著者
木村 純二 岡田 安芸子 吉田 真樹 朴 倍暎 岡田 安芸子 吉田 真樹
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、西洋の哲学が理性主義的な人間観を基調としているのに対して、日本では伝統的に人間を感情的存在として捉えていることを鑑み、日本人の情念の理解について、仏教や儒教・神道・文芸作品等の思想潮流の全体に渡って総合的に考察しようと試みたものである。その際、『源氏物語』を一つの焦点とすることで、体系的連関のある研究にまとめることに心掛けている。本研究の最も主要な成果は、学術雑誌『季刊日本思想史』第80号に6本の論文として掲載される。
著者
泉田 英雄
出版者
豊橋技術科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

第一は個々の歴史的建造物の修理修復手法の調査と提案に関して、1)石巻市指定文化財「天雄寺観音堂」の修理計画作成から現地復原監修までを行い、2015年5月に竣工式を執り行うことができた。2)石巻市指定文化財「旧日本ハリストス正教会石巻聖堂」及び「観慶丸」の修理計画・工事に関して、石巻市近代建築修理活用調査研究委員会委員長として、修理計画と工事手法などをとりまとめた。3)気仙沼市内湾地区の登録文化財6棟の修理工事監修に関して、小野健商店土蔵は修理計画作成から工事監修まで行い、2015年度で修理工事を完了させた。角星酒造店舗は2016年半ばに完成予定である。第二は歴史的住環境の調査と修理修復再生手法の提案であり、1)石巻市長面浦の神山家修理と尾崎集落の再生のために、実測調査と修理計画作成を行った。2016年度は、この漁村の再生と一緒に事業構想を練らなければならない。2)気仙沼市旧市街地の歴史的建造物の調査に関して、三陸沿岸の歴史的都市の中で、気仙沼市の旧市街地は内湾地区を除くと津波被害から唯一よく残ったところで、現存建物の調査を行った。第三は歴史文化的資源の調査に関して、1)壁材としての凝灰岩と屋根葺き材としての天然スレートの調査を行った。仙台湾沿岸に産する凝灰岩を使った建築物の構造と設計手法に関して考察を行った。引き続き、天然スレートの使用例、施工方法などの調査を行った。2)気仙大工と左官の技術の解明に関して、石巻市の遠藤家の実測調査を通して、建築技術と設計手法に関する視点を明らかにした。柱寸法が1本1本異なり、他の建具が流用できないことは驚きであった。気仙大工が活躍した場所にはすぐれた意匠の土蔵が見られることから、気仙の大工と左官は密接な関係があったと考えられる。所属大学からの支援が得られないことから本研究事業の継続は断念するが、2年間でやり残した課題は退職後も継続していく。
著者
山本 政幸 ジェームズ モズリー ルース クリブ 指 昭博 後藤 吉郎 吉田 公子
出版者
多摩美術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、20世紀イギリスにおける近代的なグラフィックデザインの形成プロセスの一端を、タイポグラフィの視点から明らかにすることである。とくに1920年代後半から30年代にかけて流行した幾何学的な構造をもつ新しいサンセリフ体活字の設計手法に注目し、イギリスでこの活字書体を発展させたエドワード・ジョンストン(Edward Johnston, 1872-1944)とエリック・ギル(Eric Gill, 1882-1940)の制作活動を把握し、背後にあった造形思想の実態を探った。両者が継承したアーツ&クラフツ運動の精神性が、機械化と大量生産に対応してゆく独自のデザイン観に至る経過をたどり、イギリスにおけるモダン・タイポグラフィの発達に貢献したことを確認した。
著者
脇水 健次 西山 浩司
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

