著者
嶌田 敏行 小湊 卓夫 浅野 茂 大野 賢一 佐藤 仁 関 隆宏 土橋 慶章 淺野 昭人 小林 裕美 末次 剛健志 難波 輝吉 藤井 都百 藤原 宏司 藤原 将人 本田 寛輔
出版者
茨城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

大学の諸課題の数量的・客観的把握を促すIRマインドの形成を目指した評価・IR人材の能力定義、教材の開発、教育プログラムの開発および体系化を行った。そのために単に研究・開発を行うだけでなく、様々な研修会や勉強会を開催し、全国の評価・IR担当者の知見を採り入れた。そのような成果を活かして、評価・IR業務のデータの収集、分析、活用に関するガイドラインも作成し、評価現場やIR現場で活用いただいている。加えて、合計14冊(合計940ページ)の報告書を作成した。この報告書は自習用教材としての活用も意識した構成とし、すべてwebページを作成し公表している。
著者
岩城 卓二
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、戦争と災害という視点から幕末期の畿内・近国社会の特質について明らかにした。具体的には、幕末期の畿内社会では、人々の間に戦争を忌避する意識が高まっていたこと、それは民間の情報網によって西国の広い地域の人々にも共有されていたこと、戦争による長州藩の打倒を叫ぶ畿内大名もいたが、社会を覆う戦争忌避の力と、たくさんの領主が小さな所領を領有するという所領形態によって軍事行動を起こすことはできなかったこと、幕末期の京都・大阪は武士人口が急増するが必要な労働力・消費物資は町・村が提供する「請ける」体制が機能していたこと、1865年以降天候不順が続き、災害復興に大勢の労働者が動員されたため、農村地主・幕藩領主の間で労働力の奪い合いが起こったこと、その矛盾が爆発したのが1866年の打ちこわしであったことを明らかにし、領主制の矛盾がいち早く吹き出し、その解体の必要性を提起したのが畿内の幕末社会であったことを指摘した。
著者
川野 健治
出版者
独立行政法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

この研究の目的は、若年層の自殺への態度を明らかにし、効果的な啓発と自殺予防教育の方法を開発することである。まず、ある調査会社の1000人に自殺への態度の関するアンケートを実施した。因子分析により二因子構造が明らかになり、テキストマイニングによって死と自殺に関するイメージスキーマが見出された。次に、86名の中学教師を対象としたアンケート調査からは、学校での自殺予防の課題が明確になった。最終的に、学校で実施する自殺予防プログラム「GRIP」を開発した。
著者
宮崎 かすみ
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

近年大幅な見直しが進行している十九世紀後半のイギリス同性愛史の最新研究成果の全体を渉猟した上で、研究者を招へいし、日本に広く紹介した。この知見に基づき、オスカー・ワイルドの文学について、同性愛をめぐる思想史の文脈から分析して明らかにした。これに並行して、この時代の英文学に特有な、同性愛タブーを背景としながらもそのなかでも根強く存在した同性愛文化に、同時代の英文学者、夏目漱石が大きく影響を受けたことを明らかにし、この成果を書籍にして刊行した。また英語圏で発表を行ったり、論文集に寄稿するなどして、漱石の代表作『心』とワイルド、聖書の関係性を英語圏に広く紹介した。
著者
名取 琢自 今井 完弌 秋田 巌 禹 鍾泰 平尾 和之 佐々木 玲仁 平田 俊明
出版者
京都文教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

申請時の研究計画に基づき、海外の心理臨床家への半構造面接による調査を企画し、平成20年度はアメリカと韓国、平成21年度はスイスとフィンランド、平成22年度はオーストリアを調査対象地として面接調査を行い、調査票と録音データを収集した。面接調査は研究計画で設定した規模で実施でき、資格や就業形態、勤務内容、想定される賃金、他職種との連携のイメージについて、心理臨床家の生の声を得ることができた。音声データは逐語記録化され質的分析が行われた。
著者
関根 勇一
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

