計は,既存の井戸の孔底にさらにボーリングした孔に設置される.平成13年度においては,本システムの性能チェックとそれによるデータを基に以下の研究をすすめた.(1)本研究で開発されたシステムが正常に作動していることをチェックするために,本システムによる記録と札幌市が市内に展関している3点のボアホール地震観測による記録とを比較した.微動記録と震度2の記録について比較し,本システムが正常であることを確認した.(2)札幌市と本研究による全部で6点のボアホール地震観測点と郊外2点の地表地震観測点のデータを用いて,札幌都市域直下の最近4年間の微小地震活動について調べた.その結果,北西-南東方向に線状に配列した震央分布を得た.(3)地表とボアホール地震記録との比較から,堆積層による増幅特性について研究した.その際に,PS検層の行なわれていなかった地層についてS波速度を推定した.本研究により,既存の深層井戸を利用したボアホール地震観測システムの開発・実用化に成功したと言える.
著者
徳増 征二 山岡 裕一 佐藤 大樹 出川 洋介
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究期間中、メンバー全員がタイ北部においてそれぞれの担当分野の菌類あるいはその分離源を採集、持ち帰って観察、分離、同定を行った。また、マレーシアの熱帯湿潤地域からも同様な方法で菌を収集した。熱帯との比較を行う目的で、同じ季節風の影響を受けるが気温的に暖温帯に属する南西諸島において同様な調査を行った。現在分離・同定を継続申であるが、アジア季節風の影響下にある熱帯と暖温帯を微小菌類の種多様性という観点から比較した場合、以下のような傾向が確認できた。マツ落葉に生息する腐生性微小菌類の種多様性は明らかに熱帯が暖温帯より高かった。また、両者に共通する種の割合は低かった。マツの穿孔虫に随伴する菌類では、温帯から熱帯季節風地域にまで連続して分布する種の存在が確認され、それら菌類はそれぞれの地域に適応している宿主を利用していることが明らかになった。昆虫寄生性の菌類はタイ北部において多くの冬虫夏草を採集した。その多くの種が本邦では梅雨の末期に子実体形成するものであった。熱帯季節風帯の長い雨季はこうした菌類に感染、子実体形成に好ましい環境であると推測できた。また、トリコミケーテスの一新種を発見した。接合菌類の調査ではタイ北部で40種、マレーシアで24種採集した。出現菌の中で13種は分類学的に新種あるいは詳細な再観察を要するものであった。加えて、菌類地理学的観点から新しい知見を加えることができた種が多数記録された。全体に結果を総括すると、この地域の菌類群集の種多様性が熱帯湿潤地域、暖温帯に比べて高いことが示唆された。この地域の多様性の高さは最終氷期以降の気候変動による植生の南北移動、温帯性植物が逃避できる高地や高山の分布という地史的、地形的要因に、乾季雨季によってもたらされる季節性という気候的要因、さらに耕作、焼畑などの撹乱という人間による要因が重なって成立していると考えられる。
著者
和田 守 小倉 い ずみ 加藤 普章 千葉 眞 大西 直樹 佐々木 弘通 五味 俊樹
出版者
大東文化大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009-04-01

5年間にわたる共同研究の取りまとめとして『日米における政教分離と「良心の自由」』を公刊した(ミネルヴァ書房、全328頁、2014年3月)。第I部「宗教と政治のあいだ」、第II部「政教分離の展開」、第III部「宗教と政治の現在」の三部構成で、10本の論考を収録している。同書では、政教分離と信教の自由という観点から、日本とアメリカにおける宗教と政治をめぐる諸問題の錯綜した広がりと深みについて、多面的かつ歴史的・構造的に論究しており、現代民主主義の活性化に関する提言としての意義を有している。個々人の尊厳と人格および多様な価値の共生を目指す市民的公共性と國際連帯の方向性を示しえたと思われる。
著者
村田 雄二郎 久保 亨 水羽 信男 川尻 文彦 中村 元哉 小野寺 史郎 竹元 規人
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