頻繁に干ばつ(渇水)が発生する北部九州に位置する九州大学では,1947年からドライアイスやヨウ化銀を用いた人工降雨実験を行っているが,これらの方法は効率が悪いことが知られている.そこで,1999年2月に新しい液体炭酸人工降雨法の実験が,福田矩彦ユタ大学名誉教授との共同で,北部九州玄界灘の冬季積雲に実施され,世界で初めて成功した.今回,数回の実験から,冬季積雲への液体炭酸撒布による地上への降水効果はかなり鮮明になった.そのうえ,冬季層雲への実験による地上への降水効果も鮮明になった(2013年12月26日).これらのことから,今後の液体炭酸人工降雨法の実用化の可能性がかなり高まったと考えられる.
著者
松原 斎樹 下村 孝 藏澄 美仁 合掌 顕
出版者
京都府立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本研究課題でいくつかの実験を行った結果,色彩,環境音,植物,視覚刺激としての窓の開閉状況などは,温冷感や寒-暑,涼-暖などの印象評価に影響を及ぼすことが,明らかにされた。色彩の影響に関しては,いずれの実験においても,暖色の呈示により、「暑い」側へ、寒色の呈示により、「寒い」側へ変化するというhue-heat仮説に合致した結果が得られた。特にカーテンを用いた実験では,周囲色彩が与える影響は室温に注目させた特異的尺度である「温冷感」よりも、室内のイメージを評定させた際の「涼暖感」や「寒暑感」等の非特異的な尺度に見られた。環境音として設定した「風鈴の音」は、高温の状態では,より「涼しい」,「快適な」側に感じる効果が見られたが,この効果は,特に色彩の影響が小さい、灰色呈示状態において、顕著である。植物の効果に関しては,マッサンギアナは夏に室内に置きたい植物であり、夏期の室温条件下にある室内に設置することで、グリーンアメニティの効果が期待できるが,ポトスは冬に室内に置きたい植物であり、夏期の室温条件下にある室内に設置しても、グリーンアメニティの効果は期待できない。カーテン・窓の開閉状況の映像の効果に関しては,温度の交互作用は「自然的な-人工的な」においてみられ,カーテンの開閉状況に対する評価は室温により異なると考えられる。以上の知見から,色彩,環境音,植物等を適切に利用することにより,寒暑,涼暖の感覚を変化させることの可能性が確認されたと言える。今後は,エネルギー削減の定量的な効果を明らかにすることが課題と考えられる。
著者
塚本 勝男 佐藤 久夫 大島 嘉文
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

月や火星なので人類が長期間生活することを想定すると、生活維持に必要な酸素と水をつくるだけでなく、居住に必要なコンクリートの安定性を保証する必要がある。コンクリートの主成分は水酸化カルシウムの結晶であり、この安定性を高分解光学系で”その場”観察をおこなって調べた。居住空間では生成される炭酸ガスと水によりコンクリート内に炭酸水が存在し、主成分の炭酸カルシウムを溶かすだけでなく、新たなアラゴナイトやカルサイトをつくり、体積変化のきっかけをつくる。この一連の反応を、分子レベルで観察できる”その場”観察でしらべると、溶解と析出が同時におこるメカニズムであることが分かった。
著者
望月 通子 阪上 辰也 船城 道雄 田中 雄一郎 田中 舞 牛尾 佳子 手塚 まゆ子 萩野 里香 アックシュ ダリヤ 芦 媛媛 アン ジュンミン
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

(1) ICLEAJ(International Corpus of Learner Japanese「国際学習者日本語コーパス」)の構築・分析、(2)産出過程を分析対象に含めた認知的側面からの分析、(3)学習者コーパスに基づく作文技術教育のweb教材の開発について報告する。(1)はすでに構築してあった日本語作文コーパス「KCOLJ_NNS」「KCOLJ_NS」を大幅に拡充し「ICLEAJ」を構築、そのβ版をweb上で配布している。正式版を2013年8月に配布予定。モダリティ、「思う」、有対自他動詞、外来語などの研究に進展がみられた。(2)は、実験装置の事情で産出過程の記録採集は不可。 (3)教材開発の予備調査として作文の学習過程の質的研究・分析を行った。
著者
宮竹 貴久 岡田 賢祐
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

オオツノコクヌストモドキの闘争行動の勝敗と記憶力の関係を調べた。本種のオスは勝利の経験は覚えないが、敗北の経験は4日間覚えていた。人為選抜実験によって闘争の記憶時間には遺伝変異のあることを明らかにした。本種では敗北期間中は戦いに投資しないが、射精への投資を増やした。オスは敗北経験による学習によって、交尾後のオス間競争である精子競争の投資を調整した。さらに雄同士が後脚を用いて配偶者獲得のために闘争するホソヘリカメムシを用いて闘争行動に明瞭な日内パタンのあることを明らかにした。
著者
山崎 正勝
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