これまでに、アダプター分子Signal-transducing adaptor protein-2(STAP-2)がさまざまな細胞内シグナル伝達経路において機能的に働き、サイトカイン刺激による免疫細胞応答を調節する重要な分子であることを申請者は多数報告している。特にT細胞においてSTAP-2が重要な働きをしていることを数多く示してきた。本申請研究において、STAP-2によるT細胞の活性制御機構の更なる解明と、アポトーシスシグナル経路におけるSTAP-2の機能解析を行った。1.STAP-2によるアポトーシス促進メカニズムの解明これまでの研究では、Fas刺激時のCaspase活性がSTAP-2により亢進することを明らかにしており、本年度の研究によりアポトーシス促進メカニズムの解明を行った。STAP-2自身は酵素活性を持たないことから、Caspaseを活性化する分子とSTAP-2との複合体形成が一つのメカニズムとして考えられた。アポトーシスのイニシエーターであるCaspase-8は、刺激によるFasの活性化によりFADDというアダプター分子を介してレセプターへリクルートされ、DISCと呼ばれる複合体の中で活性化する。そこでSTAP-2がCaspaseの活性化を促進するメカニズムを解明するため、ヒト白血病T細胞株Jurkat細胞、STAP-2 KO T細胞、ヒト胎生腎癌細胞株293T細胞を用いて、免疫沈降実験などによりDISC形成分子とSTAP-2の相互作用解析等を行った。その結果、STAP-2はFasやCaspase-8と会合し、DISC形成を促進することを明らかにした。これよりSTAP-2によるアポトーシス促進は、DISC形成亢進によることが明らかになった。2.STAP-2限定分解酵素の同定これまでに申請者は、Jurkat細胞においてFas誘導性アポトーシス時に切断されたSTAP-2産物の分子量から、切断部位を推測しアミノ酸に変異を導入することで限定分解されないSTAP-2点変異体の作製に成功していた。この切断配列は、アポトーシス時に活性化するシステインプロテアーゼ、Caspaseファミリーによって認識される配列と相同性が高く、また、広範なCaspaseインヒビターとして知られるzVAD処理により、STAP-2の限定分解が抑制されることも予備実験により明らかにしていた。これら知見からCaspaseファミリー分子がSTAP-2の限定分解酵素であると考えられた。本年度の研究ではCaspaseファミリー特異的インヒビターを用いた解析、siRNAによるノックダウン実験によって、Caspase-8がSTAP-2切断酵素であることを同定した。今後は、STAP-2が切断されることとアポトーシス促進の関連性、及びSTAP-2切断阻害剤の作製によりアポトーシスへの影響を解析していく予定である。アポトーシス時におけるSTAP-2限定分解の詳細な解析が、STAP-2限定分解の調節による自己免疫疾患の治療薬開発の手がかりになることを期待する。
著者
福田 一彦
出版者
江戸川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

約2500名の幼児を対象とした調査で、3歳児で70%、4歳児で80%、5歳児で90%、6歳児で95%の子どもが自宅では昼寝をとらない事が明らかとなった。アメリカのデータでは3歳児の40%が昼寝をとらないとされてきた。今回の結果は、この数字をはるかに上回る割合の3歳児が昼寝をとっていないという事が明らかとなり、昼寝の消長についてより詳しい調査を行う必要があると考えられた。昼寝の中止後には、就床時刻の前進、寝つきや、朝の気分の改善が認められた。夕食の時刻、入浴の時刻は幼児の就床時刻と高い相関を示したが、母親自身の就床時刻には非常に低い相関しか認められず、重回帰分析の結果、最初に除外対象となった。
著者
山崎 正勝 栗原 岳史 中尾 麻伊香
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

1954年3月の米国のビキニ水爆実験によって、第五福竜丸の乗組員が放射線被害を被った。その実態は、自らも調査に関わった当時大阪市立医科大学助教授だった西脇安によって各国に伝えられた。本研究では、遺族から提供された資料などの分析で、次のことが明らかにされた。(1)1954年の西脇の欧州訪問は、大阪の原水爆禁止運動が財政的に支えたこと。(2)訪欧中のジョセフ・ロートブラットとの出会いが、1955年の「ラッセル・アインシュタイン宣言」の重要なきっかけを与えたこと。(3)1957年のソ連及び東欧訪問でその影響が広がったこと。(4)1959年の訪米によってライナス・ポーリングの反核運動を支えたこと。
著者
藤本 淳也 冨山 浩三 古澤 光一 古澤 光一
出版者
大阪体育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