20世紀の中国史は、ナショナリズムや社会主義に加えて自由主義を受容した歴史でもあった。本研究は、自由主義の視点から、新たな中国近現代史像を提示した。その具体的な成果は『リベラリズムの中国』(有志舎、2011年)である。
著者
吉田 道利 泉浦 秀行 清水 康広 沖田 喜一 竹田 洋一 佐藤 文衛 清水 康広 沖田 喜一 竹田 洋一 佐藤 文衛
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

岡山天体物理観測所の188cm望遠鏡に装着された可視光高分散エシェル分光器用に、望遠鏡カセグレン焦点から光を導く光ファイバー天体導入システムの開発を行った。また、ファイバー集光システムに付随する問題点とその解決策を明らかにした。さらに、巨星周りの惑星探査計画を進め、散開星団に世界ではじめて系外惑星を発見するなど、巨星周りに惑星を新たに8個発見することに成功し、恒星質量・年齢と惑星質量・軌道半径の間に相関関係が存在する兆候を見出した。
著者
松岡 勝 大野 洋介 戎崎 俊一 清水 裕彦 吉田 篤正 河合 誠之
出版者
理化学研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

本研究の目指すものは、超広視野光学望遠鏡システムの基礎開発を行うことである。この装置を使った科学的な意義は、短時間で変動する天体・天体現象を連続的にモニター観測をして予測のできない天体現象を捉えることである。この研究で鍵となるのは「広視野望遠鏡」と「画像データの連続短時間読出し」の2点である。このため、本研究では(1)「広視野望遠鏡」ユニットを設計・製作し、(2)市販のCCDを焦点面にセットした試験観測を実行した。5度の視野をもつ望遠鏡は、通常の天文学用としては考えられない大きな視野である。このような広視野の天文観測用望遠鏡が実際実現され得るかどうかが、広視野トランジェント天体監視用望遠鏡システム実現の最初の試験項目であった。この試験観測のため、八ケ岳南麓天文台で試験観測を行った。散開星団M45(すばる)の観測を行い、測光制度0.1の限界等級が12等級であった。アナログ回路のノイズが60e相当であったが、現在は30e相当まで抑える見通しがつき、引き続き試験観測を行っている。CCD読み出し回路は、汎用CCD駆動・読み出しシステムを開発した。これを使って「連続短時間読み出し」に関して鍵となる技術であるTDI(ドリフトスキャン)方式による試験観測を野外で実施し、10秒間、望遠鏡固定の状態で鮮明な星像を捉えることができ、初期の目的が達成された。本研究の最大の目的であった望遠鏡システムの基礎開発は、ほぼ初期の目的を達成した。今後は、引き続いてこの望遠鏡の詳細な特性を試験観測で行う予定である。また、大量にこのような広視野望遠鏡を安価で製作する方法についての検討が必要である。さらに、大量の画像データを速やかに処理するソフトウヱアも将来の問題として残されている。
著者
湖中 真哉 伊藤 一頼
出版者
静岡県立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、総合的地域研究の立場から、東アフリカのマー系社会を中心とする牧畜社会をおもな対象として、フィールドワークを実施することにより、これまでほとんど報告例のなかった難民(国内避難民)が国家・国際的な外部からの支援に頼らずに自発的に形成する「地域セーフティ・ネット」の実態を記述・分析した。紛争の結果形成された「群集集落」が相互扶助と安全の拠点となり、地域セーフティ・ネットの役割を果たしていることを解明した。
著者
的場 輝佳 北尾 悟 安藤 真美 高村 仁知
出版者
関西福祉科学大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2011-04-01