この研究の発端となったのは,1994年放映のNHKの番組,「原発導入のシナリオ〜冷戦下の対日原子力戦略〜」である.原子力問題に関する柴田秀利(『戦後マスコミ回遊記』)の役割を,その番組ではじめて知ることができた.初年度は,アイゼンハワー図書館の資料を調査整理することに費やされた.同図書館で得られた重要な資料は,国家安全保障会議の原子力関係文書である.翌年,国立公文書館で国務省関係の資料を収集した.これらの資料から,アメリカ政府はビキニ事件の直後から,日本への原子力の平和利用計画を積極的に展開しようとしていたことを理解することができた.目的は,ビキニ事件で日本国内の反米,原水爆禁止活動を相殺することだった.柴田秀利の活動は,このアメリカの戦略に助けられたのではないかというのが,その時の感想だった.第3年度には,柴田秀利氏が残した文書の調査を行った,日米の資料をつき合わせることで,柴田秀利の活動の背後に,アメリカ政府の対日政策が存在していた事実をあらためて実証的に確認できた.また,柴田の『戦後マスコミ回遊記』で,柴田とアメリカとの橋渡しをしたとされているダニエル・スタンレー・ワトソン氏が,当時,国連軍の指揮官の任務に就いていたジョン・ハルの部下であった事実も明らかにできた.この関連で,柴田秀利氏の手紙から,氏の「毒をもって毒を制する」(原子力{平和利用}という毒によって日本国内の原水爆禁止運動と反米感情という毒を牽制するという意味)発言の時期が,1954年12月末であったことがほぼ確定できた.
著者
石原 邦雄 松田 苑子 田渕 六郎 平尾 桂子 永井 暁子 西野 理子 施 利平 金 貞任 加藤 彰彦 西村 純子 青柳 涼子
出版者
成城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

日本、中国、韓国の研究者がそれぞれ自国での家族の総合調査のミクロデータを提供し合い、共同利用する体制を作って比較分析を積み重ねるという新たな試みとなる国際共同研究に取り組み、最終的にChanging Families in Northeast Asia : China, Korea, and Japan. Sophia University Pressという、共同研究者12名の論文を含む出版物の形で成果をまとめた。多彩な分析結果を大きくくくると、(1)人口の少子高齢化と経済社会のグロ-バル化および個人化という同一方向での変化のインパクトのもとで、3カ国の家族が、遅速の差はあれ、共通方向での変化を遂げつつあること、(2)しかし同時に、各国の社会文化的伝統の影響の強弱によって、3カ国の家族の世代間関係と夫婦関係のあり方や変化の仕方に違いが生じていることも併せて明らかにされた。
著者
出口 近士 吉武 哲信
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

平成22年の宮崎県での口蹄疫では403箇所の消毒ポイントが設置されたが、消毒による交通渋滞の誘発が懸念され、その発生抑制を考慮した消毒ポイント設置法が課題として残された。本研究では、川南町、えびの市、都城市の口蹄疫発生地点から半径0.5,1,3,5,10,20㎞の円周を切断する道路の地理的分布状況を分析し、半径5km付近の道路交通センサス対象道路の混雑度や交通量等を検討した。その結果、交通容量に余裕がある道路区間の存在が把握できるなど同データの利用性を確認した。また市町では10箇所程度の消毒用資材の備蓄があり、5km圏内で交通規制を実施しながら消毒ポイントを設置できることの可能性を確認した。
著者
垣内 幸夫
出版者
京都教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究は、明治期に始まり今日まで文楽の舞台に継承されている「彦六系」の芸について、その伝承を支えた文楽三味線奏者・故六世鶴澤寛治(重要無形文化財=人間国宝)の残した芸談『鶴澤寛治の芸道生活と意見』(文部省委託・朝日放送製作/昭和43年1月)の全内容を分析し、「彦六系」の芸の伝承の実態を明らかにする事を目的に行ったものである。鶴澤寛治の実子であり文楽三味線の弟子である八世竹澤団六師(重要無形文化財=人間国宝)とともにこれらの記録テープを聞き、内容の正確な理解に努めた(竹澤団六師も鶴澤寛治と同じく「彦六系」の芸の伝承者である)。その結果、以下の点が明らかとなった。1.六世鶴澤寛治の芸を形成するに至った師匠について指導を受けた「彦六系」の三味線奏者 (1)初世豊澤松太郎(2)三世豊澤団平(3)初世鶴澤道八指導を受けた「文楽系」の三味線奏者 (1)六世豊澤廣助(2)二世鶴澤寛治郎(3)六世鶴澤友次郎指導を受けた大夫 (1)三世竹本大隅太夫(「彦六系」)(2)三世竹本越路太夫(「文楽系」)2.六世鶴澤寛治が継承する「彦六系」の芸の伝承曲について「堀川猿廻しの段」「寺子屋の段」「山科閑居の段」「沼津の段」「岡崎の段」「宿屋の段」「澤市内の段」「新口村の段」「熊谷陣屋の段」「阿古屋琴責の段」「志渡寺の段」等3.六世鶴澤寛治が相三味線を勤めた大夫について(1)三世竹本津太夫(2)七世竹本源太夫(3)五世竹本錣太夫(4)七世豊竹駒太夫(5)四世竹本津大夫
著者
田川 正毅
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