地域の自治体やスポーツ組織は、地域社会貢献の重要性と、地域スポーツ振興のためのスポーツ組織間連携の必要性を認識している。また、地域のスポーツ消費者を対象とした調査から、地域に対する愛着心は、各スポーツ組織に対する態度と密接に関係していることがわかった。地域に存在するスポーツ組織を有機的に関連付けることによって、地域のスポーツ消費者を刺激し、地域スポーツ振興を効果的に展開できる可能性が示唆された。
著者
橋口 泰一 大嶽 真人
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本課題研究は,ブラインドサッカーおけるコーラーの言語教示およびシュートシーンの分析を通して,ブラインドサッカーの強化,発展における基礎的資料を得ることを目的とした.これまで得られなかったブラインドサッカー選手の個人およびチームにおける課題や周囲への要望,国内リーグにおけるコーラーの発言や国際大会におけるシュートシーンの実態について,様々な角度からブラインドサッカーの強化・発展のための基礎的資料を得ることができた.今後の競技力向上および研究に可能性を示すものであると考えられる.
著者
伊東 正博 中島 正洋
出版者
独立行政法人 国立病院機構 長崎医療センター・臨床研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

チェルノブイリ組織バンクに研究期間の3年間に約1,000例の生体試料の登録がなされ、4,288例の組織登録が完了している。被曝甲状腺癌には一つの決まった特徴はなく、被曝形式により形態学的にも分子生物学的にも多様な形態を呈することを報告した。新規に低ヨード環境の影響、成人症例の検討、FOXE1(TTF2)の変異、53BP1核内フォーカスの解析、microRNA解析を継続的に進めている。
著者
上保 国良 佐々木 隆爾 上保 国良
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の成果は,「幕末・明治期における民謡・流行歌を通じてみた外国文化摂取の歴史的研究」,および「幕末〜明治初期,長崎における外国音楽摂取の時代的背景」の二編からなる報告書にまとめた。第一部では,『長崎新聞』『西海新聞』を主要な資料として,次の結論を得た。長崎を事例とする研究で明白になったことは,第一に身分解放令後も芸妓は娼妓と同様激しい差別に晒されていたが,1879年半ばより彼女らの清楽を中心とする演奏が高く評価されるに至り工尺譜が普及し,第二に,この直後から開始された文部省の唱歌教育が五線譜の浸透力不足のため軽視される中で,清楽師範として人気の高かった長原梅園が明治22(1889)年,工尺譜『月琴・俗曲今様手習草』を発刊し,文部省唱歌を12曲紹介し民衆の問で愛唱される大きな契機をつくり,第三に,スコットランド民謡「あさひのひかり」(のちの「蛍の光」),ルソーを発端とする「みわたせば」(のちの「結んで開いて」),モーツアルト『魔笛』のアリアのメロディーを転用した「仁は人の道」(原曲パパゲーノのアリア)等が定着したことを明らかにした。第二部では,長崎県『学務課教育掛事務簿』,『r長崎県会日誌』r明治十二年六月,米国前大統領来港接待記事』等の精査をもとに,第一に,得られた主な資料を,その歴史的背景を説明しながら紹介し,第二に『活水学院百年史』等を参照しつつ分析し,義務教育における音楽教育は難渋しつつも,俗曲が,その担い手であった芸妓に対する差別的観念と相侯って,文部省の狙い通り零落したことを明らかにし,第三に小学校における唱歌教育が童謡をもとに,生徒の健康増進を実際上の目的として進められたことを解明し,第四に活水学院の前身では発足当初から高度の西洋音楽の教授が重視され,長崎県下の子どもに西洋音楽を定着させる有力な途を開いたことなどを明らかにできた。
著者
沖原 謙 塩川 満久 柳原 英兒 松本 光弘 出口 達也 菅 輝 磨井 祥夫
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