環境に優しい食生活を実現するため、機能性および嗜好性を維持できる、正しい「エコロジー調理」を提言することを目的として研究を遂行した。水系において、加熱調理が機能性および嗜好性に与える影響について検討するため、物性を同じ状態にした調理品を試作し、調理法の違いによるCO2排出量を算出するとともに、調理操作の違いによる機能性の差異を解析した。電子レンジを用いた場合、ガスコンロを用いた場合よりもCO2排出量が少なくなる傾向が見られ、さらに蒸らし操作を加えるとより効果的であることが認められた。調味料を加えた調理では、食塩や醤油を加えた調理で、電子レンジの使用がCO2排出量を増大させる傾向にあった。
著者
阪上 孝 竹沢 泰子 八木 紀一郎 大東 祥孝 小林 博行 北垣 徹 山室 信一 上野 成利
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

1859年のダーウィン『種の起源』以降、この書物がもたらした衝撃は計り知れない。それはまず、種の不変を信じて分類に終始していた博物学を抜けだし、生存闘争や自然選択などの原理を基礎とする、生命にかんするダイナミックな理解をもたらす。しかしそれは自然科学の一理論にはとどまらない。ダーウィン進化論は一つの思考様式として、哲学・法学・政治学・経済学・社会学・人類学といった人文・社会諸科学へも浸透し、新たな認識枠組を提供するのだ。またこの理論は制度的学問の枠組すら乗り越え、社会ダーウィニズムとして、国家や社会にかんする言説としても機能することになる。そしてさらには、神の摂理を説く宗教を打破して、既存の人間観・世界観をも揺さぶるだろう。本研究の主要な狙いは、進化論が社会にもたらすこうした広大な衝撃を探ることにあった。そのためにこの研究は多様な学問領域の専門家たちから組織され、また対象となる地域もヨーロッパからアメリカ、中国、そして日本を含む。研究を遂行していくなかで特に明らかになった点は、進化思想とは大いに多面性と揺らぎを孕むものだったということである。当時においてはダーウィンの他に、心理学や社会学を含む壮大な進化論体系を構築する同時代のスペンサーも大きな影響力をもっていた。またフランスのラマルクはダーウィンにおよそ半世紀先行して、獲得形質の遺伝や進化の内的な力という点を強調しつつ彼の進化論を展開している。さらには『種の起源』の作者はこの書のなかで、マルサスの『人口論』を引用しつつ、その政治経済学的発想に多くを負っていることはよく知られている。このように進化論はいくつかの思想が絡まって織りなされる錯綜した知の総体であり、そこで知はメタファやアナロジーを通して、異なる学問領域間で、また学問と政治・社会のあいだで往還運動を行う。このなかではときとして大きな誤解や逸脱も産まれており、それは進化論を受容する時期や地域によってさまざまなかたちをとる。本研究がとりわけ力を注いだのは、このような多様性を詳述することである。
著者
齋木 喜美子 船寄 俊雄 真栄平 房昭 森田 満夫 正置 友子 高橋 正教 大澤 研一 櫻澤 誠
出版者
福山市立大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

4年間の研究成果は以下の通りである。1.伊波常雄教育関係資料を保管するうるま市石川歴史民俗資料館と共同して資料を整理し、同資料の目録とCD-ROMを作成・発行した。2.戦後沖縄、とりわけ占領期の沖縄教育の実態と課題について研究を深め、研究メンバーがそれぞれ成果を発表した。また、各自の研究論文とシンポジウムの記録、聞き取り調査の内容などをまとめ、最終年度に研究成果報告書として刊行することができた。3.最終年度に、うるま市石川歴史民俗資料館とうるま市教育委員会の協力を得て資料展示会とシンポジウムを開催し、地元メディアにも大きく取り上げられた。4.伊波常雄教育関係資料リスト、検索用CD-ROM、研究成果報告書を国内外の主要な図書館や研究機関に送付し、一般にも研究成果を発信できた。以上、今後の占領期教育実践研究進展のための基盤づくりができたことを踏まえ、当初の計画通りの成果を上げられたものと考える。