子どもの外遊びが全国的に減少し、積雪寒冷地では冬の外遊びの減少が顕著である。子どもの外遊びを促すきっかけや仕掛けとなる環境形成の知見を、保育や教育関係者・環境の計画者・そして子どもとその保護者が共有する方法を、パタンランゲージを元に開発した。それをホームページ(http://kodomo-snowland.net)で公開し、家の周り・公園・まちの段階的な広がりの中で示した。この方法を活用した外遊びの展開が期待される。
著者
近藤 浩文 福森 義信 平塚 純一
出版者
神戸学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

【研究の目的】メラノーマ細胞に特異発現し、その放射線抵抗性に関与すると考えられているTRP-2遺伝子の発現を抑制することによって、メラノーマ細胞の放射線抵抗性・DNA障害型化学療法剤への抵抗性を減弱させることの可能性を検証する第一段階として培養癌細胞レベルを実施し、「ブラックデビル」と恐れられているメラノーマに対する粒子線・放射線・化学療法等の治療効果増強法(増強剤)開発に結びつけることを目的とした。【研究実績】研究実施計画に基づき以下の研究を実施した。平成17年度は各種基盤評価技術の確立と検討する対照となる細胞系の確立に重点をおいた。(1)各種悪性黒色腫細胞を用いてTRP-2発現抑制法を検討した。Tyrosinase遺伝子発現欠損黒色腫細胞にTRP-2発現抑制shRNA発現プラスミドを導入した細胞株を作製した。(2)TRP-2遺伝子発現抑制による殺腫瘍細胞効果評価系の確立するため、X線に対する感受性評価系、紫外線に対する感受性評価系、およびDNA障害型抗癌剤であるシスプラチン系抗癌剤に対する感受性の評価系を確立した。(3)放射線感受性変化の機序を解明するため、TRP-2遺伝子発現量・黒色腫細胞内メラニンモノマー量と放射線感受性の相関関係解析のためHPLCを用いたメラニンモノマー定量系を確立した。平成18年度は、TRP-2発現と放射線抵抗性の関係を明確に出来る細胞系確立と評価に重点をおいた。(4)TRP-2遺伝子発現抑制による放射線感受性変化の機序を解明するため、TRP-2遺伝子を非メラノーマ系細胞であるHeLa細胞に導入安定発現する細胞を作成した。本細胞を用いれば、TRP-2遺伝子による放射線抵抗性がTRP-2蛋白質のみに依存するのか、それともメラニン生成機構と関連するのかを明確にできる。本細胞の色素細胞学的性質、細胞生物学的性質および分子生物学的性質を解析評価した。(5)作成した上記2種の細胞を用いて、紫外線抵抗性・放射腺抵抗性およびDNA障害型抗癌剤であるシスプラチン系抗癌剤に対する感受性を親株細胞と比較検討したが、現在までのところ、明確な結果は得られなかった。評価条件・手法を変更・改良して評価試験継続中である。
著者
佐野 比呂己 本橋 幸康 井口 貴美子 太田 幸夫 大村 勅夫 菅原 利晃 花坂 歩 谷口 守 増子 優二
出版者
北海道教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

これまで研究されてこなかった柳田国男監修高等学校国語科教科書について、その所収教材を中心に研究を進めてきた。所収教材そのものを分析、考察するとともに、分析・考察をもとに、研究協力者である高等学校教員との連携により高等学校国語教室での実践を行った。実践を検討する中で、教材としての有用性、問題点を抽出し、教材価値の検討を行い、時代は経過しても現代の高校生の国語教室において価値ある教材であるという共通認識を持ち、実践研究報告を学術雑誌に投稿、掲載された。
著者
青山 謙二郎
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本プロジェクトでは、人間と動物の両方を対象として、「食べ止む」要因について検討した。人間では、食べ物のカロリー量を知らせない場合には、食物のカロリー量は食べ止むことに影響しなかった。ラットでは、食物の現在のカロリー量ではなく、過去のカロリー量に関する経験が食べ止むことに影響した。これらの結果は、「食べ止む」ことの直接の要因は、食物のカロリー量に関する過去の経験であることを示唆している。
著者
岩井 郁子 佐藤 紀子 豊増 佳子
出版者
聖路加看護大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