これまで本研究グループでは、DLT法による三次元解析を利用し、サッカー競技の選手のポジショニングとチームの戦術について客観化を行なってきた。そして、本年度はサッカー競技(日本代表 vs. UAE、サンフレッチェ広島 vs. 横浜マリノス、韓国Kリーグの公式戦)を研究対象とし、「モダンサッカーにおける攻守の切り替えとコンパクトの関係」について考察した。この研究については、The Vth World Congress on Science and Footballにて発表予定である。モダンサッカーでは、一試合<90分>を通じてチームの状態がコンパクトに保たれ、その結果、攻守の切り替えの数は約400回にも及んでいる。つまり、技術や体力の向上が繰り返されてきたにもかかわらず、攻撃のチームがボールを短い時間内で失っている。この現象は、モダンサッカーのキーワードとも言えるコンパクトが戦術的にどのように関係しているか、客観的なデータを元に考察を加えた。以上の結果は以下のように示された。1.分析対象とした試合について、チームの縦幅と横幅を測定した結果、攻撃のほうが守備よりも広く、守備のほうが攻撃よりも狭い傾向が認められ、現代サッカーにおける「コンパクト」は、守備における合理性を意味し、攻撃時の合理性ではない。2.コンパクトなもとでの戦いの意味は、「攻撃側が狭い形、守備側が広い形」での両チームにとって不完全な状態での戦いを意味していることが示唆された。このことより現代サッカーでは、攻守の切り替え時から、ほぼ同時に守備から攻撃に移行し、また対戦相手は攻撃から守備に移行するので前で述べた不完全な形での戦いであり、結果として短い時間内でボールを失ってしまう傾向が生じると結論付けた。
著者
岸本 成史
出版者
岩手医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、ヒトナチュラルキラー細胞のガン細胞に対する細胞傷害活性におけるカンナビノイド受容作動薬や阻害薬の影響について調べることにより、ナチュラルキラー細胞の細胞傷害の機構にエンドカンナビノイドシステムが関与している可能性を示した。さらに、マウスの腫瘍生着モデルに対するCB2受容体阻害薬の影響についても調べ、CB2受容体が少なくともマウスにおける腫瘍免疫において重要な役割を演じている可能性を示した。
著者
野元 弘幸 青木 直子 大串 隆吉 新海 英行 衣川 隆生
出版者
東京都立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は、外国人住民の日本語読み書き能力が著しく劣り、地域において日本語文字によるコミュニケーションが成立していないのではないかという問題関心から、日系ブラジル人集住地区(愛知県豊田市保見団地)で、日系ブラジル人を対象とした大規模な読み書き能力調査を実施した。また、その調査結果をもとに、読み書き能力の習得を位置づけた日本語教育プログラムの開発を試みた。本研究の成果は以下にまとめることができる。(1)外国人住民の日本語読み書き能力が低く、極めて深刻な状態にあることを明らかにした。自動車・家電製品の工場で働く人の7割強が、「危険」を「読めないし意味もわからない」状態にあることが明らかとなった。また、46%しか、自分の姓名をカタカナで正確に書けないことも明らかとなった。(2)集住地域に対象を限定し、地域内で被調査者が日常的に見る標識や表示を調査に利用するという特徴的な調査であったために、当該地域において文字によるコミュニケーションが成立していない可能性が極めて高いこと示す結果を得た。(3)漢字に比べると、ひらがな・カタカナの習得状況は良く、日本で働き生活する外国人住民の基礎教養としてひらがな・カタカナの習得を促す根拠を明らかにできた。以上のような成果をもとに、日本語教育政策の新たな展開と、日本語読み書き能力の習得を伴う新しい日本語教育プログラムの開発を試みることができた。
著者
谷村 厚子
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究では、人間作業モデルを理論的背景に、当事者参加型アクションリサーチの手法とノミナールグループテクニックを用いて参加当事者の学習とリカバリーを促進し、ワークライフバランスを改善するとともに、内容妥当性の高いワークライフバランス尺度を開発することができた。さらに、108名の精神保健サービス利用者を対象に調査を実施し、尺度の信頼性と妥当性を検討した。その結果、高い信頼性(内部一貫性)と中等度の基準関連妥当性が示された。因子分析では5因子が生成され、因子分析結果は調査データに適合していると判断された。
著者
栗原 岳史
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本年度は,昨年度に引き続き,1950-60年代の科学者たちについて米国政府がどのように理解していたのかを解明するために,主として米国国立公文書館の所蔵する文書史料の調査を行ってきた.これまでに,科学研究活動全体が米外交政策の重要な手段の一つとしての役割を果たしていたことを,かなり具体的に明かにすることができた.昨年度までに原子力技術の日本への導入に関する米外交政策を中心に調査を進めてきたが,米の外交政策は科学全体に及んでおり,原子力技術の日本への導入はその一部にすぎず,科学に関する米外交政策全体の中で,原子力技術がどのような位置づけられていたのかを明らかにする必要があることが明らかになってきた.第二次世界大戦の終結から1950年までに,米国務省は外交政策における科学の重要性を自覚するようになり,科学に関する外交政策を体系的にまとめた報告書を作成し,その報告書の勧告に従って,国務長官の下に科学局を新設し,主要国に科学者を科学アタッシェとして派遣するようになった.日本への原子力技術の導入はこの枠組みの中で行われたものであった.米外交政策の目的は,主要国と共同で科学研究を進めることで国家安全保障にとって重要な科学知識を得ることや,科学の振興によって経済発展をもたらして政治を安定させることで,当時の冷戦体制の中で対立していた共産主義勢力の浸透を防ぐということにあった.そのため,米に批判的な科学者たちの動向を注意深く観察していたことを示す公文書史料をいくつか発見しすることができた.これらの調査成果の一部を,2017年6月4日に香川県の香川大学で開催された日本科学史学会などで発表し,幾人かの研究者たちから助言をいただくことができた.
著者
菊池 秀明
出版者
国際基督教大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