看護記録は、保健師助産師看護師法の規定や概念がない。診療報酬の算定要件として看護計画と経過記録が求められ、施設毎に記載内容と様式を決め標準化がなされていない。診療記録開示において看護記録は診療記録に含まれ、また、個人情報として位置づけられた。このような中で、診療記録開示の目的にかなう標準化された看護記録が求められている。本研究では、診療記録開示の目的を踏まえ、アメリカ、イギリスの看護記録の実際と記録指針から、カルテ開示の目的にかなう看護記録モデルの本質を検討し、また、74病院の看護記録の分析と109名の看護記録記載を指導する看護師の指摘から、現状の看護記録をめぐる課題を明らかにした。これらの結果を踏まえて、厚生労働省、関連団体である日本看護協会、日本医療機能評価機構の指針や保健師助産師看護師法、医療法等の法的な記述から看護記録の概念を抽出し、概念モデルを作成した。概念は、看護記録記載の目的と内容を示し、看護記録は、看護者としての倫理・業務上の責務の遂行、質を証明するものと位置づけた。さらに電子カルテ時代、患者を中心に、医療チームメンバーが共同で記載できる標準化された記録として、日本において一般化可能な記録枠組みを選択し、関連団体の指針を活かした構成要素およびその概念から看護記録モデルおよび記載基準を作成した。この基準は全国52の社会保険病院の看護記録記載基準に活かした。基準だけでは、記載内容の標準化は困難である現状から、基準に基づく具体的な記載例を含む看護記録モデルを提示した。このモデルは診療記録開示の目的にかなうしかも記録時間の削減に貢献できる内容をめざした。
著者
山本 健 坪川 恒久
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

脳磁図を用いて意識・記憶・痛みによる脳活動の変化を観測し,その結果を脳波に応用することにより,周術期にベッドサイドで使用することができるモニタリング手法を開発することを目指した.MRIまたは脳磁図装置の中で被検者を全身麻酔により無意識状態として観察することは倫理委員会の許可が得られなかったため,睡眠による意識消失状態での観察をおこない睡眠時紡錘波,θ波,δ波の発生部位を明確にすることができた.記憶に関するモニタリングに関しては,記憶形成時,想記時ともに記憶に特徴的な脳の反応を捉えることができなかった.痛みに関しては,扁桃体や海馬,島皮質などに特異的な反応を見出すことができた.
著者
宮口 和義
出版者
石川県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

近年、日本では子どもの体力・運動能力の低下に比例して転倒による子どもの事故や怪我が増えている。以前に比べ咄嗟時の反応が鈍くなっていると思われる。保育園で有効な運動プログラムを提供するためにも、遊びの反応時間への影響について検討しておく必要があろう。鬼ごっこやサッカーのような動的な遊びは、反応スピードと全身運動の敏捷性を発達させることがわかった。特に鬼ごっこを好む園児は左右の切り替え動作を含む敏捷性能力に優れているといえる。また、ラダー運動は今日の子ども達の各反応動作の改善に有効であることが示唆された。さらに、草履の着用はバランス能力に関わる足裏形成や立位姿勢の改善に有効であることがわかった。
著者
辛島 彰洋 中村 有孝 安斎 友花 塚田 僚 益田 幸輝
出版者
東北工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、以下に記すように、睡眠-覚醒状態に依存したシナプス結合の可塑的変化が大脳皮質と海馬で観測されことを示し、そのメカニズムに迫ることができた。大脳皮質では、体性感覚野スライス標本を用いたin vitroパッチクランプ実験と、体性感覚応答を覚醒時と睡眠時で比較するin vivo実験を行った。覚醒時にシナプス結合が増強し、睡眠中には減弱していることを示す結果が得られた。さらに、感覚遮断実験により、覚醒時の増強が経験依存的である可能性を示した。大脳皮質と同様に海馬CA1領域でも、in vitro実験も行い、覚醒時にシナプス結合が増強していることやその増強が経験依存的である可能性を示した。