19世紀の中国長江流域における社会変化を、太平天国とそれに対抗した湘軍=曾国藩の創設した地方武装勢力の主張や政策を中心に検討した。太平天国は福音主義運動の「文明化の使命」という理念に影響を受け、中国の伝統文化に対する激しい攻撃を行った。だが彼らの攻撃的な行動は「中庸」を重んじる中国知識人の受け入れるところとならず、漢人エリートたちは満洲人貴族との間に深刻な対立があったにもかかわらず、太平天国に反対した。
著者
隠岐 さや香 野澤 聡 小林 学 但馬 亨
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

本研究では、力学、光学、流体力学、および他の数理的な工学理論の分野など「混合数学」として分類されていた諸分野の知識産出に関して、道具や実験機器など(物質・技術文化)が果たした役割を検証した。「混合数学」の歴史は科学史上における二つの重要な時期に関わる。第一は17世紀末におけるニュートン科学のインパクトと18世紀後半の欧州における代数解析の発展である。この時期は、数学の適用が自然哲学の領域に広がったのだが、理論知を産み出すために適切な方法や「実験」の位置付けについての論争があったことが本研究でわかった。第二の時期については数学は工学諸分野に本格的に応用されたのだがその試行錯誤の様子を分析した。
著者
河合 徳枝 仁科 エミ 森本 雅子 仁科 エミ 森本 雅子
出版者
国際科学振興財団
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ヨーロッパ多声合唱の源流といわれるグルジア伝統ポリフォニーの音響構造の特徴と、その生理的・心理的効果を検討した。グルジア伝統ポリフォニーは人間の可聴域上限を大幅にこえ非定常的に変化する超高周波成分を豊富に含むこと、その音律は12平均率とは異なる独特のものであること、そうした音響構造は聴取者の基幹脳活性と相関の高い脳波ポテンシャルを増大させ心理的な好感度を高けることに寄与していることが見出された。